週刊東洋経済2/20「新聞・テレビ断末魔 再生か破滅か」
東洋経済新報社(690円)
輪転機で刷られる新聞がどこか懐かしいような雰囲気を漂わせるセピア色の表紙。注視書きには「かつて高速輪転機は速報のための武器だった。が、今では重たい負の遺産へと変質しつつある」と…
週刊東洋経済が新聞(テレビ)業界を1年1カ月ぶりに特集した今号は、前回の「テレビ・新聞陥落」以降、延べ53頁の特集に目を通して「この1年間でいろいろな動きがあったなぁ」と思わずうなずきながら、新聞産業で起こった出来事をしっかり取材してあるなぁという印象を持ちました。前回の特集は「立ち読みレベル」(ゴメンナサイ)と評させていただきましたが、今号はしっかりしてます。
WSJジャパンの北尾吉孝代表やクロスオーナーシップを問題視した原口一博総務相のインタ記事は、もうひと突っ込みを入れてほしかった気もしますが読んでおくべき、クリス・アンダーソンの「無料経済で新聞経営は大きく変わる」はイマイチという感じでしょうか。
ほとんどの記事が見開き2ページの読み切りで、係数資料も豊富でわかりやすい。さらに、全国紙だけを取り上げるのではなく、「地方紙のサバイバル戦略」として7つの新聞社の取り組みを紹介するなど、「これは業界人も読んでおいたほうがよいのでは?」と思う記事が盛りだくさんですね。
あとは、相変わらず日本経済新聞を持ち上げる感じが伝わってきますが、日経が3月からサービスを開始する日経新聞電子版の全容が明かされています。昨年末で日経を退社された坪田知己さん(日経デジタルコア所長)も「日経電子版の成功条件」を寄稿されています。
「再生か破滅か」とおどおどしい副題に、「こんなもの!」と強がって見せても、隠密に購入している新聞経営者も少なくないと思います。意外と内部にいる人は自分たちの産業がどの方向へ動こうとしているのか理解していない人が多いように感じます。周りの意見を聞かずに“自分が決めるのだ”と思っている人の方が大多数でしょうから…。でもこれって“読者の声を聞かない”ことの裏返しなのだということをもう一度考えてみてはどうでしょうか。