きょうは先月に引き続き、「いま、あらためてメディアの役割!を考える〜デジタルとケータイ文化の嵐を前にして〜」のセミナーに行って来ました。6月24日に第1回目が開催された連続セミナーの2回目です。
今回の講演者はNHK仙台放送局編成担当部長の谷弘聡史氏。テーマは前回の関本英太郎氏(東北大学大学院情報科学研究科)が論じた「多様な価値観の中での放送」を受けて、公共放送の側の谷弘氏が「視聴者・市民と公共放送」と題して約2時間30分の講演が行われました。
谷弘氏は「誰でも発信できる時代の到来」を「自由な闊達な表現・主義の時代」であると述べ、放送局が番組の主張性や方向性を組み立てるものの、みのもんたサンや古館伊知郎サンに代表されるような個人(キャスター)から発信(番組)になっている現状を報告。「阪神・淡路大震災」の際にNHKが果たした役割と平行して、被災した地域に住む韓国人や中国人、東南アジア系の移住者(日本語や英語があまり通じない)に「FMヨボセヨ」が重宝がられたコミュニティの話題などが紹介されました。
マスメディアとしてのテレビについては、許認可事業としての放送事業であり、放送法や著作権法、BPO,放送ガイドラインなどの自主規制の仕組み、用語・表現の問題など制御の仕組みが、ネットなど誰でも発信できるメディアとは違うことを強調。あらゆる情報を整理して利用者に伝えるのが放送事業としての使命だと述べました。
地域コミュニティとの関連については、「こんぱす東北の課題」の例を挙げ、徐々にではあるけれど「視聴者の声を伝える」地域に根ざした番組編成に向かっていることなども語られました。
会場からは「視聴率という競争がない状況で番組作成を行っているNHKの価値基準は?」という質問が出され、「放送時間帯の番組編成を行っているのも確か。お昼には在宅している主婦の方々をターゲットにした内容で番組を組んだり、深夜近くには報道特集のようなネタを提供するようなスタンス。その世代などに喜ばれるであろうと局員のレベルが価値基準である」とのことでした。また、NHKのOBと名乗る男性からは、「番組自体の信頼性が低下しているのではないか。公共放送のNHKだからこそ公権力と対峙する役割を担わなければならない」との苦言も紹介されました。一連の不祥事に関する質問などは出ませんでしたが、「悪いコトをした人」を組織の全体の責任としてあげ連ね、すべてが“けしからん”と言うことではなく、谷弘氏が述べた「視聴者の意見を聞きっぱなしにしないで取り上げていく」という動きを応援したい―という締めくくりだったように感じました。
次回3回目のセミナーは、8月19日(土)13:30から、河北新報社(仙台市青葉区)1階ホールで開催されます。講師はテレビユー福島常務取締役の市村 元氏。問い合わせは日本放送労働組合東北支部。TEL 022-211-1048