「総付景品提供の制限改正の公聴会を傍聴」
12月20日、公正取引委員会(公取委)大会議室で開かれた「一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限の一部改正(案)」の公聴会を傍聴してきました。公述人は10名で傍聴者は50名以上来ていたと思います。
「一般消費者に対する景品類…」余計にややこしくなるので『総付景品』と言いますが、消費者に対して懸賞(消費者の応募など)ではなく商品を買ったときにプレゼントするノベルティグッズや開店記念セールなどに商品を買わなくとも来場した消費者に対して差し上げる景品のことを指します。今回、公正取引委員会がその総付景品の制限を引き上げる内容で改正しようと12月1日付の官報に公告、公聴会の開催となったわけです。
改正の内容は、現行は取引価格が1,000円以上の場合は10分の1の金額(1000円未満は100円)に上限が決められていました。それを今回の改正案は『取引価格が1,000円以上の場合は10分の2(1,000円未満は200円)へと2倍に引き上げる内容です。(10月上旬には3倍という案もあった)
つまり10,000円のスーツを買ったらこれまでは1,000円以内の景品(例:靴下)をプレゼントしていたのが、2,000円以内の景品(例:ワイシャツ)までプレゼントしてもよいということ。あとは、「初売り」の時に配られる粗品もこれまで100円以内の景品(例:ハンカチ)だったのが、200円以内の景品(例:スポーツタオル)までOKということなのです。
「オマケが高価になれば消費者サービスになるじゃん」。一般論で言えばそうでしょうが、公正取引委員会がなぜ総付景品の上限を定めているかというと「景品のウエイトが大きくなると景品が消費者の購買心理に強い影響を与えやすくなり、景品以外の要素を考慮しないで商品を選ぶようになると商品そのものの選択結果が分かりづらくなるため、その商品の競争が有効に働かず、消費者の利益が損なわれる恐れがある」ということで規制してきたのです。「いまこの○○を買うと△△がもらえます」といった宣伝広告を大々的に展開すると○○よりも企業努力によって品質が高い●●が売れなくなる。同じような商品なのだから△△がもらえるなら○○を買おうということになる。また、○○をA小売店では△△の景品を付けるけれど、B小売店では▲▲のダサい景品だとなれば△△欲しさにA小売店まで買いに行くという二重の構図があるので、過剰な景品提供の競争が果たして消費者の利益につながるのかという問題があるのです。
公聴会では10名の公述人(大学教授、百貨店協会、公正取引協議会、広告労協、消費者団体、婦人団体など)が発言しました。公述した10名のうち改正賛成は8名、反対は社団法人日本新聞販売協会とNPO東京都地域婦人団体連盟の2名のみ。
賛成派の法政大学小川教授は「これまでの規制は消費者とメーカーの情報格差に起因して定めているものでネットの普及によって消費者も情報を得られやすくなった。企業のサービス努力が消費者から見てもその差異が明確であり、企業間の競争によって消費者の利益はあがる。たとえ景品の規制を引き上げても購入、非購入は最終的に消費者が決めることであってマーケットが活性化する」。百貨店協会の小豆澤理事は「市場では現行の景品規定では対応できなくなっている。正月営業など来場者全員に配るものは100円では用意できない。また百貨店などではこの上限規制では顧客サービスが不十分だとしてポイントカードによる顧客サービスが主流になっている。20%でも低いくらいだ」と主張。一方、反対派の同連盟の飛田副部長は、子供に大きな影響が及ぶとの観点から「いかに商品を買わせようとメーカーは景品(オマケ)を流行らせるよう過剰な競争をあおることになる。『ビックリマンチョコ』のオマケのシール(全種類を集める)が欲しくてケースごと買い込みチョコ自体は捨てている問題も起きている。さらにシールの売買がオークションで行われたり学校ではイジメも起こっている。規制緩和は子供を利用する商法を拡大させることであり、不要なごみ(景品)を増やすことにつながる。世界の動向を見据えて検討するべき」と訴えました。
閣議決定されている「規制改革・民間開放推進計画」を背景に公正取引委員会が推進する規制緩和がどのような社会状況を招いているか考えてみましょう。昨今、消費者に対するサービスの名のもとに企業同士の競争促進を目的とした規制緩和は、逆に生活者の消費意欲を抑制しています。その理由として、価格競争に対抗しきれない中小事業者は事業の縮小や倒産に追いやられていますし、大企業であっても生産コストや流通コストの削減に躍起になって製造業を中心に生産拠点を海外へ移すなどの空洞化減少が進められています。特に費用対効果が求められる景品類であればなおさらです。大企業の利益はあがっても生産コストが海外の労働市場に移って行き、働く場が狭められている労働者の給与水準は年々低下しています。ワーキングプアと呼ばれる働けど収入があがらない「働く貧困層」の増大が深刻な社会問題になっていますが、今回の改正案で対象となる小売段階(その多くはサービス業)の労働者の労働条件がさらに悪化することは必至です。
また、資本力の小さい事業者の経営を圧迫させるばかりではなく、小売段階において大規模事業者の寡占状態を招くことにつながります。小売店の地道な販売促進活動も資本力には太刀打ち出来ず「強いものはさらに大きく、弱いものにはより厳しい社会」をつくりだす要因になることは間違いありません。公取委には社会状況を見据えてトータル的に消費者の利益につながるという視点で判断してもらいたいと思います。
「今回の改正案で新聞はどうなるのか」
新聞は特殊指定が適応されている業種ですから、新聞公正競争規約という自主ルールで「景品は6カ月分の8%」の上限が定められているため、今回の一般指定の景品緩和が直接的に影響を受けることはありません。しかし、公取委が着々と特殊指定見直しに向けて動いていると考えなければいけないと思うのです。
11月21日に開かれた新聞公正取引協議会の総会で、来賓として出席した公取委の船橋和幸取引部長からも「読者調査ではルールを守らない違法な販売が50%を超えた。6・8ルールが守られないのなら守れるルールに改めるか、守るための体制の整備をすることのいずれかしかない。それで十分な対応ができないのであれば公取委も必要な措置をとっていきたい」と言及されています。
業界としても特殊指定の結論が出てホッとひと安心をしているのでしょうか?いまの時期にきちんと販売問題(販売ルールの正常化、新聞社と販売店の取引関係の正常化)の改善に取り組んでいかなければならないのですが…。反応がとても鈍いように感じられます。
ホント知恵熱が出ますよね。『格差』が社会的な問題になっていますが「格差社会」がもたらしたものは、周りと協力し合うことがなくなり、自分だけは勝ち組として残るのだという考えを持つ人が多くなってきたと思うのです。これは企業も同じ、もちろん新聞社もです。だから余計に誰も責任を負わなくなってくる。営利目的以外で業界内のリーダーになろうと思う人なんていなくなっているわけですよ。
新聞はヒット商品をあみ出して成長する産業ではないので、業界全体でさまざまな対策(正常化・無購読・広告・ネット)を講じていかなければならないのです。しかし、最近ではABC協会への報告以外は口外しなくなっているといいます。新聞協会が産業全体の動向を資料としてまとめるための数字の提出にも協力的ではなくなっているというのです。
セクト主義というか、「自分のところだけよければ…」あと3年から5年が勝負なんですけどねぇ。
百貨店のような一般小売りは3.5掛、5掛、6.5掛、7掛と仕入掛け率は様々です。客寄せの為の景品と考えれば現行の10%でなく20%でも少ないくらいだと言うのはわかる気がします。
3.5掛商品は20%の景品を付けてもびくともしませんからね。
だからといって7掛商品は絶対に20%の景品を付ける事はしない。
私たち業界は折込こそあれ、新聞仕入の掛け率はかなりの高率となっているのが通常です。もちろん残ったからといって一般小売りのように赤伝票は切る事はありません。
コメントなので多くは書きませんが、やはりキチンとした正常販売を行ない、主張すべき所は主張していかないと説得力がありませんね。
公取も「自主規制が守られないのであればそれなりの対応をする」とも言っている。裏返せば「キチンと自主規制が守られれば議論にあげない」ともとれる。いや、そう言っている以上守られれば議論にあげにくくなるであろう。
でも、それ以上に発行本社は正常取引きすると販売助成金をカットしたとしても膨大な損失が発生しますから・・・どうでしょうか。
正常販売は消費者と販売店間だけの問題にとどまらず、新聞産業構造の歪まで含まれると感じておりますが「発行本社と販売店の取引関係」に触れると産業そのものの危機が浮上してしまい誰も触れなくなっているのだなぁと思います。
=発行本社の膨大な損失=は経営面だけではなく、広告単価などを考えると信用面にも関わる問題です。これまでの経営政策のツケ(販売店もそれに便乗してきた)が問われることになるでしょうね。
産業自体が内部崩壊をしてしまってはどうしようもないのですが、販売サイドとして優先させるべきは当たり前のことですが「ルールを守る」ことなのでしょうか。販売店が読者(地域)から信頼される事業者になれる可能性はまだありますよね?
今後の販売店経営を考えた時に如何に自立するか。また、地域のハブとしての役割を果たす為に何をしなければいけないかを考える必要があろうかと思います。
地域の方が何をすれば喜んでいただけるか、何を欲しているのか、何をすれば便利がいいのか・・・道はあると思います。(但し正常販売が条件ですが)
ただ・・・私の系統でもそうですが、個人店から本社資本の販売会社化への流れが堰を切ったように進んでいます。将来の再販撤廃を睨んでか、どうかわかりませんが、確かに販売会社だと同系統でエリアを超えた醜い争いはおこりませんから・・・
すでに他系統の争いから販売店と発行本社間の争いも静かに始まっていると感じている今日この頃です。
だからこそ、おっしゃるように=販売店が読者(地域)から信頼される事業者=になる事が必要だとも思います。
生意気言って申し訳ありません。