2010年04月09日

流通部門を統合させ通信社化する新聞社

 全国紙と地方紙による印刷委託・受託が加速しています。
 今回は新潟日報に続き、北日本新聞社が読売新聞が富山、石川の両県で発行する新聞印刷を来年4月からスタートするというもの。
 北陸地方は冬場の豪雪などで新聞輸送の効率も悪いことから、「印刷、輸送、販売店」の流通工程の提携も視野に入れて取り組まれるようです。
 新聞産業の流通部門の統合がいよいよ本格化してきました。


▽北日本に印刷委託 読売新聞の富山・石川向け
 読売新聞東京本社(老川祥一社長)と北日本新聞社(河合隆社長)は、富山・石川両県内で配達している読売新聞朝夕刊の全部数を、北日本新聞社の印刷工場「創造の森 越中座」(富山市)で印刷することで基本合意し、6日、都内で両社長が合意書に調印した。朝刊約10万4千部、夕刊約5千部を来年4月から印刷を始める。富山県内の輸送協力についても今後、具体的な協議に入る。今回の委託・受託印刷は、読売にとって印刷体制の安定化とカラー紙面の充実による読者サービスの向上につながる。北日本にとっては、生産設備の有効活用が図れるメリットがある。(新聞情報 4月9日付)
 これまで富山・石川両県内の読売新聞の現地印刷は。96年から読売新聞東京本社が100%出資する「北陸オール印刷」(富山県高岡市)していますが、輪転機が1セットのみでトラブル発生時の不安を抱えていたこととあわせて、稼働から14年たった輪転機の更新も近づいていたことも印刷委託に踏み切った理由だと思われます。
 北日本新聞も4年前に48頁40個面カラーが可能な最新の輪転機を2セット投入したばかりで、昨年から夕刊を廃止した北日本新聞としては輪転機の稼働率をあげたいことろ。両社の思惑がピッタンコだったのでしょう。

 輪転機の更新時期にあわせて、印刷の委託・受託が行われてくることになると、新聞社だけでなく印刷会社(凸版やDNP)も含めた共同出資の印刷センター構想も浮上してきそうです。もちろん販売部門(宅配部門)にも同様のことが
起きてくるはずです。
 「新聞紙」を印刷・宅配して、読者から購読料を得ることで成り立ってきた新聞産業のビジネスモデルの流通部門が統合し、新聞社がニュース記事を取材、配信する「通信社化」していくのだろうと、あらためて思います。

posted by 今だけ委員長 at 22:43 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時事ニュース

2010年04月08日

新年度でさらに加速する「編・販」業務提携

 新年度を迎えて新聞業界も編集・販売とも『業務提携』の動きが活発になっています。

 編集系では、朝日と読売が鹿児島県内の一部地域で記事相互配信に取り組むとのこと。

▽朝日と読売、記事相互配信 鹿児島県内一部地域で
 朝日新聞と読売新聞は3月31日、鹿児島県内の一部地域で、記事や写真などを相互に有料で配信することで合意したと発表した。地域取材網の強化と紙面の充実が目的。4月1日制作分から配信を始めた。対象地域は、朝日新聞鹿児島総局霧島支局管内の霧島市、伊佐市、姶良市、湧水町と、読売新聞鹿児島支局指宿通信部管内の指宿市、枕崎市、南さつま市、南九州市。記事は対象地域内の自治体が発表したもの、行事、話題もの、季節の写真ものなどに限る。掲載時は原則として「朝日読売地域取材特約」と記して、読者に配信記事と分かるようにする。両社は今回の連携について、対象地域内を含めて双方の独自取材を妨げるものではなく、紙面づくりの競争はこれまで通り続けるとしている(文化通信 4月5日付)
 取材拠点および人員体制の縮小化によって、販管費を抑え経営効率を高めようとの業務提携は、発表ものや季節の写真までとはいえ、朝日と読売の紙面に同じ記事が掲載されるという時代になってきました。新聞社の通信社化が進み、共同通信配信の地方紙と相互配信の全国紙という題字は違えど大きく分けて「2種類の新聞」という構図になっていくのかなぁとも感じます。

 販売系では、ANYではなく朝、毎、日経の3系統が神戸市内で共同配達に取り組むとのこと。京阪神地区の販売正常化の動きが加速したものと業界内では受け止められているようですが…。

▽朝、毎、日経が共同配達
 朝日新聞神戸販売、神戸毎日舎、日経神戸中央販売は3月17日、神戸市中央区の三宮、元町、ポートアイランド地区で、共同配達を行うことで合意した。
全国紙連合による共同配達の提携は、販売正常化時代の新聞販売のモデルケースとなる。共同配達は4月下旬にまずポートアイランド地区で始め、その後、三宮、元町地区へと順次拡大する。ポートアイランド地区は神戸毎日舎が受け持ち、三宮と元町は、朝日新聞神戸販売と日経神戸中央販売と神戸毎日舎がそれぞれ分担する。対象部数は3地区で合計約1万3千部の予定。委託店は受託店に対し、部当たりの配達委託料を払う。共同配達は、配達経費や店舗経費を削減することが目的。経営の効率化を図り、戸別配達網の維持・強化を目指す。また、互いに正常販売を順守し、共同ポスティングなど販売促進面での提携も進め、新聞事業のさらなる発展を目指す(新聞情報 3月24日付)
 3つの販売会社のうち、2社の経営者が同じであることから業務提携が進んだと思われますが、今だけ委員長がこの業界に入った20年前から浮上していた「配達の効率化」がやっと実現してきたのかなぁという気がしています。
 販売店間では共同配達を促進したいけれども、一番ネックになるのが発行本社の担当員だったりします。専売店政策下では「部数を増やすこと」以外に経営改善の道はないわけです。片務契約の問題でもありますが、販売エリアを限定される新聞特殊指定とも関係しています。

 あとは、即売の4月値上げも3社が実施しました。
 神奈川新聞、山陽新聞、函館新聞が1部売り定価を20円引き上げ、それぞれ神奈川(120円)、山陽(130円)、函館(100円)となりました。少しでも増収を図りたい気持ちは分かりますが、即売は昨年秋頃から相当な勢いで下落しています。値上げによる販売不振ではないと思いますが…。
posted by 今だけ委員長 at 23:01 | Comment(3) | TrackBack(0) | 時事ニュース

2010年03月16日

朝日の即売値上げは5月に延期…?

 「新聞情報」からの引用で、4月から朝日新聞が1部売りを現在の130円から、20円引き上げて150円に値上げするというエントリーを書きましたが、5月からに延期されるとの情報が入りました。先のエントリーの値上げ時期を「4月から」を「5月から」へ訂正します。

 もうひとつ朝日新聞に関するネタですが、2月のABC部数で朝日が800万部を割ったことが速報されました。
 朝日新聞社販売担当で中央協委員長を務める飯田真也氏を中心に、販売正常化を推進する動きを強めている朝日新聞。産経新聞と同様に部数整理のタイミングを図っていたのかもしれません。朝日新聞では昨年末に販売店(ASA)との取引契約を新たに見直し、発行本社と販売店の権利と義務を明確化すると発表したばかり。
 「朝日新聞MEDIA DATA 2010」の公称部数が803万1579部ですから、2009年1〜6月平均部数から半年経過して3万部強(▲3.75%)の減紙。通常の企業で考えれば「その程度の浮き沈み」と取られるかもしれませんが、新聞業界は「創刊何周年」などの記念年に「何百万部達成」といった会社の歴史のようなものを背負っているものです。もちろんですが広告費(段単価)の価格設定の問題もあるため、定着した部数の御旗を取り下げることはそう簡単なことではありません。読売もナベツネさんがいるうちは1000万部を割れないのではないかと思います。

 押し紙によってかさ上げしてきた部数を正常化(適正化)できるのは、正直なところ経営者の判断しかありません。配達されることのない新聞をビジネスホテルやファミレスへ無償で提供して、あたかも配達先があるように見せかけて公称部数を守ろうとする販売政策では立ち行かなくなっていくのは当然のことです。
 顧客ロイヤルティをあげていくためにも新聞には「信頼」が一番大切なのだと思います。これは紙面だけではなく、売り方も同じことなのです。

 最近の業界の動きを見ていると、週刊ダイヤモンドで連載中の「ザ・メディア」に何となく近づいているように感じます。
posted by 今だけ委員長 at 19:42 | Comment(4) | TrackBack(0) | 時事ニュース

2010年03月15日

朝日が1部売りを20円値上げ

 日本経済新聞社が今年1月から1部売り価格を20円値上げしましたが、朝日新聞社も4月5月から値上げに踏み切るようです。


 朝日新聞社は4月1日から、1部売り価格を20円値上げし、150円とする。夕刊は値上げしない。近く、関係者に説明する。今年1月1日の日本経済新聞の朝夕刊20円値上げに続くもので、朝日の即売価格の改定は2000年の20円値上げ以来。
 神奈川新聞社も4月1日から、朝刊1部売り価格を16年3カ月ぶりに値上げし、100円から120円にする。同社はこの間、3度(うち、1回は消費税率アップ)、月決め購読料を値上げしたが、1部売り価格は据え置いてきた。(新聞情報3月10日付)

 スポーツ紙を中心に即売が売上不振にあえいでいるわけですが、今回の値上げが収益拡大策になるかどうか注目したいところです。日経は即売部数が多いので増収の可能性もありますが、朝日はどうなのかな?(たまたま同時期に神奈川新聞も20円値上げするそうです)

 確かにページ数で見れば各社が減ページをしているなか、朝日は「be」等の特集も多くページ数を維持しているので、原材料費(広告でペイできているとは思えない)はあまり減っていないと思われます。


 これまで「同調値上げ」との批判を受けてきた新聞業界ですが、護送船団方式の構図が大きく崩れ始めて、戦国時代の世を思わせるサバイバル時代へと変化してきたように感じます。他社(紙)との争いではなく、多メディア社会のなかで自社がどう生き残っていくか―。それぞれの新聞社の経営判断が大きく求められていくのでしょう。


【主要新聞の即売価格】
 ・朝日新聞=150円(45月から)
 ・毎日新聞=130円
 ・読売新聞=130円
 ・日経新聞=160円
 ・産経新聞=100円
 ・神奈川新聞=120円(4月から)


【追記】
 朝日新聞の1部売り価格の値上げが、5月からとなったため訂正します。
posted by 今だけ委員長 at 06:21 | Comment(2) | TrackBack(0) | 時事ニュース

2010年03月10日

印刷部門の合理化が意味するもの

 新潟日報の営業努力なのか、採算割れの印刷工場の縮小が加速したのか…。
 読売、朝日に続いて、毎日新聞の(新潟県内)印刷も新潟日報が受託することになりました。
 以下、YOMIURI ONLINEより引用。


 毎日新聞社は8日、新潟県内で配達している全朝刊約2万7000部の印刷を2012年春から新潟日報社に委託することで同社と基本合意したと発表した。
 両社は新聞の輸送協力についても協議中だ。
 毎日は現在、新潟県内で配る朝刊を群馬県高崎市の関連会社で印刷している。新潟日報への委託に切り替えて輸送距離を短くし、安定した輸送体制を確立する狙いがある。
 新潟日報は、読売新聞東京本社と10年秋から、朝日新聞社と11年春から、それぞれ新潟県向けの朝刊の一部の印刷を受託することで基本合意している。
(3月8日付  読売新聞)

 これまで新潟県内で発行する毎日新聞の印刷は、関連会社「毎日新聞北関東コア」(北関東コア)が行っています。毎日新聞、スポーツニッポン、聖教新聞、公明新聞などが主な印刷紙で、長野、群馬、埼玉(新潟)エリアの毎日系新聞を印刷しています。
 今回、毎日新聞を新潟日報へ委託(すでに聖教新聞は新潟日報で刷っている)するとなると、北関東コアの印刷収入がダウンすることに。実はこの北関東コアは群馬県の上毛新聞も出資しているので、本丸の毎日新聞が信濃毎日(長野)にも印刷を委託するようになれば、上毛新聞の負担増は免れないような気もします。

 輸送体制や販売店業務提携などは協議中とのことですが、輪転機(印刷センター)を建てることで、その近隣エリアを主戦場にして部数拡大を図ってきた販売政策を見直さざるを得ない状況になってきたということです。とはいえ、それぞれの印刷センターに働く人たちの生活もあるわけですから、「ソフトランディング」の基本姿勢で今後の印刷体制を考えてもらいたいものです。


 一方、新潟日報の印刷体制にも関心があります。新聞は「生もの」ですから、速報性は大きく求められなくなったにせよ、最新のニュースを朝刊に入れたいもの。高速輪転機が数台あるとはいえ降版時間がこれまでより繰り上げられるのではないかと思います。やはり地元紙ですから新潟日報の紙面を最終版にするのでしょうが、大手3紙にスポニチや聖教まで含めるとその降版時間の裁き方は容易ではないでしょう。輸送体制や販売店の提携による配達コストまで考えないと物流部門の効率化は図れませんから…。
 今後の動きに注目したいと思います。

posted by 今だけ委員長 at 06:59 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時事ニュース

2010年02月25日

日経電子版が3月23日からサービス開始

 発表から約1年。いよいよ日本経済新聞電子版(WEB版)がスタートします。


 日本経済新聞社は24日、インターネットでニュースを提供する有料の「日本経済新聞 電子版」(Web刊)を3月23日に創刊すると発表した。
 すべての情報が無料だった「NIKKEI NET(日経ネット)」を見直し、一部の情報は購読料を払った会員のみが閲覧できるようにする。日経は「デジタル分野の強化で収益を上げていくことが不可欠だ」(喜多恒雄社長)と、紙の新聞以外の収益源にしていきたい考えだ。
 料金は、電子版のみの購読者が月額4,000円、日経新聞の購読者は月額1,000円。有料会員は、朝夕刊や速報用のすべての記事やコラムなどが見られる。
 約300万部の新聞を発行している日経は、電子版でも早期に約30万人の読者を獲得したいとしている。
(2010年2月25日  読売新聞)

 きのう行われた記者会見では、日経の喜多恒雄社長が「パソコンや携帯電話などデジタル機器に親しんでいる方々にも電子版を通じて良質なジャーナリズムを提供する」と語り、時事通信社も「(日経電子版が)活字離れが進む若年層などの需要を掘り起こし、業績が低迷する新聞業界の再生モデルとなるか注目される」と報じています。
 米国ではWSJ(ウォールストリートジャーナル)を追いかけるように、経営に窮する新聞社がオンラインニュースの課金システムを導入し、しのぎを削っています。「紙」そのものをやめてウェブ新聞へシフトする新聞社も出てきているのですから、日本のビジネスモデルとは大きく違うとはいえ、米国の新聞産業界の状況もも全く無視はできないかもしれません。

 さて、今回日経がスタートさせる電子版はビジネスモデルとしてどうか。ツイッターなどのメディアに書きこまれる反応はというと、「ひと月4,000円は高すぎる(新聞を購読していればプラス1,000円)」という意見が大半を占めているようです。日本人に「情報への課金」がどの程度浸透するのか興味のあるところですが、日経は電子版契約者のターゲット(いわゆる上流階級?)を絞っているので、フツーの生活者がどうこう騒いだところで「そんなの関係ない」といったところでしょうか。それでなくとも15年以上値上げしていない新聞社が企業資産(データベース)をデジタル化して「客単価をあげる」ことは、今後の新聞社の経営にとっても必要不可欠なことだと思います。

 「高い、安い」の論だけでなく、それに見合ったコンテンツが盛り込まれているのかどうか注視したいと思います。私も日経を購読しているので「プラス1,000円」をとりあえず申し込もうと思います。

 ツイッターではこんな“つぶやき”も・・・。

ume_maru.jpgume_maru 日経のWEB版が大分話題になってるようですが、既存の新聞社も既に記事検索データベースという課金モデルのベースは持っていますよね。産経アプリのようなものをイメージしてると高く感じますが、データベースを利用できると言う付加価値で考えれば決して高い料金では無い。



▽日本経済新聞電子版広報部サイト
http://pr.nikkei.com/
▽「メディア企業も技術を重視すべき」日経電子版でブロガーらが討論(日経ITPRO)
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20100225/345031/


追記】
▽「日本経済新聞 電子版」発表で感じる発想転換の難しさ(大西宏のマーケティング・エッセンス)
http://ohnishi.livedoor.biz/archives/51044738.html
日本経済新聞電子版の価格設定から透けて見える日経のホンネA Successful Failure
http://d.hatena.ne.jp/LM-7/20100224/1267021310

posted by 今だけ委員長 at 19:18 | Comment(2) | TrackBack(0) | 時事ニュース

2010年02月22日

とうとう… 電通「2009年日本の広告費」がリリース

 電通が22日、恒例の「2009年の日本の広告費」を発表しました。

 総広告費は5兆9,222億円で前年比11.5%減。注目すべきはこの不況下でもインターネット広告が前年比1.2%増の7,069億円と微増したことなのですが、予想していたこととはいえ新聞広告が6,739億円(前年比81.4%)と大きく落ち込み、ネット広告に追い越されました。
 マスコミ四媒体(5年連続前年比マイナス)のなかでも新聞広告の落ち込みは最も大きく、長年君臨してきた2位の座をネット広告に明け渡す格好になったわけです。

 電通の分析によると「広告収入の落ち込みは新聞社の経営にも大きな影響を与えており、相次ぐ夕刊廃止や新聞社刊の編集・印刷・輸送面での相互提携、ウェブや電子版の有料化、購読料の値上げなど、既存の枠組みを超えた合従連衡やコンテンツの有料化戦略など、業界全体として課題に積極的に取り組む動きが目立った」とありますが、先行している新聞社が取り組み始めたばかりで、全体的な動きにはなっていません。
 一方、インターネット広告費は、媒体費5,448億円の前年比117.0%(モバイル1031億円、検索連動(PC)1,710億円)、インターネット広告制作費1,621億円の前年比100.7%で、7,069億円(前年比101.2%)となりました。ツイッター効果も影響しているようです。


▽ネット向け広告費が新聞上回る 09年、全体の下げ幅過去最悪(47NEWS)
http://www.47news.jp/CN/201002/CN2010022201000452.html

▽電通広報部が配信したプレスリリース
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2010/pdf/2010020-0222.pdf

posted by 今だけ委員長 at 23:39 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時事ニュース

2010年02月11日

朝日新聞が佐賀、大分の夕刊廃止 1日2回のインフラがなくなると…

 朝日新聞西部本社が佐賀、大分県内で発行している同紙夕刊を3月いっぱいで廃止するとの社告が10日付朝刊に掲載されました。きのう昼過ぎに連絡が入っていたのですがアップするのが遅れました。

 社告によると「読者のライフスタイルや要望の変化」に伴う対応ということですが、採算が取れない地域は切り捨てられるという構図は、まさに市場原理なのでしょう。地方紙が完全セット販売をしていない地域では、夕刊の配達コストが大きな負担になります。あまりあてになりませんが昨年12月の日本ABC協会発表によると、佐賀765部(前年比▲83部・90.2%)、大分4,679部(前年比▲226部・95.4%)と、ほとんど採算ラインを割っています。購読層もおそらく市内中心部の官庁や企業関係で占められていると思います。
 これで朝日新聞西部本社管内の朝・夕刊セット版発行地域は、山口県(下関市)と福岡県、それに沖縄県(沖縄は福岡、東京から空輸するため、配達は13時ごろ)ということになります。


 これまで印刷拠点の建設とともに販路拡大を行ってきた朝毎読の全国紙(九州地区でば西日本新聞)。右肩上がりの時代では少々採算が合わなくても拡大路線を続けられましたが、ここ数年の夕刊廃止を分析すると(現在の形態では)すでに夕刊発行はビジネスとして成り立たなくなっていると言い切ってよいのではないでしょうか。


 個人的には、これからの新聞には速報性よりもニュースの解説などが求められてくると思うので、朝刊をやめて夕刊一本にしてはどうかと思うのですが、まだまだ日本人は「朝ポストから新聞を取って…」という習慣が強いのでムリかなぁ。折込チラシも「きょう10時から特売!」など速報性を求めるスーパー系チラシも多いので、やっぱりNGですね。


 販売店からすると夕刊の配達員をリストラしなくちゃいけないという問題もありますが、これまで早朝と夕方の2回(それも毎日)決まった時間帯にエリア内を(新聞配達で)巡回するというインフラがなくなることは、宅配(物流)網を生かした事業展開を進めづらくなると感じます。


▽朝日新聞、大分と佐賀で夕刊廃止へ(読売新聞 2月10日付)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100210-OYT1T00650.htm
▽朝日新聞、大分と佐賀で夕刊廃止 3月31日付で(47NEWS 2月10日付)
http://www.47news.jp/CN/201002/CN2010021001000422.html

posted by 今だけ委員長 at 13:08 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時事ニュース

2010年02月01日

TOKIOが「新!宅急便」宣言

 けさの新聞紙面にヤマト急便が今月からスタートする「宅急便受取指定」サービスの全面広告が掲載されていました。

宅急便.jpg 「宅配から個配を目指す」というこのサービスは、「荷物は家族ではなく自分に渡してほしい」という要望を受けて、宅急便を配達する前に受取人あてにメールで配送予定を通知。ユーザーは希望の受け取り日時と、受け取り場所を自宅やヤマトの直営店、勤務先などから指定できるというもの。日中留守にしている単身世帯などでは、近隣の宅急便取扱コンビニエンスストアに荷物を転送するように指定し、深夜に受け取ることができるそうです。このサービスを利用するためには、受取人が「クロネコメンバーズ」の登録会員であることが条件。

 「宅急便受け取り指定」サービスは、同社が刷新した情報システム「次世代NEKOシステム」による取り組みの第1弾ということですが、宅配ドライバーが持つポータブル端末も運賃と包装資材代の支払いが電子マネー(nanaco・Edy・WAON等)で支払えるシステムを導入するなど、顧客ニーズへの対応とデータベース化に向けて、業界内でも抜きんでたシステム構築(かなり投資したと思います)が進んでいると感じます。


 よく考えれば、このようなシステムを導入することはユーザー重視だけではなく、これまで受取人に会えるまで何度も訪問するという非効率だったドライバーさんの作業の解消にも役立ちます。ドライバーさんの賃金は基本給プラス歩合給なので、管理する側もさほど労働時間(時間外手当が発生しない)を気にしていないのかもしれませんが、ヤマト運輸の従業員の平均勤続年数が、男性6.8年、女性6年という状況からすれば、労働条件の整備(労働時間の短縮)も課題となっていることでしょうし、その辺の改善も視野に入れたシステムなのかなぁと。

 この「宅配から個配」というキーワードは、メディア界でも以前から言われている「マスメディアから個メディア(ソーシャルメディア)」にも通じることかもしれませんね。


▽ヤマト運輸、第7世代システムに300億円投資--木川社長、IT投資ためらわない(ZD NetJapan)
http://japan.zdnet.com/news/ir/story/0,2000056187,20407665,00.htm
▽「宅配から“個配”へ」 ヤマト運輸、受取人が日時と方法を指定できる新サービス(ITmediaNews)
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1001/28/news011.html

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posted by 今だけ委員長 at 19:29 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時事ニュース

2010年01月21日

NYTがオンライン記事を有料化 パッケージではなく単体の記事コンテンツは売れるのか?

 きょうの深夜(日本時間)、ニューヨークタイムズ(NYT)が2011年からオンラインサイトを有料化へ切り替えることを発表しました。

 記事コンテンツを無料配信することでアクセス数を稼ぎ、そのPV数によって広告収入をあげるという新聞社のビジネスモデルは失敗に終わったということです。リーマンショック以前から新聞社サイトの広告収入は大きく落ち込み、記事の有料化に向けた研究がおこなわれてきました。実際には新聞社がその仕組みを研究していたのではなく、ネット企業が依頼を受けて課金システムの開発に取り組んでいました。
 今回NYTが導入する課金システムは、一定本数のオンライン記事は無料で閲読できるものの、それ以上の記事は有料となるメーター型課金システム。また新聞紙の定期購読者には追加料金なしで全てのオンライン記事を閲読できる(メディア・パブより)とのこと。ある意味「紙」への誘導の道も残した格好です。日本では北日本新聞がこれと同様のシステムを導入しています。

 ともあれ、昨年末にルパート・マードック氏がニューズ・コーポレーションの傘下にある新聞社のオンライ記事を有料化にすることを宣言してから1カ月も経たないうちに、今回NYTも有料化の方針を出したことによって、いよいよ米国新聞社は生き残りをかけて新聞紙としてのパッケージ販売から、オンライン記事のコンテンツ販売へ舵を切ることになるようです。

 ただし、米ハリス・インタラクティブ社が米国の成人を対象に行った「新聞オンライン版の有料化」に関する調査によると、77%の人が「有料なら読まない」と答えており、どの程度の効果がもたらされるのか前途多難であることは間違いありません。


 時事通信を昨年末で退社した湯川鶴章氏が編集長を務めるTech Wave(ライブドアが運営)に「日本の新聞社も有料化の後追いは必至であるが、失敗することも必至」とのコラムがアップされています。要約すると

・・・良質の記事を作るためにはコストがかかる。そのコストに見合う収入がほしい。だから有料化したい。有料化を熱心に語る社の言うことは分かる。でもネット企業からの配信料収入もほしい。ネット企業への配信をやめたからといって有料化でそれ以上の収入を得ることが可能かどうかまったく分からない。有料化を熱心に勧める他社が収入を保証してくれるわけでもない。
多くの関係者が「ネット企業への配信を減らして、新聞記事は各社のサイトで有料で読めるようにするしかない」「そうだ、そうだ」と言っているとかいう話も聞こえてくる。でも複数の関係者は僕に対しぼそっと「表向きは賛同しているようには振舞っているけど、この状況でネット企業からの配信料収入を自ら捨てるというのは結構厳しい選択になるんだよね」というようなことを語っている・・・


▽New York Times、有料化の方針を発表=日本の各紙も後追い必至、そして失敗必至(Tech Wave 1月21日)
 http://techwave.jp/archives/51374669.html


 
新聞記事や雑誌の摂取環境が「紙」から電子ブックリーダーなどの携帯端末へどの程度移行するかによって、オンライン記事の有料化のへの理解が深まってくるようにも感じます。まぁこれだけ営利を目的にしない(専門性の高い)個人ブログが出回っている昨今、記者クラブのオープン化の動きも強まってくると思われるので、既存メディアの記事コンテンツは相当魅力のあるものにしないとコンテンツ販売による売り上げの確保は難しいと思います。だからコンテンツをパッケージにして毎朝届けられる「紙」モデルが生き残るのだとは一概には言えませんが…。続きを読む
posted by 今だけ委員長 at 06:35 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時事ニュース

2009年12月24日

新潟日報 今度は朝日新聞を印刷委託、2011年から

 新潟日報社の高橋道映社長は相当な方のようです。

 新潟日報が朝日新聞からの印刷委託を受け入れ、きのう基本合意したとの発表がありました。新潟県版約7万部のうち、約3万部を新潟日報の印刷センターで(新潟市)で印刷するというもので、2011年春から予定し輸送面での提携も検討するとのこと。


 新潟日報は、今年7月に読売新聞東京本社とも2010年秋から印刷委託(県内上・中越地区で発行する読売新聞朝刊の一部約7万部)を合意したことが伝えられたばかり。輪転機の稼働率は上がりますが、降版の時間組など輪転機を増設しなくとも3紙(確か聖教新聞も刷っていたような)回して、販売店への店着時間は大丈夫なのかなぁと勝手に心配しています。


 今回の印刷委託の共同通信配信(47NEWS)では、編集面での協力について“くぎ”を刺しているような印象を受けます。

      朝日新聞が新潟日報に印刷委託へ 11年春から
 朝日新聞社と新潟日報社は22日、新潟県内に配達している朝日新聞の一部約3万部の印刷を新潟日報に委託することで合意した、と発表した。2011年春からで、輸送の委託についても実施する方向で検討する。双方ともに経費を節減するのが狙いだ。
 朝日新聞は現在、約7万部を群馬県藤岡市の日刊スポーツ印刷社の工場で印刷しているが、この一部を新潟日報の印刷センター(新潟市)で印刷する。長距離輸送を解消でき、豪雪などの影響を受けにくくなる利点もある。

 編集面での協力については「ありえない」(新潟日報の高橋道映社長)としている。


 先のエントリー「毎日新聞の共同通信加盟について考える」―でも書きましたが、共同加盟社はほとんどが大幅な減収という状況の中、共同通信への出資金も相当な負担になっています。今回のようなANY連合との提携を機に印刷部門だけに捉われず、さまざまな提携を進める地方紙が出てくるかもしれません。そして、共同通信よりも安価であればANY連合から配信を受けたいという経営者が出てこないとも限りません。その辺の動きを察知して“くぎ”を刺したのかなぁと行間を読んでしまいました。

 流通部門の提携によって効率的な経営を目指すこと自体、悪いことではないと思いますが、やはり編集部門はそれぞれの新聞社(記者)の数だけ存在するから、紙面での競争が健全に行われジャーナリズムが育まれ、それにより読者の利益につながるのだという視点を失ってはならないと思います。
 この辺りの考えについては、ニュース・ワーカー2を運営している美浦克教さんが問題点を整理されています。
▽再び、生き残りが自己目的化しないことを期待〜やはり「見られて」いる新聞社間の提携
http://d.hatena.ne.jp/news-worker/20091223/1261543986


 結局、どこまでを新聞社の仕事として守り、どこまで(印刷・発送・販売店)を提携して経営(取材網)を守るのかという話だと思うのです。ただし、重要な点は、大半の新聞社は当面「紙」を基本に販売や広告収入で経営を維持させていくしかないと思うのですが、下流部門(印刷・発送・販売店)の提携が上流部門(編集)の人たちの果実を得るため(下流を犠牲に賃金を守る)となってはいけないということです。そうでなくとも印刷部門は別会社化され、さらに提携(作業量が増える)が進められても人員が増えないのでは、労働強化になるだけです。


 効率化にも限界があり、机上の“へ理屈”によって無謀な提携が設計されてしまうと下流部門は崩壊してしまいます。


▽朝日新聞社、新潟日報社に委託印刷 輸送協力も協議(朝日新聞 12月22日付)
http://www.asahi.com/shimbun/release/20091222b.html
▽新潟日報社 朝日新聞も受託印刷3万部、2011年春開始予定(新潟日報 12月22日付)
http://www.niigata-nippo.co.jp/news/pref/7318.html

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2009年12月11日

備忘録:西日本と佐賀が輪転機貸借合意/朝日放送と朝日新聞が提携強化

 恐竜も動かざるを得なくなったのか…。

 相次ぐ提携にホールディングス化。新聞産業はかつて経験したことのない混迷の時代に立ち向かっています。その動きの速度や方向性の成否については、米新聞界との比較だけでは済まないと思います。一番心配しているのは業界内部の人間であることは間違いありません。
 良質のジャーナリズムを守るために経営問題は無視できません。がんばりましょう。

【備忘録として】
西日本新聞と佐賀新聞が輪転機貸借で基本合意
(産経ニュース 2009-12-10)
 西日本新聞社(福岡市)と佐賀新聞社(佐賀市)は10日、西日本新聞社製作センター(福岡市)の輪転機1セットを平成22年4月から23年3月まで佐賀新聞社に貸与することで基本合意したと発表した。競合関係にある新聞社同士が印刷で協力するのは、災害時の相互援助協定などを除けば異例。
 発表によると、西日本新聞社は経費削減策の一環として製作センターに現在7セットある輪転機のうち1セットを22年4月から休止する予定だった。一方、輪転機の更新時期を迎えていた佐賀新聞社は本社にある現在の輪転機と新しい輪転機を入れ替えるまでの間の代行印刷先を探していた。
http://sankei.jp.msn.com/economy/business/091210/biz0912101805028-n1.htm


朝日放送、朝日新聞社と提携強化で合意 株式を相互保有

(アサヒコム 2009-12-10)
 朝日新聞社(秋山耿太郎〈こうたろう〉社長)と、関西を基盤とする朝日放送(渡辺克信社長)は10日、新しい事業提携の枠組みについて合意した、と発表した。厳しさを増すメディア間競争を勝ち抜くため、提携によって経営基盤を強化するとともに、共同取材や人的交流の拡大、関西文化を発信する事業でのタイアップなどを進めていく。
 広範囲の提携の基礎とするため、朝日放送は、朝日新聞社の村山美知子社主が所有する朝日新聞社株式のうち、発行済み株式総数の2.31%に当たる7万4千株を同日取得した。取得額は約35億円。朝日新聞社は朝日放送株の約15%を保有する筆頭株主だが、これまで朝日放送は朝日新聞社株を保有していなかった。今回の取得で両社は株式を持ち合う関係になった。
 両社は同日付で、両社社長を共同委員長とする「協業推進委員会」を設けた。その下に、「報道」「スポーツ」「文化事業」「ビジネス」という四つのワーキンググループを置き、具体的な協業内容を詰めていく。
http://www.asahi.com/business/update/1210/OSK200912100084.html
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2009年12月05日

毎日新聞との包括提携 横やり入れた一国一城の主

 きのうの話になりますが、11月26日に発表(共同記者会見)された「毎日新聞社と共同通信社、共同通信社加盟社による包括提携」の一部訂正、説明の追加について、共同通信社が記者会見を開きました。共同通信加盟社(地方紙)と毎日新聞社の包括提携にすべての加盟社が合意したものではなく、具体的な協力・提携については個々の加盟社が独自に判断する問題だということをあらためて発表したというものです。
 ※47NEWSより http://www.47news.jp/CN/200912/CN2009120401000839.html

11月26日合同記者会見の一部訂正 2009-12-4.jpg 毎日新聞社が来年4月から共同通信社に加盟し、共同加盟社に加盟する新聞社とも▽紙面について三者間によるキャンペーンの展開やシンポジウムの開催、各社の論説委員による対談、また紙面内容についてチェックしてもらう外部の第三者機関の議論の場を合同開催するなど、これまでにない試みや協力を進める▽毎日新聞社は共同通信社加盟社と協議の上、地域面の記事配信で協力を進める▽スポーツ事業や文化・展覧会事業の共催など三者間で事業面の協力を進める――とし、
今後のテーマとして▽事業協力、紙面協力▽紙面制作システム、新聞の印刷委託▽新聞販売網の効率化などを進める――としていました。

 共同通信社が制作システムや販売網の効率化まで言及するのかぁ…と考えながら、包括提携を伝える翌11月28日の紙面を読むと、「毎日新聞が加わったことで地方紙を合わせると5000万部の勢力となる」とANY連合を意識したような印象を持ちました。いわゆる共同通信連合があらゆる分野で業界の未来を切り開くかのような…。それに毎日新聞と包括提携という話だけが先走って、共同通信社理事会長の多田昭重・西日本新聞会長がコンセンサスを取りあぐんだことが火種の元になったようです。

 多くの地方紙経営陣がお気に召さなかったのでしょう。一国一城の主としてプライドだけは人一倍高い地方紙経営者が、「そんなこと聞いてない」と激怒して、共同通信社と理事会を突き上げただと思われますが、わざわざ記者会見までする必要があったのか疑問です。
 「共同にけじめを付けさせろ!」となったのかもしれませんが、誰に対して一部訂正と説明の追加をするのか意味がわかりません。要は先走った包括提携ニュースを共同配信の記事を使って掲載したため、事実と異なっているものを紙面を通じて読者へ伝えてしまったから、その記事を訂正するためにも記者会見をして共同通信がそのニュースを配信する必要があった…?のでしょうか。

 多くの読者にすればそんなこと大した問題ではありません。内輪のゴタゴタ劇に紙面のスペースを割くくらいなら、もっと載せることがあるでしょうに。そもそも、26日に共同通信から配信された記事が誤解をあたえるような記述だと判断すれば、編集段階で手直しするのが“編集権をかざす”新聞社の仕事じゃないのでしょうか。お粗末だなぁ…

 今後の新聞産業をまともに考えれば、さまざまな提携による効率性を求めていかなければならいないと先行かないと多くの新聞関係者は思っていると思うのですが、今回の毎日新聞社との連携を不快に思っている地方紙経営陣は、ほかに収入をあげる策があるの?と言いたいです。毎日新聞の受託印刷で輪転機の稼働率を上げようと思わないのかなぁ。少なくてもデメリットはないはずだと思うのですが…。それともANY連合に加わりたいと思っているのかなぁ
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2009年11月30日

無念 60年の歴史に幕を閉じる内外タイムス

 とても残念なニュースが入ってきました。

▽夕刊紙の内外タイムス社自己破産 経営悪化で負債26億円(47NEWS)
http://www.47news.jp/CN/200911/CN2009113001000910.html

 労働組合の主導で会社再建に取り組んでいた内外タイムスが30日、東京地裁に自己破産を申請しました。負債総額は26億7700万円。これまでの情報をまとめると新聞発行は今日付けで停止し、嘱託を含む約50人の従業員も解雇を通告されるということです。
 新たな経営体制となり9月から題字を内外タイムスから「リアルスポーツ」へ変更し、たばかりだったのに…。


 2006年7月、内外タイムスの経営者が会社解散を従業員へ勧告するという事件がありました。組合の手で会社再建を目指すか、労働債権をできるだけ回収して再就職のあっせんに動くか…。悩んだ末の結論は「会社再建」でした。新聞を発行したい、多様な言論を守るための責務であると従業員自身があえていばらの道を選んだのです。

 会社再建といっても相当な苦労を乗り越えてきたと思います。労働組合が仲間の労働条件を削りながら会社再建計画を作るという荒行は並大抵のことではありません。
 ギリギリの人数で1人3役をこなしながら新聞発行を続けてきた内外タイムスの仲間のことを思うと、いろいろな思いがこみあげてきて正気ではいられません。とても無念です。

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2009年11月26日

新聞の違いは題字だけじゃない/毎日新聞社 58年ぶりに共同通信社へ再加盟

 毎日新聞社と共同通信社は26日に会見を開き、来年4月から共同通信に加盟すること、共同通信に加盟する地方紙(10数社とのこと)とも記事配信などの包括提携をすると発表しました。

 以前から、経営難に苦しむ毎日新聞が地方支局の縮小に伴って共同からの配信を再開するのではと囁かれていたのですが、実際に動き出しました。
 ネットメディアのJ-CASTニュースは先週20日、「毎日新聞『共同通信加盟』に動く これでリストラ進むのか」という記事を配信。経営危機を乗り越えるためのリストラ策として共同への再加盟を決断したと結論付けています。
 今日の会見で毎日新聞社の朝比奈社長は「提携に伴うリストラは考えていない」と述べていますが、すでに地方の一人支局を約20カ所廃止する方針を出しており、やはり取材拠点をスクラップせざるを得ないほど経営内容が悪化しているのだと思います。


 アサヒコム
では「(毎日が)共同―地方紙連合と協力関係を結ぶことで、生き残りを目指す」との記事を配信していますが、朝日新聞や読売新聞も台所事情はそれほど潤沢ではないはず。朝日新聞の内部留保レベルからすれば大した金額ではありませんが、2010年3月期中間決算で営業損失を約56億円(前年同期▲73.2%)計上するなど、どこの新聞社も生き残りをかけてさまざまなリストラ策を模索しているに違いありません。


 全国紙という定義は詳しくわかりませんが、一般的に朝日、毎日、読売、日経、産経の5紙のことを指します。全国で新聞発行できる体制(印刷拠点・販売店網)を整えれば全国紙といわれるのでしょうけれど、それでは味気ないような気がします。全国紙が地方紙の独壇場のエリアに取材拠点を置き、地方紙とイイ意味で紙面競争することによって緊張感が育まれ紙面研磨がされる。それは読者にとって間違いなく有益なことでしょう。よく、全国紙と地方紙の両方を購読して記事の違いを考えてみろと、先輩に言われたものです。新聞の違いは題字だけじゃないと。

 自宅で毎日新聞を購読しているんですが、共同配信や一部の地方紙と記事配信の提携をすることで、やっぱり記事が画一化されていくのだろうなぁと思いました。確かに新聞紙面のコンテンツは生ニュースばかりではないけれど、読者の関心が一番高い地元ニュースは記者の事象をとらえる感性というか、記事化されるまでの取材の積み重ねが感じられる記事に感動するわけです。さらに、ほかの新聞と読み比べると記者力というかバイタリティーある記者の集団のようなものを感じて毎日を購読していたのですが…。取材拠点の縮小はやはり読者の新聞離れをより加速させるのだと思います。
 「発表ものは共同配信を活用し、脱発表ジャーナリズムで分析・解説力を強化する」と提携の説明をする毎日の朝比奈社長。一方、「ネットメディアがその肩代わりをするからいいではないか」という見方も増えているのですが、どうかなぁ。

 もうひとつ、地方紙にとっては営業収入が下がっている中で、共同通信への出資金が重荷になっています。毎日新聞が加盟することで共同通信の財政基盤が強固になる(地方紙の出資金が軽減される)という意味では、地方紙としては歓迎ムードなのかもしれません。

【追記】11月27日 8:35
 毎日新聞の共同加盟について、今朝の朝刊の解説を読んでみると毎日新聞は1面と第2社会面でスペースを割き、「提携は時代の要請」との見出しを付けています。一方、朝日新聞も第3社会面で部数の推移(ABC協会資料)や河内孝氏、池上彰氏、田島泰彦氏(上智大教授)のコメントを引き出しています。地方紙は共同配信原稿を紙のまま掲載しているのだと思います。読売は今のところ一切取り上げていません(読売オンラインでも見当たりません)。
 「記者がゆとりを持って勉強し読み応えのある記事を書くようになるなら、読者としても歓迎すべきこと(池上氏)」との期待や「通信社に頼れる点は頼って取材態勢の合理化を図り、調査報道なり独自の問題意識によるキャンペーンなりにエネルギーを注ぐ、本来のジャーナリズムの役割を見出す機会になればと期待している(田島氏)」と評価する意見もあるようです。

 結局はリストラ策なのですが、これまでの新聞ビジネスモデルの転換が迫られている状況のなか生き残るためには、スクラップアンドビルドをしながら企業規模の適正化を図っていかざるを得ません。良質なジャーナリズムの継続は必要なことです。毎日新聞の労働者の皆さんには、モチベーションを下げないで紙面研磨に努めていただきたいものです。

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posted by 今だけ委員長 at 22:47 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時事ニュース

2009年11月01日

北日本新聞社が夕刊発行を年内で廃止

北日本新聞、夕刊休刊へ
 
12月28日付で富山県の地方紙・北日本新聞社(本社・富山市、河合隆社長)は31日の夕刊紙面で、12月28日付をもって夕刊を休刊するとの社告を掲載した。ライフスタイルが変化しインターネットも普及する中、夕刊の発行部数が伸び悩んでいるのが理由で、代わって朝刊紙面とホームページを充実させるという。
 同社によると、夕刊の発行部数は約3万2千部(今年9月現在)。1940年8月に発行を始め、戦中に一時休刊したが、55年4月に復刊した。ピーク時には約5万6千部を発行していたという(アサヒコム 2009年10月31日 朝日新聞)


北日本新聞社、夕刊を休刊へ

北日本新聞社(富山市)は31日付の夕刊1面に社告を掲載し、夕刊を12月28日付で休刊すると発表した。
 ライフスタイルの変化とインターネットの普及などを理由に挙げ、「今後は朝刊とホームページそれぞれの特質を生かした情報提供を目指す」としている。
 同社経営企画室によると、夕刊は朝刊と同じ1940年に創刊された。戦時中の44年に一時休刊したが、55年に復活。現在は富山県内で約3万2000部を発行している。朝刊は約24万9000部(ヨミウリオンライン 2009年10月31日  読売新聞)

 北日本新聞が夕刊を廃止するとか?という情報が入ったのが今年8月のこと。
 昨年は北海道地区の毎日新聞、秋田魁新報、今年に入り沖縄の琉球新報、沖縄タイムス、南日本新聞などがこれまで夕刊を廃止してきたので、あまり驚くこともないのですが、夕刊廃止の動きはさらに加速しそうです。
 沖縄の2紙は完全セット版から夕刊廃止の決断をしましたが、朝刊と夕刊の部数差が大きい地方紙(河北、信濃毎日、新潟、岐阜、北国、山陽、神戸、中国、徳島、熊本日日)などの動向が気になります。
 夕刊発行を続けることによって多くの新聞社が経費割れをしていると聞いていますが、カタチを変えた夕刊の可能性はないものなのでしょうか。夕刊を廃止すると、間違いなく売上は下がります。販売収入だとそれぞれの規模にもよりますが、北日本新聞社クラスでも販売収入の約15〜20%が落ちるでしょう。広告収入でも「夕刊の広告はなかなか取れない」と言いつつ、年間「億」単位の収入がなくなりわけです。でも赤字なのだから、廃止すれば収益性はあがるはずなのですが、紙代などの制作費はカットできても人件費を急速に削減することは無理な話です。



 「夕刊廃止」はなぜか隠密に進められるケースが多く、廃止の社告も2カ月前からとか「突然」発表されることがほとんどです。
 販売店からすると、「廃刊するってわかっているなら、どうして早く教えてくれないの」という不満がわき起こります。せめて1年前とか…。夕刊の配達員を雇用したのに1カ月もたたないうちに廃刊が決まった―とは沖縄タイムスの方の声…。
 配達コストが抑えられる一方、別な問題も派生します。販売店に勤める配達員はもちろん地域住民であり、読者でもあります。夕刊廃刊によって販売店の手足となって地域とのつながりを支えてくれた方々との雇用契約も切れてしまいます。「配達をしていることで、読者を紹介してくれたり義務的に新聞購読をしてもらっていた配達アルバイトの方々の帰属意識的なものが崩壊し、退社とともに新聞をやめる」という事例も販売店関係者から数多く紹介されています。

 夕刊発行を続けてもらいたいと願っているのは、販売店とて同じです。ですが営業努力だけでは部数を維持することすら難しいこのご時世。拡材(オマケ)にもそっぽをむかれてきている昨今、悩みはつきません…。

posted by 今だけ委員長 at 09:26 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時事ニュース

2009年10月14日

今度は朝日と中日が相互委託印刷を提携

 またもや大手新聞社同士の印刷部門の業務提携(相互委託印刷)のニュースが飛び込んできました。

朝日、中日が新聞印刷で業務提携 2011年春から相互委託/47NEWS
朝日新聞と中日新聞が相互委託印刷で提携/朝日新聞
朝日、中日が新聞印刷で業務提携 2011年春から相互委託/中日新聞
※中日は自社ネタなのに共同配信の記事を掲載しています。

 朝日新聞社と中日新聞社が、2011年春をめどに新聞を相互に印刷委託をする業務提携を合意したと発表。

 朝日新聞が、京都市と愛知県北名古屋市の印刷センターで刷っている石川、福井、富山県向けの朝刊計約3万4千部を中日新聞印刷センター(金沢市)へ委託。中日新聞は、神奈川県や静岡県などで発行する東京新聞の朝夕刊計約15万部を朝日新聞印刷センター(川崎市)で印刷するようです。


 相互のメリットはコストカット。印刷部門の大掛かりなリストラによって取材体制を守るという経営者の言い分は聞こえがよいのですが、印刷部門の労働者の雇用はどうなるのか心配です。確か東京新聞労働組合(中日新聞には中日新聞労組と東京新聞労組の2つの組合がある)の組合員の大半は印刷職場だったはず…。

 元毎日新聞常務の河内孝さんは、「正常販売のための抑止力として、もうひとつの『核』を作って対抗するしかない」と、毎日、産経、中日の三社連携について著書「新聞社−失われたビジネスモデル−」のなかで指摘しましたが、先に印刷部門の提携を発表した読売と新潟日報の動きをみる限り、「納まるところ」という予見はないということでしょう。
 全国紙の戦略は地理的な問題よりも、まだ体力がある地方(ブロック)紙と手を組むという感じがしますし、地方紙もオリンピック開催地の誘致合戦のように全国紙に対して受託印刷をトップセールスしているのかもしれません。


 今月1日に発行された「新聞研究No699」(日本新聞協会)に、新潟日報の高橋道映社長が「新たな協調モデルへ」という論文を寄稿しています。「当社の販売史上、全国紙との戦いにおいて最も激しく敵対した相手が読売であった。販売戦線において最も激しく渡り合った手ごわい相手だからこそ、協調の意義がある。またそれだけに過当販売競争と決別への誓いも強い。委託、受託の関係はお互い『信頼』なくして成立しない」と新聞経営も過去の遺恨を引きずらず、新聞業界の環境変化へ対応していくべきだと述べています。

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2009年09月16日

民社国連立内閣が発足 官僚よりも米国とたたかえる布陣なのか…

 きょう、民主党の鳩山由紀夫代表が第93代、60人目の首相に選出され、民社国の連立内閣が発足しました。きのうまで、各メディア報じていた閣僚予測とほぼ同じですが、長妻昭氏(厚生労働省)と仙石由人氏(行政刷新担当相)のポストが入れ替わったくらいでしょうか。

 新しい閣僚のなかで直接話をうかがったことがあるのは福島瑞穂さんだけなので、そのほかの方は著書やテレビで話されることをイメージするしかありませんが、どうなのでしょう。官僚というか米国(ロックフェラー)とたたかえる布陣なのでしょうか…。
 Yahoo!「みんなの政治」で行っている新閣僚の評価が意外とオモシロいです。
http://seiji.yahoo.co.jp/close_up/073/detail.html


 一部のブロガーなどは、「民主党が政権を握ると新聞をはじめとする主要メディアの既得権が温存される」という趣旨の主張が多いように感じますが、私はまったく逆ではないかと感じています。
 きのうのブログにも書きましたが、鳩山首相は「首相官邸における記者会見の開放」を明言していますし、民主党が7月にまとめたマニフェストに「(テレビ局の免許などに関連する)通信・放送行政を総務省から切り離し、独立性の高い『通信・放送委員会(日本版FCC)』を設置する」と明記されていることを見れば、既存メディアに対してそう甘くない。民主党議員で今回の衆院選で3選を果たした近藤洋介氏(山形2区)も新聞特殊指定の撤廃論者ですし…。


 先月、8月26日付の新聞情報(新聞情報社発行)に再販制度や特殊指定の必要性や消費税の提言税率などに関するアンケートのまとめが載っていました。

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2009年09月02日

日経よ お前もか…/広告激減に苦しむ新聞産業

 日本経済新聞社の2009年12月期中間決算が1日、連結決算をしているテレビ東京(親会社の決算に関するお知らせ)から発信されました。
 以下、アサヒ・コムより引用


 日本経済新聞社が1日発表した09年6月中間連結決算は、本業のもうけを示す営業損益が8億5千万円の赤字(前年同期は130億円の黒字)、純損益は55億円の赤字(前年同期は59億円の黒字)となり、連結決算の公表を始めた00年以降では初の赤字となった。新聞や雑誌の広告収入に加え、インターネットの情報サービス収入も落ち込んだことが響いた。売上高は前年同期比14.7%減の1586億円だった。


 広告収入の落ち込みは予想していましたが、「インターネットの情報サービス収入も落ち込んだことが響いた」と解説されています。同社ネット部門の稼ぎ頭だった「日経テレコン21」が減収したのかなぁ。契約件数が激減したとか…。
 同社は、来年春以降に電子新聞を発行することを発表していますが、新たな収益基盤となり得るのか注目したいところです。

(参考資料)
■日経新聞、初の赤字 広告やネット収入減 6月中間決算(アサヒ・コム 9月1日)
http://www.asahi.com/business/update/0901/TKY200909010448.html
■赤字に転落した日経新聞の2009年12月期中間連結決算をグラフ化してみる(Garbagenews.com 9月2日)
http://www.garbagenews.net/archives/981371.html
■日本経済新聞社 2009年12月期中間決算内容(テレビ東京 9月1日)
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120090901095115.pdf


 広告収入の激減が、新聞社のみならずマスメディア産業の経営基盤を揺るがしていることは周知の通り。日経広告研究所は09年度の国内広告費の予測について、今年1月に公表した「前年度比2.9%減」を大幅に下方修正し、「前年度比15%減」との予測を打ち出しました。特に新聞と雑誌の落ち込みが大きく、新聞が21.3%減、雑誌も23.3%減という予測です。「衆院選の特需もあまり効果はなく、インターネット広告の成長も鈍化している」と指摘され、この厳しい状況は2010年まで続くと結論付けています。

 民主党へ政権が代わっても将来的な生活不安は拭えないため、消費の低迷は続くのでしょう。経済が活性化しない限り、広告費の回復は期待できません。これから先、新聞産業をどう舵取りしていけばよいのか…。残念ながらダウンサイズをしながら、販売収入が下がらない努力をしていくしかありません。そのためには紙面のカスタマイズも必要視されてくると思います。

 今年3月22日付けの朝日新聞に掲載された「新聞よ、どこへいくのか」の特集で、「新聞が生き残るためには何が必要だと思いますか?」の問いに対して、イラストレーターのみうらじゅん氏がこうコメントしていました「今を耐える勇気」。
 朝日や日経が目指すメディアコングロマリット路線は、時代の趨勢かもしれませんが、今の厳しい状況を耐えながら新聞本来の役割を担っていくことが見直されてくると思っています。

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2009年08月03日

ウェブへ舵きる新聞 オモシロイの先にあるものは…

 新聞業界は先週末からいろいろな動きを見せています。
 08年3月期決算では各新聞社とも減収減益となり、厳しい経営状況であることは間違いありませんが、まだまだ全国紙をはじめ各新聞社にはパワーがあるようです。しかし、その反転攻勢の取り組みがウェブ部門でしかないというのも時代の流れなのでしょうか…。
 斜陽化する新聞産業ですが、新たなビジネスチャネルを求めて果敢に挑む勢力と、「集中と選択」を合言葉に経費削減に奔走する陣営は、イソップの「ウサギとカメ」のようです。ただし、各新聞社とも“途中で寝ることなど許されない”状況にありますから、見えないゴールに向かって走り続けられる企業体力こそが、その勝敗(なにを持って勝ち負けかの定義も曖昧ですが)を大きく左右するのかもしれません。


◇産経新聞「ウェブ面」新設 生き残りかけネットに活路
http://www.j-cast.com/2009/07/30046368.html
 株式会社フジ・メディア・ホールディングス入りを目指し、「押し紙」の整理をはじめている(早期退職制度で人員のスリム化にも着手)産経新聞が、毎週木曜日の紙面に「Web版」を新設しました。7月30日の紙面は、ラテ面に「ニコニコ動画」の番組表を掲載するなど、かなりインパクトがありました。
  産経.jpg
 肝心のWeb面はいまひとつか、という感じですが、一般的な(と思われる)幅の広い新聞購読者層向けの記事としては「わかりやすい」のは確かです。Web面の新設で、これで新聞を読まないネット世代が産経新聞を購読するとは思えませんが…。感心したのはウェブファーストを掲げる産経と振興ウェブ企業とのつながりです。ご祝儀広告とはいえ、あまり紙面広告を出さないウェブ企業(ミクシィ・マイクロソフト・サイバーエージェント・ドワンゴ)から全5段の広告を取ってくるあたりは、さすが新聞業界の切込隊長(勝手に言ってますが)です。

◇朝日新聞社、ユーザー参加型のケータイ向け情報サイト「参考ピープル」β版
http://www.asahi.com/digital/bcnnews/BCN200907310011.html
 7月1日、米CBSのウェブ事業部門であるCBS インタラクティブと、同社日本法人のシーネットネットワークスジャパンが運営するITビジネスの専門サイト「CNET Japan」「ZDNet Japan」の事業を9月から引き継ぐと発表した朝日新聞が、ケータイ向けのSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)で、Twitter(ツイッター)のようにテーマに対して150文字程度の文章を投稿する「ミニブログ」と、気になるサイトをほかの利用者と共有できる「ソーシャルブックマーク」が主な仕様とのことです。勝手サイト同様に広告モデルを収入の柱とし、3年後の利用者を100万人と想定、その場合の売り上げは2億円と試算しているようです。ビジネスになるのかなぁとも感じますが。後発部隊ならではの「イイとこ取り」が果たしてどんな展開を見せるのでしょうか。

◇「秋田の活性化の一助に」 弊社、地域SNSをオープン

http://www.sakigake.jp/p/akita/news.jsp?kc=20090803j
 佐賀新聞(ひびの)、河北新報(ふらっと)、新潟日報(アメカゴ)、紀伊民報(みかん)、そして朝日(参考ピープル)に続き、秋田魁新報社によるSNS「commit(こみっと)」が本日(8/3)スタートしました。同社の友人から「今度こんなことやるよ」とうかがっていたのですが、昨年の夕刊休刊から10カ月で新聞販売全国フォーラムやら何やらで、忙しかったこと思いますがやっとできましたね○○さん。さっそく、今だけ委員長も登録しました。


◇ブラウザから読める電子新聞販売サイト 地方紙など8紙でスタート
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0908/04/news014.html
 新聞社向けの画像配信システムを手掛けるウェイズジャパン(東京都新宿区)が3日、電子新聞販売サイト「新聞オンライン.COM」をオープンしました。地方紙や業界紙など8紙からのスタート。
 「立ち読み」もできるので、1面トップをチョイスするのにも役立ちます。会員登録をして、読みたい紙面の購入はカード決済(100円から)なので手軽で簡単。ですが小生はやっぱり「紙」の方がいいなぁ…。

 今だけ委員長的には、やっぱり「紙」を武器にした攻めを考えたいものです。販売労働者の皆さん、がんばりましょう!

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2009年07月16日

読売新聞と新潟日報が委託印刷で合意

 読売新聞東京本社と新潟日報社は、新潟県内に配達する読売新聞朝刊の一部約7万部を、2010年秋から新潟日報社の印刷センターで印刷することで基本合意した。読売新聞社が地方紙へ印刷を委託するのは、茨城新聞社、十勝毎日新聞社に続いて3社目。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090715-OYT1T00755.htm


 きのう発表された読売新聞東京本社と新潟日報社の印刷部門の業務提携は、地方紙にとって朗報なのか、それとも疑心暗鬼が強まるのか―を考えてみたいと思います。

 新聞社の印刷、販売の業務提携は、ANY連合が先陣を切って取り組み始めていますが、今回の新潟日報との業務提携で「ANYvs地方紙」の構図が弾力的になったと感じます。
 新聞協会長として新聞各社と協調路線を打ち出したい内山斉氏(読売新聞グループ本社社長)の戦略もあったのではないかと見ています。一部には、内山社長と新潟日報の高橋道映社長が日大OBつながりで今回の業務提携に至ったという話もあるそうです。

 委託印刷の業務提携は、これから加速すると思われますが、同じ輪転機で刷るのなら発送、配達もセットにしないと作業効率、経費的な効果は半減します。委託印刷をするなら流通部門も提携するのが最適なのですが、今回の新潟のケースは上越、中越地区のみということです。
 新潟市内は読売の専売店が頑張っている?のかわかりませんが、新潟日報販売に配達まで委託する決断ができなかったのでしょう。山間部が多い上越と中越は配達コストもかかるので、とりあえず部数増の期待薄なエリアから提携が始まったと思われます。


 今回の業務提携で、地方紙が疑心暗鬼になっているのではないか―との見方もありますが、多くの地方紙は営業収入がマイナスしていますから、立派な輪転機の稼働率(聖教新聞だけでは物足りない)を高めたいと思っているはずで、提携に賛成する経営陣が多いはず。朝日、読売からアクションがあれば「願ってもないこと」と思っているかもしれません。以前のように編集系の方が騒ぐことはないでしょうから。

 ですが、上記で述べたように流通部門も一緒に考えないとスケールメリットは生まれないので、配達委託の提携までやれるかどうかが、今後のポイントだと思います。

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2009年05月02日

電通 約100年ぶりの赤字

 けさ(5月2日付)の日本経済新聞14面に「電通、初の赤字に」という記事が掲載されていました。ほかの新聞には掲載されてなかったようです。
 ひと月前に毎日新聞が「
電通:新たに408億円の特別損失 最終赤字の可能性も」の記事を掲載しています。電通が408億円の特別損失を計上し、従来の最終損益が110億円であることから最終赤字に転落する可能性もあると伝えていましたが、連結ベースで200億の赤字を計上することになりそうです。世界一の広告会社「電通」が赤字を計上するのは100年ぶり。


(日本経済新聞から引用)
 売上高は前の期8%減の1兆9千億円程度だったようだ。大部分を占める電通単体の売上高が1兆474億円と9%減にとどまった。とりわけ、新聞やテレビなど「マス四媒体」向けの広告取扱高が9%減り、5年ぶりに1兆円を割り込んだことが大きい。
 営業利益は36%減の360億円程度とみられる。販管費はなどを抑制したものの、大幅な減収による下ね気分を補えなかった。
 特別損失に投資有価証券評価損510億円を計上。フランスの広告大手、ピュブリシス(株式で償還される債権)で約380億円、ジャスダック上場のオプトで約110億円の評価損が発生した。
 電通は簿価に対して30%以上、価格が下落した状態が6カ月以上の下落した銘柄を減損処理するのが一般的だが、保守的な処理で今期以降の評価損発生リスクは減る。
 赤字転落を踏まえ、期末配当を従来予想の20円から減らすことも検討しているもようだ。
 単独の最終損益も赤字で、1901年の創業直後の1時期を除き、約100年ぶりの赤字決算と見られる。

 元日経広告研究所専務理事の森内豊四さんからは、「電通の200億円の赤字は予想より少なく、先に発表された博報堂DYも含め広告は総崩れだ」との連絡がありました。加えて、「グーグルやヤフーの売上高が伸び悩み」や「ネット広告減速」などの記事を指し、「ネットならうまくいく、といわんばかりの論調は本当に眉唾物であることがはっきりしてきた。この数年、日経を含め各社とも『紙とネット』をモットーにしてきたが、それは経営戦略になりえないことを意味するもの」とのご意見もいただいています。

 新聞社では、広告収入の落ち込みが経営に大きなダメージを与えていますが、「ネットが何とかしてくれる」と言わんばかりにクロスメディア戦略へ取り組む新たな部署を立ち上げて、広告収入の引き上げに躍起になっています。しかし、日本経済自体がひっ迫している状況下では、効果をあげるのは至難の業といえます。なにせ、あの電通が100年ぶりに赤字になったのですから…。

【追記】
今週11日に電通の2008年度決算が発表されました。
http://www.dentsu.co.jp/ir/marketing/pdf/FS2008-4QJ.pdf

マス四媒体の総崩れが大きな要因ですが、新聞の前年マイナスを圧縮しようと電通も躍起になっていたみたいで、なんとか80.8%とマイナス8割台をキープ。

しかし、そのあおりを受けてか、新聞の電通扱い4月単月売上は、前年比71%という惨憺たる結果です。
http://www.findstar.co.jp/news/syosai.php?s=001519

マスメディア広告の総崩れ。折込広告も今後予断を許さない状況となりそうです。

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2009年03月03日

著作物再販制度 所管が公取委から消費者庁へ?

 3月2日付の文化通信によると公取委が2001年からこれまで8回行ってきた「著作物再販協議会」を今春設立予定の消費者庁との管掌分担に配慮して、今年の開催は見送る(公取委としての招集は行わない)と関係者へ伝えたとのこと。

 開催しない理由については、公取委の経済取引局取引部企画課のコメントが掲載され「流通取引慣行是正のために(同協議会を)開いてきたが、再販をみるだけでは不十分で、景品も含めた流通取引慣行全般をみるべきだと考えている。新聞も出版も公正競争規約を有する業界であり、公取委が景品表示法を含めた流通取引慣行について見通しを示すのは控えるべきだと考えた」との説明が…


 さて、新聞および出版業界と公取委の間で繰り広げられてきた著作物再販制度問題。この先、公取委から消費者庁へ所管が移るのかどうか関心のあるところです。


 著作物再販協議会とは、

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2009年03月01日

読売がWSJと提携 海外メディアとコラボするメリットは?

 「読売新聞とウォール・ストリート・ジャーナル紙が提携」というニュースが入ってきました。

 おととし、
ルパート・マードック氏が率いるニューズコーポレーションに買収されたダウ・ジョーンズ社が発行するウォールストリートジャーナルと読売新聞が業務提携を発表。
 同紙は米国で第2位の発行部数(170万部)で、経済紙として世界的な影響力を持つとされています。提携内容は、3月から読売が同紙の解説記事やコラムなどを翻訳し、第1、第3水曜日に解説面で掲載。日本国内で販売する同紙アジア版を読売が印刷して、東京、大阪、名古屋などの販売店を通じて配達されるようです。

 フジサンケイビジネス・アイが昨年、
ブルームバーグ社と記事配信の提携をしましたが、米国メディアの日本進出(単独ではなく提携という形でしょうか)に拍車がかかりそうです。


 日本のメディア(特に新聞)は言語(日本語)に守られているから、英語圏のメディアが進出することはないだろう―と言われてきましたが、グローバル化する社会の中で「自動翻訳システム」(ポータルサイトの無料サービスも充実してきました)の技術も進んでいるとか。


 業務提携はANYだけではなく、海外メディアとも行われていくようです。果たしてどの程度の需要があるのかは未知数ですが、まず新聞を読んでもらわないことには…


 

posted by 今だけ委員長 at 20:58 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時事ニュース

2009年01月25日

若者の活字離れと新聞業界支援に動いたフランス政府

 フランスのサルコジ大統領が、18歳を迎えた成人に希望する新聞を1年間無料で配達する計画を発表しました。

『18歳は新聞1年間無料に』仏政府が業界支援案


 フランスのサルコジ大統領は二十三日、経営難に陥っている国内の新聞業界の救済案を発表した。十八歳の国民全員にそれぞれ希望する日刊紙を一年間無料で配り、若者の新聞離れを食い止める。
 救済案は、今後三年間で六十億ユーロ(約六千八百億円)の規模。日本の一般紙と異なり、フランスの新聞は駅の売店やたばこ店での販売が中心のため、現在は一割程度にとどまっている宅配制度の拡充も政府が支援する。
 サルコジ大統領によると、これらの救済案の代償として、新聞各社は人員整理など三割から四割の経費削減を既に内諾している。
 しばしばメディアと対決姿勢も示すサルコジ大統領だが、記者会見で「新聞を読む習慣は必要だ」と述べた。
              (東京新聞:1月24日付朝刊より引用)

 新聞離れは各国共通なのでしょう。フランスの新聞業界では、一般新聞の発行部数が減少し続ける一方、無料新聞(広告モデル)の発行が相次いでいるそうです。経営不振にあえぐ有力夕刊紙ル・モンドも生き残りをかけておととしの2月に無料日刊紙「マタン・プリュス」を創刊。これに危機感を抱いた新聞販売店組合が、ル・モンドの販売をボイコットするよう加盟店に呼びかけるなど話題を呼びました。フランスでは日本のような宅配制度があまり普及していないため、売店売りがほとんどで宅配があっても購読料に配達料が加算されます。日本だと郵送新聞(第三種扱い)と言ったところでしょうか。


 国民(特に若い世代)の活字離れへの対策と、経営不振に陥っている新聞業界への支援が主な目的だということですが、政府が行う政策(税金を投入して)としてフランス国民がどのような捉え方をしているのかわかりません。
 日本ではどうでしょう?@政府が新聞業界の支援などに乗ってくるはずがないA国民から反発を招く…といったところで、難しいでしょうねぇ。


 活字を読む習慣をつけることはとても大切なことです。それには毎日のニュースに解説が加えられた新聞が一番適していると思うのですが…

【追記】
メディア・パブでは、若者に支持される紙面づくりの必要性と公的資金援助によって政権(サルコジ体制)との距離感が懸念されると伝えています。その通りですね。

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2009年01月23日

やはり司法も大新聞社には腰砕けだ/真村裁判契約解除への仮処分命令が取消

 読売新聞西部本社に地位保全と新聞供給開始を申し立てていた仮処分の審議で、福岡地裁(田中哲郎裁判官)が読売側の主張(仮処分の無効)を認め、昨年5月の仮処分決定を取り消すという判断を下しました。

 読売新聞から引用します。 
読売元販売所長の地位保全を認めず/福岡地裁支部
 福岡県久留米市の旧「YC久留米文化センター前」の元所長(53)が、読売新聞西部本社を相手取り、販売店としての地位保全と新聞供給開始を申し立てた仮処分の保全異議審で、福岡地裁久留米支部は21日、西部本社による契約解除を有効と認め、地位保全を命じた昨年5月の仮処分決定を取り消した。
 西部本社は昨年3月、元所長が配達部数を虚偽報告していたことなどから販売店契約を解除。元所長の申し立てに対し、同支部は仮の地位を認める決定を出していた。
 この日の決定で田中哲郎裁判官は「元所長の部数の虚偽報告は貯きに及びその程度も重大で、西部本社との信頼関係は完全に破壊されたと評価するのが相当」と述べた。
1/22付第3社会面より) 
 一連の「押し紙」栽判(真村栽判)は、原告の「YC久留米文化センター前」店主の真村久三さんが読売側からの契約解除に対する地位保全を福岡高裁(西理裁判長)が認め、慰謝料330万円(総額)の支払いを命じています(2007619日)。
 その後、読売側が最高裁に上告、最高裁が却下、営業を再開したものの業績不振などを理由に契約解除、昨年5月に地位保全の仮処分が出されるも、読売側は新聞供給を拒否するという経過をたどっていました。
 ただし、この仮処分審議の判断が出される以前に、福岡地裁にて裁判中であるため、地位保全の訴訟審の判決は続くことになります。

 司法判断のブレはもとより、なぜ部数の虚偽報告が起きてしまうのか真実から目を背けた裁判官への巨大な圧力のようなものを感じざるを得ません。 
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2009年01月22日

沖縄2紙も夕刊を廃止

 沖縄タイムス(発行部数19万8千部)が今日の朝刊で「2月28日付を最後に夕刊を廃止するという社告を出しました。読売オンラインより。
 琉球新報(同20万4千部)も3月から夕刊を廃止することを表明しており、近日中に正式発表するそうです。

 以前、福島県内を発行エリアとする福島民報と福島民友が同時期に夕刊を廃止したケースがありました。なぜ足並みをそろえる必要があるのか首を傾げたくなりますが、抜け掛けができないくらい企業体力が落ちているのだろうと感じています。

 沖縄タイムスの社告、「読者の皆さまへ 夕刊を3月2日から廃止します 朝刊に統合 充実」という見出しで、夕刊廃止の経過説明がされています。
 「広告需要が急速に落ち込んできたほか、製紙メーカーによる新聞用紙代の値上げも新聞製作コストの大幅な上昇をもたらしました。「100年に一度」と言われる経済危機が進行する中で、景気回復の見通しも立っていません…
 購読料金値上げによる読者の負担増を避けたいとの思いから、やむを得ない選択として、夕刊廃止を決断させていただきました。引き続き、経費削減や業務見直しなどの経営努力を重ねていく所存です」というもの。月極め購読料については、現行のセット料金3160円から2990円へ値下げされるとのこと。

 夕刊の廃止、印刷・発送部門、販売店従業員のリストラ…下流から切られていく構図はどこの世界も変わらないのでしょう。労働者としてはやるせない思いですが、沖縄県民から夕刊発行を求める声がなければ…誤解を恐れずに言えば「しかたない」のかもしれません。夕刊発行を続ける目的が新聞労働者のため(逆に経費高になってやめざるを得ない状況ですが)だとしたら、労働者側のエゴになってしまいかねません。雇用と夕刊の発行を結びつけるのではなく、きちんと経営側に雇用の維持を守らせることが大切なのだと思います。

 このへんの議論はとても難しいのですが、夕刊廃止の動きは今年に入ってさらに加速するような気がしています。

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2008年12月20日

今年の新聞業界を漢字一字で表わすと「崩」かなぁ

 今年も残すところ10日余り。今年の新聞界は販売・広告の二大収入のうち、広告収入の落ち込みが大きく「赤字決算」を計上せざるを得ないところもでてきそうです。それだけ厳しい状況下で、「印刷・発送・販売(配達)」部門の提携・協業による合理化が進められています。さらに「夕刊廃止」の動きも加速した1年でした。
 今年1年の新聞業界を漢字一文字で表すなら、「崩」がピッタリくると思うのですが、どうでしょう。

 昨年に引き続き、新聞協会報(08年12月16日付)が報じた「2008年報道界重要ニュース」(協会報編集部選定)を引用して、今年1年を振り返りたいと思います。
注:重大ニュースに順位づけはされていませんが、見出しの大きさなどを勝手に判断して並べています。

@相互印刷、共同輸送に拡大
「朝日・読売・日経3社提携」
 朝日・読売・日経の提携は相互委託印刷、共同輸送へと広がった。新聞経営を取り巻く環境が厳しさを増すなか、連携を深め経営基盤を強化する。朝日の秋山社長は「過剰気味の製作設備を有効活用したい」と、相互印刷・共同輸送を進める理由を説明した。読売の内山社長は長期的には設備更新の時期に「自社工場を閉じ、他社工場に委託するようにもなる。今回はその第一弾だ」との認識を示した。このほか、三紙の一面、社会面、社説の読み比べなどができるニュースサイト「新sあらたにす」も1月末に開設された。

A夕刊廃止・休刊相次ぐ
「収入減、製作費の高騰で」
 新聞各社で夕刊の廃止・休刊が相次いだ。販売・広告収入の低迷、用紙費など新聞製作費の高騰が背景にある。月極め購読料を上げる動きも一部に見られた。毎日北海道が8月末、秋田魁が9月末で夕刊を廃止(秋田魁は50円値下げ)、南日本も来年2月末で夕刊を休刊する。また、夕刊紙の名古屋タイムスも10月末で休刊し、夕刊を取り巻く環境は厳しい局面に入った。一方、十数年ぶりに月極め購読料を値上げした新聞社は、市民タイムス、SANKEI EXPRESS、日本海新聞、山形新聞、フジサンケイビジネス・アイ、陸奥新報、東京スポーツ、大阪スポーツ、中京スポーツ、内外タイムスの11紙を数えた。

B裁判員報道に向け指針
「協会公表、各社の作成も進む」
 裁判員制度の開始を来年5月に控え、新聞協会は1月16日、「裁判員制度開始にあたっての取材・報道指針」を公表した。公正な裁判と報道の自由の調和を図り、国民の知る権利に応えるために策定した。協会の指針は、事件報道の目的・意義を再確認するとともに、報道各社が人権へ配慮してきたことを踏まえ、被害者を犯人視することで裁判員に過度の予断を与えない取材・報道のあり方を改めて確認した。

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2008年12月16日

加速するメディアコングロマリットだが…

 この1週間、各メディアの動きが活発になっています。個人的な感想は後日アップしたいと思いますが、備忘録として関連記事を押さえておきます。


この動きはけっこう魅力あるかも!
「テレビ朝日とリクルートの資本・業務提携のお知らせ」プレスリリース(12/10)
http://company.tv-asahi.co.jp/contents/ir_news/0200/data/20081210recruit.pdf

無料でビジネスが成り立ちますか?見づらいし…業界の切り込み隊長としてはうなずけますが。
「産経デジタル、iPhone向けに産経新聞朝刊全紙面を無料配信」日経BP(12/15)
http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/news/20081215/1021893/

3週前の週刊ダイヤモンドで取り上げられたネタですね。主導権はやはり権威をかざす新聞社かなぁ…
「マッチしたメディアで情報配信 - KDDI・テレ朝・朝日新聞がクロスメディアで提携」マイコミジャーナル(12/16)
http://journal.mycom.co.jp/articles/2008/12/16/3alliance/index.html


 師走ですねぇ

posted by 今だけ委員長 at 07:51 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時事ニュース

2008年12月12日

『ANY』vs『〇〇連合』の構図?

 けさの産経新聞によると、毎日新聞社と産経新聞社が、九州と山口県で販売する産経新聞を九州にある毎日の工場で印刷することで合意したと発表しました。
 現在、九州地区で発行されている産経新聞(サンスポ、ビジネス・アイ含む)は、大阪から空輸を経て各県にある西日本新聞の販売店へ委託(配達、集金)されています。開始は来年10月で印刷部数は3千部強とのこと。
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 産経新聞の社告によると「配達地域の拡大が可能となるほか、より新鮮で充実した紙面をお届けできます」としていますが、システム開発への投資はあるものの、配送コストの削減を考慮すれば印刷部門を外注(委託)する方がコストカットになるという判断だと見て取れます。毎日新聞側も部数の落ち込みで、稼働率が落ちている(収入減)毎日系印刷工場の受託印刷の間口を広げたい―という両社の思惑が一致したと思われます。

 印刷工場は北九州工場(北九州市)か鳥栖工場(佐賀県鳥栖市)となる見通しとのことですが、中国・四国地区の印刷拠点(産経新聞「岡山市」、毎日新聞「倉敷市」)も相互支援体制を推し進めると発表しています。同じ岡山にある印刷工場を一つにまとめるという方向性も強く感じます。

 新聞産業界は、現業部門(印刷、発送、販売店)からのコストカットが本格化しています。

【MSN産経ニュース】
http://sankei.jp.msn.com/economy/business/081211/biz0812111504008-n1.htm

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2008年12月09日

米国のメディア企業トリビューンが経営破綻

 アメリカで「World's Greatest Newspaper」を自称するメディア企業トリビューン(1847年シカゴ・トリビューン創刊)が約130億ドルの債務の返済の見通しが立たず、破産申請をしました。同社は全米4位の発行部数を誇るロサンゼルス・タイムズなど新聞12紙と23の放送局を持つ大メディア企業で、大リーグのシカゴ・カブスも所有しています。

 メディアの買収が近年頻繁に行われている欧米の新聞業界ですが、経営破綻とは衝撃的なニュースです。広告収入の落ち込みに加え、昨年同社を買収した不動産王ザム・ゼル氏の経営手腕を問題視する意見もあるようですが、金融危機や景気後退といった経済状況が破産申請の決定的要因のようです。

 欧米の新聞業界は、日本とは産業構造が違うので「日本の新聞社も…」とは一概には言えませんが、先に朝日新聞社や産経新聞社が発表した今年の中間決算を見ると、販売、広告ともに赤字転落。特に広告収入の落ち込みは相当なものです。
 だから読者を向いた販売政策が必要なのですが、販売収入への依存度が高くなってくると、またぞろ販売過当競争が強化されていくのでしょう。
 まったく進化しない業界にうんざりですが…

     金融危機、広告激減が直撃 米トリビューン紙破綻

 米新聞大手トリビューン(本社・シカゴ)が8日、経営破綻(はたん)に追い込まれた。米新聞業界では他の大手も広告収入減少などで業績が低迷。インターネット媒体など新たなメディアとの競争に加え、金融危機をきっかけとした景気悪化が苦境を深めている。
 トリビューンは年間の最終損益こそ黒字を続けているが、直近の2四半期は純損失が続く。その最大の要因は、新聞事業の広告収入の減少だ。08年7〜9月期決算で、新聞の購読料収入は前年同期比2%減にとどまっているが、広告収入は同19%減まで落ち込んだ。広告収入は同社の新聞事業の売上高の7割超を占める主要な収入源だけに、大幅減は痛手だ。 (アサヒ・コムより引用)

【欧米の新聞業界を巡る主な出来事】(朝日新聞資料)
04年6月 米紙ロサンゼルス・タイムズが160人の削減計画
06年7月 米大手新聞シカゴ・トリビューンが120人の削減計画
07年4月 米新聞大手トリビューンを投資家サム・ゼル氏が82億ドルで買収することが決定。傘下2新聞社で計250人の削減計画を公表
   5月 英ロイター通信が金融情報大手トムソン(カナダ)と合併
  12月 米経済紙ウォールストリート・ジャーナルを発行する新聞大手ダウ・ジョーンズを、豪州出身のルパート・マードック氏率いるニューズ・コーポレーションが56億ドルで買収
08年4月 仏紙ルモンドで130人の削減計画。労組のストで休刊
   6月 米新聞大手マクラッチーが1400人の削減を発表
   9月 マクラッチーが1150人の削減を発表
  12月 トリビューンが破産申請

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2008年11月17日

深夜に起きたひき逃げ事件の被害者は新聞配達中の16歳

 きのう、大阪府富田林市で新聞配達員の少年(16歳)がひき逃げされるという痛ましい事件がありました。

毎日jpより引用
 16日午前3時10分ごろ、大阪府富田林市錦織東3の路上で原付きバイクが倒れているのを通行人が見つけ110番した。
 府警富田林署が運転手の行方を捜していたところ同8時半ごろ、南に約6キロ離れた同府河内長野市小塩町の駐車場に男性が倒れているとの通報があり、署員が毎日新聞富田林東販売所アルバイト、東川達也さん(16)と確認した。東川さんは既に死亡していた。
 同署は遺体発見現場近くに住む大工、市川保容疑者(41)を道交法違反(ひき逃げ)と自動車運転過失致死容疑で緊急逮捕した。市川容疑者が東川さんを引きずった可能性が高いとみて、殺人容疑も視野に追及する。
 調べに対し、市川容疑者は「軽自動車を運転中、原付きバイクに追突した。飲酒運転だったので必死で逃げ帰った。(どう逃げたのかは)よく覚えていない」と供述しているという。  (引用終わり)

 各メディアの報道を見ていると飲酒運転の男が事故後、少年を6キロも引きずったことや、同じ大阪で10月に起こった男性がはねられ3キロ引きずられて死亡した事件のことを伝えていました。
 飲酒運転でひき逃げをした男の行為は言語道断で、許されない行為です。

でも、今だけ委員長からするもう一つの問題点がこの事件で浮かび上がってきます。

 それは、亡くなった少年が午前3時から新聞配達の仕事に従事していたということ。

 労働基準法第61条には「使用者は、満18歳に満たない者を午後10時から午前5時までの間に使用してはならない」としています。法律上18歳未満の者を深夜業させることはできません。たとえ「アルバイト」や「パート」の名称であっても同様です。これに違反すると「6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金」に処せられます。
 ですから、少年が事件が起きた時間帯に就労させていた使用者責任も問われるということです。

 ひき逃げ事件と使用者責任の問題は関連づけられませんが、新聞社および新聞販売店責任者はあらためて労働基準法が守られているかを点検する必要がるでしょう。

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2008年11月05日

南日本も夕刊廃止 思わぬメディアが先んじて伝えていた

 最近、夕刊廃止がニュースにならなくなってきたのかなぁと思っていたら、まだ業界紙等でも取り上げられていませんでした。残念なことに南日本新聞も来年2月に夕刊を廃止するようです。

 福島の建設業者を対象にネット配信されている“市民と結ぶネットマガジン”建設メディア「MEDIA」の10月7日付けコラムで紹介されていました。このコラムを書いているのが、建設メディア顧問で元福島民報専務編集局長だった星一男氏。
  夕刊の廃刊が相次ぐ」という見出しで、来年2009年2月に南日本新聞(鹿児島)が夕刊をやめることがほぼ固まった―という内容のことが書かれてあります。知人にさっそく確認をしたら「そのようだ」とのこと。

 今年に入って夕刊を廃止した新聞社は、毎日新聞(北海道地区)、秋田魁新報、夕刊紙の名古屋タイムス。そして地方紙でも経営状況が比較的よいと言われてきた南日本新聞までが夕刊廃止に踏み切るという状況です。

 自分自身を元気づけるように「可能性」という言葉を使って息巻くものの、ちょっと疲れてきたかなぁ…

【追記】
 南日本新聞は完全セット販売ではなく、鹿児島市内を中心としたエリアで夕刊を発行。発行部数は朝刊部数(40万部)の6%程度。料金はセット版が3567円(1カ月)で、朝刊のみが3007円なので単純計算をすると毎月560円で夕刊が宅配されます。
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2008年10月01日

ANY発足会見から1年 恐竜はゆっくり歩きだしてきた…

 ANY(朝日新聞、日本経済新聞、読売新聞の業務提携)という単語が業界に出回ってからちょうど1年経った今日、朝日新聞社と読売新聞グループ本社が千葉県の船橋工場(朝日が所有)と香川県の坂出工場(読売が所有)で印刷の相互委託(朝日の印刷会社で読売を印刷し、読売の印刷部門で朝日を印刷)することを基本合意したと発表されました。相互印刷は2012年を目指すとしています。

▽会見の映像はコチラ
▽読売オンラインの記事はコチラ


 業界内ではANYの本当の目的は「経費がかさむ販売店の統合だ…」という見方が多数でしたが、ANY発表から1年で印刷そして(販売店への)共同輸送の協業に乗り出してきました(日経は地方紙とのつながりがあるのでどうなるか)。
 原材料費が高騰する中で、この10月からは4月に続き新聞用紙代がさらに値上げされるなど、新聞業界にとっては厳しい状況が続いています。相互委託によってどの程度の経費削減が見込まれるのか、またそのような現業部門の経費削減によって値上げをせずに持ちこたえられるのか(なぜ大々的に発表したのか)注目したいと思います。

 一方、販売店の相互委託はなかなか進んでいないと聞きます。当然双方の販売局間では熾烈な部数競争があるため、その仕事を背をわせている販売店へ「配達だけは協業して…」というのは現実的に無理があるかもしれません。しかし、新聞社はもちろんですが販売店も生き残りをかけて必死ですから、新たな流通網の模索を含めて近いうちに動きだしてくると思われます。

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読者から届いた“あったかい”はがきエッセー

 衣替えとなる10月1日、社団法人日本新聞協会が「第15回新聞配達に関するはがきエッセーコンテスト」の審査結果を発表しました。
 入選作品は「コチラ」から。

 今年で15回目になるという同コンテストには国内外から6,126編もの応募があったそうです。
 読んでみるとどの作品も“あったかい感じ”がします。これから冬場に向けて新聞配達も大変になってきます。新聞社を叩くことなく、たわいもない新聞販売店従業員の不祥事を書き連ねる一辺倒の紙面が増えているように感じますが、まだまだ読者からのあたたかい視点を向けられていると実感できます。あとは、営業行為の方をしっかりしなきゃ…

【追伸】週刊ダイヤモンドで連載されている「ザ・メディア」(著:真山仁)のように新聞販売店の息子さんが「押し紙」に触れた作品を応募するようなことは…あり得ないでしょう。


 

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2008年09月10日

グーグルが求める新聞社の資産開放

 いまでも図書館へ行くと新聞のバックナンバーを閲覧している方を多く見かけるのですが、その光景を見るたびに「新聞は歴史の証人」なのだなぁとつくづく思います。
 いまではネット検索でそこそこのトピックスは拾えますが、歴史的なニュースの記事を確認するだけでなく、その当時の広告やテレビ番組など社会の動きまで伝わってきます。これが新聞社の砦というか企業資産だと思っているのですが、インターネットという恐竜は世界各国で発行されてきた新聞紙面の過去記事を簡単にデジタル検索・閲覧できるシステム「ニュース・アーカイブ・サーチ」をグーグルが発表しました。

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▽メディア・パブ「"Google News Archive Search",歴史的な新聞記事を横断検索
▽CNET Japan「
グーグル、「Google News Archive」に新機能--過去の新聞記事を検索閲覧可能に
▽ITmedia「
Google、新聞各社と提携、過去の記事をデジタル化
▽INTERNETWatch「
米Google、新聞紙面のデジタル化プロジェクトを開始
▽Google Mania「
Googleが過去の新聞記事をデジタル化して検索できるサービスを開始
▽TechCrunch「
Googleと新聞各社提携による新聞過去記事検索
▽AFPBBNews「
グーグル、過去の新聞記事の検索閲覧を可能に

 今朝の朝刊各紙にもこのニュースが掲載されていましたが、日本の新聞界はどのような対応をするのでしょうか?
 過去記事の閲覧については、ほとんどの新聞社が記事データベース(有料)を構築しているので個人や企業の契約によって閲覧およびプリントは可能です。あとは、国立国会図書館のHPには見たい新聞を所蔵している機関を検索できる「
全国新聞総合目録データベース」があります。また、1988年3月に発足した財団法人日本新聞教育文化財団が運営する「新聞ライブラリー」(横浜市:新聞博物館内)でも無料で閲覧できます(複写には40円程度必要)。
 
 メディア・パブにはグーグルが提供するサービスについて「ところで、歴史的な日本の新聞記事や雑誌記事も、上のようにネット上で気楽に利用できるようになるのだろうか。質の高い情報にアクセスしにくい過疎地にならなければよいのだが…」と結んでいます。あえて新聞記事を「質の高い情報」と評して、新聞社の資産をネットへ開放するよう求めているように感じます。

 インターネットという自由な空間に“日本の新聞社”がどう対処していくのか…日本と米国の新聞産業構造は大きく異なりますが、第二の波が押し寄せているように感じます。

posted by 今だけ委員長 at 19:12 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時事ニュース

2008年08月01日

夕刊を朝刊統合で▲57円 実質値上げでは…

 先に紹介していた「秋田魁、夕刊廃止の記事」の続報です。

 秋田魁新報社は8月1日の紙面で社告を出し、10月1日から夕刊を朝刊に統合し、同時に月決め購読料を現行の3007円から2950円に値下げすることを正式発表しました。
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 原油高に伴う新聞製作費の上昇、配達経費の増加、景気低迷による広告の落ち込みが重なり、コスト増加分の購読料への転嫁を避けるため、夕刊廃止に踏み切ったと説明。これまで夕刊に掲載している文化・芸能欄などは朝刊のページ数を増やして収録するそうです。

 57円の値下げですか…。どうなんでしょう消費者の実感としては、これまで完全セット版として朝夕配達されてきたものが朝刊だけになって「57円の値下げ」では実質値上げという印象を与えてしまうかもしれませんね。値ごろ感なのでしょうが「207円値下げして2,800円」となると値下げ感も出るのでしょうが、新聞社の経営にはさまざまな経費がかかるので、購読料設定は消費者重視よりも経営重視にならざるを得ません。

 東北の2つの新聞社(山形新聞、秋田魁新報)が、これまでの横並び業界体質から抜け出て独自の経営戦略を打ち出しました。この動きに追随して独自路線を取るのか、これまで同様にANY(朝日、日経、読売)に歩調を合わせるのか、年末あたりからまた業界の動きが激しくなるようです。

posted by 今だけ委員長 at 21:15 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時事ニュース

2008年07月24日

秋田魁、夕刊を廃止の記事

 今週は都内への出張もあり更新が遅れてしまいましたが、秋田魁新報社が10月から夕刊を廃止し「廃止分を値下げか」という記事を、文化通信(7月21日付)が報じました。

文化通信 7.21付.jpg

 この7月から山形新聞が購読料を改定(3,007円から3,300円へ)しましたが、隣県の秋田魁新報が夕刊を廃止して「値下げ」に動き出すという両極端のビジネスモデルに対して、多くの新聞経営者は注目していることでしょう。

 もともと秋田魁新報は1996年4月から毎週土曜日の夕刊を休刊(もちろん日、祝日も休刊)したものの、3,007円の購読料は据え置いてきた経緯があります。その当時は同年に「さきがけスポーツ」(サンケイスポーツと提携、2003年10月末で休刊)を創刊し、各セクション(人員)のスクラップアンドビルドによって土曜夕刊の休刊も取り組まれたと聞いています。読者には「販売店の労務改善のため」と説明されたようですが…。

 とはいえ、販売、広告の料収入が伸び悩み、原油高騰を背景に用紙代、輸送代などの経費負担が増えるなか、「夕刊をやめて値下げ」の決断は相当なものだったに違いありません。
 文化通信の取材に対して同社の佐藤暢男社長がコメントを出しています。(以下引用)

現在、ブロックごとの販売店に説明し、相互信頼を損なわないよう理解を求めている。秋田県は高齢者世帯が多いだけに、灯油の値上げには困っている県民が多く、テレビは必要だが新聞代は灯油代に充てたいという声を聞く。向寒の備えは深刻だ。当社は完全セット販売だから朝刊だけというわけにはいかなかったが、県紙としての責任新聞として、多くの県民に読んでもらわなければ困る。夕刊廃止は苦渋の選択だ。夕刊専門の配達従業員がいるので、彼らの就職口の心配もある。そのため販売店との話し合いも時間がかかっているが、今月中にはなんとか理解してもらうつもりだ。

 販売店との調整(相互信頼)が済んでいない段階のようですが、このように報じられてしまえば周りが必要以上に反応するのは必至。販売店への説明は混乱するかもしれませんが、“ここだけの話”は意外と筒抜けになっているものです。

 夕刊を廃止すると編集、制作部門は夜勤のみのローテーションとなり現状と同人数というわけにはいかないでしょう。さらに販売店は配達スタッフの約半数の仕事がなくなることになります。販売店を活用した流通ビジネスを考えると夕刊ではなく、朝刊を廃止して夕刊紙にすることは考えなかったのかなぁ。深夜労働もなくなるし…。新聞が読まれる時間は「帰宅後」という方が増えていることを考えると、速報性よりも解説重視の紙面に転換して夕方まで配るというシステムも検討の余地があると思うのですが…

 これまで全国紙の動向に習って護送船団方式をとってきた新聞産業界。“我慢比べ”はすでに限界値を超え、独自の経営判断をせざるを得ない状況になってきたことの現れですが、本来これがあたり前の姿なのだと思います。
 価格設定に見合う商品(サービス)であれば読者は納得するはずです。これまで必要なかった経営者の能力、判断が問われてくる時代へいよいよ突入してきたわけです。

posted by 今だけ委員長 at 23:14 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時事ニュース

2008年06月19日

山新が7月から購読料値上げ/我慢比べも限界か…

 山形新聞が7月から購読料を値上げすると今日付けの紙面で発表しました。上げ幅は293円(税込)で14年6カ月ぶりの改定です。

山新値上げ.jpg

 用紙代をはじめとした原材料費の高騰と広告費の落ち込みをその理由に掲げていますが、全国紙、地方紙を問わずどこの新聞社も厳しい経営環境にさらされているのは間違いありません。

 「いま値上げをしたら読者が大幅に減る」という危惧感から、どこの新聞社も我慢比べを続けて14年6カ月。「どこが先に値上げするか」と業界内では興味津々だったことでしょう。今回の山形新聞の値上げで読者がどんな反応を示すか、全国紙の攻勢はどうなのか―その結果を踏まえてまたぞろ一斉値上げが行われるかもしれません。また批判が飛び交うのだろうなぁ…


※地方紙レベルでは、下野新聞(栃木)がおととしの6月に142円値上げ(2,950円へ)をして、大幅な部数減には至らなかったと聞いています。下野新聞は専売店を持っていません。

購読料改定のお願い―7月から3300円に―

 山形新聞社は、七月一日から本紙の月極め購読料を現在の三千七円(消費税込み)から三千三百円(同)に改定させていただくことにしました。一九九四年一月以来十四年六カ月ぶり(消費税のアップを除く)の改定となります。読者の皆様にご負担をおかけするのは心苦しい限りですが、ご理解をたまわり引き続きご愛読くださいますようお願い申し上げます。
 今年四月から製紙メーカーがそろって新聞用紙代を値上げしたほか、原油高に伴う印刷材料費のアップなど新聞製作のコストは上昇を続けています。加えて近年、新聞経営を支えてきた広告収入が大幅に落ち込み、経営環境は厳しさを増しています。合理化と経費節減に努めてきましたが、それも限界に達しました。
 今回のアップ率は9.74%ですが、朝、夕刊セットで一日当たり約十円の負担増をお願いすることになります。一部売りの料金は朝刊が現在の百円から百十円とし、夕刊は五十円で変わりません。
読者に「週間テレビガイド」
 山形新聞は今春から十二段組みに体裁を変更、文字を拡大して読みやすくしましたが、今月二十六日からは一週間分のテレビ番組を紹介する週間テレビガイド「山新てれナビ」を毎週発行、新たなサービスとして全読者にお届けします。
 タブロイド判(十六n、カラー)で、番組は映画やドラマ、スポーツなどジャンル別に色分けして見やすくするほか、QRコードから携帯電話で番組情報サイトに接続できる「TVプラス」を全国で初めて採用します。着メロのプレゼントもあります。話題のドラマや番組の解説も豊富です。お手元に置き、ご活用ください。
 山形新聞社(6月19日付:1面)

posted by 今だけ委員長 at 12:14 | Comment(1) | TrackBack(0) | 時事ニュース

2008年06月18日

道新が電子新聞の実験…財力がないとできないよなぁ

 北海道新聞が電子新聞の実験に取り組むというニュース。電子ペーパー端末「iLiad」を活用して“紙面を映し出す”仕様だそうです。
 見た目もアマゾンのキンドルと一緒ですね。「新聞を読む」というより書籍を読むのに適しているように感じますが…

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 いずれにしても電子チラシ(シュフー)やショッピングモール(物流は販売店が担ってます)など、次代への対応が素早い北海道新聞。財力のあるうちに次なる新聞ビジネスモデルを見出してもらいたいものです。

ITmediaニュースより
 北海道新聞社とイーストは、洞爺湖サミットにあわせて電子新聞の配信実験を共同で行う。携帯型の電子ペーパー端末「iLiad」にサミット関連記事を配信し、一般ユーザーに使用感などを試してもらう。

 実験は、6月19〜21日に開かれる「北海道洞爺湖サミット記念環境総合展2008」(札幌ドーム)と、7月7〜9日に道新プラザ(札幌市中央区大通西3の道新本社1階)で行う。iLiadにワイヤレスで道新のサミット関連記事を1日2回配信し、ユーザーに使用感などのアンケートに答えてもらう。
 iLiadは、オランダRoyal Phillips ElectronicsからスピンオフしたiRex Technologiesが販売する電子書籍端末。8.1インチ(768×1024ピクセル、160dpi)のE ink電子ペーパーを搭載する。


参考資料:iLiadはフィリップスからのスピンオフで、オランダをベースにするベンチャー企業、iRex Technologiesが製造、販売している電子書籍端末だ。モノクロ16階調で8.1インチ、768×1024ドット(160dpi)の電子ペーパーディスプレイを搭載。ワコム製のタッチスクリーンを採用し、読むだけでなく、メモや図を書き込むこともできる。IEEE802.11 b/gを搭載するほか、外部デバイスとしてUSBメモリ、MMC/CFカードなどが使える。対応する文書・画像フォーマットは、PDF、HTML、TXT、JPG、BMP、PNG、PRCなどでRSSコンテンツを読み込むこともできる。PRCというのはモビポケット(Mobipocket)と呼ばれる電子書籍専用フォーマットで、現時点でも約4万点の書籍をオンラインで入手できる。

posted by 今だけ委員長 at 12:33 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時事ニュース

2008年06月07日

人間の欲望を成し遂げてきたイノベーションへの規制

 有害サイトから青少年を守るための対策新法案が6日の衆院本会議で全会一致で可決されました。与野党もほぼ同一見解なので参議院を経て週明けには法律化される見込みです。

 特定のサイトの閲覧を制限する「フィルタリングサービス」の導入を携帯各社に義務付けることが今回の法案の目玉なのですが、その基準について国が関与するのか否かについてケータイ会社やマスコミ(温度差はありますが)、ISP事業者、ネットユーザーなどが反対表明をしてきました。要は有害情報の基準を国が定めるとなると、ひいては国家権力による言論規制につながる―というものです。
 一方、「楽しい・面白い」サイトを運営している業者はどうでしょう。人間の欲望に迫るギリギリ感を提供している業者にとっては死活問題でしょうが、また別な手口を見つけてくるでしょう。頭イイですからね…


 今回上程されている法案には基準作りは民間の第三者機関に委ねるとしていますが、その第三者機関は「国への登録義務」が必要であることや国がきちんと関与すべきだとの意見が与党議員に根強いため、成立後にさまざまな運用がされるのでは?と業界側も牽制しています。

 読売新聞社の6月7日付社説「
ネット規制 有害情報から子供を守れ」では、第三者機関への責任の重要性を問う一方、映画界や放送界では自主規制機関が一定の成果を上げていることへも言及しています。この問題は教育問題やメディアリテラシィーと簡単に片づけられない問題ですね。今後の動きに注視したいと思います。

有害サイト審査に国が関与の余地 - 日本新聞協会がネット規制法案を批判

 日本新聞協会は6日、同日衆議院本会議で可決された有害サイト規制法案に関し、「憲法21条が保障する表現の自由を侵す可能性がある」とした声明を発表した。
 同法案の正式名称は、「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律案」。
 同法案は、ISPや携帯電話事業者に対し、親が解除を申し出た場合を除き、18歳未満の青少年が有害サイトを閲覧できないようにするフィルタリングサービスを義務付け。パソコンメーカーに対しても、フィルタリングソフトのプレインストールなど「フィルタリングの利用を容易にする措置」を義務付けている。
 有害情報については、明確に定義はしなかったものの、以下のように例示。
・犯罪若しくは刑罰法令に触れる行為を直接的かつ明示的に請け負い、仲介し、若しくは誘引し、又は自殺を直接的かつ明示的に誘引する情報
・人の性行為又は性器等のわいせつな描写その他の著しく性欲を興奮させ又は刺激する情報
・殺人、処刑、虐待等の場面の陰惨な描写その他の著しく残虐な内容の情報
 また、Webサイトの有害性を判定する第三者機関について、国の直接関与は避けたものの、これらの機関が一定の要件を満たし登録を希望する場合は、「国に登録することが可能」としている。
 日本新聞協会が問題視しているのは、法案における有害情報の「例示」と第三者機関の「国への登録」の部分。例示に関しては、「例示といえども、有害情報がいったん法律で規定されれば、事実上の情報規制を招く根拠となりかねない」と指摘。
 その上で、「有害情報かどうかの定義・判断については、憲法21条が保障する表現の自由の観点から、直接、間接を問わず国は関与すべきではない」とし、法律で有害情報を例示することにより、国が間接的に関与することにつながると批判している。
 また、第三者機関の国への登録については、「有害情報を実質的に判断するフィルタリング推進機関を国への登録制とすることについても、公的関与を残す懸念がある」と批判。
 「青少年を有害情報から守り、適切なインターネット利用推進を促進するための対策は、民間による自主的な取り組みを尊重すべきである」と表明し、公的関与の余地を残す有害サイトの例示と第三者機関の国への登録の規定をなくすよう呼びかけている。
 同法案は、10日にも参議院で審議入りする予定。自民党だけでなく民主党も共同提案している法案のため、新聞協会の声明が受け入れられるかは予断を許さない状況だ。(マイコミジャーナル6/6付)

 
2008年6月6日

「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律案」
に対する日本新聞協会メディア開発委員会の声明

社団法人日本新聞協会
メディア開発委員会
委員長 山田哲郎


 インターネット上のいわゆる有害情報から青少年を守ることを目的に掲げた、「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律案」が、6月6日、衆議院青少年問題に関する特別委員会に提出され、同日の衆院本会議で可決された。
 有害情報かどうかの定義。判断については、憲法21条が保障する表現の自由の観点から、直接、間接を問わず国は関与すべきではない。「例示」といえども、有害情報がいったん法律で規定されれば事実上の情報規制を招く根拠ともなりかねない。また、有害情報を実質的に判断するフィルタリング推進機関を国への「登録制」にすることについても、公的関与の余地を残す懸念がある。
 青少年のためにインターネット上の情報について何らかの対策が必要だとしても、それが法規制によって行われなければ、表現の自由を損なうことにつながりかねないと危惧する。青少年を有害情報から守り、適切なインターネット利用を推進するための対策は、民間による自主的取り組みを尊重すべきである。

以上
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posted by 今だけ委員長 at 07:39 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時事ニュース

2008年05月27日

追い込まれた広告業界でガリバーが動き出した

 先週22日、世界のガリバー企業「電通」が7月から組織改編を行うと発表しました。プレスリリースを見ると日本企業の割には横文字を使った部署が多いなぁという感じです。


 広告関係の実情については深く理解できていないのですが、先日に本広告学会の森内豊四氏(元日経広告研専務理事)から今回発表された電通の組織改編についてのご意見を頂戴したのでご紹介します。

 電通が7月から行う組織改編の骨子は、15年ほど前に改編したAP本部制からの撤退で、ひとえに営業力強化を狙ったものだと思われます。
 「環境変化に柔軟かつダイナミックに対応」とか「課題解決力を備えた真のソリューション企業」とか、まるで広告会社のプレゼンのような言葉が並んでおりますが、本音で言うと、従来の広告だけでは立ち行かないので、なりふり構わずクライアント獲得を目指し、周辺事業にもビジネスチャンスを広げていくということでしょう。
 
 電通がそうなら他の広告会社はもとよりマスコミ各社のほうがもっと追い込まれているはずです。しかし、どこも電通のような組織改編を打ち出せておりません。さすが電通と言うべきでしょう。

 広告の危機をひしひしと感じさせます。新聞広告後退の底流に何があるか、新聞経営陣と編集局幹部はもっと本質をとらえる努力をしてもらいたいと思います。

 森内氏から的確なアドバイスをいただきうれしい限りです。この貴重な考察を広告営業系の方だけではなく、できるだけ多くの新聞人に感じ取っていただきたいものです。

posted by 今だけ委員長 at 08:30 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時事ニュース

2008年05月14日

マーケティング・リサーチの目的は仮説を検証し、意思決定に役立てること…だから?

 社団法人日本新聞協会が隔年実施している「全国メディア接触・評価調査」を13日に発表しました。
 だんだんと資料のネーミングが小難しくなっていると思うのですが、クロスメディア時代の新聞広告U「購買満足と新聞エンゲージメント」という報告書にまとめられています。

調査地域: 全国
調査対象: 15歳以上69歳以下の男女個人
標本抽出: 住民基本台帳からの層化2段無作為抽出
調査方法: 訪問留め置き法
調査主体: (社)日本新聞協会 広告委員会
実査・レターヘッド: (社)中央調査社

時事通信のWebニュースを引用
92%が「新聞読む」=朝刊25分、9割は自宅で−3,600人回答・新聞協会調査
 新聞を読んでいる人は92.3%、平日に朝刊を読む時間は平均25.1分−。日本新聞協会は13日、新聞や新聞広告に関する調査結果を公表した。
 新聞を読む人の割合は、2年前の前回調査より0.3ポイント減ったが9割台を維持しており、協会は「新聞離れと言われるが、依然多くの人が接触しているメディアだ」としている。
 調査は4回目で、昨年10月に実施。全国の15〜69歳の男女6000人を対象に、約6割の3620人から回答を得た。
 1週間に読むのは平均5.4日。新聞の評価は「社会への影響力がある」(60.7%)、「情報源として欠かせない」(53.8%)などの項目で、テレビや雑誌などを抑えトップとなった。
 一方、民放テレビは「楽しい」(63.6%)、インターネットは「情報量が多い」(45.1%)がそれぞれ最も多かった。

 これまでも総務省や情報通信関連の企業がこの手の調査資料を発表していますが、リサーチ方法によってその回答内容が大きく変わるようです。WEBによる調査だと新聞の接触時間は5分以下で、ネットの接触時間や信用度がとてつもなく高くなる。その反対に新聞業界が調査(訪問留め置き法)すると「一日あたりの平均購読時間が25分」になってしまうものです。

 どの数字を信頼すればよいのか良く分かりませんが、販売現場で直接お客様(読者・未読者含めて)の声を聞くことが一番。いま新聞がどのような位置づけなのか…実態が良く分かります。
 調査資料(マーケティング・リサーチ)はあくまでも、マーケティング戦略の意思決定に役立つ情報を得るために行われるので、「こういう回答を引き出したい」という仮説を意識した設問になっているものです。今回、新聞協会(広告委員会)が行った調査も広告主や広告会社・代理店向けに発信することを目的としているので、「へぇ〜こんなに読まれているのだ」と勘違いしない方がよろしいと思います。

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2008年05月13日

新聞社を守るため… とうとう始まった夕刊廃止策

 毎日新聞社が北海道エリアでの夕刊発行を8月末で廃止すると報じられました。
 同エリアでの毎日新聞の発行部数(日本ABC協会調べ:3月)は朝刊6万8千部、夕刊1万4千部。夕刊は1年間で4千部減っているとのこと。

毎日新聞は昨年末から配送コスト削減などに取り組んでいますが、道内の都市圏(夕刊購読の多くは企業中心)で夕刊発行をやめるという決断は「企業を守るため」。夕刊の記事を朝刊にスライドさせるとしていますが、読者への視点はなくなっているように感じます。

 地方紙との提携(輪転機、発送、販売店)を模索している毎日新聞社ですが、なかなか進まない理由のひとつにANY(のうちAY)の存在があるわけです。全国紙(毎日)の読者のパイは全国紙(毎日以外の)が山分けすると言わんばかりに、地方紙に対してAYが相当な圧力を掛けている(販売関係筋)そうです。全国紙の生き残り戦略が透けて見えますね。

 6年前に産経新聞が東京本社エリアの夕刊を廃止した時よりも、個人的にはあまりにもリアルすぎて・・・ショックでした。


【参考記事】
 毎日新聞、北海道の夕刊廃刊へ 9月から朝日新聞

 毎日新聞が北海道での夕刊発行を8月末で廃止読売新聞

 毎日新聞、北海道での夕刊廃止日本経済新聞

 毎日新聞が北海道の夕刊廃止へ産経新聞 

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2008年05月08日

足の引っ張り合いで何が生まれるのか?

 新聞販売店従業員による不祥事が後を絶ちません。とても不幸なことであり真面目に新聞販売業をされている方や新聞産業全体のイメージダウンは必至。そのようなイメージが先行して「新聞を購読しない」という方々も着実に増えています。
 販売店の不祥事に対して、新聞社のコメントは「当社取引先の販売店員がこうした容疑で逮捕されたことは遺憾だ」という決まり文句しか報じず、新聞社名(専売店のみ)をあぶりだすかのような狙い撃ち的報道のあり方に違和感を覚えます。
 これまでも新聞販売店従業員による傷害や横領など刑事事件はそこそこあって、最近になって増えたということではありません。しかし、紙面には登場しなかっただけで24時間体制と記事量の制約がないネットニュース時代では「えっこんなことまで掲載するの?」という軽犯罪までがニュースとして流れてきます。それは新聞販売店の不祥事を報道する一方で、その販売店を管理監督する側の新聞社のイメージダウンを狙った報道姿勢としか感じられません。この場におよんで業界内での足の引っ張り合いをする編集姿勢にはとことん嫌気がさします。

 毎日新聞販売店の不祥事を朝日新聞が叩き、逆に朝日新聞販売店の不祥事を毎日が執拗に報じる―。これを“競争”っていうのでしょうか?単なる足の引っ張り合いですよね。情けない…

 けさのMSN産経ニュースでこんな記事を見つけました。

 新聞購読者から集金した現金約4万5000円を着服したとして、磯子署は7日、業務上横領の疑いで、住所不定、無職の五十嵐正美容疑者(44)を逮捕した。
 調べでは、五十嵐容疑者は平成18年11月下旬〜同年12月上旬、以前勤務していた横浜市磯子区磯子の新聞販売店「朝日新聞サービスアンカー ASA磯子」で、購読者十数人から集めた購読料4万5000円を着服した疑い。
 五十嵐容疑者は着服した現金を、実績をあげるために結んだ架空契約の穴埋めにあてていたという。

 後段の「架空契約の穴埋めに…」という記事を新聞販売労働者はどんな気持ちで読んだのだろうか。そして、取材した記者は何を読者に伝えたくて書いたのか…
 末期的状況に確実に近づいている―そんな感じです。

posted by 今だけ委員長 at 07:12 | Comment(0) | TrackBack(1) | 時事ニュース

2008年04月16日

NTTアドが「情報・メディア接触の実態調査」を発表/調査項目の共通定義はできないものか…

 きのう、株式会社エヌ・ティ・ティ・アドが「情報・メディア接触の実態調査」をまとめ、「今や ダブルウィンドウは当たり前?テレビは大事な情報源。でも若い女性の9割が『テレビ+インターネット/携帯電話』のながら視聴」という長い見出しのニュースリリースをマスコミ各社に配信しました。
 調査は、2007年10月24日〜11月5日に全国7エリアの15〜65歳の男女個人を対象とした郵送方式。通信を中心としたコミュニケーションの実態把握調査「NTTアドデジコム調査」の一環として行われたもので、有効回答者数は6,669人ということです。

 調査のまとめでは、
1.日頃の情報接触について
 @日頃、接触している情報源を見ると、30代が境目となっている傾向が伺える。ライフスタイルが大きく変わる30代は、情報源にも変化が生じると想定される。
 A年代にかかわらず、女性のほうが、情報をより広く、積極的に取り入れている様子が伺える。
 BテレビCMは、性・年代を問わず、情報源としての接触率が高い。
 C「友人・知人の話」「家族の話」といった口コミも、情報源として活用されている。
2.生活に不可欠なメディアについて
 ふだんの生活で利用できるメディアを1つだけ選ぶ場合には、10代および女性20代では「携帯電話/PHS」、男性20代・30代では「パソコン/インターネット」となった。
3.TVのながら視聴について
 ダブルウィンドウと言われる「テレビを見ながらインターネットや携帯電話」を操作する“ながら”視聴は、男性よりも女性が、また、年代が下がるほど日常的に行われており、女性10代・20代では9割近い。

 調査資料を拝見しての感想は、生活に不可欠なメディアという定義がよく分からないなぁということ。単に情報(広告を含め)を収集するためのメディアとしてなのか、通信、ライフラインの確保までを含めた情報源として捉えるのかがいまいちピンときませんが、新聞が「パソコン/インターネット」、「携帯電話/PHS」に大きく引き離されていることが伺えます。新聞協会発表の「メディア別接触状況」(新聞広告データアーカイヴ)も出されていますが、これからはPCとケータイを細分化して調査する必要もありそうです。

 ネット(ケータイ)に配信されているニュースも情報提供元は新聞社だということをいつの間にか忘れられていくのでしょう…

posted by 今だけ委員長 at 20:13 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時事ニュース

2008年03月18日

印刷部門の別会社化に次ぐリストラ策は大手輸送会社切り替えによるコストダウン

 都内で毎日新聞社と新聞輸送従業員組合との間で、直接契約の切り替えによる輸送コストの引き下げに関連した紛争が起きています。

 新聞輸送株式会社は、1944年に朝日新聞社、毎日新聞社、読売新聞社、東京新聞社(現中日新聞社)、日本産業経済新聞社(現日本経済新聞社)の5社の出資によって創立。新聞社が言うところの新聞ジャーナリズムを堅持するために取材から新聞制作、戸別宅配まで一貫した流通体制がとられてきましたが、近年では人件費削減を目的に印刷部門が別会社化されてきました。
印刷部門の次は新聞輸送経費のコストカットに乗り出してきたというわけです。


 毎日新聞のやり方は新聞輸送との契約をいったん打ち切って入札制(エリアごとに)をとり、ヤマト運輸(本社:東京)軽貨急配(本社:大阪)と契約。自社で新聞輸送の増便をすることと併せて、新聞輸送(従業員)を下請け化することで2割から3割のコストダウンを図ろうというものです。

 3月9日から毎日新聞とヤマト運輸、軽貨急配との配送業務がスタート。毎日新聞は翌10日付の紙面に「おことわり」を掲載。「朝夕刊の配達遅れ、おわびします。本社の新聞輸送体制の変更により、一部地域で朝夕刊の配達遅れが続き、読者の皆様にご迷惑をおかけしています。早急に通常通りの配達に戻すよう努力をしております。


 「新聞社 破たんしたビジネスモデル」の著者 河内孝さんは「毎、産、中」の共同配送でコストダウンを図る必要性を指南されていましたが、毎日新聞経営者は大手配送企業との提携(広告収入?)と既存配送体制を下請け化(コストダウン)を目論んだ戦略なのかなぁと感じられます。
 10日付の毎日新聞にヤマト急便(5段)と軽貨急配(15段)のカラー広告が掲載されていてのも意味深いのですが…。

 「ANY」に入れなかった毎日新聞の戦略を地方紙が真似てくる可能性は大きい。どの視点に立ってこの問題を考えるか新聞労働者は問われているように感じます。

【この問題を取り上げたブログ】
▼毎日新聞社前で運輸業者切り捨てに抗議する緊急集会に97名が参加
http://blogs.yahoo.co.jp/syzenrho/21196955.html
▼毎日新聞社は運送業者の生存権を守れ!
http://blogs.yahoo.co.jp/syzenrho/21090648.html
▼毎日新聞運送業者 生存権求め抗議
http://www.harinw.com/2008-02-18news-mainichi.html
▼3.12運輸会社切り捨てに抗議する毎日新聞社前定例ビラ撒き
http://blogs.yahoo.co.jp/syzenrho/archive/2008/3/13
▼毎日新聞の5日連続「配達遅れ」背景に輸送体制の変更
http://www.j-cast.com/2008/03/18017978.html
▼速報!! 3.19毎日新聞社前新聞輸送決起大集会に180名が参加!
http://blogs.yahoo.co.jp/syzenrho/archive/2008/3/19

posted by 今だけ委員長 at 13:58 | Comment(2) | TrackBack(0) | 時事ニュース

2008年02月20日

2007年日本の広告費 新聞広告は3年連続で前年割れ

 きょう、世界の電通(高嶋達佳社長)が日本国内の総広告費と媒体別、業種別の広告費を推定した「2007年日本の広告費」を発表しました。
 国内の総広告費は7兆191億円で前年比1.1%の伸び。マスコミ四媒体広告費は3年連続で前年割れ(97.4%)、中でも新聞広告費(9,462億円)が前年比94.8%と大きく減少。

 電通の分析(新聞広告費)によると、2007年は、参議院選挙関連の出稿、健康食品等の出稿増等があった一方、前年出稿があったワールドカップやモバイルナンバーポータビリティの反動減や、主要業種である自動車や消費者金融の減少などの影響が大きく、前年比94.8%と厳しい状況となった。・業種別では、「食品」、「官公庁・団体」、「交通・レジャー」、「案内・その他」などが前年を大きく上回ったがあ、「金融・保険」、「自動車・関連品」、「飲料・嗜好品」等、従来の主要業種で依然として落ち込みが続いており、全体では減少した。・新聞種類別では、全国紙・県紙に比べて、スポーツ紙・ブロック紙がやや低調であった―ということです。
 スポーツ紙に加えブロック紙の低調だった理由は何なのでしょう?エリアを分散する中途半端なローカルメディアより、地元に根を張った地方紙の方に分があったのでしょうか…。


 見逃せないのはやはりインターネット広告(6,003億円、前年比124.4%)。特にモバイル広告費(621億円)が急成長しています。要因は携帯電話の普及もさることながら、通信料定額制や接続速度の高速化、大容量化によって、媒体としての利便向上が市場の成長を後押ししているようです。さらにmixiなどSNSサイトを活用した広告展開など小さい画面ながらターゲットへ的確に訴求する効果も確立されたのかもしれません。


 新聞販売店が注目する折込(チラシ)は、6,549億円(98.3%)で前年割れとなっています。読者離れによる部数の落ち込み(ABC発表資料では部数は減っていませんが…)が大きな要因ですが、折込チラシに新聞社のノンブルを付けて「広告特集」とネーミングを変え新聞社の収入にスライド(業界内のタコ足食い)されたり、電子チラシ(ほとんどないと思いますが)やダイレクトポスティングなども影響していると思います。

 さーて、これから新聞販売店はどう収入源を確保していくか。同業者同士で語られるのは、なにを武器にして宅配業者(日本郵政もかな?)と争うか。それとも宅配業者の下請け、孫請けとなって流通部門としてぶら下がるか―という話ばかり…。「いや、うちは読者を増やして収入を上げる」という店主サンはどれだけいるのかなぁ。私はまだ諦めてはいませんが…

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2008年02月17日

「メガ文字」で新聞離れを止められるか

 いよいよ新聞各社で文字拡大に伴う段数変更(15段編成から12段へ)の社告が出されました。

(各紙の見出しから引用)
朝日新聞
朝日新聞、文字を大きく情報たっぷり 3月31日から

読売新聞
「メガ文字」3月31日スタート
信濃毎日新聞
大きな文字、3月24日から 信濃毎日新聞


 その他、産経新聞、秋田魁新報、山形新聞などで文字拡大による12段編成が実施の方向で進んでいるようです。
 毎日新聞が先行導入した大文字(J文字)ですが、朝日、読売のみならず地方紙でも「文字拡大→12段編成」が浸透すると、1行10文字で15段のままだと浮いてしまう可能性もあります。毎日新聞も12段組みへの切り替えが検討されていることでしょう。

【YOMIURIオンラインから引用】
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 文字の拡大は新たな顧客獲得というよりは、購読者維持への対策。その効果に期待しつつも、「記事内容の充実」「読者のための広告」は日々バージョンアップをしていかないと購読者の新聞離れは止まりません。

 購読料も紙面編成も「右ならえ」の新聞業界ですが、一気にブランケット版からタブロイド版へ、縦書きから横書きへと大胆に編制替えをすることはやっぱり出来ないのでしょう。「出る杭」は打たれるどころか潰されてしまいますから…。

posted by 今だけ委員長 at 23:50 | Comment(0) | TrackBack(1) | 時事ニュース

2008年02月12日

郵政民営化もガリバー企業との提携で民間企業は付け入る隙はありません!

 新聞休刊日から一夜明けた12日、コンビニ大手のローソン(新浪剛史社長)と日本郵政(西川善文社長)が記者会見し、両者の店舗活用などの業務提携を発表しました。

 ローソン(8,564店舗:2007年2月末)と日本郵政(24,000局:2007年10月時点)は、今後3年間で800カ所の共同店舗展開を行うとのこと。2010年の日本郵政上場後の株式持ち合いも視野にあるということです。
 コンビニ業界も飽和状態が続く中、熾烈な競争が行われています。立地がその売り上げを大きく左右するといわれる業界では、いかに効率的に店舗展開をして売り上げを伸ばしていくかが重要課題。今回のような店舗の相互乗り入れによって固定経費をカバーし、POSシステムに則った売れ筋商品を無駄なく販売すれば過疎地域でも効率的に商売ができるわけです。

 日本郵政が民営化される前からローソンとの太いパイプがあったとはいえ、電通、日通、ローソンとそれぞれ業界を代表する企業との業務提携によって民間業者が入り込む隙は閉ざされる一方です。
 「何のための民営化だったのか?」結局は大きな企業をよりさらに大きくするためのアメリカ向け小泉・竹中の奇策だったとしか思えません。2010年の上場では1株いくらの値になるのでしょう。すでに予約している政治家がいたりして・・・

 流通業界もこのような動きを機に企業間の業務提携や合併が加速するかもしれません。宅配事業も独自路線を貫くのか、はたまた大企業への「ぶら下がり」へと舵を切るのか―。より多く汗を流せば報われる状況ではなくなり、勝てるコンテンツ(データ)を持ち合わせていなければ勝負にすらならない時代にな
ってきたということです。


【プレスリリース】
ローソン、日本郵政と総合的提携に関して合意
日本郵政株式会社と株式会社ローソンの総合的提携について


 日本郵政株式会社(東京都千代田区霞が関、取締役兼代表執行役社長:西川善文/以下「日本郵政」)と株式会社ローソン(東京都品川区大崎、代表取締役社長CEO:新浪剛史/以下「ローソン」)は本日、両社の総合的提携に関する合意書に調印いたしましたので下記の通りお知らせいたします。今回の提携は、ローソンから両社の経営資源を活用した新たな提携内容を提案し両社で検討を重ねた結果合意に至ったものです。

1.合意書の骨子
 日本郵政及びローソンは、全国のお客さまの利便性向上と地域社会への貢献ならびに両社の収益向上を目的として、ローソン及び日本郵政グループの経営資源を効果的に活用した取組みを推進することに合意しました。
2.具体的取り組み内容
(1) 双方の社会インフラ及びネットワークインフラの相互活用によるお客様の利便性向上のために、また郵便局ネットワークの維持・増強に資するために以下の事項について、検討を進めます。
 ア. 郵便局内で商品・サービス等を提供する新しいモデルの構築
 イ. ローソンからの物販・サービス、様々な機能等の提供による簡易郵便局を含めた郵便局業務のサポート
 ウ. 双方が保有する不動産を活用した店舗出店、併設出店
 エ. 双方の商品・サービス等の提供、委託、共同開発
(2) 双方の経営効率化のために、店舗運営、調達(ギフトをはじめとした商品及びサービスの共同仕入)、物流(共同配送)、金融、人材活用等の共同取組みの可能性について、検討を進めます。
(3) ゆうパックの品質向上及び取扱拡大に関するこれまでの実績を踏まえて、双方のサービスの品質向上及びゆうパック取扱増加のために両社で協力して必要な措置を講じてまいります。

posted by 今だけ委員長 at 10:05 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時事ニュース