それぞれの役職を担っている方の挨拶は、やはり新聞特殊指定に関する話が多くを占めました。「日販協による特殊指定維持を求める署名が58万8千人分集まった成果だ」、「再販と特殊指定は新聞の戸別配達には不可欠」と今回の公取が下した結果を「いかにも自らの力で維持させたものであり、業界の主張は正当である」と言わんばかりの挨拶が続く中、「公正な販売が第一であり世論の理解が得られているかは疑問」という内容のことを話された方もいて、「まだまともな方もいるのだなぁ」と思ったりしました。販売店側も読者の声を聞かないようにしているのかなぁ・・・。でも販売店の経営をしている方々だから、本音ではなく二枚舌で話しているのだろうと感じました。
社団法人日本新聞販売協会(日販協)専務理事の前田博司氏の挨拶もかなりインパクトがありました。「業界紙にも載らない生くさい話をしたかったけれど、時間がないので詳しくは話せないが今回は国会議員の力をどれだけ借りたことか・・・」と前置きをしながら、国会議員への働きかけの凄まじさが切々と話されました。
独禁法調査会、経済産業部会、文教部会などでさまざまな議論が行なわれたがまとまらず、公明党の冬柴幹事長に自民党への働き掛けを要請、中川秀直自民党政調会長が動いて、自民党の新聞販売懇話会が動き出したなどの話や、特殊指定が外れると韓国の新聞事情と同じになってしまうとの論点で、ネットやフリーペーパーに押される韓国の新聞事情について言及しました。最後には「何があっても政治家にお願いせざるを得ない」と力説し、「日販協政治連盟への加入してもらいたい」と要請。また、300委員会(全国の小選挙区に立候補する与党議員に新聞販売店が密着をして先生方にいろいろなお願いをしたり、付き合ったりすることのようだ)についても、今回の新聞販売懇話会などの流れを機に再構築を図るべきだと語りました。
日販協の目的は「新聞販売送達事業の公益性に立脚し、発行本社と緊密な協調を保って業務の改善、進歩を図るとともに、新聞読者に対する奉仕を旨とする倫理化運動を推進することを目的とする」ということですが、新聞販売店の公正な競争を守ることと、国会議員(与党の)との「つながり」は関係ないはずです。
今回の大会でも会場から意見や質問もなく「当たり前」のように終了しましたが、この業界が「当たり前」になれない理由もこうした「現実から目をそらし、二枚舌を使う」方々で運営されているからなのでしょう。そういう私も同類であります。しかし、世論(読者の声)からは目をそらさないで出来得る範囲で行動しようと思っているのですが・・・。
日販協の政治家への働きかけを助長しているのには呆れますね・・・それじゃ、何も変わらないでしょ、って感じです。
新聞という商品を取り扱っている感覚が欠如しているから、業界人は新聞のことを「紙」という表現をしているんですねぇ。読者を増やすという観点はゼロ。「紙」を増やすためなら値引き、オマケ付の販売も当たり前。このような状況は、販売店がおのずからそんな商売が当たり前とやってきたのか?、新聞社に指導されてきたのか?ニワトリとタマゴの話になってしまいますが、それを変えられない業界全体の問題として受け止めましょう。
昨年行われた同大会では「そんなことおかしい!販売店に自民党のポスター貼るつもりですか?販売店も読者からすると、その新聞と同様に見ている。新聞がひとつの政党や議員を支持、支援するなんてことは許されるものではないし、異常だ」なんてこと発言して、新聞労連にも日販協に「意見書」を提出してもらったりしたので、今年は出入り禁止になるのではないかと思ったのですが…。
販売店もみんな誰かにおびえてるんです。それは改廃権という強権発動権を新聞社が有しているためで、「言うことを聞かない」販売店はすぐに切り捨てる=販売店は職を失う構造になっているからです。だから販売店も「違和感」を抱きつつも誰も何も言わない、言えないんです。