有害サイトから青少年を守るための対策新法案が6日の衆院本会議で全会一致で可決されました。与野党もほぼ同一見解なので参議院を経て週明けには法律化される見込みです。
特定のサイトの閲覧を制限する「フィルタリングサービス」の導入を携帯各社に義務付けることが今回の法案の目玉なのですが、その基準について国が関与するのか否かについてケータイ会社やマスコミ(温度差はありますが)、ISP事業者、ネットユーザーなどが反対表明をしてきました。要は有害情報の基準を国が定めるとなると、ひいては国家権力による言論規制につながる―というものです。
一方、「楽しい・面白い」サイトを運営している業者はどうでしょう。人間の欲望に迫るギリギリ感を提供している業者にとっては死活問題でしょうが、また別な手口を見つけてくるでしょう。頭イイですからね…
今回上程されている法案には基準作りは民間の第三者機関に委ねるとしていますが、その第三者機関は「国への登録義務」が必要であることや国がきちんと関与すべきだとの意見が与党議員に根強いため、成立後にさまざまな運用がされるのでは?と業界側も牽制しています。
読売新聞社の6月7日付社説「ネット規制 有害情報から子供を守れ」では、第三者機関への責任の重要性を問う一方、映画界や放送界では自主規制機関が一定の成果を上げていることへも言及しています。この問題は教育問題やメディアリテラシィーと簡単に片づけられない問題ですね。今後の動きに注視したいと思います。
有害サイト審査に国が関与の余地 - 日本新聞協会がネット規制法案を批判日本新聞協会は6日、同日衆議院本会議で可決された有害サイト規制法案に関し、「憲法21条が保障する表現の自由を侵す可能性がある」とした声明を発表した。
同法案の正式名称は、「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律案」。
同法案は、ISPや携帯電話事業者に対し、親が解除を申し出た場合を除き、18歳未満の青少年が有害サイトを閲覧できないようにするフィルタリングサービスを義務付け。パソコンメーカーに対しても、フィルタリングソフトのプレインストールなど「フィルタリングの利用を容易にする措置」を義務付けている。
有害情報については、明確に定義はしなかったものの、以下のように例示。
・犯罪若しくは刑罰法令に触れる行為を直接的かつ明示的に請け負い、仲介し、若しくは誘引し、又は自殺を直接的かつ明示的に誘引する情報
・人の性行為又は性器等のわいせつな描写その他の著しく性欲を興奮させ又は刺激する情報
・殺人、処刑、虐待等の場面の陰惨な描写その他の著しく残虐な内容の情報
また、Webサイトの有害性を判定する第三者機関について、国の直接関与は避けたものの、これらの機関が一定の要件を満たし登録を希望する場合は、「国に登録することが可能」としている。
日本新聞協会が問題視しているのは、法案における有害情報の「例示」と第三者機関の「国への登録」の部分。例示に関しては、「例示といえども、有害情報がいったん法律で規定されれば、事実上の情報規制を招く根拠となりかねない」と指摘。
その上で、「有害情報かどうかの定義・判断については、憲法21条が保障する表現の自由の観点から、直接、間接を問わず国は関与すべきではない」とし、法律で有害情報を例示することにより、国が間接的に関与することにつながると批判している。
また、第三者機関の国への登録については、「有害情報を実質的に判断するフィルタリング推進機関を国への登録制とすることについても、公的関与を残す懸念がある」と批判。
「青少年を有害情報から守り、適切なインターネット利用推進を促進するための対策は、民間による自主的な取り組みを尊重すべきである」と表明し、公的関与の余地を残す有害サイトの例示と第三者機関の国への登録の規定をなくすよう呼びかけている。
同法案は、10日にも参議院で審議入りする予定。自民党だけでなく民主党も共同提案している法案のため、新聞協会の声明が受け入れられるかは予断を許さない状況だ。(マイコミジャーナル6/6付)
オーマイニュースにとてもわかりやすい図表が掲載されていたのでアップします。2008年6月6日「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律案」
に対する日本新聞協会メディア開発委員会の声明
社団法人日本新聞協会
メディア開発委員会
委員長 山田哲郎
インターネット上のいわゆる有害情報から青少年を守ることを目的に掲げた、「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律案」が、6月6日、衆議院青少年問題に関する特別委員会に提出され、同日の衆院本会議で可決された。
有害情報かどうかの定義。判断については、憲法21条が保障する表現の自由の観点から、直接、間接を問わず国は関与すべきではない。「例示」といえども、有害情報がいったん法律で規定されれば事実上の情報規制を招く根拠ともなりかねない。また、有害情報を実質的に判断するフィルタリング推進機関を国への「登録制」にすることについても、公的関与の余地を残す懸念がある。
青少年のためにインターネット上の情報について何らかの対策が必要だとしても、それが法規制によって行われなければ、表現の自由を損なうことにつながりかねないと危惧する。青少年を有害情報から守り、適切なインターネット利用を推進するための対策は、民間による自主的取り組みを尊重すべきである。以上
