いつの時代でも週刊誌(月刊誌)が新聞批判をすることは当たり前なのだろうと思ってきたが、今年ほど新聞業界の特集(それも綿密に)が組まれたことがあっただろうか。
弱っているところを一気に攻め立てるのは常套手段だが、登場する人物が同じだとマンネリ感がぬぐえない。それだけ同じことを指摘されても変わろうとしない新聞業界に対して、雑誌ジャーナリズムも次の一手を打てないでいるのかもしれない。
読み進めていくと、キーワードは朝日と日経、そして10月1日に発表された朝日・読売・日経の三社連合による業務提携といったところが柱になっている。
前回書籍紹介でアップした「サピオ」よりは読み応えがあると思ったのは、上杉隆氏の原稿が際立ったからなのかもしれないが…。
新聞特集を組む雑誌には欠かせない存在となった元毎日新聞社常務取締役の河内孝氏は、佐野眞一氏との対談の中で朝日・読売・日経の三社連合がウェブ事業の提携をして新たなネットビジネスを展開するとした10月1日の(三社社長の)会見について、「いまの新聞社のネットビジネスが経営を支える主軸になることはあり得ない」と切り捨て、その原因を「ニュースをタダで載せてしまったのが仇となっている」と述べています。さらに「朝日新聞社の売上は、昨年、4000億円を割り、日経は2400億円位、読売は、巨人軍やゴルフ場などをすべて合わせて4700億円。インターネットビジネスの売り上げに関しては、日経が100億円を超えて突出していますが、これは「クイック」という株価の速報があるためです。インターネット部門では、毎日、朝日が30億円、読売がそのちょっと下、産経がその半分というところです。総売り上げが4000億円という規模の会社で、30億円程度の事業を次世代経営の柱にしていこうというのは、土台むりな相談です。ビジネスモデルが見えない」とし、「インターネットビジネスを最も華々しく展開しているように見えるメディア王ルパート・マードック傘下のウォールストリートジャーナルでさえ、一昨年の売上は、円安ベースで換算しても200億円、いまのインターネットでは、巨大新聞社の屋台骨を支えられないことは、もうはっきりしている」と持論を展開。三社連合にとって「化ける」可能性を秘めているのはポータルサイトではなく「Eペーパー」だと予測する。
紫山哲也氏は河内氏とは違った切り口で三社連合を批評する。「三社の本当の思惑は、社論の違いをさて置いても、ネット広告のおいしい上澄みを吸い上げるところにあると見られている。新聞の部数の落ち込みで各社の経営基盤が危うくなっているいま、巨大な新聞は提携して利潤確保のためになりふり構わないネット戦略に打って出てきた、と言わざるを得ない」と解説する。三社連合については河内氏の分析力の方が優っているようだ。
尊敬する氏からこんな話を伺った。「どの雑誌も編集(とりわけ記者クラブ)と販売に比べて、おしなべて広告についての掘り下げが足りない。これは誌面に登場する人の問題で、広告ビジネスに通じた者がこういう企画に登場しないためだと思うが、その背景には電通に対する遠慮が出版社側にはたらいているかもしれない」と。
特集◎新聞騒乱 「朝日崩れ」が止まらない
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佐野眞一(ジャーナリスト)/河内 孝(ジャーナリスト)
朝日は“読売=正力イズム”に呑みこまれるのか? 無原則な野合の背後に広がる業界地獄絵図
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柴山哲也(メディアアナリスト・現代メディア・フォーラム代表)
競争不在のまま、テレビの後塵を拝して幾星霜。遅すぎた「55年体制からの脱却」を、いまこそ
経済オピニオン記事あてにする馬鹿、読まぬバカ
松原隆一郎(東京大学教授)/東谷 暁(ジャーナリスト)/吉崎達彦(双日総合研究所主任エコノミスト)
珍学説を振り回し、誤報、提灯記事のオンパレード。日経が「ビジネスエリートの新聞」とは笑わせる