沈まぬ太陽(全5巻)
著者 山崎 豊子(新潮社)1巻と5巻1,600円、2巻3巻4巻1,700円
日航ジャンボ機墜落事故から、今日で21年目。1985年8月12日、群馬県の御巣鷹山に日航ジャンボ旅客機が墜落し、520名もの命を奪った事故を従業員の立場、被害にあった家族、そして労働組合の役割、航空会社の組織を描いたルポルタージュ。
主人公の恩地元は労働組合の委員長に就任し、空の安全と従業員の労働条件改善に取り組むまっとうな組合運動をしているのだが、時代は生産性向上にばかり向かっていく。会社は労働組合を敵視し、組合の分断工作に動き出す。恩地執行部を「アカ」と呼び、不当な海外勤務が命じられる。まぎれもない不当労働行為に対して、恩地と家族は耐え忍ぶが・・・ 現代の流刑という書評が適当なのかもしれないが、人間とは、組織とは いろいろ考えさせられた1冊。
日航ジャンボ機墜落事故を取り上げた書籍もけっこう出版されているが、競争社会が生み出した経費削減の悪影響が一番現われたのが航空会社だという視点で描かれている。経費削減が人命をも危険にさらすということを役人や世の経営者には、あらためて考え直してもらいたい。
クライマーズハイと並んで「自分自身」に置き換えて考えさせられる長編です。