災害弱者と情報弱者―3・11後、何が見過ごされたのか―
共著:丸山紀一郎・田中幹人・標葉隆馬 (筑摩選書)1,500円
東日本大震災から1年が経過した今春あたりから、防災・減災の取り組みが一層クローズアップされていくなかで、緊急時の情報発信のあり方と受け手のリテラシーの問題について検証する論文が多く出されています。そのすべてを読むことは時間的および金銭的に難しいのですが、知人がまとめたものを検索しアマゾンで購入しています。
筆者の一人である丸山紀一郎さんは、昨年5月に宮城県入りし(当時は早稲田大学院生)、新聞社や販売店、そして仙台市内や石巻市の避難所などをアテンドさせていただいた方で、ワンコイン応援メッセージにも何度か協力してくれた知己です。特に丸山さんが書かれた第3章をじっくり読ませていただきました。「丸山さんよく踏み込んで書かれていますね!」
▽震災がもたらした「新聞産業の復興」への動き(今だけ委員長ブログ 2011/5/1)
http://minihanroblog.seesaa.net/article/198765190.html
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もうひとつのネタとして、株式会社ペーパーメディア研究所の青山一郎さんから情報提供をいただいた「被災地における新聞販売店を活用した地域情報提供モデルの検討」という論文を最近読みました。
山田健太さん(専修大文学部准教授)、千錫烈さん(東京大学院教育学部研究員)、植村八潮さん(専修大文学部講師)、野口武悟さん(盛岡大文学部准教授)の4名による共著で、この論文は昨年11月に開催された「第13回図書館総合展」の企画で「東日本大震災に向き合うとき」で発表されたものをまとめたものです。この論文は無料でダウンロードできるのでありがたいのです。
▽被災地における新聞販売店を活用した地域情報提供モデルの検討(JAIRO・専修大学学会)
http://jairo.nii.ac.jp/0181/00002102
内容については、私のような販売労働者が語るのも僭越なのですが、「机上のはなし」という印象が強く、「新聞社の方々からしか取材してないんじゃないの?」という空論的かつ理想的な論考に止まっていると感じます。販売現場はもっと“泥くさい”もの。ドジョウになりきれなかった野田首相と同じく、新聞社(官僚)と読者(有権者)の間を多くのジレンマを抱えながら存在しているのです。
「新聞販売店はこうあるべきだ」という期待に感謝しながら、「ではその体制を敷くにはどんな障害をクリアしていかなければならないのか」とのジレンマをとたたかいながら、先人たちは大きな荷物を残したまま、「定年」という期限で去っていくのです。なかなか理想通りにはいかないものです。