2009年07月30日

R25式成功は「グループインタビュー」によるターゲットリサーチ

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「R25」のつくりかた
著者 藤井大輔(日経プレミアムシリーズ)893円


 ターゲットを絞れば「紙」でも手に取ってもらえる。M1世代は活字離れなんてしていないし、日本経済新聞を恰好よく読みたいけれど難しすぎて「手が出ない」。
 そんなM1世代をターゲットにしたフリーペーパー「R25」の元編集長が、その成功までのマーケティング手法をまとめた1冊です。


 「R25」創刊の経緯は、リクルートが毎年1回開催している新規事業開発コンテスト「NewRING(RECRUIT INNOVATION GROUPの略)」の2002年に準グランプリを受賞した「ペーパーポータル構想」が企画の発端です。リクルートは新しい事業を立ち上げたいと思う人たちが多く、このコンテストは毎回700グループが参加するほど盛り上がるそうです。この辺の社内風土は見習うべき点も多いし、経営者の決断力が大きく影響しているいと思われます。


 活字を読まない人に活字を読ませるためにはどうすればいいか、どんな本の仕立てにすればいいか、じゃあその本はどんな判型にしたらいいのか、どんなタイトルなのか、それはどこで読まれるべきなのかといった、R25式のたたかいが始まります。そのなかで一番重視したのが「グループインタビュー」。本文で紹介されているR25スタッフの熱い議論、挑戦はまさに『プロジェクトX』。リサーチに1億円を投資するリクルートの底地にも感心します。


 リクルートはそもそも情報誌を販売して利益をあげるビジネス。いわゆる「紙」ビジネスがその生業でした(有料誌7割、ネット2割、フリーペーパー1割の収入構造)。それが7年前の「ホットペッパー」の爆発的ヒットでリクルートの収入構造が大きく変わります。現在では有料誌3割、ネット2割、フリーペーパー5割へと収入構造が変わっています。
 情報がデフレ化している状況下で、有料化から無料化への波が来ていると著者は問いかけます。しかし「無料だからと言ってもコンテンツが面白くなければ読まれない」。そのあたりは新聞人も熟慮する必要があると思います。

 おととしの3月、著者の講演をうかがう機会がありました。時代をつくる人はやっぱり何かが違いますね。優れた能力に加えて人を包み込むような「魅力」を藤井さんに感じたことを覚えています。

 そういえば、きょうで「R25式モバイル」(朝イチmail・夕刊mail)のサービスが終了します。今だけ委員長もユーザーだったので、チョット残念。
http://r25.jp/b/static/a/static/stn/mobile

 講演をうかがった当時、藤井さんはこんなことを言ってました。


…「R25」というのはモバイルを持っていたり、駅のラックに広告、雑誌を立てられたり、中吊りにも広告が仕込めたり、PCサイトにも広告が仕込めたりで、7つ広告が仕込めるようになっているんです。M1ターゲットに対してクロスメディアということで。で、平日の行動動線でさっきも見たところを1日全部網羅できるようにしているのですが、「7つ全部買っていただくとより効果が高いですよ」という広告営業用のツールなんですが、だいたい5つから6つぐらいに仕込ませると、一気に印象とか行動とかというのは変わるということです。
 だからモバイルというのは、単体で広告を設けようというよりは、本誌とのクロスでこういったかたちで、ナショナルクライアントさんに「たくさんのメディア接触、コンタクトポイントを持つことが、なかなか動かしにくいM1を動かすソリューションになるんですよ」というかたちで、営業をしています。
 ただPCもモバイルも、かかっている投資に対してのリターンで言うと、まだまだという感じです。こういうフリーマガジンがあるから、いまみたいなかたちで、クロスメディアでモバイル広告も売れるんですけれど、それだけではちょっと商売としては成り立たないというのが、正直なところです。

2008年「新聞の自画像」:新聞労連産業政策研究会より

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2009年07月28日

アメリカの新聞ビジネス崩壊劇が3年後、日本にやってくる?

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2011年 新聞・テレビ消滅
著者 佐々木俊尚(文藝新書)750円

 インターネット社会の到来、メディアイノベーションがもたらす影響について、これまで既存のマスメディアへ警笛を鳴らしてきた佐々木氏。彼の著書はほとんど読んだが、先週発刊された本書には(彼が毎日新聞出身であるかもしれないが)これまでのような応援歌的な表記はみじんもない。

 「新聞の敗戦」とする第2章は全237頁のうち90頁を割いて、「(新聞は)マスメディアとして自力でビジネスを収益化させて生き延びていくことは、もう不可能なのだ」と断言する。


 業界人は「またいつもの新聞没落系か…」と侮ってはいけない。
 ネット万能論を前面に出す構成ではなく、ミドルメディア(特定の企業や業界、特定の分野、特定の趣味の人たちなど、数千人から数十万人規模の特定層に向けて発信される情報)がマスメディアを凌駕し、メディア広告の変化についても(業界人はすでに知っている話ばかりだが)もれなく記してある。

   コンテンツ=新聞記事
   コンテナ=新聞紙面
   コンベア=販売店
        が
   コンテンツ=新聞記事
   コンテナ=ヤフーニュース
   コンベア=インターネット
となる比率が間違いなく高まると佐々木氏は言い切る。

 マスメディアの業界人のマーケティング力のなさにうんざりしているのだろうか、1970年代生まれのロスジェネ世代(就職氷河期と言われた)の声に耳を傾けることなく、新聞社内でも読者とともに高齢化する新聞人の立場(人数も多く)が強く、ロスジェネ世代とのギャップが若者の新聞離れを引き起こしている大きな要因であると説く。
 そのほか、リクルートが展開する「R-25」や「タウンマーケット」のマーケティングについても独自の視点から評論している。時代の変化に合わせて評論、執筆をして飯を食うのは大変だと思うが・・・

 タイトルが「2011年 新聞…」なので、地デジへの切り替えによってメディアの再編が起きるという骨子なのかと思いきや、「アメリカでいま起きている新聞社の倒産劇は間違いなく3年後の日本でも起こる」、だから2011年なのだそうだ。
 この辺の理論については、日米での新聞ビジネスモデルの違いが大きいのでうなずけないが、何もしなければ2011年を待たずして消滅する新聞社がでてくるかもしれない。

  「一回、つぶれた方が良いんじゃないの?」。佐々木氏が予見する2011年に新聞を消滅させないために、新聞人はどう反転攻勢をかけるのか。
 聞く耳を持たない人間、自分が一番賢いと思っている人間が、新聞業界には多すぎる。売る努力もせず、マーケティングも勉強せずに、「素晴らしい商品を作っているのだから売れないわけがない」と販売店労働者に罵声を浴びせる新聞経営者は少なくない。このような光景を目の当たりにすると「もうダメか…」と思うが、まぁもう少しあきらめずにがんばってみよう。会社のポチになるくらいだったら、もうひと踏ん張り抗えるはずだ。

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2009年07月09日

新聞社がなくなったら、誰が公益を守るジャーナリズムに金を出すのか?

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COURRiER Japon(クーリエ・ジャポン)7月号
発行:講談社 780円

 つくづく日々発行される週刊誌、月刊誌の数は多いなぁと感じるのですが、ネットで何げなく新聞ネタをググっていたら、「サヨナラ、新聞(ジャーナリズム)」を特集している雑誌を発見。

 「クーリエ・ジャポン」。はじめて手にした月刊誌です。

 これまでの“日本的”な新聞没落系の切り口ではなく、広義では新聞への応援歌といったところでしょうか。プリンストン大教授のポール・スター氏は「(新聞がなくなれば)これから誰が権力を見張るのか」と提起します。

 ―新聞は私たちの目となり、他のどのメディアよりも強力に国家を監視し、私企業の行き過ぎをチェックする、「市民社会の木鐸」ともいえる存在だった。なるほど、新聞がどのような使命を完璧に果たしてきたとはいいがたいだろう。しかし、いま懸念されているのは、新聞がもはやそうした使命をまったく果たせなくなるかもしれない、ということなのだ。


 ネットの普及によって、「市民ジャーナリズム」が発展する可能性や言論と表現の自由がこれまで以上に確保されるかもしれないという指摘については、 ―ウェブでは先入見に基いた報道をひも付きのジャーナリズムが蔓延りやすいということもある。ウェブでは、プロフェッショナルな報道倫理に基づいて運営されているニュースサイトとブログの区別さえはっきりしない。危惧されるのは、行政や企業の腐敗だけではない。ジャーナリズム自体の腐敗も進行しかねないのだ。


 (現時点ではとした上で)紙媒体を廃止し、ウェブに完全移行することは自殺行為だとするポール・スター氏。宅配の縮小(週3日へ)やNPOジャーナリズムなどが盛り込まれた論文は、そのほとんどの事例が米国のことではあるが、スムーズに読み進められる内容です。


 文中に挿入されているコメントが、これまた膝を打ちます。
▼新聞がいまの規模と業務を維持していくとすれば、景気が回復してもほとんど利益を出せなくなると予測されている。
▼新聞社がジャーナリズムにお金を出せなくなり、ウェブも代替物を生み出せない場合、誰が公益を守るジャーナリズムにお金を出すのか?
▼新聞の後継者がウェブから登場するだろうと期待されてきたが、新聞が後継者の登場を見ずになくなってしまうことも充分ありうるようだ。

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2009年06月12日

ネットニュースの連載がアナログ出版

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 新聞崩壊
著者 J-CAST編集部(株式会社ジェイ・キャスト)1,500円

 小ブログでも紹介した「ネットメディアJ-CASTニュースも『新聞崩壊』の連載だそうです…」がアナログ出版され、きょう自宅に届きました。

 本書は、J-CASTニュースが2008年12月30日から2009年1月13日まで、連載した「新聞崩壊」の記事本文と、各記事に寄せられた読者コメントを再構成されたものです。きょう発売というか、限定販売という案内につられ注文したもの。ネットでは“タダ”で見れるのに…。
 私が投稿した「読者コメント」もしっかり載ってました(汗)

 本書の表紙にこんなことが書かれてあります。

  日本新聞社一大危機えている。
  広告激減部数落み。
  そして、なにより読者からの信頼らいでいる。 
  新聞崩壊してしまうのか。
  連載インタビューで「新聞える問題点」を
  様々角度からりにする。

 表紙下に、J-CASTニュースセレクション@とありますから、ジェイ・キャスト社ではネットでの連載をアナログ(書籍)に落とし込んで販売収入も稼ごうというわけですね。ネット媒体も広告だけではビジネスとして成り立たないのでしょう。なんだかんだ言っても「紙」は強いですからね。

 12の記事に対するコメントも一緒に掲載されているのですが、一番多かったのが(50コメント)、「押し紙」問題を取り上げたフリージャーナリスト黒藪哲哉氏のインタビュー記事でした。「押し紙」問題について、市民の関心は高くないと思っているのは新聞業界人だけかもしれませんね。

※一部引用します。
1:
減っているのは確かだろう。  2009/1/ 2 12:13
減っているのは確かだろう。 私は新聞は取っていないが、無料で廃品回収してるという廃品回収業者を名乗る訪問者が来たので、庭の粗大ゴミの回収をお願いしたが、実は新聞販売店の拡販担当者だった。 で、庭の片つけ後、新聞の購読の勧誘を受けたのだが、6ヶ月の契約で、洗濯洗剤:4箱、発砲酒(いわゆる第3種のビール):2ダース、レトルトカレー:2ダース、ウィスキー:1本、なんかのチケットだった。 いくら、販売店の主たる収入が折込広告だといっても、拡販コストに3ヶ月分ぐらいをつぎ込んでいるのではないか? 購読する気が無いのでお断りしたが、その後の雑談で、12月末契約更新が無い家庭が多かった。3月末では更に増えるだろうとかの話だった。 まあ、某朝日毎日とかは、中華、朝鮮半島を持ち上げてるのだから、あっちで拡販をすれば良いのでは? と思った昼下がりだった。
2:
僕笑っちゃいます  2009/1/ 2 12:36

押し紙の数字に驚きです、新聞は日ごろ環境問題とか格好つけているクセに環境に優しくないんですね。
これからは新聞をやめてネットオンリーにすることが環境に優しい。

3:
カラス  2009/1/ 2 13:06
自営業を営むわたくしの店舗の近隣に、某全国紙の販売店があります。近所でアルバイトをしているおばちゃんからの内緒のコメントです。『配達する部数は入荷の6割くらい。それなのにチラシ折り込み代は入荷部数分。週に一回廃棄する新聞を大型トラック2台で回収。アルバイトしてるから悪い事言えないけど、完全に資源の無駄使いだし、ボッタクリ業よね!あたし新聞読まないし(^O^)!』唖然!
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2009年05月26日

やはり、広告に頼らない週刊金曜日しか電通のタブーは書けません

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電通の正体 
―マスコミ最大のタブー―
著者 『週刊金曜日』取材班(株式会社週刊金曜日)1,200円


 新聞業界をはじめとするマスメディア(媒体社)の「広告スポンサーの報道姿勢」を問う声は少なくありません。

 例えば、たばこの広告を掲載している面に「喫煙者の肺がん発症率は○○%高くなる」といった記事は載せないなど「暗黙の了解」があります。掲載面を別ページに動かすのではなく、記事そのものをボツにしてしまう(それをやっているのも〇〇)ケースもあるというのです。

 最近では「パック広告」と呼ばれ、一見すると取材された記事のように編集された紙面(その記事を書いているのも〇〇)の下段には、その記事に関連する企業の広告が掲載されている記事体広告をよく見かけます(最近は紙面上段のノンブルに【全面広告】と表記している新聞社も増えましたが)。原発の必要性について「遠まわし」に書かれた紙面の下段には電力会社の広告が全5段で掲載されたりしていますね。

 また、2007年初旬に新聞の信頼を失墜させた事件も起きましたね。新聞社が裁判員制度のフォーラムや厚労省との共催イベントで、謝礼を払って水増し増員をしたという問題。全国地方新聞社連合会(この団体の後ろ盾も〇〇)という地方紙の任意団体が、紙面広告を受注するのと合わせてイベントの開催までを「パック商品」として行政機関へ売っていたものですが、人が集まらなければ媒体効果も問われるので「サクラ動員」までやっちゃったのでしょう。「人を集められなきゃもう使わないよ(広告を載せないよ)」という神の声があったと聞きます。

 そのような広告主と新聞やテレビをはじめとする媒体のつなぎ役が広告会社(代理店)であり、そのシェアの大半を握っているのが電通なのです。

 本書には電通と媒体との関係が赤裸々に記されてあり、巨額の広告費をつかさどっている電通の圧力に日本のマスメディアは屈しているという内容が容赦なく続きます。「マスコミを支配する日本版CIA」とはしがきに書いてあるほどですから、相当突っ込んだ構成になっています。これは広告費に頼らない週刊金曜日しか書けないだろうなぁ…。

 電通と取引停止になってしまったら、いまの媒体各社は死んでしまう―と言われるまで権力を持ってしまった電通の構造とその歴史が見えてくる一冊です。

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2009年05月15日

アメリカとイギリスの新聞販売の歴史「紙面競争」「価格競争」「景品競争」

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新聞の病理 21世紀のための検証
著者 前澤 猛(岩波書店)2,200円


 読売新聞OBの著者が2000年12月に出版したもので、21世紀に必要とされる新聞像、ジャーナリズムのあり方などが、欧米諸国との比較もしながら日本の新聞の問題点について詳しくまとめられた一冊です。


 著者は記者生活の中で忘れられない出来事が二つあると問題提起をします。ひとつ目はアメリカの有名なジャーナリスト団体「調査報道記者編集者協会」から特別表彰を受けた朝日新聞の記者(表彰の理由はリクルート事件の調査報道)が、表彰式に姿を見せず代理受賞したことを指摘し、「受賞したのはジャーナリストとしての記者個人だったのに日本の新聞記者は個人の独立性などがない」とし、調査報道などの評価も勤めている新聞社や上司の編集局長が受賞するものという風土があるという点。もう一つはベトナム戦争中にロケット弾の巻き添えになり殉職した記者が、国から叙勲を受けたことに関連して、「メディア企業の会長や社長の授与が増えているが、ジャーナリストが叙勲なるものに名を連ねることへの違和感と叙勲されることをありがたがるのはジャーナリズムへの堕落だ」と指摘します。
 この二つの出来事が、著者の「日本のジャーナリズムに対する疑問」を増幅させたきっかけであると述べています。読み進めていくと、日本は個人としてジャーナリズムを実践しているという意識が記者にはなく、企業ジャーナリズムに埋没しているという問題提起が随所に引用されています。


 第二章では「新聞の景品依存体質と読者離れ」と題し、販売問題についてアメリカとイギリスの新聞ビジネスの歴史を振り返りながら、「紙面競争」「価格競争」「景品競争」についての考察が詳しく分析されています。

 一般的に「紙面競争」は万国共通でも、日本は「著作物再販制度」の特権を享受しているため、「景品競争」に依存する販売戦略につながりやすく、「景品に依存する部数拡張政策」は経営的利益をもたらさないと断言します。
 アメリカでは「広告量・広告収入の増大」→「新聞価格の低下」→「発行部数の増加」という連鎖をたどり、19世紀末のアメリカの大衆紙の新聞経営は広告依存度を高めます。しかし「景品」による拡張はほとんど見られなかったとし、宅配ではなく一部売りを柱にした販売制度がその理由である可能性もあると分析しています。
 一方、イギリスでは「中央紙」「部数の寡占化」「膨大な発行部数」を築くため景品販売戦略を進めます。いわゆる今の日本の販売手法と同じです。景品競争の果ては@無料景品やコスト割れを招く物品の提供禁止A景品は懸賞と保険に制限という協定(日本でいう公正競争規約)を各新聞社が結ぶことになるのですが、またぞろ「景品競争」は再開され「ヘラルド(大衆紙)」は「200万部」、「部数第1位」を手中にするも経費を吸い込むアリ地獄の経営へ。そして1961年にはミラーグループへ買収され、以後「ザ・サン」と改題されます。結局は紙面重視に景品依存が負けた(読者はそう判断した)というのがイギリスモデルなのです。


 そのほか、前澤さんが私案として提起する「ジャーナリスト倫理指針」なども(同書の発行は10年前ですが)今に通じるものがあると感じます。

 日本の文化だから他国と比べる必要はないという方も少なくないのですが、紆余曲折がありながらも最終的には「紙面競争」で読者からの信頼を勝ち取るということが、生き残りへの道なのでしょう。

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2009年05月11日

国家権力に葬られた西山事件 小説で真実をよみがえらせる

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運命の人
著者 山崎豊子(1,600円)文芸春秋社


 山崎豊子さんの新作です。
 2005年から文芸春秋で連載の「運命の人」は、いわゆる西山事件を題材にしたノンフィクション小説。山崎さん流のアレンジを加えながら、主人公の元毎日新聞記者の西山太吉さんが国家権力に立ち向かう姿を描いています。丹念な取材をされる山崎さんならではなのでしょうか、登場人物の人間模様は読んでいてグッとくるものがあります。

 西山事件は1978年5月に国家公務員法違反で西山氏の有罪が確定。その後、2005年4月に「密約の存在を知りながら違法に起訴された」と国家賠償請求訴訟を起こしますが、昨年2月に「20年の除斥期間で請求権は消滅」とする東京高裁の判決により、原告敗訴が確定しています。

 沖縄返還協定を交わした米国では、密約の存在が明らかになっているにもかかわらず(米国立公文書記録管理局では閲覧可能)、日本政府はその文書の存在すら認めようとしません。沖縄返還協定時に米国と交わされた「密約」は闇に葬られたままなのです。
 西山事件の争点が雑誌などのマスコミよって「セックススキャンダル」と歪曲され、読者の反発を招き毎日新聞の不買運動が起きます。1977年に毎日新聞は一度倒産(その後、新旧分離をして経営再建)するのですが、同社が最後まで「報道の自由」や西山さんを守り続けたのかを検証すると、ある意味で組織ジャーナリズムの限界がこの西山事件で浮き出てきたように感じます。


 先月末に1、2巻が同時に発刊されましたが、「沈まぬ太陽」と同じく5巻までは出されるでしょう。財政が厳しい折、3巻以降はネットオークションで買うことにします。

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2009年05月03日

ネットは踊らされずリテラシーを身につけながら使いましょう

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ウェブはバカと暇人のもの
著者 中川純一郎(光文社新書)760円


 ロスジェネ世代の筆者が、ウェブニュースサイトの編集に携わりながら、博報堂(現在は博報堂DYホールディングス)勤務時代に培った企業のPR戦略の知識と経験から、ネット万能主義という仮想の世界を一刀両断した痛快かつ、実情を的確に指摘した一冊です。著者は4年前に「お金持ちになる新聞の読み方」という書籍も出筆しています。

 「凡庸な人がネットを駆使することで秀才になれるわけがないし、世の中によいものをもたらすわけでもない。むしろ凡庸な人が凡庸なネタを外に吐き出しまくるせいで本当に良いものが見えにくくなっている」とし、(言葉は悪いのですが)バカが発言ツールを手に入れて大暴れしたり、犯罪予告をするようなリスクにこそ目を向けるべきだと著者は提起します。

 「怒りの代理人」がネットのヘビーユーザーにはウヨウヨいて、「誰かをいじめたいだけ」という暇人が、個人(芸能人)だけではなく企業に対しても“揚げ足取り”をして、下手に出なければ不買活動(電凸行為)までやってしまう。無記名であることをいいことに…。

 おととし、毎日新聞が謝罪の検証記事まで掲載して大きな議論を読んだ「ネット君臨」騒ぎも「怒りの代理人」が正義感をみなぎらせ、徒党を組んで吊るしあげに躍起になったのかもしれません。しかし、新聞をはじめマスメディアは「怒りの代理人」に揚げ足を取られるような報道(会社の姿勢)であってはダメだというのが私の理解です。新聞は確かに購読している読者が顧客ですが、社会に向かって発信しているという自負があったり、記者クラブ制度などの特権を与えられているのですから、顧客とは全国紙であれば国民というくくりだし、地方紙であればその県民のことを指すのだろうと思っています。

 話はそれましたが、著者はこう言います。「ネットはプロの物書きや企業にとって、もっとも発言に自由度がない場所である」、「ネットが自由な発言の場だと考えられる人は、失うものがない人だけである」と。
 そういえば私自身もネットの使い方が変化してきたように思います。ミクシィもさっぱり更新しなくなり、個人で運営されているブログもリアルに面識のある方のものしか見なくなりました。ウェブの課題はメデシア・リテラシーへと移っていくように感じます。というより、ネットの評論家やベンチャー企業は、自分の領域を広げようとネットの良さそうなことだけをいかにもすばらしいもののように語りますが、踊らされないことが大切だということです。


 私も凡庸な人間なので、新聞産業(販売)の問題点をわかりづらくしているのかもしれませんが、バカはバカなりに書き続けていこうと思っています。よろしければお付き合いください。

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2009年04月30日

絶版は立ち読みできないのが難点…

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マス・メディア法政策史研究
著者 内川芳美(有斐閣)8,064円(絶版でオークションで14,000円程度)

 新聞業界にはさまざまな法規制があります。正確に数えたことはありませんが、200項くらいはあると記憶しています。ただし、現状と照らし合わせると形骸化しているものも少なくありません。法律が時代の変化に合わなくなっているのか、新聞業界が法律を無視して慣行化されているものがあったり・・・。


 私が末席を汚している新聞労連の産業政策研究会で、新聞に関連する法律の実態比較のために資料として購入しました。しかし、内容は新聞紙法の歴史がその大部分を占め、資料としてはあまり活用できないものでした。
 著書のレビューを参考にはしていますが、まず一度立ち読みをするのが一番ですね。


 新聞・出版編(大津事件の報道統制と緊急勅令;新聞発行停止行政処分権の廃止―明治30年新聞紙条例1部改正をめぐって;新文聞紙法の制定過程とその特質;新聞紙法改正運動とその帰結;言論統制装置としての出版物納本制度―出版物納付法案の問題と意味;内閣情報局の設立過程―日本ファシズム形成期のマス・メディア組織化政策;昭和前期マス・メディア統制の法と機構;占領下のマス・メディア)
放送編(戦後放送制度の確立過程;占領下の放送制度改革;アメリカの放送政策における社会的責任論―1946年FCCブルー・ブックの意義を中心に;イギリス政治放送制度;アメリカの放送と公正原則;放送におけるマス・メディア集中排除政策)
国際コミニュケーション編(新世界情報・コミュニケーション秩序問題;国際報道の法的倫理的諸問題―マクブライド委員会報告書を中心に;コミュニケートする権利の概念)


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2009年04月29日

新聞社の経営問題が見えてくる

   日本の五大新聞.jpg
徹底検証 日本の五大新聞
著者 奥村 宏(七つ森書館)1,890円


 最近、新聞をはじめとするメディア関連の書籍を読んで感じることは、時代の変化が著しいメディア業界にあって、新聞をテーマに執筆される方に高齢の方が特に多いということ。どうしても先輩方の結論は業界への応援歌でしかなく、精神論に走りがちなのですが、著者の奥村宏さん(1930年生まれ)は経営理論の専門家として冷静に新聞業界の問題点を指摘しています。それから多くの文献(引用文献は24)も紹介されているので、とても参考になります。

 読売、朝日、日経、毎日、産経の順(昔から朝・毎・読・日・産という順番でしたが…)で、各社の問題点が経営的な観点から指摘されています。
 第1章の読売新聞(独裁者が支配する世界最大の新聞)では、経営安定(1000万部を維持するために)のために右傾化したところで、政府や有力政治家に取り込んで国有地を払い下げてもらったり、銀行からの資金調達でも有利な扱いを受けることがあっても、発行部数には関係ないと指摘。読売の発行部数が増えたことで読者が右傾化しているとは到底言えず、販売店に配達されずに山積みされている「押し紙」が1000万部を支えているという公称部数の本質を分かりやすく解説しています。
 さらに、新聞社の経営を改善するためには新聞社そのものの在り方を変える必要があると主張する筆者。そのことを新聞記者、そして労働組合がさとることがまず必要なのではないかとメッセージを送っています。


 また、会社学研究家の肩書を持つ筆者は、新聞社と大学が似かよった構造であると解説しています。
 新聞社の生き残りについては、記者自身が専門性を持つことと、「人の顔が見える」小規模な組織へ再編すべきだとの結論を出されています。

 新聞社の経営などに興味がある方には、とても参考に一冊だと思います。

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2009年04月02日

新聞産業に危機感を持ち始めたころの本を読み返し

新聞は生き残れるか.jpg
新聞は生き残れるか
著者 中馬清福(岩波新書)735円


 新年度を迎え、久しぶりに書棚を整理していたら、中途半端に飛ばし読みをしたままの本がいくつか出てきました。

 この本も2003年4月が初版で、ここ数年の新聞没落ブームの前に新聞業界への警鐘を鳴らしたもの。内容はジャーナリズムにシフトした構成になっているものの、新聞が“生き抜く”ために必要なことが書かれてあり、とても参考になります。若者の新聞離れ、「表現の自由」絶対論の後退など編集系の方に読んでいただきたい内容がふんだんに取り上げられています。
 一方で、新聞の上から目線に対しても、鋭く言及しています。
「日本の新聞は旧武士階級が農耕商階級を教え諭す形で成長した教論型メディアだ、というのが私の考えだが、この教えを諭すスタイルの記事が、いま読者に強く嫌われている。もともと新聞が啓蒙的な物言いに走りやすいのは、自覚を呼びかける相手を本心では信用していないからではないのか」(以上引用)との著者の分析は、ほとんど納得できるものです。

 新聞人の常識がいつの間にか市民と離れていったのではなく、頼るものが新聞ではなくても済む時代になってきたいま、新聞は何をすれば生き残れるのか。興味深く読み返しができた一冊です。

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2009年03月18日

新聞ジャーナリズムの危機とは何か

  月刊創.jpg
月刊『創』 4月号
創出版 600円


 月刊「創」は各メディアの特集を定期的に組んでいますが、今回は「新聞社の徹底研究」と題し、全国5紙の経営的側面を取材した記事が掲載されています。
 ▽朝日新聞社の進める「体質改善」
 ▽読売新聞が担う1千万部の重み
 ▽機構改革で再生めざす毎日新聞社
 ▽日経新聞社とクロスメディア戦略
 ▽産経新聞社が掲げる「構造改革」

 また、業界の重鎮、原寿雄氏(元共同通信編集主幹)、桂敬一氏(立正大学講師)、北村肇氏(週刊金曜日編集長)、豊秀一氏(新聞労連中央執行委員長)の四氏による座談会「新聞はこれからどこに活路を見出すべきか」の討論が13ページにわたって収録されています。
 小ブログでも昨年3月8日に発行された同特集について「もうテキストにならないオールドメディアの重鎮」という表題で取り上げさせていただきましたが、今回の切り口も新聞の理念としては重々承知しながら、現社会とのかい離を感じてしまいます。


 新聞ジャーナリズムというテーマで構成されていますが、ジャーナリズム活動は新聞だけの特権ではないはずです。雑誌ジャーナリズムだって、ネットジャーナリズムだってあるわけです。もちろんテレビジャーナリズムも…

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2009年03月02日

新聞記者の方に読んでもらいたい

   新聞販売の闇と戦う.jpg
新聞販売の闇と戦う―販売店の逆襲―
著者 真村久三・江上武幸(花伝社)1,575円

 新聞社と販売店との取引契約は、よく片務契約などと言われます。もちろん契約書の内容も新聞社側が有利となる条項になっているわけですが、優越的地位の乱用に歯止めをかけるためには、司法にしか頼れるところがないというのもまた厳しい現実です。

 福岡で起きた「読売新聞押し紙裁判」、いわゆる真村裁判(YC広川店主の真村氏と読売新聞西部本社との裁判)は、業界人であればそのほとんどが耳にし、その結末を見守っていたはず。おととしの12月に読売側の上告が棄却されたというニュースを見たときに「まだ日本の司法はまともだ」と思ったほどです。しかし、その後の仕打ち(本書では村八分扱いされたと書かれています)は相当なもので、これが新聞社の(販売局)のやり方なのか、と憤りを感じます。
 この業界では、一度こじれた関係は修復できないのでしょう。なぜなら対等な取引関係になっていないからです。


 業界の暗部として存在する「押し紙」を指摘する著書は少なくありませんが、本書は販売店主の真村氏と弁護士の江上氏が実際に読売新聞西部本社を相手にたたかった7年間の足跡が克明に綴られています。巻末の資料編(判決文や訴状など)もとても参考になるものです。


 これは読売新聞だけの問題ではなく、業界全体の底辺に流れる産業構造の問題なのです。ぜひ、編集職場の方に読んでもらいたい、そして考えてもらいたい1冊です。2月18日初版発行。

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2009年02月28日

新たなビジネスモデル…探し続けてこの手の本を読みあさるも消化不良に

新聞・TVが消える日.jpg
新聞・TVが消える日
著者 猪熊健夫(集英社新書)735円

 「あまり大したこと書いてないな」と勤務先の社長が評していたのですが、借りて読んでみたところと、やはり消化不良かなぁという感想を持ちました。
 うわっけらの取材というか、多くの文献から引用したものに自らの考察を加えたものなので、自身の体験から問題点を提起されて解決へのヒントを提示してくれるというものではありません。
 著者は新聞社出身ですが「映像ビジネス」が専門ということで、テレビ関係の方は詳しく書かれていると思いますが…


 第2章の「巨大サイトへのニュース提供が禍根を残した」のところで、「紙」離れの原因をポータルサイトへのニュース提供であると断言し、結果的に広告収入もを横取りされていると指摘しています。
 ヤフーやグーグルのポータルサイトにニュース記事を配信しなければ、新聞の部数が伸びるのかというと大いに疑問があるところですが… 大手ポータルサイトとの提携(記事提供)をすると自社サイトへの誘導が効果的であるという調査結果も出ています。
新聞サイト利用者数は「毎日.jp」首位、一人当たり平均PVは「NIKKEI NET」(マイコミジャーナル)
 インターネット利用者動向調査会社のネットレイティングスが、インターネット利用動向調査「NetView」の2009年1月データの集計結果を公表。新聞社が運営するニュースサイトの利用者数では、「毎日.jp」が首位。2位はマイクロソフトと産経新聞社が共同提供する「MSN産経ニュース」。3位は産経新聞社のニュースサイト「イザ!」4位は「YOMIURI ONLINE」、5位は「NIKKEI NET」、6位が「asahi.com」という結果だそうです。
 ネットレイティングスによると「ポータルサイトとの共同提供であるMSN産経ニュースはもちろんのこと、毎日.jpやイザ! は、他社運営のポータルサイトの集客力を自社サイトに誘導した結果」と分析。新聞でヤフーと提携していないのは朝日、日経、共同通信で、グーグルと提携していないのは共同通信のみ。毎日と読売は双方のポータルサイトと提携しています。
 そう考えると、「毎日.jp」のファンが多いから日々「毎日.jp」を“お気に入り”に登録しているのではなく、ヤフーサイトを経由して、そのニュースの詳細を「毎日.jp」へ確認にくるため、複数のそれも巨大ポータルサイトと提携する方が利用者が増えているというのが現状です。

 著者は大手ポータルサイトとの提携は「利」を持っていかれるだけでなく、新聞離れを加速されるだけだとし、このような状況をすでに米新聞界と全く同じであると結論付けています。

【追記】
▽150周年を迎える老舗新聞“Rocky Mountain”も廃刊決定
http://zen.seesaa.net/article/114882795.html
▽サンフランシスコ最大の新聞“SF Chronicle”も存亡の危機に
http://zen.seesaa.net/article/114794454.html

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2009年02月26日

新聞が21世紀に生き残るには、自らを正して読者の側に立つこと

新聞があぶない.jpg
新聞があぶない
著者 本郷美則(文春新書)725円


 この書を購入(2000年12月)した理由は、当時、再販問題で揺れていた状況の中で、いろいろな書籍を読みあさった時でした。最近、その当時の関連書籍を棚から引っ張り出して整理しているのですが、読み返してみると20世紀(9年前)のうちに再販問題だけではなく、ネットの進出による「情報ビックバン」についてかなり踏み込んだ内容だと感じたのでレビューしておきます。

 著者は朝日新聞社で本部ニューメディア副本部長などを歴任されたで、この本を書かれた当時はフリージャーナリストの肩書。かの有名な「ドラッジ・レポートが新聞をはじめとしたマスメディアへ叩きつけた挑戦状のリポート(第1章)から、新聞の信頼度調査(第2章)、インターネット時代の既存メディア(第3章)、新聞社への優遇措置と記者クラブ(第4章)、宅配制度と再販制度(第5章)、新聞社経営と販売店経営(第6章)、新聞の未来(終章)という構成。特に再販制度については問答集も記載されていて、その当時はすごく役立ちました。もうすぐしたらまた手元に置く機会が増えるのかもしれません。
 販売問題については、部数第一主義の販売政策の弊害として「紙面や読者の質ではなく、部数ばかりを競えば、セット割れや紙面の質、そして読者の質の低下は当然だった」という販売店主の言葉を引用し、再販制度が廃止した場合、部数は半減するかもしれないと述べています。
 広告の問題に関しては「読者は新聞社の編集権でろ過された情報に対して購読料を払っているのであって、広告には金を払っていない」という考えから、「読者の利益を損なうおそれのある広告に対しては掲載を拒否して当然だが…(いまの売り上げありきの状況を見て)二重人格的な新聞を読者が信頼するわけがない」とも力説されています。

 著者が主張したいことは、商業ジャーナリズムに陥ることなく読者に側に立った新聞本来の役割を…というもので、「外部の批判を謙虚に受け止めて自らを正し、社会的な使命に頑固に忠実であってもらいたい。それこそが新聞が新しい世紀に生き延びる道だろう」と本文を結んでいます。


 いま新聞産業も生き残り論に拍車がかかっています。産業全体で展望を開こうとはせずに、自社だけが生き残ればよいという方向へ向かっているように感じます。それぞれの新聞社では、なりふり構わない経費削減に乗り出し、新聞を発行するという原点を忘れているのかもしれません。確かに自分の生活を守るために新聞社(販売店)で働いているわけですが、“木を見て森を見ず”そんな空気が業界内に立ちこもっている気がします。
 15年、20年後の社会を創造したいものです。そこまでの余裕はないのかもしれませんが…

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2009年02月20日

電通鬼十則と新聞販売日訓

電通鬼十則.jpg
電通「鬼十則」
著者 植田正也(PHP文庫)520円

 世界最大の広告会社「電通」の4代目社長吉田秀雄氏が定めた「電通鬼十則」。"これで"やってきた企業は、これからも"これで"やっていくのでしょう…

1. 仕事は自ら創るべきで、与えられるべきでない。
2. 仕事とは、先手先手と働き掛けていくことで、受け身でやるものではない。
3. 大きな仕事と取り組め、小さな仕事はおのれを小さくする。
4. 難しい仕事を狙え、そしてこれを成し遂げるところに進歩がある。
5. 取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは……。
6. 周囲を引きずり回せ、引きずるのと引きずられるのとでは、永い間に天地のひらきができる。
7. 計画を持て、長期の計画を持っていれば、忍耐と工夫と、そして正しい努力と希望が生まれる。
8. 自信を持て、自信がないから君の仕事には、迫力も粘りも、そして厚味すらがない。
9. 頭は常に全回転、八方に気を配って、一分の隙もあってはならぬ、サービスとはそのようなものだ。
10. 摩擦を怖れるな、摩擦は進歩の母、積極の肥料だ、でないと君は卑屈未練になる。


 新聞販売店にも「販売日訓」なるものがあるんです。それぞれ系統ごとに違いがありますが、電通の鬼十則と同じ1940年代に作られたものが多いようです。

   1日 集金も拡張も足が武器
   2日 日課をたててその日に果たせ
   3日 増やす前にまず減らすな
   4日 服装は清潔、言葉はていねい
   5日 親切と根気が第一の拡材 

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2009年02月08日

ジャーナリズムって何?記者クラブという温室は新聞をつまらなくする

  新聞がおもしろくない.jpg
新聞が面白くない理由
著者 岩瀬達哉(講談社)1,800円

 新聞は読者が知りたいことだけを伝えるのではなく、新聞社が伝えたい(考えてほしい)ことが盛りだくさん詰まっていて、オモシロイものだと自分では思っているのですが、最近、多くの方と接していて言われるのは「最近の紙面はどこも同じようなことばかりで面白くない…」と意見されることが増えたような気がします。

 自宅で購読している某紙では、市長の使途不明なタクシーチケット使用をスクープし、市民の関心を呼びました。結果的に市長が3年間に使用したタクシー代金221万円を返納するというところまで追及し、小生などはワクワクしながら続報を待ちました。
 やっぱり新聞はそういう役割を担ってもらいたいわけで、読者の期待もそういうところにあるし、ジャーナリズムという難しい言葉でひと括りにしないで、「読者の知る権利」を担っていると自負するなら、もっと踏み込んだ取材をして市民に問題を提起してほしい…そうすると新聞は面白くなるのだと思います。


 さて、本書は記者クラブ問題の弊害を軸に官公庁と新聞(記者クラブ)の緊張関係が薄れ、一体感を担保に情報のやり取りがされている状況を指摘。「読者の知る権利」への使命よりも官公庁との関係強化を優先させていると述べています。「そんなことはない」とクラブ張り付けの記者の方からは反論がありそうですが・・・。
 また著者は記者レベルの低下にも触れ、記者クラブでは役人と記者のなれ合いばかりではなく、記者も発表ものに頼り、クラブ内の記者同士でメモのすり合わせをしたりすることで、記者全体のレベルが下がっている―と警笛を鳴らしています。
 北海道新聞、高知新聞、愛媛新聞が、警察の裏金報道は記憶に新しいのですが、役人の痛いところを突くとその報復(情報をくれない)は相当なものだと伺いました。でもそれに屈するようでは、やっぱり新聞は面白くなくなるわけです。

 巻末の資料には全国の記者クラブ一覧が掲載されています。無償で支給されている備品や想定される部屋の賃料、電話代などの試算も記されていて、厚生労働省だけでも年間1億程度の便宜供与を受けていることになります。いわゆる「官・マスコミ接待」。このあたりのなれ合いも正してほしいものです。だって税金でしょう…

 この本が発行されたのがちょうど10年前。いまは上杉隆氏が記者クラブを問題視する急先鋒ですが、上杉氏は「アメリカの新聞記者では考えられないこと。これではジャーナリズムとは言えない」とマスコミ批判をしています。権力を監視する意味で記者クラブが官公庁の内部に入り込むことは放棄してはならないと思いますが、距離感を間違えてしまうと役人や政治家に取り込まれて機能不全になるだけです。


 新聞がもっと面白くなるように記者の方々には頑張っていただきたいと思います。発表ものの垂れ流しであれば、私でも記者になれるわけですから…

【追記】
 ジャーナリストの育成に向けて、このような取り組みも始まっています。

スイッチ・オン.png

「スイッチオン」プロジェクトは、各種マスメディアで活躍するプロが組織の枠を超えて協力。大学生記者と共に取材を行い、記事を制作するという実践的かつ実験的なプロジェクトです。
http://blog.goo.ne.jp/321switchon

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2009年02月07日

時効になっても忘れない 朝日新聞阪神支局襲撃事件

  赤報隊の秘密.jpg
赤報隊の秘密―朝日新聞連続襲撃事件の真相―
著者 鈴木邦男(鹿砦社)1,500円

 週刊新潮が先週号から「私は朝日新聞阪神支局を襲撃した」という特集を組み、実行犯(自称)から取材したという記事を伝えています。しかし、朝日新聞社は自称実行犯と接触した事実を踏まえて、その信憑性について疑問視しており、「連載が終了した時点で検討する」(名誉毀損で訴えるのか)としていますが、その真相は…

 本書は復刻新版(1999年の発行)ですが、初版は朝日新聞社への襲撃事件(犯行声明が出された)が始まってから3年後の1990年。当時、鈴木氏が一連の朝日新聞襲撃事件を朝日ジャーナルに連載していたものも収録されています。
 著書の鈴木邦男氏は産経新聞を退社後、政治団体(俗に言う右翼です)一水会の代表を務め、よく深夜番組のコメンテーターとして出演していますが、同書発行後に同氏や故野村秋介氏が赤報隊に関連しているとして容疑者扱いをされたことなども紹介されています。
 朝日新聞阪神支局の銃撃事件の真相を知りたくて以前に購入したのですが、一連の朝日新聞社(東京本社、阪神支局、名古屋本社社員寮、静岡支局)やリクルート前会長の江副氏などへの襲撃や爆弾設置事件を年表式(犯行声明)にまとめ、赤報隊とはどのような組織なのかを著者が考察する構成になっています。

 赤報隊事件(警察庁指定116号事件)は6年前に時効を迎えましたが、決して忘れることはありません。言論機関を暴力で封じ込めようとする行為は絶対に許されないことです。

【追記】
週刊新潮「本社襲撃犯」手記 「真実性なし」本社判断(朝日新聞2月23日付)
 「あらたにす編集局から」を引用。
 朝日新聞阪神支局襲撃事件をめぐる週刊新潮の「実行犯手記」について、「事実と異なる点が数多く含まれ、真実性はない」とする私たちの検証記事を掲載しました。「事実に基づかない記事は被害者の名誉を傷つけ、遺族の思いを踏みにじった」。事件の取材班の言葉です。
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2009年01月26日

新聞没落の次は「新聞陥落」だそうです

 東洋.jpg
週刊東洋経済
/31
東洋経済新報社 670

 週刊誌が取り上げるこの手の特集はもう飽きましたね。これまでなら「どれどれ取りあえず買ってみよう」となったのですが、今回は立ち読みで済ませました()

 「また広告の落ち込みが著しいとか、全国紙の094月決算は最悪だろう」という内容の記事が羅列してあるのかと思いきや(ほぼそんな内容ですが)、テレビ周辺は新規ビジネスの宝庫だと見通しを立てる同誌編集部。20117月から開始される(無理かもしれませんが…)地上デジタル化後に空く電波の再割り当てによって、マルチメディア放送に積極的に取り組むことを提言しています。
 新聞社にも取材結果を紙だけではなく、ネット、データ放送、携帯電話などに提供する「コンテンツ・プロバイダー」へ転換することを模索すべき、ともあります。

 確かに新しい環境に適合しないと、ますます生活者から見放されていくわけで…何とかしないと思っている若手新聞人も、10年先を予見できない経営者とのギャップに嫌気がさしているのも事実。ハーバードビジネススクール教授のクレイトン・クリステンゼンが1997年に出版した「イノベーションのジレンマ」で説いた破壊的イノベーションのように、いまは儲からなくてもネットへの研究、事業展開をしていかなければグーグルよりも高度なソリューションを提供する新興企業に持っていかれてしまうと感じています。
 世の中の動きに「必ず」という言葉はありませんが、「頼みのネットも稼げない」から“紙だけでいく”という選択肢は止めなければならないと感じています。


 特集には産経新聞が来月から勤続10年を超える40歳以上の社員に対して希望退職を募り、割増退職金が基準内賃金の55カ月分という破格値であることから応募が殺到するであろうという記事や、毎日と産経の業務提携についても(目新しくはない)紙面を割いて紹介されています。
 日経が2期連続の大幅減益で赤字転落の危機という記事もあります。まぁ赤字でもキャッシュを流出させなければ経営は持つわけで、赤字決算というイメージ的なリスクよりも粉飾をして無理に黒字にしようとすることの方が経営的なダメージが大きいはずです。今年春に竣工する新社屋のうち、3フロアを三井物産に貸し出すことなどは、しっかり取材をしている証拠なのかも…


 あとは、新聞特集のレギュラー陣の寄稿で構成されていて、池田信夫氏の「新聞・テレビ没落で始まるローコストメディアの時代」と河内孝氏が「老老介護は限界 現実的なシナリオは通信を軸とした再編」(メディアコングロマリットの持論で)を展開されています。
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2009年01月18日

読者から支持・応援される新聞 新聞再生の息吹をあげるのは地方紙からか

新聞再生.jpg
新聞再生―コミィニティからの挑戦―
著者 畑仲哲雄(平凡社新書)760円

 共同通信社に勤めながら、社会人学生としてマスメディア・ジャーナリズムを研究してきた著者が3つのテーマを示しながら新聞産業が抱えている問題を解明し、地方紙の可能性を探った1冊です。
 著者とは数年前の会合でお会いして以来、知人の知人つながりで、本の内容はさておき、まず買って読んでみたのですが“スッキリ”させられる内容です。おススメ!

 第1章では旧鹿児島新報社のOBらが、会社倒産後にNPO組織として再スタートを切った事例が紹介されています。第2章は神奈川新聞が展開するブログ「カナロコ」の立ち上げから現在に至るまでの道のりを。第3章は2005年に創刊し、わずか5カ月で休刊を余儀なくされた「みんなの滋賀新聞」の創刊時のコンセプトなど、丹念な取材のもとに各事例の真実がつづられています。

 3つの事例とも資本力もない小さな新聞社で起きた(取り組まれた)ことで、新聞業界という大きなくくり方からすれば、大きな関心ごとではない(失礼ですが)ことなのかもしれません。しかし、この3者の取り組みを今の新聞産業界が自分たちのこととして考えなければならない問題のように思えます。読者から支持され、応援される新聞。これこそ新聞なのだと思います。
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2009年01月17日

切込隊長がネット社会の無料文化の終焉を予測

 情報革命バブルの崩壊.jpg
情報革命バブルの崩壊
著者 山本一郎(文春新書)720円

 年末から正月にかけてまとめ読みをした書籍の紹介が滞っているので、簡略ながらアップしておきます。

 おととしの週刊ダイヤモンドが組んだ特集「新聞没落」や元毎日新聞の河内孝氏の「新聞社 破綻したビジネスモデル」以降、雑誌やネット界隈ではマスコミ批判(苦言として)はひとつの大ブームでした。元新聞社員とかネットジャーナリストという冠をひっさげて、新聞のジャーナリズム性やビジネスモデルに関する批評をされる方の多くが、ネット社会の浸透によって厳し状況(日本の新聞社も結構キツイですが)にさらされている米国の新聞社を例になぞる視座も結構多かったように思いましたが…

 そんななか、昨年11月に発刊されたこの書籍は、ネットの「無料文化」を支えてきた“ネットは儲かる”といった神話や期待は泡のように崩れ去ったと主張し、ネット広告の媒体価値とは所詮バブルに過ぎないと切り込んでいます。なかでも第1章の「本当に、新聞はネットに読者を奪われたのか?」では、新聞は読まれなくとも新聞記事は(ネットで)読まれているという分析に加えて
、読者の顔を知らない新聞社のマーケティング不足を指摘。さらに「新聞の強さ」をどう発揮しているべきかなど持論を展開されています。この章の最後には「無料モデルは終わる」と締めくくり、情報通信産業もバブルだったと結論づけています。新聞業界もだいぶ踊らされたのかもしれません。

 「新聞関係者は構造不況業種であることを認めたがらない」という著者。確かに構造的な問題を抱えながら、販売、広告の二大収入の減少傾向を前にたじろいでいる(全体として)ように見えなくもありません。ですが、構造不況と簡単に片付けるのではなく、時代の変化に対応できなかった新聞人自身の人災であるようにも思えてなりません。

 産業を支えるための商行為は必然ですが、儲け話だけで新聞人はなびいちゃいけないのだと思います。
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2008年12月15日

新聞社と販売店の契約内容は売買or委任 

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新聞販売のひとり言
著者 村上錦吉(自費出版)非売品

 ジャーナリスト新聞で紹介されていて「自費出版なので問い合わせすれば送料のみで」ということで送ってもらいました。
 前著の「新聞販売を考える」(ジャーナリスト協会)では、新聞社と販売店の取引関係が「売買契約」か「販売委任契約」によって、独禁法(再販制度)における解釈は大きく変わるという指摘がとても印象く読ませていただきました。
が、今著はあまりにも思想じみていて、最後までページをめくるのに難義しました(100頁なのですが)。

 著者は毎日新聞大阪本社の販売局長をされた方で、退職後も大学で法律を教えた社会学博士。自身が毎日の販売局長時代に作り上げた販売店との契約書の素晴らしさを唱え、新聞の使命が重大だと謳歌するのはよいのですが、選挙で投票しない生活者を「愚民」と呼び、販売店を折込収入の不労取得に安住し拡張努力が為されていないと言い切るあたりは、俗にいう「裸の王様」の新聞経営者と同じ部類なのだろうという印象を持ちます。
 ただ、指摘していることは荒削りながら的を得ているところもあるので(“ひとり言”つながりでもあるし…)、当ブログで紹介しました。


 各新聞社の販売店との契約内容に関する資料(19社)も掲載されていますが、1979年当時のものを引用しているにとどまっています。このあたりの調査をしっかりやれば公取委や経済学者が指摘する「独禁法上の適用除外」の理屈について、これまでの議論とは異なった展開ができるのかもしれないのですが…
 
 さんざん言いたい放題の内容ですが、著者のまとめはこうです「新聞界の最大の課題であり、宿あは残紙、死紙である。押紙であれ包紙であれ、いずれも広告主への欺瞞、資源の全き廃棄という犯罪である。解決方法は唯一、中央大手社の性急な第一位主義の廃絶である。麻薬的折込広告に毒された販売力の劣化、配達店から販売店への商人道回帰を。未読者ではなく不購読者、非購読者を如何にして新聞を購読さすか以外に業界生存の道はない」。
 うぅ〜ん。毎日新聞OBの元気のよさはわかりますが…

 

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2008年12月02日

新聞ネタの特集を組むと売れまくる週刊誌

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週刊ダイヤモンド(2008年12月6日号)
株式会社ダイヤモンド社(690円)

 真山仁氏の「ザ・メディア」の連載が続いている週刊ダイヤモンド最新特大号で、新聞・テレビ複合不況という特集を組んでいます。
 週刊ダイヤモンドは昨年9月22日号で「新聞没落」の特集を組み、バカ売れしたと聞きます。おそらく新聞業界の関係者が買いあさったのでしょう。今年に入ってからも東洋経済(4月12日号)、小学館のSAPIO(11月12日号)で、新聞やジャーナリズムの崩壊というシナリオで特集を組んでますが、売れたのかなぁ…

 今回のダイヤモンドには新聞社とテレビ局が業務提携もしくはグループ合併によるメディアコングロマリットという切り口で、広告不振にあえぐマスメディアが生き残りのためにさまざまなメディアとの統合を進めているとしていますが、その真相はわかりません。どこまで裏を取って記事にしているのかわかりませんが、銀行でも(新聞社と銀行は違うと怒られそうですが)儲かっている時は別会社(部門)を増やし、経営が厳しくなると合併、統合を続けるもの。新聞も題字は変わらずとも、株主として別会社からの出向を迎えている会社もあるものです。銀行が経営に入り込んでくるよりはそのほうがマシだということでしょう。

 押し紙問題についても取り上げています。産経新聞が押し紙を切るという政策に転じたというもので、経営状況はひっ迫しているために押し紙を逆に切らざるを得ないという解説。もしそれが本当だとしても他の新聞社に波及する可能性はゼロのような気がします。その理由は同書でも触れていますが「火の粉をかぶってでも、自ら改革に動くべきか、座して死を待つべきか、新聞各社には二つの選択肢しか残されていない」のに加えて、それすらも怖くて考えたくないというのが新聞経営者の本音のように思えてなりません。
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2008年11月16日

根っからの新聞販売労働者サワダオサム

  上林暁.jpg
わが上林暁―上林暁との対話―
著者 サワダオサム(京都三月書房)2,250円


 比叡山の山肌も紅葉で色づきはじめた滋賀県大津市で今月9日、「新聞の現在を考える集い」が行われました。このシンポジウムは、販売店労働者の立場から新聞業界が抱える問題に取り組んできた沢田治氏(73歳)が「わが上林暁」を出版した記念イベントとして開かれたもので、上林暁(小説家)の研究者や新聞社と係争中の新聞販売労働者、弁護士など約40名が集いました。今だけ委員長も参加してきました。

 沢田治氏は1979年に滋賀県新聞販売労働組合を結成。その後、全国新聞販売労働組合協議会(略称、全販労)の副議長、事務局長を歴任。おととし、脳梗塞で倒れたもののリハビリを続け、目覚ましい回復で現役時と変わらない活動を続けています。
 今回出版された「わが上林暁」は、個人誌「壁(かべ)」の連載をまとめたもので、新聞販売問題とは直接関係のないテーマですが「一冊の本(作家)との出会いが人生を大きく変える」との本編書き出しにあるように、上林暁の作品が沢田氏の新聞販売労働運動へどのように影響したのかを残そうと、毎日新聞労組OBらが実行委員会を構成し、出版されました。


 シンポジウムでは、沢田氏と縁の深い方々が祝辞を述べたあと、上林暁作品を研究している萩原勇氏(教諭)の講演「兄の左手 上林暁と妹睦子さんのこと」や「メディアの敗北―西山事件と毎日新聞」という硬派なテーマについてディスカッションが持たれました。
 サワダオサム熱烈予約運動実行委員会の実行委を務めた大住広人氏(元毎日労組委員長)は、「新聞業界にとってサワダオサムのような人間は欠かせない存在だ。新聞記者は見えない相手におびえながら、ネタを孫引きし読みと当たりを繰り返すが、サワダオサムは原点主義を貫いてきた男」と評しました。

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2008年10月31日

マーケティングプラットフォームが確立する前に新聞は何を準備しておくべきか

   次世代マーケ.jpg
次世代マーケティングプラットフォーム―広告とマスメディアの地位を奪うもの―
著者 湯川鶴章(ソフトバンククリエイティブ)1,600円


 時事通信社編集委員の湯川さんが「自身のメディアの未来探求はこれで終わりにしたい。この本を総括としたい」と言い切る気合の入った1冊。
 湯川さんとは2004年に新聞労連の会合でお会いしてから、4回ほど講演を聞いたし、酒を飲みながら話す機会もありました。常にメディアと広告とウェブの未来を探究されて、歯に衣着せぬ話しぶりに「こんな上司がいたらなぁ」と思ったものです。

 湯川さんがなぜ本業の新聞業界のこと以上に広告やウェブに関する著作が多いのか?そこを理解しないとそれぞれのメディアが抱える産業問題というものを議論する土俵にはあがれないと思います。なぜならマスメディア(新聞でいえばジャーナリズムか)を資金的に支えているのは広告ビジネスなのだから。

 まず本書を読んでみては?と思いますが、新聞販売労働者の私が見入ったのは既存のマスメディアが失ってしまった「三河屋さん的サービス」。それがしつこく(笑)書かれていて、テクノロジー企業には総量で足元にも及ばないだろうが「アナログの強さ」というか、新聞販売店は町の三河屋さんに徹するべきだと再認識したし、新聞産業は持ち合わせている手足を使いきれていないと感じました。

 メディア企業(特に新聞だと思って読みました)は今後どう進むべきかという提言されています。
(ここから引用)…表現好きの人間が多く残っているからこそ、メディアや広告企業は、時代の波になかなか乗れないのだと思う。競争のルールが、表現力の個人戦からテクノロジーを使った団体戦に変化しようとする中で、最後の最後まで個人戦にこだわっていたい人間をたくさん抱えているのだから身動きが取れないわけだ。こうしたことからも、時代を変えるのは業界の中核にいる老舗企業ではなく、周辺領域に登場した新興企業になるのは、歴史の必然なのかもしれない。…表現を核にした仕事を続けたいのなら、これから来るであろう不透明な時代を生き抜くしかない…(引用終わり)

 また、新聞労連の産業政策研究会にも湯川さんからこんなメールもいただきました。「別にみなさんは最新の広告トレンドを知る必要もないし、デジタルサイネージなんて詳しく知る必要もありません。マーケティングプラットフォームが確立する前にどういうメディア、コミュニティを作って準備しておくべきかを考えることが最優先課題だと思います(イイところだけ抜粋しました)」と…


 いまamazonで注文しても1カ月待ちの状況ですが、「電通vsGoogle」という発想とは別次元のメディア、広告、ウェブの方向性をイメージできると思います。

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2008年10月29日

消費者が変わった 広告も変わらないと

  明日の広告.jpg
明日の広告―変化した消費者とコミュニケーションを取る方法―
著者 佐藤尚之(アスキー新書)743円

 今年4月から、これまでの営業企画部門から管理(財務)部門へ異動して半年経ちました。財務管理による企業マネジメントの重要性についても徐々にではありますが理解を深めています。
 デスクワークばかりしていると「生活者感覚」「市場の反応」からズレてしまうのではないかと、しきりに地域で開催されるイベントへ顔を出し「生活者」の声を拾うようにしています。部門に関係なく「消費者本位」の発想を持ち続けることが新聞販売業のみならず企業活動には欠くことのできないことですよね。

 最近購入した書籍を並べてみるとマーケティングや広告に関連するものばかり。このブログでもいろいろ紹介していきたいと思っていますが、今回はイチオシの「明日の広告」についての感想を。


 本書は今年1月に発行され、多くの広告・メディア関係の方が読まれたと思います。4大マスメディア広告費が前年比を割り、かなりネガティブな雰囲気にある広告・メディア業界にあって、電通に勤務する佐藤尚之氏がポジティブに「消費者へのラブレター」というキーワードを使って、消費者の変化に対応する具体的手法について書かれています。メディア・ニュートラルな時代に「わかっているつもり」が一番怖いと指摘する佐藤氏。そうそう業績が伸びない時などよく言われますね「初心に帰れ!」とか。創業時の精神とかは必要でしょうけど、以前と同じこと(初心に帰ればという感覚)をしていれば業績は伸びるはずと顧客のニーズを決めつけて発想するお偉いさんって少なくありません。「わかっているつもり」で営業戦略を立てると成果が表れないばかりではなく、逆にターゲットから嫌われる時代なのです。

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2008年09月27日

ブログはいろいろなところで引用される…個人発信でもメディアの域にあることを実感

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ブログ論壇の誕生
著者 佐々木俊尚(文芸新書)760円

 今月20日に初版発行されたネット関係に詳しいジャーナリスト佐々木俊尚氏の作品。もう何作目になるのだろう?発行頻度が早すぎてすべて読み切れていませんが、ネット空間の現状(ブロゴスフィア)とかロスジェネ世代の視点を解説してくれるという点で参考にしています。

 実はある方からのメールで「佐々木さんの新刊に“今だけ委員長”のブログが引用されていましたね」とお知らせいただいたので、「えっ!聞いてないよ〜」と半信半疑ながら確認の意味も含めて購入。
 そうしたら第2章「ブログ論壇は政治を動かす」の初っ端『自民党の広報戦略か』(106n)のところで、2007年6月5日に書いた(日記のカテゴリ)「ブログも世論操作に使われている」が引用されています。


 内容は「消えた年金問題」などで当時の安倍内閣が窮地に追い込まれている局面を擁護する全く同じ内容のブログ(ブログ運営者だけが違う)が、98もあったということを指摘したもの。それに対して政治評論家の勝谷誠彦氏が自身のメールマガジン(有料)で取り上げたようですが、佐々木氏が「誰がどのような目的で多くのブログにアップロードしたのかは、判明していない」としながら、いくつかの問題点を解説しています。
 このブログのテーマとは全く違うところを引用されてしまったので、意表をつかれてしまいましたが・・・


 読み終えての感想は「まぁそうだよなぁ」というところ。佐々木氏が見据えるネットの将来というか重宝なところと問題点については、考えが近いのかなぁとういう気がします。特別付録の「佐々木俊尚が選んだ著名ブロガーリスト(171)」も私がRSSリーダーをつけているブログとダブっているものが多くありました(このブログは当然リストに入っていませんが…)。
 ということは、世界最大数のブログ利用者868万人(総務省発表:2006年3月末)といわれている日本で、「友人同士の日記交換」のようなブログではなく、「論壇」として位置づけされ、読まれているブログは、実は数少ないということなのかもしれませんね。

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2008年09月20日

新聞社のブラックボックスが一発で理解できるマンガ

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ミナミの帝王 94巻
原作 天王寺 大(日本文芸社)552円

 ミナミの帝王といえば大阪の闇金・萬田銀次郎が悪党どもを成敗する物語。Vシネマでは竹内力が主演をしてシリーズ化されています。
 ミナミの帝王は週刊漫画ゴラクに連載されていますが、新聞販売店の実情を取り上げた「幻想新聞」(計7話)が単行本になりました。


 マンガとはいえ「押し紙問題」というテーマをどのように描かれるのか興味津々にページをめくると、思った以上に新聞販売のからくりが描写されています。それも実態に即して正確に!
 新聞業界のブラックボックスと言われる販売問題について、面倒な説明をするよりもこれを読めば一発で理解できると思います。


 著者の天王寺氏がこのようなネタを誰から取材したのか興味のあるところですが、最後の結びで主人公の萬田がこう述べています。

 全国には数多くの新聞販売店がある。おそらくほとんどの販売店が「押し紙」に苦しんでいることでっしゃろ。それらの販売店が一致団結して新聞社を告訴したらどないでんねやッ!
 一日の推定押し紙部数1500万部。「限りある資源を大切にしよう」ある新聞社の張っていた自然保護キャンペーンが空しく響きますわ…


 近年、販売店による新聞社を相手取った「押し紙訴訟」が多発しています。持ちつ持たれつの業界構造にしっかりはめ込まれている「押し紙」問題は、整理してもまたぞろ沸き起こるゾンビのようなもの。このような商習慣の根本的解決は新聞社が営利企業をやめる以外にないのかもしれません。
 内輪でゴタゴタしている間に新聞産業が崩壊しないように、そして読者から見捨てられないようにしなければいけませんねぇ。

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2008年08月11日

朝日新聞の連載「新聞と戦争」をまとめた1冊

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新聞と戦争
著者 朝日新聞「新聞と戦争」取材班(朝日新聞出版)2,300円


 きっかけは、一通の投書だった―との書き出しではじまるこの本をやっと読み終えた。
 朝日新聞夕刊(週5回)に2007年4月から1年間連載された「新聞と戦争」をまとめたもの。新聞に連載されていただけあって、1話ごとの文章量が程好くよく読みやすい。


 24章からなる分厚いページは、「なぜ新聞は戦争を止められず、逆に戦争協力の深みにはまっていったのか。過去の負の歴史に真っ正面から向き合いきちんと検証してほしい」との命を受けた朝日新聞社の記者(プロジェクトB)18名が執筆。

 13章には「販売の前線」として、関東大震災から終戦直後の販売事情が報告されている。当時、新潟県長岡地区にあった「速報社」という販売店の話では、「新聞どころか紙そのもの足りず、2部、3部と買い求めようとする人に“新聞はちり紙ではない”と1部しか売らなかった」という話が紹介されている。今を考えると販売従業員の心意気というかプライドもずいぶんと変わったものだ。私はこれまで「新聞少年」は各戸配達にかかる経費を安価に抑えるために活用されたと思っていたが、大人が戦地へ召集されて頼る労働力は少年しかいなかったという事実も理解できた。
 敗戦後も新聞は販売店従業員の手によって休むことなく配り続けられた。


 一通の投書は「私は小さな頃、祖父が口癖のように言っていたのを思い出します。朝日の論調が変わったら気をつけろ、と」という内容で、この投書が新聞社が触れたがらない「戦争」というテーマに1年にも渡る長期連載に結び付いたのだろう。

 8月15日を前にじっくり読んでいただきたい本だ。


        ◇        ◇        ◇

日本新聞労働組合連合が「しんけん平和新聞第4号」を発行
新研平和新聞.jpg
 問い合わせは新聞労連まで。

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2008年08月03日

新聞配達は夢追う苦労人を支えてきた立派な仕事

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赤めだか
著者 立川談春(扶桑社)1,400円

 私は通勤時にipodで音楽ではなく「落語」を聴いている。
 もともと立川談志の現代落語が好きでCDを購入していたが、最近ハマっているのが談志の弟子 立川談春。
 彼の半生を綴った自伝がこの「赤めだか」。赤めだかとは談志の自宅で飼っている金魚のことだが、いくら餌をやっても大きくならない金魚に自分をダブらせて「しょせんメダカのように大きくなれない」という挫折感を引用したもの。

 談春が談志に弟子入りしたのは17歳。高校を中退し、親からも半ば勘当状態で談志の前座となるが、彼の生活を支えたのは新聞配達だった。住み込みで毎朝夕186部の配達をこなす。朝は3時に起床し折込チラシの組み込みと配達を終えて販売所へ戻るのが8時。販売店が用意してくれる朝食をとって2時間の仮眠。そして談志の家に12時には入る。午後3時まで雑務をこなしそれから夕刊配達。夕食をがっついてまた談志の家に戻る。「今日はもういい」といわれるのが夜中の12時か1時で、それから寮に戻って2時間寝るという生活が続く。談春は1カ月で8キロやせたと語っている。
 朝日、日経、日刊スポ、デイリースポーツ、日刊工業新聞と東京タイムスなど数種類の新聞を配っていたが、慣れてきた頃は適当に新聞を配るようになったと振り返る談春。ここでの落ちは、デイリーの読者に株式新聞を届けてしまった逸話で「昨日は久しぶりに阪神が勝ったんだぞ。掛布のホームランで逆転勝ちしたんでスポーツ紙を楽しみにしてたのに、何で日刊株式新聞なんてのが入ってんだ」とお客さん。それに対し談春は「お客さん、これから阪神は上昇一途です。優勝しますと株の方もぐんと上がります。買うなら今、と配達員が気を遣わせたものと」と返す。当然「バカヤロー。すぐにデイリー持ってこい」となる。「僕が配達するようになってから、3カ月で186部から140少々に部数が減った」とは笑えない話だが…


 著者は私と同世代。この本を読み終えて立川談春がまた好きになった。

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2008年07月08日

真山仁氏の連載「ザ・メディア 新聞社買収」始まる/週刊ダイヤモンド

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 週刊ダイヤモンド7月12日号から、巨弾経済小説「ザ・メディア―新聞社買収」(著:真山仁)の連載が始まりました。
 ダイヤモンド社の宣伝をするつもりではありませんが、以前、DIAMONDonline(ダイヤモンド社のウェブサイト)のコラム「メディア激動時代を読む―山口一弥」で
真山さんのインタビュー記事を拝見し「いつ連載が始まるのだろう」と期待をしていました。


 内容について深くは触れませんが、太陽新聞社(どこをモデルにしているかわかりますね)に勤務するCSR推進室課長補佐の山原康平を主人公にした物語。第1回目は太陽新聞販売店の息子が、日本ユネスコ協会連盟主催の『守ろう地球の緑』懸賞作文へ応募した作品が入選。「新聞大好き」という題目の内容に新聞の押し紙のことが書かれて…


最初の“つかみ”はやはり押し紙でしたね。フィクション小説とはいえ、業界人の痛いところを突く連載になりそうな予感がします。

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2008年06月17日

21世紀はインタレスト型メディアが主流…

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グーグルに勝つ広告モデル―マスメディアは必要か―
著者 岡本一郎(光文社新書)720円


 マスメディア4媒体の低迷がいわれて久しいのですが、インターネット技術によってそれぞれの価値観や生活様式の多様化は目覚ましいものがあります。
 著者はマーケティングの観点から、これまでのアテンション(大衆の関心)へ訴求する20世紀型マスメディアから、21世紀はインタレスト(能動的な興味・関心)型のビジネスモデルへと変化することを指摘。ともにネットを利用した検索サービスのヤフーとグーグルをそれに当てはめると、ヤフーは情報の流通経路にネットを使っているだけで、依拠しているのはアテンション・エコノミー。人が集まるトップページにバナー広告を張って収入を上げる20世紀型メディア(新聞をはじめとしたマスメディアもこれに属す)で、グーグルは一番人が集まるトップページに何の広告も出さず、アテンションの一歩先のインタレストに絞っているため、広告主にとって「購買までのステップが短い」効率的な広告効果が期待できる21世紀型メディアと定義しています。
 また、さまざまなメディアに回せる潜在量は一日平均5時間との分析結果をもとに、これからはその日に生成されたコンテンツと過去のストックされたコンテンツとが競合し、日々の生活におけるマスメディアのシェアは減少するとを宿命的な流れだと指摘します。
 そのほか、マス4媒体の(テレビ、新聞、ラジオ、雑誌)現状と可能性について著者の見解が記されています。新聞についてはあまり目新しいものを見つけだすことはできませんでしたが、宅配網(インフラ)を生かしたビジネスの可能性を示されています。あと、ラジオに関する考察は目を見張るものでした。


 ともあれ、マスメディアを取り巻く環境の変化を指摘するこの手の書籍が近年数多く発刊されていますが、これまでは建設的な提言を読み取れるものは少なく、一種の「マスコミいじめ」のようなものばかり…マスコミ関係者の高慢ぶりや高い賃金へのアジテーションを発することで「真のジャーナリスト」になった気でいる著者も見受けられます。そのような中で、本書はマスメディアとマーケティングの未来を本質的なメカニズムを考察する一冊だと思います。

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2008年05月26日

政府・企業にがんじがらめにされている日本のマスメディア

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マスコミはなぜ「マスゴミ」と呼ばれるのか―権力に縛られたメディアのシステムを腑瞰する―
著者 日隅一雄(現代人文社)1,840円

 けさの地方紙(共同配信だと思います)の書評にも掲載されていたので、早めに紹介をしておこうと思います。新聞紙面でこの類の書評を紹介するのは極めて少ないのですがどうかしたのかな?

 本書は新聞産業(産経新聞社)に一時席をおき、現在は弁護士(日本弁護士連合会人権擁護委員会)として活躍されている著者が、これまで一般(ギョーカイ人でも知らない人も多いはず)には知られていなかったマスメディアに対する日本独自のさまざまな規制を先進国との例に出しながら「その異質さ」を紹介。さらに表現の自由を守る必然性を説き、現在国が規制をかけようとしている低年齢者へのフィルタリングなどのネット上の規制も国家による言論規制の広がりに危機感を示しています。
 マスメディアがこのような問題に正面から反対の論陣を張り、市民へ情報通信法案などの規制の危うさを主張すべきなのですが、もはやマスゴミと化した新聞、放送はその役割すら果たせなくなっているのか…。

 著者は情報通信分野における国家権力の介入を背景に「この一線は死守しなければならない」とマスコミ労働者への叫んでいるように聞こてなりません。あとがきには表現の自由を業界全体で対応すべきだと述べられていますが、マスコミ労働者の現状は自らの既得権にしがみつくばかりです。直接的な国家権力の介入ではありませんが、いまフリーのライターが雑誌やブログに掲載した内容に対して名誉棄損などで高額訴訟を起こされるケースが頻発しています。烏賀陽弘通氏のオリコン訴訟(資料:UGAYA jounal
サイゾー)や読売新聞から訴えられた黒藪哲哉氏の読売新聞名誉棄損訴訟(資料:マイニュースジャパン)など大組織に属さないフリーランスから言論弾圧がはじまっているのですが、ほとんどのマスコミではこのような問題を取り上げようとしませんね。このような動きを見過ごしておいて「マス媒体は別モノ」と言い切れるはずはないと思うのですが…

 個人的にはマスコミは読者(視聴者)不在の中でシコシコとそれぞれのメディアの価値観だけでコンテンツを作ってきた結果がマスゴミと言われてしまっている所以であると思っています。本書にも「新聞、テレビには、ほかの商品と大きく違うことがある。それは、ユーザーである読者、視聴者の満足度が売り上げに反映されないということだ。新聞は宅配システムだから、特ダネをバンバン書いたからといっても購読者が数が増えるわけではない…したがって、記者の評価はコップの中の争いのようなものになりやすい…本当に読者が求めている記事、問題の本質に迫るような記事を書くことができるか疑問だ」と一蹴しています。

 この本を一通り読むと今のマスコミの現状が理解できます。一つ一つ事例を挙げて問題点を掘り下げているのでマスコミ業界に関心のある方や業界内の“頭の固い経営者”にもお勧めの一冊です。
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2008年05月16日

日本の新聞社はフリーペーパー化できるか?

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フリーペーパーの衝撃
著者 稲垣太郎(集英社新書)714円

 フリーペーパーの歴史は古く、タウン誌や企業のPR版のようなものまで広告収入で経営が成り立つビジネスモデルを指します。サンケイリビング新聞などのタブロイドタイプのものから、今では「R25」(リクルート)に代表されるマガジンタイプが主流ですね。。
 JAFNA(日本生活情報紙協会)の定義(5年前に承認)によると「特定の読者を狙い、無料で配布するか到達させる定期発行の地域生活情報紙誌で、イベント、タウン、ショップ、求人求職、住宅・不動産、グルメ・飲食店、ショッピング、演劇、エステ・美容、レジャー・旅行、各種教室など多岐にわたる生活情報を記事と広告で伝える」ものだそうです。
 現在日本では1,200紙誌、年間3億部近いフリーぺーパー(マガジン)が発行され、21世紀に入り創刊ラッシュが続いています。多く区分類すると@コミュニティペーパー(住宅地での全戸配布方生活情報紙誌)Aターゲットマガジン(読者を切り分けた嗜好別情報紙誌)Bニュースペーパー(報道系)。エリア、世代、性別、所得などターゲットを絞り、読者に配る方法と場所、かつ話題性、信頼性のあるコンテンツを日夜つくりだしているフリーペーパー市場。広告主が「伝えたいターゲット」に一番効果的な紙誌を選ぶという仕組みは、マス媒体とは違うターゲットメディアの必要性をインターネットよりも先にフリーペーパーは実践しているのです。

 著者は朝日新聞社デジタルメディア本部に勤務し、2005年から2年間「無料なのにどうして内容の濃い紙面を提供できるのか、読者に買ってもらわず広告収入だけで経営は成り立つのか、ネット全盛の時代になぜこの紙媒体は活気づいているのか」という疑問を研究された末の答えが本書に詳しく書かれています。私も業界人だからでしょうか、とても的確にフリーペーパーの現状が伝えられていると思います。ただし、広告で経営が成り立つのは制作コスト(紙媒体は金が掛かる)が現状維持の場合であって、原油高の影響で印刷業界が悲鳴をあげている状況では厳しいのかもしれません。
 著者は本書のまとめとして、フリーペーパー=情報発信(コミュニケーション)であり、コンテンツの企画開発力が問われていると指摘しています。

 広告主はインターネット上で自らのサイトを持ちはじめ、既存のメディアを通さずに消費者を直接囲い込む手段を手に入れた。まさに企業のメディア化である。これに組み合わされる媒体も同じように、消費者を呼び込むメディアとして、フリーペーパーの広告主だった企業自身がフリーペーパーを発行するようになった。
 かつてのカタログ誌、PR誌の分野が、読み物を載せて固定読者にサービスするフリーペーパーに進化しはじめている。多くの企業が独立系の編集プロダクションや広告会社と契約し、自社の製品やサービスに特化したフリーペーパーを発行するようになれば、メディア産業はそのコンテンツ企画開発力を問われ、広告会社も経営戦略を根本から変えざるを得ない状況になるだろう。

 新聞はなかなかターゲットを絞った紙面づくりとはいきませんが、プッシュ型として販売店が顧客データを基にしたセグメント配布をしっかりできればクライアントが訴求する折込チラシやフリーペーパーを新聞に挟み込んで届けることは可能なのです。そのためには何度もこのブログで書いていますが販売店のレベルアップ、優秀な人材を確保する条件整備が必要。
 ではプル型ではどうか――店舗数が多いのでいろいろな「すき間」というか、サンプリングステーションなどの使い方も考えられますが、多くの販売店は顧客を招き入れる店舗とはいえません。輪転機と同じ稼働率は相当に悪いですね。

 今年1月末に発行された本書。ぜひご一読を。

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2008年05月14日

どんな事態が起ころうとも生き残っていくという執念/元朝日新聞社長の追想集

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追想 渡邉誠毅
発行・発行 渡邉葉子/渡邉誠毅追悼集刊行委員会(3,400円)

 1977年から1984年まで朝日新聞社の社長を務めた故渡邉誠毅氏の追悼集。新聞協会報でこの書籍の発行(今年2月11日)を知ったのですが書店での販売はされていないため、朝日新聞社書籍編集部に申し込んで購入しました。

 なぜ、渡邉氏の追想を読んでみたかったというと1985年2月に当時新聞協会会長だった同氏が二度目の販売正常化宣言の各社一斉社告に取り組んだ―その方の半生はどんなものなのだろうかという興味と当時(販売問題)のエピソードなどが記されてあればという期待からです。

 昨年、肺炎のため92歳でこの世を去った渡邉氏の半生はまさに戦後の新聞産業の発展と新聞ジャーナリズムの歴史そのもの。1939年に東大卒業後、朝日新聞社に入社。赴任先の北海道で北大農業研究会に関わり治安維持法違反の容疑で3年間の獄中生活を送ることになります。そして戦後。1947年には新聞単一労組朝日支部委員長に就任するなど行動力に長けていた渡邉氏。調査研究委員、論説委員、編集局長、取締役へと経営者としての頭角をあらわし、1977年に社長就任。任期中に朝日新聞創刊百周年(1979年)、新聞協会会長就任など数々の時を刻んだ方でもあります。

 本書は渡邉氏が出筆した記事、論文、講演などの遺稿と友人、遺族らによる想い出の記をまとめた追想で構成されています。私の目的だった販売問題への言及については2カ所ほど登場してきます。


「財界」1978年9月1日号のインタビュー記事(要点のみ引用)
 ――新聞界の問題を解決する場合、二つの前提提条件があると思う。ひとつは朝日新聞の社主問題の解決、もう一つは読売新聞との販売競争の終結、それに伴う販売の正常化の問題でしょう。しかし、それも私は、朝日新聞の社内問題が大きく反映していると思うんです。朝日の出方が闊達になることが、正常化へ大きなプラスになりますからね。そこで新聞界の本当の秩序作りが始まると思うんです。朝読戦争といった販売競争が続く限りは、やはり商業主義に走るから、どうしても紙面が荒れますね。ですから日本のマスコミ全体にとって、朝日と読売の間で秩序ができる、ということがどうしても必要だと思うんです。
 渡邉 誰が見てもおかしい、無理な競争は、いずれおさまる時期はくると思うんですよ。
 ――しかし、朝日の場合はいわゆる部数競争から下りた、とも言えるんですね。読売の場合は部数日本一、即世界一ということで、これが大きな売りものになっている。

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2008年05月09日

営業部門が抱えてきた構造的問題を検証/森内氏の考察から学ぶもの

  kenkyu[1].gif   森内さんからの手紙.JPG
新聞研究5月号
発行 社団法人日本新聞協会(定価840円/年間購読料10,080円 送料別)


 このブログでも度々紹介している元日経広告研究所理事の森内豊四氏が、新聞協会が発行する月刊誌「新聞研究5月号」へ論文を寄せています。表題は「新聞広告の後退を考える―営業現場の変革に向けて…」。
 この誌が発行される前に森内氏から寄稿内容の要約を送っていただきました。本誌と併せて読むと何とも感慨深く、新聞広告そして営業の仕事への考察の深さを感じます。
 森内氏は、新聞研究はもともと編集・記者部門の機関誌であるから、あまり読まれないのかもしれない―と仰っていますが、新聞広告の可能性や広告営業の在り方、さらに新聞広告後退の底流に何があるのかという問題は新聞経営陣はもとより編集職場の方々も知らぬふりはできない問題です。

 1995年以降、インターネットの爆発的な普及で右往左往してきた新聞産業界。ネット時代の新たなビジネスモデルを追いかける一方で、これまで新聞経営の根幹をなしてきた広告、販売という営業部門が抱えてきた構造的問題を編集職場の方々含めた新聞労働者がキチンと検証して次へ進むことが必要なのだと感じます。

「新聞研究」論文要約
○広告産業はすでに成熟期を過ぎ、量的拡大は期待薄で、これからはメディア間、ビークル間(新聞社間)の競争が激化するとの認識が必要だろう。

・国内市場の低迷で、企業は海外市場の開拓に力を注ぎ、海外での宣伝活動を強化しているが、日本のマスコミはこうしたグローバル化の恩恵にあずかれない。
・経営における広告のポジショニングが後退している。
○現在の広告不振は現場の努力不足など関係なくさまざまな要因が重層的・複合的にからみあったもので、根底に現在の日本が抱える経済・社会の構造問題がある。

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2008年04月29日

朝日新聞労働組合が取り組んできた「5・3集会」の記録

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「愛国」の自由を問う―阪神支局襲撃事件から20年―
(第20回言論の自由を考える5・3集会報告書)
発行:朝日新聞労働組合


 昨年は日本国憲法施行60年、そして安倍晋三前首相が「戦後レジームからの脱却」を方針に掲げ憲法改正に意欲を見せ、改憲手続法が制定されるなど憲法問題をめぐる議論が白熱した年でした。新聞をはじめマスコミ各社も毎年5月3日には憲法に関する特集記事を掲載し、平和憲法の大切さ(改憲に意欲的な新聞社もありますが)など伝えています。
 もうひとつ、新聞業界(マスコミ)に働く方々が思う5月3日。朝日新聞阪神支局の襲撃事件(広域指定116号事件:2002年時効)は今でも胸をよぎります。

 1987年5月3日、朝日新聞社阪神支局(兵庫県西宮市)に勤務していた3人の記者に向けられた銃弾。赤報隊を名乗る男が発した銃弾が小尻知博さん(当時29歳)の尊い命を奪った痛ましい事件。
 この事件以降、朝日新聞労働組合は「5・3集会」を主催し、言論問題、平和・憲法などを市民とともに考えるシンポジウムを催しています。その「5・3集会」開催20年を記念して昨年発行されたのが本書です。
 この集会の意義とは何かを当時の労組委員長石嶋俊郎氏が本書の中でこう述べています「この集会の存続につきまして、過去20年間様々な議論がございました。10周年でもうやめようという声もございました。5年前、事件の時効を機に『もうこの集会を閉じるべきである』、『役割を終えた』、そんなような声も非常に多くございました。しかしながら、私どもは来年も再来年もこういった形でこの集会を続けていきたいと、そういう風に思っております。私たち自身にとってこの空間は貴重な場であると思います。単に小尻さんの事件を語り継ぐということだけではございません。言論の自由を守ろうということだけでもございません。私どもが書くべきことを本当に書いているのか、本当に作るべき新聞を作っているのか、そういうことを問い直す、皆さんと一緒に考える、そのうえで明日からも書くべきことを書こう、明日も喋ろうという気持ちを新たにする、そういう集会だと思っています」(集会での挨拶から抜粋)

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2008年04月08日

コンテンツ作りの経費(取材網の維持)を無視したデジタル部門の好業績

  本誌.jpg
週刊東洋経済 4/12特大号
東洋経済新報社 670円

 本日発売の週刊東洋経済。まず見出しがオモシロイ「『日経新聞』を読む人読まない人―新聞ビジネス大解明―」という表記は思わず「日経の神出鬼没な申込パンフ」を連想させるぐらいのインパクトがあります。プレジデントの「新聞没落」に匹敵するコピーじゃないでしょうか。

 経済誌らしく“新聞業界を叩く”といったこれまでの週刊誌の切り口とは違い、それぞれの新聞社の決算状況など数字が並んでいます。中でも日本経済新聞が昨年度の連結決算で、「利益」でデジタル部門が新聞部門を逆転したという報告がいまさらながら目を引きます。
 日経の新聞部門は部数が前年比で1万部ほどの伸び。その理由として、一般紙は主要なニュースを無料で配信していますが、経済指標など日経が得意とする記事はそのおおよそ3割程度しか(ネットで)無料で見ることができないため、日経を購読するビジネスマンが増えているというもの。しかし、結果としては広告収入のマイナスによって、新聞部門は減収減益(2007年度決算)だったということです。デジタル部門の伸びは、課金システムによるデータベース事業が好調で、いま新聞業界が苦慮している「ネット時代の新聞ビジネス」の成功事例として日経の戦略が賛美されているようにも感じられますがあ、データベース化されたコンテンツは取材、編集整理、解説など人員、拠点にいたるまでの取材経費が含まれていることを忘れてはならないでしょう。その取材経費は新聞部門からだけ徴収されてデジタル部門(全てではありませんが)は取材経費が差っぴかれたコンテンツだけを加工、商品化しているに過ぎないと思います。

 さながら日経の経営方針を称賛する内容になっていますが、園城寺モデルと務台モデルでいうと「いまの時代に必要なのは園城寺モデルだ」との結論になるのでしょうか・・・
※故園城寺次郎氏は1970年頃の日本経済新聞経営者
  東洋経済中吊り.jpg
 この手の雑誌に引っ張りだこの河内孝さんも「朝・読・日経の3社連合 二兎を追う者は…」という内容の寄稿をされています。

 私みたいなものが言うのも失礼でしょうが、しっかり取材もしていて構成も洗練されていてけっこう良いできばえだと思います。

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2008年03月27日

推定有罪って… 痴漢えん罪とたたかう著者に支援を

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推定有罪−それでもあきらめないボクと家族の物語−
河野さんのえん罪を晴らす会 500円+カンパ

 昨年の今頃だっただろうか、東京高裁前での宣伝行動に参加していた私は、同じく裁判所職員にビラを手渡し無実を訴えていた河野さんと出会った。
 以前から某新聞社の方を通じて痴漢えん罪で闘っている河野さんの話を知り、加盟団体へ署名などの支援要請に少なからず協力をさせていただいた。

 その後も同会のホームページやお手紙で状況を伝えてもらったが、昨年11月の最高裁での上告棄却、同月の市教委から懲戒免職を受けるという最悪事態を私は受け入れられなかった。河野さんとご家族はこのあまりにも酷い司法判断をどのような心境で受け止めたのだろう。いや、受け止められるはずはない。事実無根の言いがかりで人の生活が奪われることになったのだから…。

 しかし、この本を読むとそんな河野さんの苦しいであろう思いを感じさせずに「えん罪」というものに焦点をあわせて「推定有罪」というあいまいな司法判断の矛盾と、その判断によって社会的地位までも奪われかねないという現実がつづられている。
 エピローグでは「ボクは真実が知りたい」と語る河野さん。司法を信じられずに誰を信じればよいのだろうか… ある痴漢えん罪事件の記録と記憶が記された1冊。


 
「河野さんのえん罪を晴らし職場復帰を実現する会」の支援要請(抜粋)

 元横浜市立高校教員の河野優司さんは、2006年1月15日、日曜日午前中の高島屋横浜店で身に覚えのない「チカン」容疑のため逮捕されました。本人は、当初から「そうした事実はない」と否認し続けましたが、「起訴」され裁判にかけられて、昨年の11月に最高裁で罰金刑が確定しました。
 その後、横浜市教育委員会はこの判決確定を理由に、2007年11月29日に河野さんに「懲戒免職」処分を発令しました。この処分は、「一審(横浜地裁)の執行猶予付き懲役刑判決は、失職の恐れがあり、酷すぎる」とする高裁判決に照らしても、司法判断を大きく超えた「懲戒免職」処分であり、あまりにも不当であるといわざるを得ません。
 河野さんはこの処分を不当として、横浜市人事委員会に対し処分の取り消しを求める不服申し立てを行いました。これまでに400を超える組織から「処分の取り消しと復職を求める」団体署名が寄せられ、市教委と人事委員会に提出。
 当初より無実を主張している河野さんの職場復帰の実現を目指して、今後も運動を継続することを確認しました。

【お問い合わせ】
河野さんのえん罪を晴らす会
〒220-0031 横浜市西区宮崎町25 市従会館
横浜市立高等学校教職員組合内
TEL:045(241)2744
FAX:045(241)2733
http://www.geocities.co.jp/ykou01/

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2008年03月14日

11回モデルチェンジしたハンドブック

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記者用ハンドブック第11版(新聞用字用語集)
共同通信社 1,700円


 1956年11月1日に初版された記者用ハンドブック。今年3月17日に第11版が発売になりました。


 内容は記事の書き方、新聞漢字表、現代仮名遣い、送り仮名の付け方、記事のフォームなど新聞表記の基本が説明されています。
 ミニコミ紙を発行されている方も一冊手元に置いてあるとよいかもしれません。

  新聞という究極のモバイルは“読みやすく”を追求したものですが、一般的という水準が変化して逆に読みづらいというご意見も頂戴するときもあります。あとは省略しすぎ…。ウェブはハイパーリンクできて省略はあり得ないのですが、1分間で内容を伝える究極の文字表現は新聞用語なのかなぁと。あとは中身の問題ですね。

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2008年03月08日

もうテキストにならないオールドメディアの重鎮

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月刊「創」4月号
創出版 600円

 雑誌社による新聞を特集した書籍物発刊が加熱した昨年。今年は大衆週刊誌にも相手にされず穏便な?日々を送っていた新聞業界ですが、今月末から読売、朝日を中心に取り組まれる紙面12段編成、朝・日・読による三社連合「ANY」を題材に月刊「創」4月号(篠田博之編集長)が新聞社の徹底研究(全国紙5紙)を特集しています。昨日7日発売。

 最近の新聞を特集した雑誌に欠かせない河内孝氏や黒藪哲哉氏もそれぞれ座談会や寄稿をされています。

目次より
特集【新聞社の徹底研究】
座談会「新聞三紙連合とメディア界再編の行方」
原壽雄×桂敬一×河内孝
成否が注目される出版部門とデジタル部門  
朝日新聞社の「改革」と出版分社化
三紙連合や紙面「12段組」など活発な動きが  
読売新聞社「1000万部」の闘い
他紙に先駆けて拡大文字を採用
毎日新聞社の「J字」紙面改革
昨年デジタル部門と出版部門を分社化
日経新聞社「大再編」1年後の成果
「EXPRESS」創刊など新たな試みは
小回りを生かす産経新聞社の挑戦
読者の新聞離れと広告主の折込チラシ離れが直撃!
新聞界の暗部「押し紙」の実態

 読んでみての感想は「三紙連合と新聞界再編の行方」と題した原寿雄氏、桂敬一氏、河内孝氏による座談会は、新たな視点もなく「もういいだろう」という感じです。原氏82歳、桂氏72歳…。相変わらず業界内の重鎮しか登場しない(登場すると潰されるのか)この手の座談会は、「もうテキストにはならないオールドメディア」という感じがします。

 「押し紙」の問題については、黒藪氏が各雑誌などで積極的にその問題点を発信していますが、なんら変わらない業界体質に関係者も疲弊感を隠せないというところかもしれません。実際に全国紙の専売店と地方紙の販売店で抱える問題も若干違いますが、部数も折込も減る一方の販売店は「業界構造の問題」に立ち向かう余力もなくなり、どこに活路を見出してよいのかがわからなくなっているのかもしれません。
 「新聞業界の再編が不正を隠す結果をもたらすようであれば、新聞ジャーナリズムの再生もありえない」(黒藪氏の寄稿から)。まさにその通りなのですが・・・

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2008年02月20日

「営業の仕事は教育より本人の学習がモノを言う」 森内豊四氏の寄稿から学ぶもの

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新聞研究5月号
発行 社団法人日本新聞協会(定価840円/年間購読料10,080円郵送料別)


 このブログでも何度かご紹介をした森内豊四氏が新聞協会が発行する新聞研究に「新聞広告の後退を考えるー営業現場の変革に向けて…」を寄稿しています。
 発行前に森内氏から今回の寄稿について要約したものを送っていただきました。本誌と併せて読まれると「新聞広告の可能性を追究し広告営業の在り方を模索する必要性」が理解できます。
森内氏は、新聞研究はもともと編集・記者部門の機関誌であるから、広告営業に関する寄稿は読まれないのかもしれない―と言っておられますが、新聞産業全体を考える上で新聞経営陣、編集職場の方々に読んでもらいたい内容です。

 1995年以降、インターネットに押されて右往左往して新しいビジネスモデルを模索すべく奔走してきた新聞業界。新しいものを追いかけるよりも、いまの新聞経営を支えている広告、販売の営業部門が抱えている構造的問題を経営陣や編集職場の方々に感じてもらいたいものです。


「新聞研究」要約(記述順)
○広告産業はすでに成熟期を過ぎ、量的拡大は期待薄で、これからはメディア間、ビークル間(新聞社間)の競争が激化するとの認識が必要だろう。
・国内市場の低迷で、企業は海外市場の開拓に力を注ぎ、海外での宣伝活動を強化しているが、日本のマスコミはこうしたグローバル化の恩恵にあずかれない。
・経営における広告のポジショニングが後退している。

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2008年02月10日

天下り人事も最後まで残る既得権なのだ

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親会社の天下り人事が子会社をダメにする

著者 柴田昌治・佐伯弘文(日本経済新聞出版社)1,260円

 以前、著者の柴田氏の講演を聴いてから「なぜ会社は変われないか」「なぜ社員はやる気をなくしているのか」などの著書を読んで、現代の企業が抱える問題はやはり「人材を育てる職場環境崩壊」と「受け継がれる既得権」だということを代弁してくれた柴田氏と「会社はムダの塊だっ!」の著者の佐伯弘文氏の共著。
 
 先月出版されたばかりのこの本は、親会社の人事でラインから外れた社員を日本らしい?妙な温情で子会社へ天下りをさせる企業風土の根本的な問題を指摘しています。対談方式で各省庁や公務員の天下りなどを例に挙げながら「受け継がれる既得権」を変えられない温床や日本の産業が元気にならない理由、大手企業の子会社の多くが「誰も責任を取らず赤字のまま放置」されている状況についても厳しく言及しています。
 このような本を読むと自分が務める会社やその状況を生んでいる業界構造にピッタリあてはまっているのも悲しいのですが…。でもそれにめげずに改革をしていかなければなりませんね。

 どこの企業にも組織を蝕む一握りのシロアリ集団はいるものです。自分のことしか考えず親会社から天下ってくる役員にゴマスリすることしかできない無能な人間が、組織の中枢にあてがわれてしまうととんでもない「経営計画」が作られたりするものです。親会社から天下る役員と子会社の「大胆な改革をされては既得権を失う」と内情を隠してゴマスリに走る人間(シロアリ)を見分けられないお手盛り人事。このような事態を放置してしまうと企業は没落していくのでしょう。特に新聞業界は会社法(日刊新聞法)に守られ株式も公開されていないので、モノ言う株主もいませんから…

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2007年11月06日

朝・読・日の三社連合は格好の週刊誌ネタに

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諸君! 12月号
文芸春秋社 680円

 いつの時代でも週刊誌(月刊誌)が新聞批判をすることは当たり前なのだろうと思ってきたが、今年ほど新聞業界の特集(それも綿密に)が組まれたことがあっただろうか。
 弱っているところを一気に攻め立てるのは常套手段だが、登場する人物が同じだとマンネリ感がぬぐえない。それだけ同じことを指摘されても変わろうとしない新聞業界に対して、雑誌ジャーナリズムも次の一手を打てないでいるのかもしれない。


 読み進めていくと、キーワードは朝日と日経、そして10月1日に発表された朝日・読売・日経の三社連合による業務提携といったところが柱になっている。
 前回書籍紹介でアップした「サピオ」よりは読み応えがあると思ったのは、上杉隆氏の原稿が際立ったからなのかもしれないが…。


 新聞特集を組む雑誌には欠かせない存在となった元毎日新聞社常務取締役の河内孝氏は、佐野眞一氏との対談の中で朝日・読売・日経の三社連合がウェブ事業の提携をして新たなネットビジネスを展開するとした10月1日の(三社社長の)会見について、「いまの新聞社のネットビジネスが経営を支える主軸になることはあり得ない」と切り捨て、その原因を「ニュースをタダで載せてしまったのが仇となっている」と述べています。さらに「朝日新聞社の売上は、昨年、4000億円を割り、日経は2400億円位、読売は、巨人軍やゴルフ場などをすべて合わせて4700億円。インターネットビジネスの売り上げに関しては、日経が100億円を超えて突出していますが、これは「クイック」という株価の速報があるためです。インターネット部門では、毎日、朝日が30億円、読売がそのちょっと下、産経がその半分というところです。総売り上げが4000億円という規模の会社で、30億円程度の事業を次世代経営の柱にしていこうというのは、土台むりな相談です。ビジネスモデルが見えない」とし、「インターネットビジネスを最も華々しく展開しているように見えるメディア王ルパート・マードック傘下のウォールストリートジャーナルでさえ、一昨年の売上は、円安ベースで換算しても200億円、いまのインターネットでは、巨大新聞社の屋台骨を支えられないことは、もうはっきりしている」と持論を展開。三社連合にとって「化ける」可能性を秘めているのはポータルサイトではなく「Eペーパー」だと予測する。

 紫山哲也氏は河内氏とは違った切り口で三社連合を批評する。「三社の本当の思惑は、社論の違いをさて置いても、ネット広告のおいしい上澄みを吸い上げるところにあると見られている。新聞の部数の落ち込みで各社の経営基盤が危うくなっているいま、巨大な新聞は提携して利潤確保のためになりふり構わないネット戦略に打って出てきた、と言わざるを得ない」と解説する。三社連合については河内氏の分析力の方が優っているようだ。


 尊敬する氏からこんな話を伺った。「どの雑誌も編集(とりわけ記者クラブ)と販売に比べて、おしなべて広告についての掘り下げが足りない。これは誌面に登場する人の問題で、広告ビジネスに通じた者がこういう企画に登場しないためだと思うが、その背景には電通に対する遠慮が出版社側にはたらいているかもしれない」と。



特集◎新聞騒乱 「朝日崩れ」が止まらない

 官邸 vs.マスコミ 朝日新聞、敗れたり 上杉 隆(ジャーナリスト)
驕れる者も久しからず。首相を辞任させ、勝鬨をあげる朝日の足元で、政治報道の瓦解が始まった
 
「朝・読・日経連合」はマスコミ一極支配を狙う
佐野眞一(ジャーナリスト)/河内 孝(ジャーナリスト)
朝日は“読売=正力イズム”に呑みこまれるのか? 無原則な野合の背後に広がる業界地獄絵図
 
官僚主義にまみれた巨大新聞社を“民営化”せよ
柴山哲也(メディアアナリスト・現代メディア・フォーラム代表)
競争不在のまま、テレビの後塵を拝して幾星霜。遅すぎた「55年体制からの脱却」を、いまこそ

経済オピニオン記事あてにする馬鹿、読まぬバカ
松原隆一郎(東京大学教授)/東谷 暁(ジャーナリスト)/吉崎達彦(双日総合研究所主任エコノミスト)
珍学説を振り回し、誤報、提灯記事のオンパレード。日経が「ビジネスエリートの新聞」とは笑わせる

 

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2007年10月25日

売るターゲットは新聞業界関係者

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SAPIO(サピオ)11月14日号
小学館 460円

 週刊ダイヤモンドに続き、新聞業界特集がまたぞろ発刊です。
 大新聞(新聞記者)への対抗意識を感じる構成になっていますが、ターゲットは新聞業界の関係者に絞られていると感じます。副題にある「ネット社会の進展とともに反比例で地盤沈下する新聞メディアの『現在』と『未来』を剥ぐ大新聞の『余命』」なんて、新聞を読まない人には関係ないことですし、新聞購読者でもピンとくる方は少ないと思います。

 内容はその筋で活躍している方々の寄稿で構成されていますが、かなりマンネリ感を抱いてしまう内容です。
 大きなお世話かもしれませんが、“大新聞の「余命」”を縮めよう派の寄稿もパワーアップしているようにも感じる反面、伸ばそう派の提言を聞き入れる耳を新聞業界が持たなければ(実行に移さなければ)ダメなんですが…。インターネット時代の到来で情報の送受信の仕組みが大きく変わったという現実を直視しないとダメなんですよ。


ラインナップ
【第4の権力】有力政治家に呼びかけ「福田首班」を決定した「メディア界のドン」密室談合の真相/歳川隆雄
【トーク・バトル】現役新聞記者覆面座談会 死んでも書けないブンヤ稼業の「栄光」と「恥部」
【ネット戦略】朝日・日経・読売が提携する「ANY連合」の真の狙いは「販売網再編」にあり/佐々木俊尚
【地盤沈下】「信頼度」調査で日経、読売に抜かれ3位に!“盟主”朝日新聞の「劣化」が止まらない/塩澤和宏
【試算】年間200億円!? 創価学会マネーにたかる新聞に公明党批判ができるのか/寺澤有
【錬金術】「世界一の発行部数」で販売・広告の巨利を得る「押し紙ビジネス」の終焉/黒薮哲哉
【政治広告】泡沫候補にまで「広告費」1000万円が血税から! 大新聞の本音は「選挙ほど美味しい商売はない」/武冨薫
【未来】共同取材、共同印刷、共同販売によるコストダウンでも避けられない「新聞業界大再編」の衝撃/河内孝
【CJR特別版】「アメリカに記者クラブがあったらブッシュは大喜びするだろう」/マイケル・ホイット
 


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2007年10月18日

業界内部の問題にどれだけの人が関心を持ってくれるだろうか?

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崩壊する新聞 ―新聞狂時代の終わり―
著者 黒藪哲哉(花伝社)1,700

 最近では新聞販売関係者必見のサイト「新聞販黒書」を運営している著者が、前著の「新聞が危ない」に続く告発本の第2弾。

 著者とはじめてお会いしたのはもう9年ほど前だったと思うが、後にも先にも新聞販売業界の問題は何も改善されていない。読み終えての感想は、自らの(何も改善できなかった)反省と本書で指摘する問題点の改善を待たずして新聞産業が「終わり」を迎えてしまうのではないかということだ。インターネットの出現によって新聞(マスコミ)業界がどのような状況にあり、これまで声高に叫んできたジャーナリズムや媒体としての価値がどのように受け止められているのかを考察すると、まさしく副題にある「新聞狂時代の終わり」に近づいているのかもしれないのだ。

 著者はサワダオサム氏(全販労顧問)から新聞販売労働者の「心の叫び」を継承され、販売関係者への丹念な取材のもと新聞社と販売店の取引関係の改善を柱に業界内の問題点を本書や新聞販売黒書で指摘しているが、販売関係者ならば「誰でも知っていること」であり、「なぜ改善できないのか」という問題についてもっと踏み込んでもらいたかった。新聞販売店は配る商品(新聞)なしには存在し得ないのであって、著者の心の奥底にあるであろう(販売問題を含めた)新聞ジャーナリズムへの対立心には、腰を引いてしまう販売労働者の姿が目に浮かんでしまう。自分はそうではないと思いたいのだが…

 本書ではYC久留米文化センター前真村久三氏らが読売新聞社を相手取って起こした裁判の経過が記されている。この事件は販売店の連続改廃問題に対してYCの販売店主3人(真村氏含む)が福岡地裁に地位保全を求めて起こした裁判で、歴史的にも販売店が勝訴したはじめての裁判。今年6月の福岡高裁での控訴審では(控訴審も真村氏の勝訴)、読売新聞側の「押し紙」政策を認定する判決理由が述べられるなど時代の変化が感じられる。

 花伝社は全国の新聞販売店へ本書の宣伝ファックスを流していたようだが、業界以外の方に読んでもらいたいと思う反面、新聞業界の問題なんてどうだっていいじゃないか―という声が「新聞離れ」の方々から聞こえてきそうだ。いずれにしても、これまでの新聞業界のやり方(紙面も販売も)では衰退をしてしまうことだけは間違いない。新聞社の経営者も販売店の店主も意識を変えなければ…

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2007年09月15日

新聞業界が直面する多くの問題点をビジネス誌も特集

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日(火)に発売になる週刊ダイヤモンド(922日号)は「新聞没落」というテーマで、前途多難な新聞経営の実態や、大手紙のネット戦略など特集が組まれるようです。
 まだ発売前なのでどのような切り口で書かれているのか興味のあるところです。雑誌では週刊文春や週刊新潮がよく新聞業界の問題を取り上げていますが、ビジネス誌でも特集が組まれるほど業界内の問題や深刻な状況が表面化しているのでしょう。

 まずは、来週火曜日に購入して読んでみようと思います。

 目次週刊ダイヤモンド社HPより引用
【序章】
 業界襲う構造不況
2010年度本業赤字転落のシナリオに怯える朝日の焦燥
【第1章】
 新聞経営の瀬戸際
課題山積でも見つからない答え 繁栄モデルのツケに追われる“老高若低”の新聞閲読率 忍び寄る活字離れの危機通信部廃止、ビジネスアイ合体で組織再編に動いた産経の“賭け”日経と朝日に突きつけられた株主問題の大いなる憂鬱部数は健闘でもシェアは低下 地方紙を待ち受ける前途多難Column 日経、朝日が足並み揃えて打ち出した「高級化路線」の成否 Column ケータイやネットが市場侵食 スポーツ新聞が消える日
【第2章】
 宅配モデルの崩壊
訴訟続発! 違法行為が横行 知られざる新聞販売の闇Column 押し紙問題の元凶の1つ ABC部数調査の怠慢と欠陥
【第3章】
 ネット戦略の懊悩
“勝ち組3社”が提携しても描けぬ収益増のビジネスモデルColumn 囲い込み戦略で大手紙が競った無料会員制サイトの効果の疑問 Column 影響力限定でも専門性、効率性で勝負挑むネットメディアの強み 【第4章】
 新聞記者の生態
夜行性動物もビックリ! 24時間働き詰めの一部始終Diagram本誌が独断でプロファイリング 「これが新聞記者の生態だ!」
【第5章】
 米新聞業界の窮地
相次ぐリストラと身売り メディア先進国でも描けぬ展望Interviewマクラッチー最高経営責任者(CEO)●ゲーリー・プルイット Interviewコロンビア大学ビジネススクール教授●エリ・ノーム 
 
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2007年07月13日

新聞社の出版物って奥深いなぁ

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広告月報 7月号
発行:朝日新聞社 定価250円

 朝日新聞社がこのような「広告専門誌」を発行しているとは全く知りませんでした。朝日新聞社広告部門の会報のようなものなのかなぁと思っていましたが、すごく中身が充実していて広告業界の方は必見という感じです。新聞広告を軸にしたコンセプトなので素人の私でもすんなり読める内容です。電話で注文しサンプル誌を送ってもらいました。

 7月号の特集は「いま、メディアの営業に何が求められているか?」。著名人6名のインタビュー記事は、クライアントや代理店の立場から広告営業への要望が寄せられています。
 
新聞産業全般について、いろいろとご助言をいただいている森内豊四さんも登場しています。「新聞広告の新しい意義を発掘し、知的で創造的な営業に期待」という観点でインタビューに答えています。
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 森内さんは言います「新聞広告は、プロモーションではなくコミュニケーションであり、機能だけではなく一定の使命がある。そう理解して、新聞社本位のスペースの売り込みから脱却し、広告主の目線と読者の息遣いをよりどころに、広告営業がより知的で創造的な仕事になることを期待しています」と。
 さらに森内さんは、新聞営業の基本は「読者」であって、購読料を払って読む読者はその新聞への信頼の度合いが違う―と新聞社の責任は記事にも広告にも(当然、販売行為も)あるということを述べられています。

 「広告月報」は年間購読が基本だそうです。ぜひご一読を。
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2007年06月24日

戦後新聞の歴史的スタート 日本新聞年鑑創刊号

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日本新聞年鑑(創刊号)
社団法人日本新聞協会 定価金100

 1947
7月に発足した日本新聞協会が、1010日に発行した創刊号。日本の新聞の歴史は戦中に日本軍の統治下にあり、真実が歪められてきた反省をもとに戦中の新聞界の総括を込めて綴られた1冊。新聞年鑑はその後、毎年発刊されているが、創刊号は「再出発」に向かう新聞界の葛藤1年間がまとめられている。
 新聞協会の生い立ちや倫理綱領が作られた背景、「新聞統制から新聞非常措置まで」「終戦から新聞共同機関の整備まで」「新聞の民主化」「民間情勢教育部」と続く。資料編も価値あるもので、新聞定価の変還では新聞の小売価格と卸売価格まで記載されている。昭和17年では定価1円20銭(卸81銭)であったのが、昭和21年には定価8円(卸5円20銭)と開きが大きくなっていく。
 当時の広告(手書きものが多い)もユーモアがあってオモシロイ。なかなか手にすることが出来ないかもしれないが。

創刊のことば(本文より引用)※出来るだけ記載されている文字を用いました
 我が新聞史中の極めて重要な部分であるから、しかもそれが正確に記録されていなかった関係から、本年鑑は数年を遡って「新聞統制」の史実から出発する。
 昭和11年の電聯合併に萠芽し(?)、15年の新聞聯盟に鬼あざみのような花を開き、172月の日本新聞会に刺だらけな実を結んだ「新聞統制」の跡を訪ねれば、民主主義、自由主義の旗手を以て任じて来た新聞が、如何に序を追うて、厭々ながら統制へと引きずられて来たか、一目瞭然たるものがある。剣がペンを踏みにじった悲惨な新聞史の全貌が、涙ぐむ新聞人の眼に大きく映ってくるであろう。
 昭和11年頃の日刊新聞紙は1千を超えていたが、聯合と電通の通信を契約していた新聞社は、朝鮮の18、台湾の5、樺太の1を加えて189社であるから、正常な新聞紙は200と見ればいい。それから通信社が一つになり、新聞社にも統合が行われ、昭和161月には141社となり、それが171月になって104社に減じ(新聞統制会会員社に指定された資格紙)、同年秋には55社にまで壓縮されたのである。新聞人が、いかに不本意に強制統合に服し、軍部の剣と政府の法律とに屈従を余儀なくされたかは、他に之を語るものがあろう。本年鑑はただ大史実の記録を残す為にこの點から出発したものである。
 終戦後今日までの化と、それに伴う現在の動きとは、編集印刷のスピードを遙かに越して進むので、新しい事実の記録には不十分な點が少なくない。それらは今後の年次出版で修正することにして読者の諒承を願う次第である。  
   昭和22723日 協会創立一周年記念の日
       日本新聞協会  理事長 伊藤正徳
 
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2007年06月11日

格差社会はごめんだ! 派遣労働者解雇事件のたたかい

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「ハケンの改革 次の一歩へ。跳べ1/3」
一橋出版=マイスタッフ争議支援共闘会議 頒価100

 格差社会はごめんだ!均等待遇と安心して働ける社会を目指し「派遣」労働者の解雇事件、一橋=マイスタッフ事件と伊予銀行事件を解決させよう!

 以前、このブログでも紹介をした「一橋出版=マイスタッフ争議」の支援共闘会議が、労働法制改悪への偏向とこれまでの争議の経過、非正規雇用労働者の権利・困った時のマニュアルなどをまとめた1冊。政官財によって、いまの格差社会が生まれた実態がとても分かりやすく解説されています。 失業者や有効求人倍率は改善したかのように見えても、自立して生活できない、将来の生活を見通すこともできない非正規雇用が増えています。それも、正規雇用者の削減を上回る数の非正規雇用が増えて、非正規雇用による正規代用代替が進んでいることをうかがわせます。働いても働いても自立して生きることのできないパート的低賃金は、女性の半数を占めるようになったパート労働に典型的でしたが、最近では若者たちのなかに拡大しています。そして、1986年に均等法制定・労働基準法の規制緩和とともに成立した労働者派遣法によって合法化された労働者派遣は、いまでは、製造現場はもちろん、建築、港湾運送、医療のような派遣が禁止された職場にまで広がっています。
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