こんな大雪は見たことない
8日から9日未明まで東北の太平洋側で降り続いた雪は「想定以上」でした。今だけ委員長が住む仙台市内では観測史上3番目となる35センチの積雪で、78年ぶりの記録更新。石巻市では38センチで史上2番目(91年ぶり)というから、9日付の新聞配達は想像を絶する「雪との格闘」となりました。
今だけ委員長は昨年末にバイクで転倒し骨折した部位がまだ使いモノにならないので朝刊作業は同僚に任せましたが、ほとんどの配達スタッフが膝まで積もった雪をかき分けながら配達し、一部地域では配達終了が昼頃までかかったそうです。除雪されていない道ではバイクはおろか自動車でも走行できない状況で、作業に従事された方のご苦労は計り知れません。
新聞販売に携わるFB友だちの書き込みを見ていると「新聞を積んだ車が坂道を登れず(梱包された新聞を)担いで届けた」、「車道と畦道の区別がつかず車が田んぼへ突っ込んだ」と大変だった様子が伝わってきました。でも、皆さんの書き込みに共通しているのは「配達が遅れて読者へ迷惑をかけないように」という気概を持っていらっしゃるということ。
毎朝、当たり前のように新聞を届ける―。このマインドを持っているからこそ、この商売を続けていけるのだとあらためて感じました。
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新聞販売店はテクノロジーの進歩を直視した経営を
「チャレンジ2014 新聞の可能性と潜在力 人、組織、つながりの再構築」をメーンテーマに新聞労連東北地連春闘産研集会が2月3−4の両日、仙台市内のホテルを会場に開催されました。東北の新聞社に勤める労働者ら約100人が参加しました。
東北地連(正式名称は「日本新聞労働組合連合・東北地方連合会」)の産業研究委員会は、新聞研究部、合理化対策部、販売正常化委員会の専門部で構成され、毎年2月にシンポジウムを行っています。
今だけ委員長は販売正常化委員会のパネル討論「地域における販売店の在り方」でコーディネーター役を仰せつかりました。パネリストには、福田洋介さん(秋田魁新報秋田南販売所所長)と青木慶哉さん(株式会社GEE&BEE代表取締役)という、新聞販売の次代を担う経営者との討論になりました。
福田さんからは、秋田魁の販売店主会によるJR秋田支社とタイアップしたサッカーブラウブリッツ秋田応援列車「BB SAKIGAKE EXPRESS」の企画・運営や県内の全小学校へ秋田県地図を贈呈するなど全県規模で「地域に根ざした販売店作り」に取り組んできた事例が紹介されました。また、「地元新聞社のブランド力をもっと活用して、読者の生活圏に入り込んでいくことが重要。新聞の販促もクロスメディアを上手に展開していけばまだまだ販路は残っている」と地方紙の強みを活用し編販がさらに連携していけばさまざまな効果が生まれると述べました。
青木さんは昨年まで経営していた読売新聞の販売店を後任に引き継ぎ、現在は新聞販売店向けのコンサル会社を設立。女性スタッフの活用とシニア層に絞った営業戦略を提唱しており、私自身も以前から話を聞きたいと思っていました。シニア層をターゲットに営業戦略を立てることは成功法だけれど、10〜20年後の新聞販売を考えると今の20〜30代の無購読者へのアプローチも必要ではないか―との問いに「テクノロジーの進歩は私たちの常識を超える。トヨタですら7年先までしか戦略を立てていないが、それは時代(技術)の変化に対応しながら経営するということ。過去の成功事例にとらわれず今の新聞販売店の強みを生かして客単価をあげていくしかない」と力説。従業員のモチベーションをあげる秘策については「読者からありがとうと言われない企業は衰退する。感謝される仕事をしていればモチベーションは自ずとあがってくる。特に女性は裏表のある仕事だと懸命にやらないと感じる。(固定読者以上に循環読者に経費を使っている現状を踏まえ)一部の読者だけにコソコソと景品を提供するような仕事ではモチベーションはあがらない」と語ってくれました。
販売正常化運動の原点は新聞社(全国紙vs地方紙)による販売過当競争や新聞社と販売店の取引関係に起因する押し紙問題などでした。しかし、昨今の部数減等による経営問題が直近の課題となり、それまでの議論を飛び越えてビジネスモデル再構築に走りすぎている感も否めないわけですが、新聞産業全体としてこれからの新聞販売問題を新聞労働者の皆さんには考えていただきたいと思います。
「EPIC2014」が発表されたのがちょうど10年前。この間はなんとなく新聞産業界にネガティブな雰囲気が漂っていたように感じます。「(2014年には)ニューヨーク・タイムズはインターネット展開を止めエリートや高齢者のための紙媒体新聞に移行することになる」というストーリーは、紙は衰退しネットに取って代わるのだ―という将来への不安から、経営効率化に拍車がかけられた10年だったように思えます。そして、ロビン・スローンとマット・トンプソンの予言通りにはならなかった(もっと奥底では計り知れない個々人の情報蓄積が行われているかもしれませんが・・・)わけですが、「それみたことか」と揶揄するのではなく、「紙も、ネットも」現状に甘んじることなくふんばっていくしかないのです。