日本マス・コミュニケーション史[増補]
著者 山本 文雄(東海大学出版会)2,575円
1970年の初版。著者は当時、東海大学の文学部教授として「日本新聞史」や「新聞編集論」、「世論の構造」などを出筆。新聞が辿ってきた歴史だけではなく「新聞・雑誌・放送・映画」の歩みを一括してまとめられている。
幕末・明治時代前期では、自由民権運動と言論界、政党機関紙の発達によって、その成型が育っていく様が記されている。
明治時代後期には、商業新聞への転換、日清・日露戦争下における主戦論、非戦論の対立から社会主義新聞の出現を見る。
大正時代は、新聞の言論活動東京全紙の休刊事件、通信社の発達。ラジオの出現などにも触れている。
昭和時代では、太平洋戦争までのマスコミ界への言論統制、大本営発表の様子が記され、激化する新聞販売部数競争の販売協定まで盛り込まれている。そして戦後。連合軍のマスコミ政策から始まり、「新聞の言論活動」「激化した販売競争」「民間ラジオの登場」「テレビ時代へ」と続けられている。
販売の過当競争では、1960年5月に実施された「新聞用紙の割当制と購読料の統制廃止以来、自由競争の口火が切られ、翌年末に共販制から各新聞企業別の専売制に移って、本格的な競争体制がスタートした。日本経済の成長と並行して各新聞社は増ページ、広告収入の増加、18年間で7回も購読料を値上げしても破綻しないという恩恵を被ってきた。しかし、新聞経営は一時悪化を見る。原因はオイルショックによる不況の波をかぶったのではなく、新聞社間の過当競争という内部的問題である。現在はカニバリゼーションというのだろうか。景品付販売や無代紙を使って読者を獲得する違反行為が横行し、経営的に厳しくなっていく。
そして現在。著者が21世紀後半の新聞産業をどう予想するだろうか。