最近、夜遅くにマンションの集合ポストへチラシを投げ込んでいるサラリーマン風の方が目に付きます。ポスト付近の掲示板には「許可のないチラシ・パンフレットの投函禁止」とシールが貼ってあるのに…。
先日もスーツ姿のポスティングマンと遭遇しました。その方は一瞬、私の顔を見て住民ではないと見て再びチラシをせっせとポスティング。「ピザ屋じゃないし何だろう」と注意してみてみるとよく新聞折り込みも利用されるスポンサーでもあります。業種は不動産関係。すぐに捨てられることを覚悟してなのか、その「売ります・買います」系のチラシはコピー用紙に単色刷りで、あまり経費をかけていない(かけられない)と察しがつくのですが、新聞折込枚数だけでは「転換率(配布数に対する戻り率)」が足りないということなのでしょうか…。普及率も落ちているのでたぶん…。
そのチラシを1枚いただいて内容を見てみると物件情報のほかに「チラシ配布スタッフ募集」とも表記されています。前出のおそらく社員であろうポスティングマンは「見てもらいたい」と念じて比較的丁寧にポスティングをされていたように感じたのですが、これが「何枚まいて幾らもらえる」というアルバイトだと数をこなすだけで、すでにチラシで一杯のポストへまたぞろチラシを押し込んでいくさまが予想され、逆にマイナスイメージを植え付けてしまうだけだと思います。せっかく作成したチラシなのですから、見てもらうためにはそれなりの工夫が必要なのですが、「とりあえず数千枚まけば1件は反応がある」という皮算用では逆に顧客からの不信感を買うだけだと思うのですがどうでしょう。
チラシは新聞に折り込まれているから食卓まで届くわけで、新聞購読世帯だからこそのマーケティングも考えられるでしょう。あとは新聞販売店が作成するチラシ(新聞休刊日とか配達員募集など)の片面を活用するコラボ企画で経費を軽減するとか、集金スタッフからのチラシ手渡し作戦とか販売店に相談するといろいろなアイディアが出てくると思いますよ。多くの販売店ではマンションへチラシ等を配布する際に管理人へ確認してから配布するようになってきてますし、コソコソしながら仕事をしたくないものです。
先日も夕刊に書籍販売のチラシを入れたところ、夜間にかけて電話が鳴りやまず一気に600件を超える購入申し込みがありました。まだまだ新聞折り込みの効力はあると感じた瞬間でした。
新聞産業界20年を振り返るB
2000年
1・1 陸奥新報が印刷局を廃止し、朝日新聞・日刊スポーツ・日本農業新聞の印刷受託業務を新会社の(株)朝日弘前プリンテックへ移行
2・1 読売、「Loppi(ロッピー)」で購読受付開始、全国紙5紙の購読申し込みが可能に
2・7 道新、函館新聞社の参入妨害問題で、係争終結への同意審決を申し出(同社の独禁法違反が事実上確定)
3・15 公取委、新聞販売勧誘時の上限を超す景品提供で和歌山の4店主に排除命令
3・24 読売、題字「北海タイムス」を取得
3・30 中央労基署、時事通信記者の過労死を認定
3・31 福島民友と福島民報、夕刊を休刊
4・1 購読料改定=朝日1部売り130円(20円上げ)、宮古毎日月決め1,785円(85)
4・1 函館新聞、朝刊紙に移行
4・3 読売、夕刊フジの受託印刷開始
4・5 読売、産経、相互委託印刷で合意
6・23 朝日、中国新聞記事の盗用が判明、読者に謝罪
7・8 読売、初のNIEセミナー開催
7・18 電通と共同、時事など5社、スポーツ総合サイト新会社「スポーツ・ナビゲーション」設立を発表
7・26 時事、サイトを一新、内外の最新ニュースを提供する「時事ドットコム」を開設
8・10 新聞広告のデジタル送稿を行う「デジタルセンド」が発足、118社が出資
8・15 公取委、新聞業景品提供ルールの改正を告示。9月1日施行
9・1 購読料改定=読売1部売り130円(20円上げ)、毎日1部売り130円(20)
10・1 購読料改定=京都、神戸1部売り130円(20円上げ)
10・3 日経と地方紙14社が共同サイト「AREA(エリア)21」を開設
10・12 新聞協会、再販制度に関する文書を発表、公取委に手渡す
10・14 毎日、「開かれた新聞委員会」を創設
12・4 読売、基本文字拡大、1段12文字、1ページ14段の新紙面
12・7 公取委、著作物再販で関係業界との論点を整理した「中間まとめ」を公表、新聞協会との議論では@都市部での戸別配達維持A過疎地での戸別配達と都市部との同一購読料維持B紙面の質の維持C言論の多様性、国民の知る権利―の4点に論点を整理
2001年
1・1 福島民友、社是と編集綱領を統一し「民友の誓い」を制定
1・1 共同、加盟新聞社のニュースサイト開設
1・4 朝日と日経、電子メディア事業提携に合意
1・9 道新、iモードで有料ニュースの提供開始
2・27 活字文化議員懇談会、再販制維持へ緊急決議
3・19 朝日と日経、iモードに共同サイト開設
3・20 読売、米シカゴ・トリビューン紙と提携、全米主要約40紙の独占利用権も獲得
3・21 活字文化議員懇談会、再販維持を求める声明を採択
3・23 公取委、「再販、当面維持」と発表
3・25 朝日、毎日、読売、日経の新聞4社、参院選挙の集票作業を外部に委託
3・31 英文毎日が休刊、ネット新聞として再出発
4・1 情報公開法が施行
4・1 購読料改定=四国1部売り130円(20円上げ)、熊本日日1部売り120円(20)、ジャパンタイムズ月決め3,900円(480円下げ)、1部売り150円(10円下げ)
3・1 山形、「紙面審査会」を設置
4・9 産経と大阪読売、相互委託印刷を開始
4・19 日経、有料のビジネスポータルサイト事業を8月から開始
5・1 購読料改定=道新1部売り130円(20円上げ)
6・1 購読料改定=茨城1部売り120円(20円上げ)
6・11 東奥、「報道審査会」を創設
7・1 河北、「紙面委員会」を創設
8・29 産経、9月から本紙と系列誌のセット価格設定
9・1 購読料改定=産経1部売り100円(10円下げ)
9・1 産経、「電子配達(ニュースビュウ)」のサービス開始
9・11 米同時多発テロで米116紙が号外
9・18 朝日、週刊タブロイド紙「SEVEN(セブン)」を創刊
10・23 米ニューヨーク・タイムズ社「電子新聞」の配信開始
11・6 朝日の週刊新聞「SEVEN」第8号で休刊
11・7 産経、02年4月から東京本社の夕刊廃止、朝刊単独紙に移行と発表
11・21 改正商法が成立、02年4月1日から施行、決算公開開示がネット上で可能に
12・1 皇太子妃ご出産で各紙が号外
12・4 公取委、再販制度運用で意見交換する第1回「著作物再販協議会」を開催
2002年
1・7 産経、2月から休刊日に即売朝刊発行と発表
3・1 産経、本紙と「ニュースビュウ」のセット販売価格を設定、朝夕刊セット地区で月額4,350円
4・24 日本ペンクラブ、有事関連3法案に対する懸念を表明
4・24 新聞協会理事会、メディア規制2法案に反対の緊急声明
5・3 朝日新聞阪神支局襲撃事件(1987年)が未解決のまま公訴時効成立
5・12 読売、個人情報保護法案と人権擁護法案に対し「修正試案」を掲載
5・31 産経、休刊日の即売を7月から休止と発表
6・1 読売、「読売新聞グループ」のもとに東京、大阪、西部の各発行本社などを置く新体制に移行
6・14 「新聞著作権協議会」が発足、複写権の管理など受託
6・15 首都圏で無料誌「HEADLINE TODAY」創刊
6・20 陸奥新報、題字横書きと文字拡大、1段11字に移行
8・1 中国と愛媛、販売局にデリバリーセンターを設置
9・19 新聞用ジャパンカラーの規格値決まる
10・15 新聞協会第451回販売員会、4月6日を「新聞をヨム日」に、「春の新聞週間」を設定了承
12・16 日本郵政公社設立会議、「低料第三種郵便料金」制度の存続決める
12・24 読売、ニュースの見出し無断引用でHP運用会社を提訴
2003年
1・29 読売、広告入校をデジタル原稿に一本化の方針決める
4・6 「新聞をヨム日」から始まる「春の新聞週間」がスタート
4・30 毎日、東京本社の凸版輪転機印刷工場を閉鎖
8・7 経産省、日刊工業に産業再生特別措置法を適用
8・19 読売、9月から海外の主要都市で紙面を印刷・販売
8・25 滋賀県で「みんなで作る新聞社」の創立総会(設立登記は9月1日)05年春の発刊目指す
9・16 朝日、毎日、読売の3社、携帯電話で新聞記事の音声配信を実証実験
9・26 秋田魁、読者の個人情報を無断で広告主に提供、おわびを掲載
10・1 購読料改定=産経大阪3,925円(75円上げ)
10・1 河北、夕刊を全面刷新、題字を縦から横に変更
10・7 河北、ホームページの一部に登録制を導入
10・31 秋田さきがけスポーツが休刊
11・14 EU、記者クラブの撤廃を申し入れ、日本政府は「自立性尊重」
11・21 山形、医療機器紹介広告の掲載を中止、広告規制に抵触する恐れ
11・24 日経、不正経理で子会社元社長らの逮捕受け再発防止を表明
2004年
1・26 滋賀県の「みんなで作る新聞社」の創刊紙題字は「みんなの滋賀新聞」に決定
2・3 防衛庁、イラク・サマワ入りの暫定記者証を発行、報道各社に申請書提出と報道自粛を要請
3・1 日本工業新聞、「フジサンケイビジネスアイ」に紙名変更
4・5 毎日、マイクロソフト(MS)と業務提携、ニュースサイト統合
5・1 購読料改定=室蘭1部売り100円(10円上げ)
5・5 鹿児島新報が廃刊
5・20 新聞協会と民放連、拉致被害者家族の取材に配慮求める要請を受け、「節度ある取材・報道に努める」申し合わせ
7・9 読売と読売新聞販売店、防犯活動協力の全国組織を発足
8・28 朝日、FMスクリーン方式でカラー広告印刷
9・1 米グーグル、ニュース検索サービス日本語版開設
9・2 朝日と中国、広島県向け委託・受託印刷に合意
10・1 産経、印刷の一部を日刊スポーツ印刷社に委託
10・1 フジサンケイビジネスアイ1部売り100円(20円下げ)
10・1 スポーツニッポン新聞3社が合併
10・23 新潟県中越地震が発生、新聞各社は特別輸送や号外発行で対応
10・30 新潟日報、北海道、神戸両社の協力を得て、中越地震の避難所で号外「ここだけ新聞」を発行
11・11 読売、放送局に対する持ち株制限比率を超えた総務省命令違反が判明(中日・日経・朝日・道新・熊本日日と相次ぎ判明)
12・10 青森県政記者会、核燃料再処理工場取材への撮影許可申請書めぐり抗議(15日に原燃が撤回を発表)
12・20 日経子会社不正経理事件に絡み、株主代表訴訟などが和解
紙面的にはかなりいいものを作りながら、経営的につまづいてしまったのが「良い」だけでは続かない事を実感させられた事例でした。
あの頃あたりから、新聞をどうにかしなければと焦っていた気がします。
そして今も。
みんなの滋賀新聞が動き出した時は、新聞社という組織に嫌気をさして飛び込んだ記者も多かったはずですね。でも残念ながら持ちこたえられなかった。脆弱な経営基盤もさることながら、新聞協会未加盟の組織はメディアとして扱われないかのごとく、記者クラブには入れないし記事配信も受けられない。当事者は本当に無念だったろうと思います。
いまでこそネットメディアの台頭によって記者クラブの門が開かれてきましたが、紙メディアだったらどうなのだろうかと思うときがあります。例えばWSJ日本語版が発行するとなると新聞協会傘下の各新聞社はどのような対応をするのだろうかと…。
猫手企画サンの名言「ジャーナリズムは儲からない。だから健全なジャーナリズムを支えるビジネスモデルが不可欠」ということになるのですね。