業界紙の収入源は通常の日刊紙と同じ販売(購読料)と広告収入が主流であることは言うまでもありません。読者(新聞社や販売店)の数が減っているとはいえ、高い普及率を誇る業界紙の総収入はおおよそ安定していると思われます。最近でこそなくなってきたようですが、以前は取材と称して毎月飲食をねだり、あげくの果てにはタクシーチケットまで要求する記者も少なくありませんでした(一部の業界紙関係者ですが)。
このブログをご覧いただいている方の多くは、一度は新聞業界紙なるものを見たことがあると思いますが、販売系の記事が多いのも特徴です。なぜなら読んでいるのは販売系の人が多いから。編集系の方は「なんだこの記事は…」と赤ペンを持ち出してチェックはしても読まないものです。
今だけ委員長は会社に届けられる業界6紙(ジャーナリスト新聞、ジャーナリスト通信、新聞情報、新聞通信、新聞之新聞、文化通信)を社内の偉い方々が読み終えた後にじっくり読んでいます。なかでも文化通信は販売中心の記事だけではなく、通信や著作権に関する政府直轄の委員会などの議論を取り上げ、「新聞はこうなる」という提言を多く含んでいて読み応えがあります。情報が早いのは新聞情報で取材網(業界人とのネットワーク)が隅々まで行き渡っているのでしょう。
今月も気になる記事を2本発見しました。その記事を書いた記者は新聞業界にどのようなメッセージを伝えたかったのか(勝手に)考えてみたいと思います。 まず一つ目は、新聞情報5月1日付「静岡で正常化めぐって波紋」という記事。全国一販売正常化が浸透している静岡で、読売ジャイアンツのオープン戦に併せて読売系統が6・8ルール内のジャイアンツグッズを拡材として使用し、それなりのカード(契約)を得たことにに対して、静岡、朝日、毎日、読売の販売店で組織する「静新会」が、ケジメとして同会の読売役員の辞表を受理したというもの。それほど大した問題ではないのですが、静岡の異常なまでの販売実態と全国紙発行本社のホンネをこの記者諸兄は伝えたかったのだと思います。
新聞社の中でも群を抜いて経営効率がよい静岡新聞は専売店を持っていません。すべて朝日、毎日、読売の販売店で配達、集金をしてもらうことでローコスト体質を実現しています。販売店も高い普及率の静岡新聞を扱えば、折込チラシ収入もあがることから取引を継続したいために、静岡新聞が自社防衛のために声高に叫ぶ販売正常化を守らざるを得ないという構図のようです。
今後の成り行きにこうご期待!と締めくくられているが、(ある意味)ケンカをあおるのではなくこれからの新聞産業の行く末(あくまでの予測の域ですが)を予見しながら、静岡と読売の判断すべきことを提示してやるとよかったのに…なんて思います。
もうひとつは、ジャーナリスト新聞5月10日付「新聞販売 昨日今日」と題する村上錦吉氏のコラム。村上氏は毎日新聞大阪本社の役員待遇販売局長、吉備国際大教授(法学)をされた方で、ジャーナリスト新聞から新聞販売に関するブックレットを発行している方です。以前、小ブログでも紹介したことがあります。
この村上氏の文章の書き方からして高飛車でウザったいのですが、「無購読対策は日本国民の知的レベルと相関関係にある」との持論を展開し、無購読者が増えた責任は折込チラシ飽食時代を経た販売店にあると強弁しています。歌を忘れたカナリアに例え「セールス努力をしなかった販売店」だと。福岡の読売押し紙裁判(真村裁判)についても言及していて、「送り部数2000部、実配1000部、増減月に2〜3部で、折込減で500部の減紙を申し入れ裁判になった事例がある。月に2〜3部の増減とは拡張も戦いも無い証拠。これでは販売店ではない。改廃は当然である」とナベツネさんへのリップサービスも忘れていないあたりはさすがです。
それで今後の新聞拡張の具体例としては「学校の先生のプライドをくすぐり、日本国民の文化度を上げる壮大な活動を展開する必要があると思考している」・・・?この世代の方は過去の実績をかざすだけで提言のレベルはこの程度でしかない。村上氏が大阪毎日の販売局長時代にどのような販売政策だったのかは言わずもがな、拡材大戦争の時だったのです。朝日新聞販売百年史(大阪編)を読む限りでは毎日と読売がその急先鋒だったとか。そこから目をそらして格好のよいことを述べても信ぴょう性はありませんね。もしかしたら名誉職として裸の王様ならぬ「裸の販売局長」だったりして。
少々悪乗りをして書いてしまいましたが、販売系の読者はこの村上論をどう読みとったのでしょう。精神論としてはよいのかもしれませんが、いつまでたっても「販売店が稼がないから部数が下がるのだ」という発行本社的発想(全てではないと思いますが)を増長させるだけにしかならないと感じるのですが、ジャーナリスト新聞の編集長はどう思っているのかなぁ。
業界紙記者の方々の分析力も相当なものだと思いますが、読者(新聞経営者)を「ヨイショ」するだけではなく、かつまたヤクザコンサルのようにあっちで得たネタをこっちで使うことなく、マジメに新聞産業の将来を紙面で論じてもらいたいと願っています。
今はどうかわかりませんが、少なし特に業界の地殻変動が起きている今は全国各地で起きている事実を知るだけでも、読む価値のあるものになっています。
販売店の方たちの中では、系統本社からの発表の情報しか知らない店主が多くいます。
現在起きていることをしっかりと把握しなければ、次の対策はうてないと考えます。
業界紙の回し者ではないですが、今は絶対読むべき情報源だと思っております。
ちなみに我が系統の20店程度の販売店会で読んでいるのは2割程度です。ちょっと情けなくも思っております。
業界が混とんとしているのに同じ系統内でも“可視化”してませんよね。すでに業界全体で何とかしなければいけないところまできているのに…。
新聞業界の情報発信として、こんなことも細々とやっています。自分自身の備忘録としてですが参考になれば幸いです。
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