新たなビジネスモデルを模索する新聞社と効率的経営に踏み込む新聞社。
既存のビジネスモデルだけでは先が見通すことができない新聞産業ですが、インターネットを駆使したビジネス手法にばかりに目が向いて右往左往している新聞社が多い中で、新聞社が有する情報コンテンツを活用して収入アップを狙ったり、新聞配送体制を効率化して経費圧縮に乗り出したりする新聞社も増えています。
▽朝日新聞社、リコーとビジネス向け情報配信サービス開始
http://www.asahi.com/digital/av/TKY201101130112.html
クラウドコンピューティングを利用して、複合機へビジネス情報を送るという仕組みです。グーグルのアラート機能を個々の社員がPCへ設定して情報をキャッチするより、(まだ日本では)プリントされたものを上席者から序列判を押して職場内の情報共有を図るほうが現実的な事業所も少なくありません。
朝日新聞社は、自社コンテンツからビジネス向け情報を選んでA4サイズにまとめた「朝日新聞ダイジェスト」や災害や大事件が起きた時の「速報号外」を配信。新サービスに参加した通信社や専門紙計10社は、自社の紙面イメージを配信したり、独自に構成したダイジェスト版や特集紙面を提供したりする―そうです。観光業、衣料、鉄鋼、建設、自動車、食品などの業界紙も参加するとなれば、かなりの需要が見込まれるのではないでしょうか。
【参加社=配信商品名】化学工業日報社=化学工業日報ダイジェスト▽観光経済新聞社=観光経済新聞ダイジェスト▽環境新聞社=シルバー新報▽時事通信社=時事速報上海便、時事通信金融財政ビジネス▽繊研新聞社=繊研新聞ファッション通信▽鉄鋼新聞社=鉄鋼新聞ダイジェスト▽日刊建設工業新聞社=日刊建設工業新聞ダイジェスト▽日刊工業新聞社=日刊工業新聞ダイジェスト▽日刊自動車新聞社=日刊自動車新聞エコカー最新情報▽日本食糧新聞社=日本食糧新聞ダイジェスト
▽新聞配送、帰路に紙運搬 日本製紙と河北新報社
http://www.kahoku.co.jp/news/2011/01/20110114t12030.htm
新聞輸送車両の活用は昨年4月、朝日新聞社がパナソニックと提携して片道便であった新聞配送車両の往復便(ラウンド便)に取り組みましたが、河北新報社では岩沼市に工場を置く日本製紙岩沼工場で製造する新聞用紙のうち小型サイズの巻き取り紙を、帰路に積み荷が空となった新聞配送の3tトラックで、約30キロ離れた仙台市泉区の河北新報印刷センターに運ぶラウンド便をはじめました。これまで日本製紙が負担(紙代に上乗せしてあると思いますが)していたであろう新聞用紙の輸送料金も圧縮されるのでしょう(輸送量の約18%をラウンド便で対応する計画)。
輸送会社の従業員の労働条件も気になるところですが、2006年4月から施行された「エネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネ法)」(国土交通省)の一部改正により、一定規模以上の輸送事業者(特定輸送事業者)、一定規模以上の荷主(特定荷主)に対し、省エネルギー計画の策定、エネルギー使用量の報告の義務付け等の輸送に係る措置が新たに導入されました。それもあって、各社とも国土交通省へ何かしらのアピールをしなければならないという切羽詰まった状況も背景にあります。
新聞配送は限られた時間帯に販売店へ新聞配送をするため、(積載量の問題もありますが)あまり効率的とはいえません。帰路も深夜時間帯なので荷受けをする物流センターも閉まっていますから、効率的配送システムは“言うは易し…”なのです。
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このほかのトピックスでは、専売店を持たない中堅規模の地元紙(完全セット販売)が4月から土曜夕刊を休止するようです。理由は広告が集まらないため紙代など制作コストの削減だとか。一部の経営幹部からは「夕刊廃止」まで話が出されたようですが、とりあえず土曜日の夕刊をなくして完全週休二日制に移行するとのこと。4月からということですが、当該の販売店では現時点で何も知らされていないようです。
これまで経営状況が思わしくないと値上げで乗り切ってきた新聞業界(大手紙・地方紙)ですが、1994年以降17年間、値上げをせずに現状を維持することは不可能になってきました。環境が想像以上に変化してきたのだから当然なのですが、人口減、世帯数減、購読者減という市場(紙ベース)の先細りが予測されますが、守るべきものは死守しながら仕組みを変えていかなければなりません。