河北新報のいちばん長い日
河北新報社著(文藝春秋)1,400円
東日本大震災からもうすぐ8カ月が経とうとしています。先々週発売されたこの本をめくり、言わずもがな新聞という産業は多くの人が携わっているのだなぁ二度読み返してつくづく感じました。そして、それぞれの部門の人たちが「新聞を発行し、読者へ届ける」ということをあきらめてしまった時点で、新聞としての役割は果たせないという怖さもあるのだと。
今回の震災では、とても悲しくつらい思いもしましたが、新聞が届けられることを待っている人たちの期待に応えられた―という意味では、多くの新聞販売労働者が自信を持ったのではないかと思うのです。震災翌日、街灯ひとつともることのない暗がりを家族の安否も確認できないまま、新聞配達をしてくれた人たちの責任感は並大抵ではありません。専業従業員ならともかく、アルバイトの方のほとんどが休まずに配達をしてくれたという事実を、この本でもしっかりと伝えています。
「(道路陥没などで)配達先の安全確認をしないうちに配達作業をさせた」、「福島第一原発の放射能漏れ(メルトダウン)の3日後の雨天時に配達を休止させなかった」という非難もしっかり受け止めた上で、有事の際の新聞発行については、いまでも悩むことが多いものです。「あの時の判断は正しかったのだろうか」と。
日々、いろいろなことを反省しながら、それを忘れようとボランティア活動にハマっている自分もいるのですが、震災後のある出来事から新聞産業のアンカー役として“ふんばろう”と思ったことがあります。以前にも小ブログでも書いたのですが紹介します。
地震直後に若手の記者が販売店へ来て「すみませんバイク貸してください」と言い残して猛スピードで立ち去って行きました。察するに津波の被害を受けた沿岸部へ取材に行ったのでしょう。ラジオでは「名取市の沿岸部には200以上の死体が…」と想像を絶する情報が流れてくる。まだ非常線が張られる前に沿岸部へ向かって大丈夫なのだろうかと心配しながら夜を明かしたことを記憶しています。そして翌朝、彼は泥だらけになったバイクを返しにきました。その表情はこわばっていて、とても見ていらるものではありませんでした。その時、思ったのです。この記者が書いた記事を多くの人に読んでもらわねば…と。
以下に11月7日付け河北新報の書評のコーナーに掲載された同誌の書評を引用します。
東日本大震災で自ら被災しながらも新聞を出し続けた東北ブロック紙、河北新報(本社・仙台)。2011年度新聞協会賞を受賞した一連の震災報道の舞台裏を記した迫真のドキュメントである。
その日、交通網や電話回線はマヒし、紙面制作システムは破綻した。津波で支局が流され、販売店からは多数の犠牲者が出た。ガソリン、水、紙、食料。取材から紙面制作、配達までに要するすべてが足らない。
それでも当日の号外を出した。停電でテレビもインターネットも使えない避難所の被災者は差し出された新聞に殺到した。
全編を通じて心揺さぶられたのは、それぞれの持ち場で自分の仕事を全うしようとする人間の姿だ。
小学校の屋上で助けを求める人々を空撮した写真部員は、ただシャッターを押すだけの自分を責めた。津波にのまれかけた総局長は寒さに震える手で原稿を書いた。総務・営業部員らは社員のためにおにぎりを作り、販売所は新聞を読者に届けようと奔走した。
ギリギリの状況で最後まで手放さなかったのは、事実を記録し伝える使命、そして被災者に寄り添う精神だった。こんな場面がある。
県が推定した「万単位の死者」。見出しに被災者を突き刺す「死者」の2文字が使えるか。整理部員は迷いつつ「犠牲」に置き換えた。紙面作りは全国紙と一線を画した。
原発が爆発した福島から一度は社命で退避した現地記者は煩悶(はんもん)した。残った住民もいるのに「地元を見捨てたも同じだ」。福島帰還がかなった後も傷は消えていない。
現場の証言、手記、社員アンケート、企画記事、読者の声などを織り交ぜた本書は、震災史に刻んだ貴重な記録だ。同時に極限の困難に直面した地元紙が描き得た誇り高い自画像でもある。
情報のデジタル化が進む中で、地域に根付く地元紙の底力と可能性を示す一書だ。評・片岡義博(ライター)
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11/8追記:さっそくご注文をいただきました!どうもありがとうございます。
・片平健次さん(京都府)
・三ッ野潤也さん(石川県)
11/9追記:購入するきっかけ「今だけ委員長のブログを見て…」どうもありがとうございます。
・小石 克さん(佐賀県)
・山崎文義さん(宮城県)
11/10追記:職場で取りまとめていただきナント10冊の注文。ありがとうございました。
・琴岡康二さん(東京都)
11/18追記:支援物資も大量に送っていただいた中国新聞深津北販売所さまからこれまた大量の書籍・DVDをご注文いただきました。
・吾川茂喜さん(広島県)
12/12追記:元新聞労連委員長の嵯峨さんにも3冊ご注文をいただきました。嵯峨さんにはワンコイン応援メッセージにもご協力いただいてます。
・嵯峨仁朗さん(北海道)