また真実がねじ曲げらた判決が出された…。
週刊新潮(2009年6月11日号)に掲載された「『新聞業界』最大のタブー『押し紙』問題を斬る!」(4回連載)の文中に、「実際には読者に配達されない『押し紙』が、販売部数の30〜40%あり、それにより年間約360億円の不正な収入を上げた」との表記が事実と異なるとして、読売新聞3本社(東京、大阪、西部)が、週刊新潮とフリージャーナリストの黒藪哲哉氏(53歳)に対して5500万円の損害賠償と謝罪広告を求めた裁判の判決が26日、東京地裁(村上正敏裁判長)から出されました。
東京地裁が下した押し紙裁判の判決理由はこうでした。
@読売新聞の残紙率は4〜5.3%にとどまっている(ABC協会資料)
A販売店との間の過去の裁判の判決でも、読売新聞による“押し紙”を認定した例はない
とのことから、「報道機関である読売新聞に対する一般国民の信頼を大きく損なう記事」として、週刊新潮に掲載された記事自体に根拠はないと判断しました。
▽新潮社に賠償命令…新聞部数巡る記事で本社勝訴(読売新聞 5月26日付)
http://bit.ly/m4TOxl
▽"押し紙裁判"敗訴の黒薮氏「読売新聞は紙面で論争を」(ニコニコニュース 5月27日付)
http://bit.ly/jeR8zu
▽読売新聞が「押し紙」報道で週刊新潮を提訴(当ブログ 2009年7月9日)
http://bit.ly/jZmtoK
26日付けで「読売新聞 押し紙裁判」をググってみると、ウェブ版で発信していた新聞社のサイトは共同、時事を含めて24紙(以下に掲載)。どこの新聞社も共同配信を掲載したもので、一歩踏み込んで解説を加えた記事は見当たりませんでした(書けるわけがないか)。当事者の読売新聞が判決理由を最も詳細に書いている程度です。新聞社ではありませんがニコニコニュースも直接、黒藪氏へ取材をした記事を掲載していました。
昔から「新聞業界のタブー」とか、「業界のブラックボックス」などと言われ続けてきた新聞社による販売店への押し紙問題。業界関係者以外の方にとっては「大きな問題」ではないかもしれませんが、内側にいる人間としては「また真実がもみ消された」という思いでいっぱいです。
記事を書いた黒藪さんは滋賀県のポスティング会社(社長は元YC関係者)からの取材をもとに、押し紙の実在を証明しようとしましたが第三者を介した論拠の立て方や自身の経験からの憶測による記事化が、信ぴょう性を含め裁判官が自らの正義をかけた(過去の判例を覆して)判決を書くにまでは至らなかったのでしょう。
販売店が「押し紙」を理由に廃業に至った賠償請求を新聞社へ起こしたとしても、証拠不十分(部数の注文書には※必要以上の部数を購入しないでください―と書かれてある)で請求棄却されるケースがほとんどです。でも実際には補助金で横っ面を叩かれると「部数ノルマ」を受け入れざるを得なくなってしまうのは、新聞販売店のみならず多くのディーラー側が背負っている問題でもあるわけです。嘘がまかり通る企業のなかで、従業員はマインドコントロールされてまた同じことが繰り返されていくものです。
「インテリが作って、ヤクザが売る」とは、故伊丹十三舛田利雄監督の映画「社葬」のワンシーンですが、新聞社の実際の商習慣が正常だと内部の人間は誰も思っていません。ただ、おかしなことを「おかしい」と声をあげるのが怖いだけなのです。そして会社を卒業してから「押し紙」の暴露本を書くOBが絶えないのもこの新聞業界の不正常な問題でもあります。
▽自由報道協会主催の記者会見
【26日付けで今回の判決をウェブ版で報じた新聞社】
読売新聞、朝日新聞、毎日新聞、産経新聞、北海道新聞、岩手日報、河北新報、秋田魁新報、茨城新聞、スポーツ報知、山梨日日新聞、中日新聞、北國新聞(富山新聞)、福井新聞、神戸新聞、デイリースポーツ、徳島新聞、西日本新聞、佐賀新聞、長崎新聞、宮崎日日新聞、共同通信、時事通信