都内で毎日新聞社と新聞輸送従業員組合との間で、直接契約の切り替えによる輸送コストの引き下げに関連した紛争が起きています。
新聞輸送株式会社は、1944年に朝日新聞社、毎日新聞社、読売新聞社、東京新聞社(現中日新聞社)、日本産業経済新聞社(現日本経済新聞社)の5社の出資によって創立。新聞社が言うところの新聞ジャーナリズムを堅持するために取材から新聞制作、戸別宅配まで一貫した流通体制がとられてきましたが、近年では人件費削減を目的に印刷部門が別会社化されてきました。
印刷部門の次は新聞輸送経費のコストカットに乗り出してきたというわけです。
毎日新聞のやり方は新聞輸送との契約をいったん打ち切って入札制(エリアごとに)をとり、ヤマト運輸(本社:東京)や軽貨急配(本社:大阪)と契約。自社で新聞輸送の増便をすることと併せて、新聞輸送(従業員)を下請け化することで2割から3割のコストダウンを図ろうというものです。
3月9日から毎日新聞とヤマト運輸、軽貨急配との配送業務がスタート。毎日新聞は翌10日付の紙面に「おことわり」を掲載。「朝夕刊の配達遅れ、おわびします。本社の新聞輸送体制の変更により、一部地域で朝夕刊の配達遅れが続き、読者の皆様にご迷惑をおかけしています。早急に通常通りの配達に戻すよう努力をしております。」
「新聞社 破たんしたビジネスモデル」の著者 河内孝さんは「毎、産、中」の共同配送でコストダウンを図る必要性を指南されていましたが、毎日新聞経営者は大手配送企業との提携(広告収入?)と既存配送体制を下請け化(コストダウン)を目論んだ戦略なのかなぁと感じられます。
10日付の毎日新聞にヤマト急便(5段)と軽貨急配(15段)のカラー広告が掲載されていてのも意味深いのですが…。
「ANY」に入れなかった毎日新聞の戦略を地方紙が真似てくる可能性は大きい。どの視点に立ってこの問題を考えるか新聞労働者は問われているように感じます。
【この問題を取り上げたブログ】
▼毎日新聞社前で運輸業者切り捨てに抗議する緊急集会に97名が参加
http://blogs.yahoo.co.jp/syzenrho/21196955.html
▼毎日新聞社は運送業者の生存権を守れ!
http://blogs.yahoo.co.jp/syzenrho/21090648.html
▼毎日新聞運送業者 生存権求め抗議
http://www.harinw.com/2008-02-18news-mainichi.html
▼3.12運輸会社切り捨てに抗議する毎日新聞社前定例ビラ撒き
http://blogs.yahoo.co.jp/syzenrho/archive/2008/3/13
▼毎日新聞の5日連続「配達遅れ」背景に輸送体制の変更
http://www.j-cast.com/2008/03/18017978.html
▼速報!! 3.19毎日新聞社前新聞輸送決起大集会に180名が参加!
http://blogs.yahoo.co.jp/syzenrho/archive/2008/3/19
軽貨急配が新聞の配送に参入していたのは知りませんでした。
私は軽貨急配の「人材派遣部門」から、企業に派遣(契約上は「業務委託」)として働いています。
入札による新規参入を含めて配送業務を行うことそのものは否定しませんが、本文他にもあるように、購読者への遅配があったり、元の業者(労働者)に著しい不利益があるようでは問題でしょう。
不慣れによる遅配はある程度予測出来たことでしょうから、事前の研修をしっかり行うなどもすべきでしたでしょうね。
「新聞は毎日早い時間に確実に届いて当たり前」の文化があるのですからー。
コストダウン、新規参入による利益・不利益を享受(被る)人達の問題など、丁寧に対処していく必要があるように思います。
「派遣会社の評判・評価・比較・口コミ」
http://blog.livedoor.jp/kn8186h/
新聞配送は深夜時間帯の過酷な業務で、かつ1分でも早く(法定速度は遵守ですが)届けてもらいたいという販売店や読者(少なくなっているかもしれませんが)からのプレッシャーもあって、安定的な雇用(労働条件の整備)は必至です。
今回の例は「新聞のライン」の先にある読者への安定供給という観点からすると、よほど新聞社が安い労働力に頼らざるを得ない状況であるということと、「安心、安全」は安定的な雇用条件に連動するとしてきたこれまでの考えを覆すことになったと捉えています。
今後ともよろしくお願いします。