ともに生きた 伝えた/地域紙『石巻かほく』の1年
著者 三陸河北新報社(早稲田大学出版部)1200円
日刊「石巻かほく」を発行する三陸河北新報社は、河北新報社の関連会社として1980年1月に設立されました。宮城県沿岸部の漁業情報などで(特に気仙沼エリアで)高いシェアを誇る三陸新報と対抗するため、沿岸部の情報に特化した紙面づくりで河北新報とセット販売(月額100円)されている4頁建ての地域紙です。
河北新報社には河北出版センターという関連会社があるので、自社物のほとんどは河北出版センターから発行されるのですが、本書は早稲田大学ブックレット<「震災後」に考えるプロジェクト>から出版されています。その理由は同社社長の西川善久さんが早稲田出身というご縁で同大学出版部から発行されたとのこと。
アマゾンで思わず買ってしまったのですが、毎ページごとに掲載されている写真(モノクロなのが残念)もさることながら、「現場の声」がこれまでの震災関連本より充実していて、読み応えのある内容でした。特に販売店の当時の現状がつづられた第3章「読者に届ける」では、思わず「そうだよなぁ」と膝を打つ場面も…。
石巻での新聞事情をブックレット形式とはいえ、作り手、配り手、読者の息遣いが感じられる1冊です。
今春に「石巻かほく」の読者へ無料で配られた縮刷版「『3.11』を忘れない」も好評でした。昨年3/14〜4/10日までの紙面は圧巻です。そして、最終面には「私たちが地元のニュースをお届けしています」と石巻、東松島市、女川町の販売店名と電話番号を記しているあたりが心憎い。地域紙ならではの王道を感じます。
※縮刷版「『3.11』を忘れない」は非売品です。