メディアの罠
共著 青木 理、神保哲生、高田昌幸(産学社)1,500円
フリージャーナリストとして活躍する三人が日本のマスメディアの危機的現状について語った1冊です。これは新聞人にぜひ読んでもらいたい。ネット上や一部の論者(ときにOBの妙な暴露本)が一方的に発する表層的かつ感情的なメディア批判とは違って、「公共財」としての新聞(メディア)の責務が論じられています。
第一部の「崩壊するメディア」、第二部には「福島原発事故と報道」で構成されていて、各氏の問題意識は「それぞれの新聞社でこのような問題意識はされているのだろうか…」と真正面からの問いかけであり、期待でもあるように感じます。
246頁におよぶ対談は圧巻です。「新聞社あっての記者」、記者クラブ発表(行政・大企業)を1字の間違いもなく紙面に載せることに追われる日々に嫌気をさしている若い記者に対して、新聞社という組織では教えられることのないOJTが詰まった応援メッセージとしてお勧めです。
青木氏の言葉が印象的だったので一部引用します。
「これまでは試験管の中でぬるま湯につかり、安逸を貧ってきた大手メディアが経営的な危機に瀕した時、その内部で既得権益にぬくぬくとしていた連中は、懸命にその権益と自らの組織を守ろうとする。すると、真っ先に切り捨てられるのは、いわゆる真っ当なジャーナリズムj機能ではないでしょうか。調査報道だったりとか、地味だけれど大切な人権や平和問題に関する取材・報道とか・・・」
読者や情報の受け手は、「新聞社あっての記者」から「記者のチカラ」に注目する時代へと向かっているのだから、新聞社の労働条件にあぐらをかき、社内政治に精を出すエネルギーを持て余している余裕があるのなら、もっと読者に向き合ってもらいたいと願うばかりです。
http://sangakusha.jp/ISBN978-4-7825-7000-5.html