断筆宣言をしたりその後解除したり俳優業もこなす変人の筒井康隆さんが、変人らしく現代語を斜め後ろから(かなりエロく)パロッた現代風刺(?)。文藝春秋の「オール讀物」や月刊誌「遊歩人」に連載されたものを再編集したもので、昨年7月30日に発行されました。
東洋大准教授の水野さんから「こそっ」と教えてもらい、図書館に予約をして3カ月待ちでやっと読め(なぞり)ました。他人事だと笑えるのですが、新聞に関係ある用語の解説は「グサリ」とくるものがほとんど。唸りながらも笑ってしまうところが筒井さんのワザなのでしょう。
新聞に関係するものを引用しますが、「今だけ委員長がこう言っている」なんて受け取らないでくださいね。たまには笑いネタもいいじゃないですか。
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・あさひ【朝日】まだ出ていないうちにくる新聞。
・きじ【記事】わずかの事実に多くの誤りと推測を付加した自動的な報道文。
・きしゃかいけん【記者会見】一挙に取材者と対面して時間の無駄を省く方法だが、それでもまだ単独インタヴューを望まれる。
・きしゃだん【記者団】答えてもらえないことがわかっていながら質問しなければならない気の毒な集団。
・ぎぜん【偽善】マスコミの振りかざす正義。
・けいさいし【掲載紙】たいていは数日後に送ってくる。過ちは訂正できない。
・げんろん【言論】権力、財力、腕力のない者の武器。ただしマスコミの言論のみは暴力となり得る。
・こうこく【広告】あると邪魔だがないと寂しい。
・ごほう【誤報】訂正記事は常に小さい。
・じけんきしゃ【事件記者】事件を起こす記者。
・じつりょくしゃ【実力者】マスコミに悪口を書かれているうちは真の実力者ではない。
・ジャーナリスト【journalist】真実を非文学的に追及する人。
・しゃかいがく【社会学】新聞記者志望のものが学ぶが、役には立たない。
・しゃかいめん【社会面】子供の頃はマンガを読み、青年時代は三面記事を読み、老年になると死亡欄を読む。
・しゃせつ【社説】これが社員全員の意見であると嘘をついている記事。
・じゅうぐんきしゃ【従軍記者】@ピュリッツァー賞への第一歩。A死んでも良いと社に思われている記者。
・しゅざい【取材】救いの神と歓迎されたり、情報乞食と罵倒されたりする仕事。
・しんぶん【新聞】週刊誌の広告、テレビ欄、マンガ、死亡記事の順によく読まれる。
・そくほう【速報】誤報が多い。
・ぞくほう【続報】速報の誤報をさりげなく訂正する報道。
・ダイレクトメール【direct mail】ゴミ箱に直行するメール。
・ちょうかん【朝刊】これを読んでから寝る人もいる。
・ちょうちんきじ【提灯記事】記者自らファンであるタレントのことを書いた記事。
・とくだね【特種】野心で眼がギラギラさせている記者には絶対に転がり込まない。
・はいかん【廃刊】編集者の志が高かったため。
・びだん【美談】悲惨な記事がない時の埋め草。
・ひょうげん【表現】自由であると皆が言い、自由でないことは皆が知っている。
・マスコミ【mass communication】タレコミ、追込み、ツッコミ、聞込み、思い込み、早呑み込みの媒体。
・よみうりしんぶん【読売新聞】中央公論新社の親会社。ナベツネ新聞。
・りんてんき【輪転機】敵はバケツ一杯の砂。
・ろんせついいん【論説委員】新聞記者の終着点。