個を動かす 新浪剛史、ローソン作り直しの10年
著者:池田信太朗(日経BP社)1,575円
最近、テレビを見る時間がめっきり減っているのですが唯一、録画してまで見ているテレビ番組があります。経済界などのトップランナーたちを紹介する「カンブリア宮殿」(テレビ東京)。その道を究めた出演者の「言葉の重み」(社長の金言)に共感しつつ、自分が立っている現場の現実との大きな違いを噛みしめながら見ています。
先日、フェイスブックでシェアされたBLOGOSというサイトから「日本企業の病理がよくわかる良書『個を動かす 新浪剛史 ローソン作り直しの10年』」という書評(ブログ)にたどり着きました。
「これは、以前にカンブリア宮殿で放送されたローソン社長・新浪剛史さんの組織改革論が描かれているのでは」―と、書評を読み進めてみると、膝を打つことばかりの内容でした。「購入してみよう」と思わせる上手な書評に乗せられ(笑)amazonで購入後、ひと晩で読み終えました。私のような若輩者がどうこう述べるより、以下の書評をご覧ください。
▽日本企業の病理がよくわかる良書『個を動かす 新浪剛史 ローソン作り直しの10年』(BLOGOSより)
http://lite.blogos.com/article/56825/
新聞産業も新聞社をローソン本部、販売店をフランチャイズ店という図式に当てはめるとオモシロく読めて、ともに閉鎖的な業界であることが理解できます。
ローソンは全国から集まる優秀な方々がポスト獲得のために仕事ではなく、自分が出世するためのパフォーマンスに注力しているというのです。新聞産業でも素晴らしい編集能力を持っていらっしゃる方と経営感覚を持ち合わせた方とではその役割が本来違うものの、ほとんどの新聞社では編集出身の方が要職に就くような仕組みになっています。社内の権力争い―パフォーマンスに長け、社内政治(根回し)を巧みに操りながらポストを得るために力を注いでいる方々を横目で見ると、げんなりしてしまいます。このあたりが日本企業の病理なのかもしれません。
この本で指摘している通り「現場を知らない上の人たちが机上の空論で戦略を練り、現場を知らない間接部門が自分たちの予算や権限維持のために、社内政争に明け暮れた結果、出されたどうしようもない商品や戦略を、現場に押しつけ、結果売れず、でもその売れない原因を現場の気合や根性のなさと糾弾し、少ない利益を役に立たないろくでなしの上の人間や、間接部門の連中だけが吸い上げ、余計、現場は疲弊し、客がどんどん離れていくという悪循環を招いている」となってしまうわけです。
近年、いろいろな会社で財務部門の権限が大きくなっていると聞きます。これは国政においてもそうなのですが、予算の采配を握っている部門の発言力が増して、なかなか実績があがらない営業部門(生産部門)は元気がなくなっている―というのです。
入社間もない営業部門の従業員へ「厳しい経営内容を知れ」とばかりに(儲かっているときは公表しないのに)低迷する経営指標をかざし続けた結果、どうなっていくのだろうかとよく考えます。既存のサービスを取りやめ、支出を削ることに“働きがい”を感じてしまっては顧客に見放されていくだけです。
経営者の仕事と従業員の仕事は違います。“削ることで身を守る”との発想を持った従業員ばかりになってしまっては、企業の病理はより悪化するだけだと思います。「企業は人なり」。顧客を向いた仕事を最優先に考えられる人材育成がこれからの企業活動には大切だと思います。
▽コンビニ業界2位からの反撃〜地方フランチャイズを再生させろ!〜(2007年9月17日放送)
http://www.tv-tokyo.co.jp/cambria/backnumber/20070917.html