
乱気流(上・下)
著者:高杉 良(講談社)1,700円(上・下巻とも)
日本経済新聞社の社内に噴出する問題点、バブル経済からその崩壊までの「失われた10年」を著者が丹念に取材を重ね、巨大化した新聞産業に一石を投じた小説。
主人公の倉本和繁を介して、1988年から2004年までの日本経済の流れが分かりやすく記されている。リクルート事件やイトマン事件、山一證券等の経営破たん、大銀行の合併劇、竹中平蔵の影響力…。そして巨大新聞社長の汚職が判明し…。
新聞業界では正論を唱える人間が「異端児」扱いされてしまう変わった世界。横柄な取材方法の実情や偉ぶる新聞記者、各新聞社間での「抜いた、抜かれた」にエネルギーを注ぎ、新聞協会賞を勲章とする体質など、新聞業界の裏側が主人公の視点を介して伝わってくる。
かなりの長編だが、それぞれの出来事について掲載された新聞記事も引用されているので「当時を振り返る」テキストとしても十分活用できる一冊だ。
上巻が403頁、下巻が380頁。かなりのボリュームですが、高杉良サンらしく「たまに脱線」するのですらすら読めると思います。ぜひご一読を!