ここ数年、多くの新聞販売店が配達スタッフ不足に悩まされています。いわゆる「配達労務難」。
今だけ委員長がこの業界に入った平成2〜3年あたりもこの配達労務難現象が起きていて、毎朝2区域の配達をしてから通常業務に入るということが当たり前の時代でした。その後、配達スタッフの労働条件引き上げや配達区域の統合(部数減少により統合せざるを得なかった)などにより、一部の地域的な問題(山坂が多い地区など)を抱えるエリアを除くとスタッフの充足率は向上してきました。
あれから20年。平成5年の値上げ以降、全国紙の購読料は変わらないもののインターネットの隆盛に後押しをされるような形で広告収入は減少傾向を辿り、発行部数も1世帯あたりの購読紙が1部を下回る状況になってきました。部数が減ってくれば必然的に配達区域を統合せざるを得ないため、配達スタッフの総数も減少しています。以下の図表は販売店従業員数や発行部数を15年前の数字と比較したものです。(日本新聞協会データブックより引用)
これまで新聞配達スタッフの募集方法は「募集チラシを新聞折込」が主流でしたが、近年は求人誌やネット広告などのメディアへ募集をかけています(広告料は安くありませんね)。しかし、応募してくる人数そのものが少なくなっているのです。
先日、とある全国紙系の店主さんと話したところ「いやぁ困った。専業が配る(部数)にも限界があるしなぁ」と声のトーンが下がったまま。さらに、募集をかけている地区((欠員区域)だけ突出した労働条件を提示するわけにもいかず(ほかの地区との兼ね合いもあるため)、配達労務難の悩みは増すばかり…。
振り返れば、労働基準法すら守られていない労働条件であったり、「労基法をクリアしていれば問題ないのだ」と豪語して、最低基準の労働環境下に配達スタッフ(専業従業員含む)を押し込めていたツケが回ってきたとも取れますが、新聞が決まった時間に配達されることを望んでいる読者からすれば「そんな内部事情は関係ない」となるわけです。
でも、今だけ委員長は思うのです。この時代、労働委条件を引き上げていくだけでは配達スタッフは確保できないのではないかと。確かに早朝の2〜3時間の労働で2〜30万円の給与が保証されれば就労者は増えるのかもしれませんが、(専業従業員以外で)日中の仕事(本業)に従事しながら新聞配達のアルバイトをされる方のパイは増えないどころか、今後さらに減っていくのではないかと思うのです。
配達スタッフの中心は主婦層です。家事や子育てをしながら、早朝の空いた時間に扶養控除の対象となる年収103万円以内で「こずかい(生活費の補てん)」を稼ぐには新聞配達のアルバイトは持ってこいでした。しかし、いまはその主婦層が応募してくるケースも減っています。また、朝の運動を兼ねて新聞配達の仕事をと、シルバー世代へ訴求してみても反応はなし…。
うぅーん困った。労働条件アップやバイク貸与を提示してみても(机上で論じても)、ターゲットとなる方のことをあまり考えていないことが問題のような気もします。
これからは、各系統同士の配達スタッフの奪い合いが起きるかもしれません。いまの土建業者と同じ構図ですが、アルバイトでの就労形態で集まる人たちが限られているのであればパイの奪い合いは必然的に起こりえるでしょう。読者の奪い合いではなく「アルバイトの奪い合い」になりそうな予感もしています。でも、結局は産業自体のカニバリ的な内部崩壊を招くだけで問題の改善にはなりません。そこで考えたいのが、全系統による共同配達の推進です。エリアごとに担当配達地区を設定し、宅配網を協業しながら維持し、効率化を図っていくしか打つ手はないと思うのです。
さまざまな障壁があるのも承知のうえで、@共同配達の推進A配達スタッフの労働条件向上―に着手していく必要性を現場にいる者として強く感じています。そろそろ販売店も知恵を絞らなきゃと思うのですが、すべては本社担当員が認めなければできないこと…。おかしな産業構図なのです。