
日垣 隆さんが書いている「なんなんだこの空気は」は今週号で40回というから、結構続いているコラムなのでしょう。今回のテーマは「メディア考現学」。
「お試し」期間が終了し、5月1日から本格稼働した日本経済新聞電子版(web刊)が成功するかどうかというネタを示しながら、実は新聞業界はもっと奥深い奈落の底に陥っているとの持論を展開しています。「もともと宅配新聞は、自ら新聞を選ぶ頭脳さえ使わない、単なる習慣だった」と言い切り、新聞は知恵を研鑽する手段としてはもう役割を終え、晩酌と等価の習慣にすぎない…と日垣さんは主張します。
「学生時代は、まだ頭が柔軟な時なので新聞は役に立つけれど、その年齢を越しても宅配の新聞を読み続けるのは時間の浪費に近い」といわれるのですが、いま新聞をこよなく愛読していただいているのは高齢者層です。一般的な認識と日垣さんの考え方は相当ずれているとも感じます。で、その日垣さんはネットと新聞のデータベースに毎月数万円以上をかけているのだとか。新聞はデータベースの役割であって、日々のニュースは宅配されなくても入手できる社会環境に変わってきたことを述べたいのでしょう。
話しを戻すと、日経web刊の成功(目標10万人に対して6万人達成との観点から)の要因を3つあげています。
@何もしなければ凋落あるのみだ。日経は独自の販売店が少なく低姿勢であったため販売店とも友好的であり、有料の電子版に踏み切る素地が、他紙より強かった。
A先行する成功事例がアメリカに幾つもあった。日経電子版の無料登録者制度など、どこからどう見てもフィナンシャル・タイムズ電子版の真似である。
Bいずれ破たんする要素を秘めているものの、「ありえない」はずの料金設定を断行。「紙」の朝刊をとっている世帯(これは販売店が従来通り集金。朝刊のみ3568円。夕刊ともなれば4383円)が「電子版」となると、たった1000円の上乗せのみ(これは本社にクレジットカードで払う)だが、電子版だけなら「4000円」なのである。
そもそも日垣さんの主張はデータベースにこそ金を支払う価値があるということだから、「紙」の読者(4人家族などの場合)に1000円で電子版を閲覧させるのはあまりにも安価であって、宅配制度のツケだと解説しています。また、日垣さんの有料メルマガの読者が毎月数万人から10数万人いるのに、天下の日経が6万人で喜んでいるのは滑稽だとさえ…。
「日経テレコン21」とのカニバリゼーションを避けるためでしかないとの結びだけが、うなずけるところでした。
まぁ「言論の自由」があるのですから余命なことは差し控えますが、異色な発言はオモシロおかしく注目されこそすれ、すぐに忘れられてしまうもの。評論家の見方と実際に読者と接している新聞人(特に販売労働者)との物事のとらえ方の違いを感じたコラムでした。でもそれが売るための手法なのかなぁ・・・