2010年08月02日

政権与党が新聞報道にクレーム?

 消費税論議で自爆した菅(感)も否めない民主党(山形県連)が先月29日、山形新聞社に対して報道が「不公平」だとする抗議文を出していたことが報じられました。
 抗議の内容は、参院選挙期間中の7日付け夕刊1面に掲載された自民党・小泉進次郎衆院議員来県の記事で、イケメン小泉議員の扱い(記事や写真)が均衡を欠いているというものと、15日付け夕刊に掲載された渡部昇一氏(上智大名誉教授)の寄稿記事で、民主党マニュフェスト(外国人の地方参政権、夫婦別姓制度、人権侵害救済法案)に対して、「国家の解体を促進する法案」などと書いていることにクレームをつけたようです。抗議を受けた山形新聞社はこれに当然反論し、「抗議を受ける理由はない」としています。


▽山形新聞に民主県連が抗議 参院選小泉議員の扱いに不満(J-CASTニュース7月29日付)
http://www.j-cast.com/2010/07/29072251.html?p=1
 民主党の山形県連が、山形新聞社に対して報道が「不公平」だとする抗議文を出していたことが分かった。参議院選挙の応援弁士についての記事などが「均衡を欠いている」と主張。一方の山形新聞社はこれに反論、「抗議を受ける理由はない」としている。
   抗議文は2010年7月23日に、山形新聞社に届いた。民主党山形県連会長の和嶋未希衆院議員によると、和嶋議員名義で、同社寒河江浩二常務取締役編集局長宛てに送られたという。


▽「山形新聞の参院選報道不公平」 民主県連が異例の抗議(河北新報7月29日付)
http://www.kahoku.co.jp/news/2010/07/20100729t53011.htm
 民主党山形県連(会長・和嶋未希衆院議員)は28日までに、山形新聞社(山形市)の参院選についての報道が不公平だとして文書で抗議した。選挙報道をめぐって政党が報道機関に文書で抗議するのは異例。識者からは「政権与党らしくない対応だ」という指摘もある。


 「参院選で負けた腹いせ」と思うのは素人考え(という私も素人ですが…)。過去にあった山形県下の報道体制が繰り返されないようにと民主党県連幹部が“一石を投じた”と考えるのは素人の私だけしょうか?

 山形の首領、服部天皇と呼ばれ県内のメディアを牛耳っていた故服部敬雄氏(山形新聞・山形放送・山形テレビ・山形交通の社長会長を歴任)が現役のころは、それこそ自民党王国だったわけです。私の義父(米沢市在住)も今では山形新聞を購読していますが、それまでは服部体制が嫌で毎日新聞を購読していたほど。現在は“社長の血の入れ替え”もあって紙面は右派左派のわけ隔てなく編集されているように感じます。というか、産経新聞のようなものと言ってしまえば分りやすいし、自民党を称賛する記事を書いてもイイじゃないかという意見もあると思いますが、その当時はほとんどの地元メディアの経営に服部氏が参画していたので、それこそ地元メディアが総じて偏りすぎた時代があったのです。
 こういう言い方をすると山形新聞の方に怒られるかなぁ。でも同社の知人は「社内で天皇にたて突くと翌日には記者職から蔵王スキー場のキップきりへ飛ばされる」と語り、「書きたいことが書けない」と酒を飲むたびに嘆いていました。もう過去の話ですが。


メディア帝国の恐怖と貧困.jpg 「メディアの集中排除」を山形県内で訴え続け、多くの著書も書かれている相澤嘉久治氏と一度会って話をうかがう機会もありました。「地方紙や地方テレビ局は地元名士がオーナーという場合が多い。そうすると地方の住民は偏った情報しか得られなくなる。もしくは排除したいと思った人間を抹殺さえもできるのだ」と力説した相澤氏の言葉はとても重かった。いま、原口総務相が言及をはじめている「クロスオーナーシップの禁止」もこのような(特に地方の)メディア企業のあり方にくさびを打つものだと捉えています。


 そのようなことを考えながらムズムズしていたら、けさの河北新報(記者の視点)に同社山形総局の加賀山仁記者の解説記事が掲載してありました。実はこういう記事を待っていたのです。
 加賀山記者は今回の民主党山形県連の抗議について、「報道機関には批判を謙虚に受け止める姿勢が求められる。読者や視聴者が報道に意見するのも自由」と前置きをしたうえで、今回の抗議に3つの問題があると主張。@言論には言論で対抗するという原則を守っていないA民主党は政権与党であり(記事中の)野党や国民に厳しい批判を受けようと政策で応えていくのが筋B記事の妥当性より「どんな紙面を作るか」を問題にし、(民主党県連幹事長が)「表現の自由はもちろん理解している」と言うが、抗議の対象は編集権に向けられている―と解説しています。
 山形新聞が今回の抗議に対する記事を読んでいないので、どんな主張を展開するのか(したのか)興味のあるところですが、加賀山記者は「確かに、河北新報社が抗議を受けたわけではないが、記者として静観することはできなかった。ほかのメディアにも起こり得ると考えたから『他社のこと』を記事にした」とも述べています。
 このような署名記事を読者は待ち望んでいるのかもしれません。

posted by 今だけ委員長 at 23:12 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時事ニュース
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