20日に電通から発表された「2007年日本の広告費」について、元日経広告研究所の専務理事を務めた森内豊四さんから、推定範囲の改訂や統計数字の読み取りに関する注意などのご意見をいただきました。
とても的確な分析と「新聞広告の落ち込みは金額のみならずシェアの低下が問題」との提起をされています。以下に転記します(ご本人から了承済み)。
[推定範囲の改訂について]
先のメールで「推定範囲の改訂」のことに触れましたが、その数字の背景は電通のニュースリリーフの10ページ、表3「媒体別広告費(1999〜2007年)」でわかります。
昨年発表の06年の数字を今回訂正した結果、06年の広告費全体は9、578億円膨らみました。主な項目は、フリーペーパーなど3,357億円、インターネット広告制作費1,198億円、折込1,853億円、屋外1,208億円、雑誌698億円などです。
[シェア低落の問題]
新聞は昨年5.2%の減少でマイナス幅を拡大しました。この数字自体関係者にはショックですが、もっとぞっとするようなことが起こりました。
それは広告費の推定範囲の改訂で、新聞のシェアが16.7%から一気に13.5%に転落したことです。(昨年版の06年)推定範囲、つまり分母をほぼ1兆円広げたわけですから、新聞広告費が変わらないかぎり、シェアが下がるのは当然です。
新聞は自らの実態に関係なく、新たに推定に加えた「インターネット広告制作費」や「フリーペーパー」、改訂で大幅増額となった「折込」や「屋外」、「DM」にしてやられただけです。
ちなみに、この数年、新聞のシェアは次の通り推移しています。(スタートは97年)総広告費における新聞のシェア(%) 1998年 1999年 2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 20.4 20.2 20.4 19.9 18.8 18.5 18 17.4 16.7
新聞の凋落は誰もが認めるところですが、16.7から13.5はあまりにも酷いではありませんか。もし改訂しなければ、新聞はシェアを15.6%に留めていたはずです。こういうふうに、統計数字は読み取りに注意する必要があります。
[折込について]
もう一つ、「折込」が今回の改訂で6,549億円となり、新聞9,462億円の実に7割に達したことに注目したいですね。にもかかわらず、どの新聞も、インターネットが雑誌を超えたことを強調する結果におわっているのはどうしてでしょう。
電通の発表をうのみにしたとしか思えませんが、こういう報道姿勢が新聞不信にもつながるのです。