2005年10月20日

記者クラブ 権力に楔は打ち込めるのか?

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記者クラブ―市民とともに歩む 記者クラブを目指して―
著者 現代ジャーナリズム研究会(柏書房)1,030円

 現在、週刊金曜日編集長の北村肇氏が新聞労連委員長の時に新聞労働者との共同作業で書き記した1冊。
 記者クラブは新聞や放送の各記者が、国会、県庁、市役所、警察や裁判所、大手電力会社などに一室を設け、広報から発表されたものを原稿に仕上げるセクション。記者クラブの既得権なのか部屋の賃貸料は払われていないところが多く、各紙の記者の机なども貸与されているところもあるという。
 新聞人は「取材しやすい」「官僚や役人の動向をチェックする」と主張するが、本来の取材活動よりも『権力のリーク』をそのまま記事にして役人のお先棒を担ぐ横並びの報道が、記者クラブにはあると思わざるを得ない。記者クラブを廃止した鎌倉市などに対して、「情報隠蔽の恐れ」などと取り上げる向きもあるが、何も発表ジャーナリズムを読者が望んでいるわけではない。
 また、記者クラブには誰でも入ることは許されない。新聞協会に加盟するなどの『身元』が明らかではない記者は出入りできないことを考えると、やはり既得権を守る親睦団体というイメージにしか受け取れない。
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2005年10月15日

新聞奨学生生活って「けっして辛いことばかりじゃない」

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それいけ新聞販売店―18歳、これがわたしの出発点―
著者 渋谷 由美子(社会思想社)1,300円

 山形県出身の著者が東京での学生生活を夢見て、自ら学費、生活費を捻出するために考えた結論が「新聞奨学生」。上京から2年間の新聞奨学生で得た体験談。
 新聞販売店に初めて足を踏み入れた時に「しまった!」と思うほど異次元の世界に見えた新聞販売店の実情。住み込みで、朝夕の新聞配達と集金の仕事をしながら、その販売店に勤める従業員の朝夕の食事を作ることも日課になった。
 「トンコ」の説明がオモシロい。「給料もらったらトンコ」、「集金したお金がたまったらトンコ」、「配達中に嫌になってトンコ」いわゆる『トンズラ』である。
 新聞屋家業の大変さにも触れており、日頃のストレスを発散させるために宴会は必要。少々酔っ払い気味で朝の配達をしても許してやって!と著者は言う。拡張団の話もオモシロく、そしてリアルに記されている。
 そのような2年間に及ぶ新聞販売店で働いた体験がこの本となり、日本ジャーナリスト専門学校の「ジャナ専大賞」を受賞した1冊だ。
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2005年10月09日

マスコミ論を研究するには良い哲学書でした?

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マスコミの総合理論
著者 稲葉 三千男(創風社)4,944円

 1987年初版。5部構成になっており、一つひとつの論が深く論じられているが、難しい哲学書という内容。
第一部は「コミュニケーション論」ちょっと難しすぎる。哲学的。
第二部は「マスコミ論」マルクス主義のマスコミ論と組織悪としてのマスコミ論を展開。
第三部は「ジャーナリスト論」マスコミ労働の特性。新聞労働の中の記者(記者クラブの閉鎖性、規制する側・される側、権力への協力・非協力、記者の特権への反省、真実報道の執念)について触れている。
第四部は「ジャーナリズム論」ニュースの真実性と虚構性。事実と流言。放送ジャーナリズムの思想にも触れている。
第五部は「広告論」で完結?
「あとがき」にはもっと分かりやすい表記がされていると思いきや「ダメだし」の展開で、学者が一つひとつの言葉までも理屈だてて理論構築されている。難しい・・・。




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2005年10月08日

新聞のこれまでの歴史も複雑!これからの将来はもっと…

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日本マス・コミュニケーション史[増補]
著者 山本 文雄(東海大学出版会)2,575円

1970年の初版。著者は当時、東海大学の文学部教授として「日本新聞史」や「新聞編集論」、「世論の構造」などを出筆。新聞が辿ってきた歴史だけではなく「新聞・雑誌・放送・映画」の歩みを一括してまとめられている。
幕末・明治時代前期では、自由民権運動と言論界、政党機関紙の発達によって、その成型が育っていく様が記されている。
明治時代後期には、商業新聞への転換、日清・日露戦争下における主戦論、非戦論の対立から社会主義新聞の出現を見る。
大正時代は、新聞の言論活動東京全紙の休刊事件、通信社の発達。ラジオの出現などにも触れている。
昭和時代では、太平洋戦争までのマスコミ界への言論統制、大本営発表の様子が記され、激化する新聞販売部数競争の販売協定まで盛り込まれている。そして戦後。連合軍のマスコミ政策から始まり、「新聞の言論活動」「激化した販売競争」「民間ラジオの登場」「テレビ時代へ」と続けられている。

販売の過当競争では、1960年5月に実施された「新聞用紙の割当制と購読料の統制廃止以来、自由競争の口火が切られ、翌年末に共販制から各新聞企業別の専売制に移って、本格的な競争体制がスタートした。日本経済の成長と並行して各新聞社は増ページ、広告収入の増加、18年間で7回も購読料を値上げしても破綻しないという恩恵を被ってきた。しかし、新聞経営は一時悪化を見る。原因はオイルショックによる不況の波をかぶったのではなく、新聞社間の過当競争という内部的問題である。現在はカニバリゼーションというのだろうか。景品付販売や無代紙を使って読者を獲得する違反行為が横行し、経営的に厳しくなっていく。

そして現在。著者が21世紀後半の新聞産業をどう予想するだろうか。

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2005年10月04日

「新聞屋だって人間なのだ!」新聞販売労働運動の第一人者が綴った自分史

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けつまずいてもころんでも−新聞販売労働運動私史ノート〈第一部〉−
著者 サワダ オサム(滋賀県新聞販売労働組合)2,200円

 新聞販売労働運動の大先輩であるサワダオサム氏が、「新聞幻想論」に続き1996年に発行した自分史の記録。
サワダ氏が滋賀県の大津市で販売店の店主らと労働組合を立ち上げるに至った背景には、新聞販売店の劣悪な労働条件を招いているのは新聞社との片務契約により、発行本社との取引関係の矛盾を正すことに決起した。日ごろは競争相手の他新聞販売店の店主らも「そのような闘いならば…」と団結する。
 そして、滋賀販労を結成し、1年後には全国新聞販売労働組合連絡協議会(全販労)に参加する。全販労は1977年5月に横浜で結成された新聞販売労働者がはじめて組織した全国組織。当時の加盟組合は河北新報仙台販売労働組合(仙台)、新潟日報販売労働組合(新潟)、全国一般神奈川地本新聞分会(横浜)、全商業京都府支部新聞分会(京都)で組織され、日本新聞労働組合連合(新聞労連)の支援を得て結集された。
 「新聞販売正常化」に全精力を尽くして闘った著者の意気込み、販売労働者の団結、新聞社体質への指摘、「新聞販売問題」を国会質問まで展開する手法などが伝わってくる。
 サワダ氏は今年70歳を向かえ、新聞販売労働運動から引退を表明した。サワダ氏の凄まじい運動の歴史は残るが、今の新聞販売の現状は一向に改善されていない。販売問題一つ改善されない新聞業界は、インターネットの普及により「紙」新聞の存在自体を危ぶまれても自らの業界構造の問題を改善することが出来ないでいる。
 長い歴史を持ち、再販制度などに守られている「新聞社」は、時の流れや消費者(購読者)のニーズには鈍感なのだ。

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2005年09月30日

日本の総広告費の25%が新聞広告?全国紙の広告需要と代理店の仕業

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新聞広告読本
著者 朝日新聞社広告局編(朝日新聞社)1,750円

 1991年に発行された新聞広告の流れが、フローチャートにまとめられたという印象を持った1冊。今だけ委員長はジャーナリズムの話より、販売の実態と広告の実情にはじめに関心を持ったため、広告に関する書籍が多い。
 電通の掌に実は新聞も含めたメディアが乗っかっている。だから電通のいわば言いなりになってしまう。広告業界の発展が生み出したものは、日本の大量消費型生活となる。無駄が金を生むシステムになってしまった日本。
 この書で「新聞の広告だから信頼を受けている」という記述があるが、もうすでにその化けの皮は剥がされた。水増し部数のからくりを指摘するブログジャーナリストも増えているなかで、新聞は何を持って国民から信頼を得ようとするのか?
 新聞の広告収入が年々下がっている。原因はネット広告にその大半を奪われているからだが、広告主が紙媒体を活用しなくなったのではなくて、広告代理店が予算の振り分けを変えているということを新聞経営者は気づいていないのだろう。
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2005年09月28日

日本の新聞は2030年になくなる!

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新聞がなくなる日
著者 歌川 令三(草思社)1,470円

 今月の15日に出版されたばかりの新刊。久しぶりに現実味のある新聞業界関連書。
 新聞の個別宅配が2030年に無くなると断言する著者。ネットの普及によって世界が変わっていく中で、日本の大新聞社経営陣はその対策を何も講じようともしていない。いや何も講じられない。
 これまでの「20世紀型モデル」の経営は@部数増加と戸別宅配網の確立A月極め購読料の徴収で販売合戦が激化。拡張のためにオマケ付販売や増ページを展開B輪転機の導入Cカラー印刷などの設備投資D新聞紙面広告の拡大(電通の誕生)E新聞社の文化的事業の参入―。
 韓国のネットジャーナリズムの現状についても紹介されている。韓国の状況を見ればこれからの日本の新聞がどうなって行くのかが垣間見れる。オーマイニュースについても触れている。新聞人の「読み」の甘さを鋭く指摘!若年層の新聞離れのスピードや新聞とネットとの閲覧時間の逆転現象などを挙げながら、新聞があと25年後には姿を消すと結論付けている。
 自分もこの業界に身をおいているが、働いていながらも著者の捉え方、予想には同感させられる。信じたくはないが、おそらくこの書籍に書いてあることが現実のものになるだろう。著者の予測よりもっと早い時期に…。
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2005年09月26日

ナベツネの独裁政権は読売新聞にとってプラス?マイナス?

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渡邉恒雄回顧録
著者 伊藤 隆・御厨 貴・飯尾 潤(中央公論新社)2,300円

 本書は「中央公論」1998年11月〜1999年6月までに連載された「渡邉恒雄 政治記者一代記」と1999年8月号に連載された「我が実践的ジャーナリズム論」をまとめたもの。
 ナベツネの半生が記してある。日本共産党入党と除名に至るまでの話。東京大学哲学科での心境などは当時の学生とそう大差は無い。しかし、新聞記者への道を志し始める頃から、政治との密接な関係が芽生えてくる。田中角栄、中曽根康弘らとの関係・・・。ナベツネのジャーナリズム論は報道面での客観報道と社説などに関する問題は「はっきり」と新聞社の姿勢を主張するべきだと述べている。
 読売新聞が10年前に社説で取り上げた「改憲論」は、1979年にナベツネが論説委員になってから自立国家にふさわしい憲法に変えるべきだ−との一貫した主張そのものが読売新聞の大勢になったことなどは、新聞記者のエゴを通り越して独裁者としか言いようが無い。
 ナベツネは政治評論家、プロ野球団オーナー、新聞人、世界一の発行部数を誇る新聞社の経営者という顔を併せ持っている。読売新聞の主筆までも・・・。読売新聞社におけるナベツネ時代はいつ終焉を迎えるのか。
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商売人とマスコミ人の狭間で・・・読売新聞の販売戦略が新聞過当競争を生んだ!

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闘魂の人−人間務臺と読売新聞−
著者 松本 一朗(竹井出版)1,236円

 務台光雄。読売新聞の販売の神様として、今日の読売新聞販売網を創り上げたといわれている。
 東京紙から全国紙へと大阪、九州への販売部数拡大の道こそが、務台氏の情熱であったと描かれている。
 報知新聞へ1923年2月に入社。販売第一線の道を歩み始め、新聞勧誘の仕事も相当実践してきた叩き上げ。関東大震災の被災時の新聞発行の経緯なども詳細に記されている。
 読売新聞の販売を取り仕切る「白紙でも売ってみせる」というセリフが有名だが、新聞という商品を売る、部数を拡大させるというエネルギーだけは見事。新聞社以外の経営者であれば賞賛されるだろうが、新聞という商品が「オマケ付」で売られることが当たり前になった販売手法を築いたのも同氏であることに間違いは無い。
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2005年09月22日

地方紙が追い求めるのは所詮『大新聞社』の背中なのか

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地方紙の時代か!
著者 新聞労連新聞研究部編(晩聲社)1,300円

1980年発行の書籍だから四半世紀前の1冊。ジャーナリズムの問題は今とほとんど論点が変わりなく、ネットという単語以外はすべて現代に通用する内容だ。現在コメンテェーターとして活躍している毎日新聞社出身の岩見隆夫氏なども寄稿している。故新井直之氏も「地ダネとは何か」と題して寄稿している。大状況を伝えるために取材網を拡大させたものの読者と直接関係ない過剰報道がマスコミ離れを起こした原因と指摘するや、小状況(地ダネ)も扱い方次第では大状況に発展すると述べている。また、読者が新聞にもっとも期待するのは「読んでものを考える資料にしたい」からだと分析。世論を起こす記事と大状況と小状況を結ぶ記事の必要性を訴えている。
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2005年09月19日

言論・表現・出版の自由は分かるが「知る権利」まで業界が押し付けられる必要はない!

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本と新聞−再販制度を考える−
著者:原 寿雄・内橋克人・四十物文夫・安江良介(岩波ブックレット384)400円

新聞労連と出版労連が主催した「緊急シンポジウム 再販制度の尊属を考える!」の記録。
再販制度とは多くの商品は、メーカー(生産者)がディーラー(小売店)に対して販売価格を決定することが、独占禁止法で禁じられている。販売価格は本来ディーラーが決めるべきものであり、同じ商品でもその店によって値段が違うというのが当たり前になっている。しかし、本や新聞(著作物というが)は出版社や新聞社がディーラー(販売店)に対して販売価格を指定することが独禁法で認められている。これを再販制度(再販売価格維持制度)という。
しかし、公取委は政府がアメリカから推し進められる規制緩和政策の中で、著作物の再販制度の廃止、見直しを余儀なくされている。この書籍は1995年に発刊され、新聞や出版業界がこぞって「文化を守るため」と再販制度撤廃論を阻止しようとしていた最中のシンポジウムである。現在は2002年に出された「当面は維持」との結論に若干の安堵感はあるが、再販制度の前にネットメディアによる買収劇や消費税引き上げなどが発生した場合の購読料と部数の関係を見据えると再販制度よりもっと業界を挙げて検討する課題は多いはずなのだが。
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2005年09月17日

新聞産業はまさに巨象!時代の流れを無視してゆっくりと歩く経営体質が根底に…

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21世紀のマスコミ「新聞」−転機に立つ新聞ジャーナリズムのゆくえ−
著者 桂敬一・服部孝章・須藤春夫・伊藤洋子(大月書店)2,200円

 今年は戦後60年。この書籍は1997年発刊なので戦後50年までに新聞ジャーナリズムが辿った道を当時の事件に対する新聞の姿勢、マスコミの役割を総括的に記されている。新聞という書名ではあるが新聞の販売問題には一切触れておらず、現役を引退した新聞記者かこれから新聞記者を目指す学生などをターゲットにした内容にまとめられているという印象を持つ。
 オモシロいのが、冒頭の「本巻のねらい」に記されている一言「新聞は、21世紀初頭10年ぐらいを経たのち、産業的状況を一変させているに違いない。だが、それがどんなものとなるのかは、いまだに判然としない―」新聞は何も変わっていない。法律に守られ、真のジャーナリズムに立ち向かう人は組織を離れ、販売問題に一向に改善されない。変わったといえば印刷部門の別会社化が進み、広告収入がネットに食われ始めたということだろうか。
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2005年09月11日

新聞記者はあまり業界内の恥部を語ろうとしないが、青木氏は踏み込んだ!

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新聞との約束−戦後ジャーナリズム私論−
著者 青木 彰(NHK出版)2,500円

 著者である青木氏の記者生活の原点と戦後ジャーナリズム(立松記者事件・60年安保・皇室報道)の分析。社会部記者時代に味わったジャーナリズムの衰弱と「報道協定」など青木氏が新聞に携わった50年間の歴史が時代とともに見えてくる。新聞販売の問題にも触れ「専売店と本社との関係は複雑微妙である。新聞社と専売契約を結ぶ独立経営体の販売店との間には、拭き難い不信感があるといわれる。本社は押し紙と称する増紙の押し付けなどを通して店の利益をしぼり取ろうとし、店側は補助金や拡材費の名目で本社からカネを引き出せるだけ引き出そうとするからだ。一方、大型拡材や無代紙の横行する販売競争、押し売りまがいの拡張団の使用を自粛する正常化申し合わせが絶対といっていいほど守られないのは、本社と店側とが責任のなすり合ってはいるものの実は、共犯関係だからである」―
新聞を離れると販売問題も見えてくるのだろう。

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2005年09月10日

自分が身を置く職場は正当化しがちだが、新聞を離れて見えてくる真実!

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見る 読む 叱る 私のメディア評論
著者 青木 彰(東京新聞出版局)1,500円

はじめに「小沢一郎氏VS政治記者」の対決の構図が書かれている。政治取材の慣行を拒否する小沢流マスコミ改革に対して、太刀打ちできない記者が増えていることに警鐘を鳴らし、今日のジャーナリズムのひ弱さの証明だととも述べている。
著者が元東京新聞の記者時代に連載していた「メディア評論」がまとめられているが、新聞社を離れ、一読者になってから思ったことは「新聞のことは新聞を離れてみなければよく分からない」ということ。
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2005年09月09日

新聞とは誰のためにあるのか?なぜ権力と対峙しなければならないのか

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紙面で勝負する!−「読者のための新聞」への討論−
著者 新聞労連新聞研究部(晩聲社)1,300円

 1979年発行。毎日新聞が経営危機の中で再建闘争の柱として提起された「開かれた新聞」をベースに書き記されている。討論・ニュースを考えるの章では、柴田鉄治氏や斉藤茂男氏らが「アメリカの新聞と日本の新聞」「オンブズマン・システム」「主観報道と客観報道」「権力との対決を」について討論したものが表記されている。また丸山重威氏の章では「読者の声」を重んじる必要性と新聞労働運動が目指すものの視点が印象的。
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2005年09月08日

新聞記者は市民生活から隔離されている!だから新聞離れは必然的に起こるのだ!

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腐敗したメディア−新聞に再生の道はあるのか−
著者 北村 肇(現代人文社)1,600円

 現在「週刊金曜日」の編集長で、元新聞労連本部委員長を務めた北村氏が「新聞の再生」を訴える1冊。北村氏は「新聞人の良心宣言」を創り、広く新聞労働者にジャーナリストとしての新聞人、「社蓄」からの脱却を訴えたが、現状はその当時と何ら変わりはない。
 入社間もない記者が「真実の報道とは何か」を悩んでいると、上司からは「そんなこと言う前にネタを取って来い」と罵倒される。販売局や広告局に至っては「金取って来い」というのが新聞社の内情だ。
 新聞ジャーナリズムの価値は「優秀な人材が確保できる新聞社」なのかも知れないが、業界構造の問題は明治時代から変わらない。その問題が解決しない限り、ジャーナリストを自称する者は新聞社という組織から抜け出すしかない。
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2005年09月07日

新聞の商業主義がジャーナリズム自体の権益優先型の情報化産業を生んだ!

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新聞ジャーナリズムの「正義」を問う−販売現場からの告発−
著者 黒藪哲哉(リム出版新書)1,155円

 新聞販売における商取引の実態を1980年代行われた国会質問などの資料も収録。新聞奨学生の過労死裁判から新聞販売店の劣悪な労働条件を追求。最後は再販制度の既得権防衛という観点から、新聞販売店から「1円募金」を新聞社が徴収し、政治献金として自民党に金が流れている「政治家との癒着」の実態を検証している。
日本の新聞史の検証と今後の展望を記した成城大学の有山輝雄教授のインタビューも読み応えがある。
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2005年09月06日

新聞の足元に自滅作用が始まった!

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新聞社の欺瞞商法−「押し紙」「折込広告」の実態を追う−
著者 サワダオサム・黒藪哲哉(リム出版新社)1,680円

 新聞販売のからくりと「押し紙」によって新聞業界が潤うシステムが記されている。高額化する拡材は現金まで登場しており、長期間の無代紙の横行にも警笛を鳴らしている。また、新聞業界の底辺からジャーナリズムを問い、自らの業界の襟も正せない新聞社に真のジャーナリズムは皆無であると断言している。
著者の澤田治氏とは長い間、新聞販売業界の裏側を教え込まれ、親交してきたが、先日、40年にわたる新聞販売労働運動から引退する旨を表明した。
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2005年09月05日

毎日大量に廃棄される新聞!発行部数の怪と押し紙のからくり

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押し紙−新聞配達がつきとめた業界の闇−
著者 森下 琉(同時代社)1,995円

 新聞業界のブラックボックスである「押し紙」。新聞社は広告収入を上げるために「読まれない」新聞を余分に印刷して販売店へ押し付ける。販売店も押し付けられた新聞ではあるが公称部数が増えることで折込チラシの収入が上がる。騙されて損をしているのは広告主に他ならない。
 そのような新聞業界で毎朝・夕新聞を配達している労働者は全国で47万人いるが、過酷な労働を強いられ、労基法も守られない無権利状態にある。この本では新聞業界に働くものなら誰でもわかる「押し紙」問題と、大新聞社に立ち向かった新聞配達労働者の裁判闘争を記したルポルタージュ。
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2005年09月04日

新聞社と新聞販売店の取引契約の実態を分かりやすく紹介!

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<新聞販売を考える
著者 村上 錦吉(有限会社ジャーナリスト協会)500円

 メーカー(製造者)がディーラー(販売店)に対して、定価販売を守らせる再販売維持価格制度(再販制度)は、アメリカが推し進める規制緩和によってそのほとんどが撤廃されている。しかし、新聞はいまだに再販制度に守られている。新聞業界の主張は「新聞は国民の知る権利を守る文化的な商品。再販制度が撤廃されれば地域によって配達手数料がかさみ、配達されない地域も出てくる」ということ。
 しかし、この本では再販制度も新聞社と新聞販売店の取引関係をハッキリさせることで、新聞業界(発行本社側)が懸念する再販問題について指摘している。

 ほとんどの方は新聞社と新聞販売店で流通している「新聞」を売買契約だと思っている人が多い。実際に新聞社が毎日制作する新聞を販売店が購入(毎月1回定数日を設けて当月の部数を注文)しているのだが、そこには「押し紙」、「拡張員の雇用主は本社」、「販売店改廃権・店主の交代権」、「本社が決める販売エリア」などの片務契約というブラックボックスが存在する。実態は『販売業務委託契約』なのだ。
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2005年09月03日

遠い販売正常化への道…熊日にいまでも宿る販売の精神!

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新聞 もう一つの顔−販売の暴走十八年−
著者 森 茂(旭出版)1,800円

九州地区は関東、関西地区と並んで新聞部数過当競争が絶えない地区。その理由は現地印刷工場の建設によって販売部数(部数拡大による広告収入増)を増やさないと経営がひっ迫するからだ。そんなこと地域の読者には関係のない話なのだが、全国紙の1社が進出すると他の2社も追随する構図は今も変わりない。

森さんはそんな九州の熊本にあって、長きに渡り販売を担当され「販売正常化」に取り組んで来られた重鎮。全国紙の乱売に負けず、地方紙が主導となって正常化を果たすべきだと訴え、新聞社、公取委、販売店主会の正常化から手を付けてていくべきだという姿勢は、今の熊本日日新聞社にも受け継がれている。

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2005年09月02日

1977年の新聞労連発行本もジャーナリズムの問題点は今と変わりなし…

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新聞が危ない−同世代を共有する人間として、ジャーナリズムの本質をさぐる!−
著者 新聞労連新聞研究部=編(晩聲社)1,365円

いま新聞社で活躍しているというより、テレビの司会者やコメンテェーターで活躍している方々(筑紫哲也氏、岩見隆夫氏など)が若かりし頃に寄稿したのだろう、今から28年前に発行された新聞労連編集の一冊(続編もあり)。
記者クラブの問題など内側から湧き出るジャーナリズムの危機感は、現代とそう変わりない。
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2005年08月31日

マスコミと広告の関わりを詳細にまとめた入門編!

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21世紀のマスコミ「広告」−広告は市民とマスコミの敵か味方か−
著者 桂敬一・服部孝章・須藤春夫・伊藤洋子(大月書店)2,310円

「21世紀のマスコミ」(全5巻)シリーズの中で、一番読み応えがあった1冊。高度消費社会において「無駄が金を創り出すシステム」に広告は加担しているのかを追及している。
新聞には欠かせなくなった折り込みチラシ広告によって、新聞販売店の経営が成り立っていることにも言及している。広告の社会性、表現力と多岐にわたる解説でまとめられているが、ネット広告(バナー広告)についても触れているが、ここまでネットビジネスが普及しようとは筆者も予想できなかったのだろう。
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報道の自由あれどマスコミの責任も問う一冊!

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無責任なマスメディア−権力介入の危機と報道被害−
著者 浅野健一・山口正紀(現代人文社)1,854円

浅野健一氏は2回ほど講演依頼をして快く来て頂きました。酒も強く、3次会までお付き合いしていただき、熱い議論を交わしていただける方です。
報道被害について常にマスコミの権力を監視する様は、一般市民の側に立った視点を忘れない元共同通信社の記者魂!
東北のブロック紙といわれる新聞社の4代目も彼の部下だったとか…。
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2005年08月29日

斎藤茂男さんの追悼集会をまとめた1冊!

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メディアの内と外−ジャーナリストと市民の壁を超えて−
著者 筑紫哲也・大谷昭宏・原 寿雄(岩波ブックレット)462円

 この3氏の講演を聞いたことがあり「なるほどな〜」と感心させられたこともありましたが、最近の「ニュース23」や大谷氏のエンタメ系コメントにはガッカリさせられる感も…。「黒田ジャーナル」は、今だけ委員長も1回だけ飲む機会があり「あの読売にいながら訴え続けた黒田さんの意気込み」を感じさせられた素晴らしい方だと思っている。その意味でも「大谷さん番組選んでね〜」っていう感じですか。
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2005年08月28日

活字離れではなく新聞離れ!新聞が読者から離れていったことを警告

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新聞が消えた日−2010年へのカウントダウン−
著者 新聞労連編(現代人文社)1,260円

新聞労連産業政策委員会が3年の歳月を掛けて創りあげた一冊。新聞販売・広告・これからの地方紙・ジャーナリズム・ネットとの関係―など本音と建前が右往左往する業界にあって、今までにない切り口で書かれた未来予想図!
新聞業界に働いている労働者がパラドックスに描いた本書の指摘を企業内労働組合がどこまで実践できるか…
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2005年08月27日

新聞販売労働者であった著者が業界問題を赤裸々に糾弾!

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新聞幻想論
著者 サワダオサム(ニュースマーケティング研究所)2,000円

1960年に上京し「食うと寝るに困らない」といわれた新聞販売店の門を叩き、「新聞屋かて人間なんや!」を信念に新聞社と闘い続けた著者が、販売問題を通じて見えてきた言論機関の恥部を自費出版でまとめた。
posted by 今だけ委員長 at 13:55 | Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍紹介

ブログをやらにゃいかんと思わせた一冊!

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ネットは新聞を殺すのか―変貌するマスメディア―
著者 青木日照+湯川鶴章(NTT出版)1,575円

湯川鶴章氏の講演を聞く機会があり、その事前準備にと買い求めた。新聞がヤフーなどネット企業の傘下に入ってしまうのか…。
posted by 今だけ委員長 at 03:17 | Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍紹介