著者 藤原 治(朝日新聞社)1,470円
元電通研の藤原治氏は2005年10月10日の「新聞週間特集 読売メディア・フォーラム『新聞の新たなる挑戦』」(読売新聞主催)での講演で、「紙を前提としない新聞社の経営」を力強く語った。その講演後に書籍発行が企画され2007年2月28日にこの本は発行されたそうだ。
2011年7月24日に移行されるテレビ地上波の完全デジタル化でネットとメディアの融合が加速する。20XX年、日本のメディアはすべてネット上の仮想空間「eプラットフォーム」に吸収され、新聞社は既存のビジネスモデル(「紙」部数と広告)というメディアでは生き残れず、ジャーナリズムというコンテンツ事業へと経営の舵を切らなければならないのか…。これまでの新聞経営の発想を揺るがすセンセーショナルな切り口は、ネット世代の若者には当然のことなのだろう。
筆者はこれからの新聞産業はこうなると言い切る(じゃどうするのという回答は全くないが)。eプラットフォームによって従来の新聞はメディアの正確を放棄し、新しいメディアであるeプラットフォームの「ツール」化するのである。紙で見たければプリントアウトし手紙で見ればいいし、そうしなくてもパソコン上で見てもいいということになる。
新聞は今後・・・
コンテンツ・プロバイダーになっていくわけであるが、それを象徴する面白い話題がある。新聞は日本でこそ新聞紙を意味するが、中国ではコンテンツそのもの、つまりニュースを意味し、新聞紙を意味しないという。日本の「新聞」は「eプラットフォーム」の時代を迎えて、既存のメディアが本来よって立つべき基軸であるジャーナリズムに先祖帰りすることになるのだ――。著者は「ジャーナリズムは生き残れるのか。広告はどう変貌するのか。新しいメディアの盟主は現れるのか・・・」を説いている。新しいメディア盟主はどこか。既存メディアがeプラットフォームに載った時、その管理者にな可能性もあるが、意外な会社がその役回りを務めるといったことも起こり得る。例えばグーグルなどは可能性として順当なところであるが、意外な広告会社や広告主が務める可能性もあり得る。ましてやシリコンバレーからまったく新しい企業家が出てくるかもしれない――と著者は述べるが、最終的には国家権力がすべてを握る構図となるような気がするのだが…。
今週月曜日(4/16)に電通総研が「ネット広告費が2011年には2倍」になるとの試算を発表した。パソコンや携帯電話を使ったインターネット広告費は、いまや3千6百億円。今後、毎年15.8%の伸びを示し、2011年には7千558億円になるという。新聞の広告費は2006年度に1兆円を割り込み低迷が続いているのだが、2011年にはネット広告費(特に検索連動型や動画広告)に追いつかれ…いや抜かされることになるだろう。