2007年05月25日

進む電子ペーパー開発 一方でこれ以上の情報過多に危険

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新聞の未来を展望する―電子ペーパーは救世主となれるか―
発行 財団法人新聞通信調査会 1,000

 何時この書評をアップしようかと考えていたのが、けさの新聞紙面でソニーが曲げた状態でも動画を表示することができるカラーの有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)ディスプレーの開発に成功したという記事が掲載。将来的には、紙のように丸めることができるディスプレーを想定しているとのことで、電子新聞の実用化に向けてまた一歩前進したと言えるかもしれない。この記事に関連して「電子ペーパー」の研究内容が記された本書を紹介する。

 本書にはIT(情報技術)社会が急速に広がり、若者たちの多くは紙の新聞から離れ、ネットからの情報入手へと向かっているー、独自の情報伝達手段を模索したり新しいビジネスモデルへの動きが顕在化しているー、新聞社や通信社が生き残るには媒体が紙であろうと電子であろうと本来は無関係ー、読む側のニーズを的確につかみ、どの媒体をいつの時点で選択できるかが重要・・・という観点から『電子ペーパー』について、(財)新聞通信調査会が研究した内容がまとめられている。

 執筆者は、面谷 信氏(東海大学工学部光・画像工学科教授)、水越 伸氏(東京大学大学院情報環境准教授)、村田昭夫氏(毎日新聞社広告営業センター次長)、佐藤和文氏(河北新報社メディア局次長兼ネット事業部長)、松澤雄一氏(神奈川新聞社デジタルメディア局長)、仲俣暁生氏(編集者、文筆家)、宇喜田義敬氏(テルモ株式会社研究開発センター副所長)、北林茂樹氏(ワーズギア株式会社マーケティング部長)、河野 徹氏(共同通信社中国語ニュース室長)、平井久志氏(共同通信社ソウル支局長)、湯川鶴章氏(時事通信社編集委員)の11名。

 電子ペーパー普及の可能性について、執筆者がさまざまな観点から論文をあげているがまだまだ実用化には多くのハードルがありそうだ。何時でも何処でも情報を収集できる・・・これ以上、情報を得なければならない社会環境にあるのだろうかという疑問もあるが、巻末のまとめとしての一説は無視できない。
新興勢力進出の想定を 既存新聞社が宅配制度の下で、販売店等の存続を前提として社の将来像を考えざるを得ない事情は当然である。ただし販売店というしがらみのない新興勢力が電子新聞を本気で始めたとき、宅配のための販売店システムを維持するのは既存勢力にとって、少なくともコスト競争という点での勝算がないのは明らかであろう。IT企業と呼ばれるような新興勢力が電子ペーパーを用い食卓や電車の中で読める新聞サービスを開始するようになったとき、既存新聞社はどうするのか。少なくとも、そうなってから対処を考えるのでよいのかどうかについて、今から考えておいた方がよいと思われる。
posted by 今だけ委員長 at 23:38 | Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍紹介
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