2010年01月28日

唯一生き残るのは、変化できる者である

 「次に来るメディアは何か」の著者で、元毎日新聞社常務取締役を務めた河内孝さんが、マイコミジャーナルで連載中のコラム「メディア革命」(1月26日付)に「日経電子版の創刊に見る"販売店"という呪縛」を寄稿しています。

 米国のメディア事情にも詳しい河内さんの指摘は、日本経済新聞社が今年からスタートする予定の電子新聞の販売価格を「日経本紙を提起購読していればプラス1,000円で電子新聞も閲覧できる」という設定に対して、「読者の購読情報は販売店が有しているため、確認作業に面倒な手間がかかる」という問題提起と、販売店側が「発行本社側に顧客データが蓄積されてゆくことは、販売店が蓄積した顧客情報が流失するという不安を抱えている」との解説をされています。だから電子新聞の成長がどうなるということには触れていませんが、販売店との顧客データのやり取りが障壁となるのではないかと警笛を鳴らしています。

 今年1月からウェブ新聞「webun」を創刊した北日本新聞社では、webunの購読は「紙」の定期購読者は無料で利用でき、無購読者や配達されない地区に住む顧客に対しては月額2,100円(税込)の購読料を支払うシステムを導入。日経の電子新聞は「紙」購読者には定期購読料に1,000円の上乗せとなります。来年からオンラインサイトの有料化に踏み切るニューヨーク・タイムズも同じような手法で、いずれも「紙」と連動させる価格設定となっています。


北日本新聞社のHPより
 webunは会員制のウェブ新聞です。北日本新聞をご購読なら会費は一切必要ありません。会員登録をするだけですべてのコンテンツを利用できます。
 現在は未購読でも、1カ月以内に購読を開始していただける場合は即座に会員登録が可能です。会員登録のオンライン手続きにしたがい、購読申し込みを行ってください。
 県外や海外など配達区域外にお住まいの希望者は、月額購読料2,100円(税込み)のwebun特別会員として入会できます。特別会員に限り、朝刊紙面イメージは当日版から拡大でき、掲載記事も読むことができます。


▽販売店と交わした新聞購読契約の有無は個人情報なのだが…
 2005年4月から施行された個人情報保護法では、個人情報の数が過去半年間のいずれかの日に5,000件を超えた場合は「個人情報取扱事業者」となり同法律が適応されます。新聞販売店の多くは5,000世帯以上のエリアを管轄しているため、個人情報取扱事業者です。本来、販売店が顧客と新聞購読契約を結んでいるという個人情報の開示は、事前に顧客へ告知していない限り当然違法となるのですが、顧客と交わす新聞購読契約書には「必要に応じて新聞発行元に提供いたしますので、あらかじめご了承ください」との記載があるのでクリアしたことになっています(契約書を結んだ際にきちんと説明しているかどうかは分かりませんが)。
 また、顧客情報(購読の有無)の照会は、それぞれの新聞社と販売店での契約内容によって違うと思いますが、ほとんどが「新聞社の求めにより販売店は開示しなければならない」と定めてあるので、販売店は新聞社からの顧客情報開示請求(購読の有無について)に応じなければならないというわけです。

 さて、その手間は河内さんが指摘する以上に面倒なものになると思います。
 顧客の購読の有無を照会されたときは購読していても途中で契約を解除された場合に、販売店側から新聞社へ逐一連絡するとは到底思えません。「購読しているかどうか」のクリーニング(北日本新聞は毎月確認を行うとのこと)を定期的に販売店へ要請して「グレーゾーン」を見抜くしかありませんし、「会社で購読している」といった場合の対応も線引きが難しくなってきます。西日本新聞(新聞社の資本が入った販売会社と)が行っている読者台帳のオンライン化でもやらない限り、「NHK受信料を払わないでテレビを見る」(変な例えですが)ユーザーが膨れ上がることも否めません。
 また、新聞の購読は「1世帯に1部」の契約なので、世帯主しかセット割引(日経の場合)の対象にならないのかな?1世帯に居住する家族全員に電子新聞が閲覧できるアカウントが発行されるのかどうかも興味があるところです。


▽販売店も生き残りをかけて自立することが求められる
 このデフレ経済では、メーカー(新聞社)が流通部門を飛び越えて顧客と直接商品の売買を行うことは、すでに日常茶飯事なことです。特に電子データの配信はサーバ管理にこそコストはかかりますが、現物(紙)を運ぶことがなくなるので流通部門は縮小せざるを得ません。とかく「車の両輪」といわれて新聞社の要請のもとに新聞を買い続けてきた販売店(特に自営店は)は悲観的になりがちですが、これは仕方のないことと割り切らなければならないと思います。インターネットの登場によって社会や流通のあり方が変わっていくのですから。

 新聞社も当面は「紙」ビジネスをやめることはしないでしょうが、販売店もほかに勝るコンテンツを武器(これまで培った企業資産)にさまざまな事業を模索していかなくてはいけないのだと思います。チラシだけを宅配する業者が出てくるように、さまざまなアイディアを出していかなくちゃいけない。新聞社も生き残りをかけてなりふり構わなくなってくるのだから、販売店も自力で生き残りを考えないと。そのための障害や規制があるのであれば早めに取り除かないといけませんが…。


 自分の食いぶちを守ることは当然のことです。生きるため、家族を守るためには現状のビジネスモデルに固執し、時代の変化に抗う(実は私もその口ですが)こともひとつの道ですが、時代の変化を受け入れて柔軟に対応していくことも必要ではないでしょうか。民主主義を守るために新聞は必要だと思っているので、紙であれ、ネットであれその組織ジャーナリズムの機能を残すために新聞社と販売店が今こそ手を携えなければならないのですが、片務契約といわれる搾取構造のもとでは販売店の恨み節しか聞こえてこないのが残念です。

(最近その説があやしくなっていますが)ダーウィンの進化論をあらためて思い返します。
『最も強い者が生き残るのではなく、 最も賢い者が生き延びるでもない。 唯一生き残るのは、変化できる者である』
 いま新聞産業に求められていることだと思うのですが、まだその「変化」をまわりにばかり求めているような気もします。

▽日経電子版の創刊に見る"販売店"という呪縛
http://journal.mycom.co.jp/column/media/045/index.html
▽webun会員入会案内と手続き(北日本新聞社)
http://webun.jp/info/e_guide.html



posted by 今だけ委員長 at 00:17 | Comment(2) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
系統により温度差があり、変化(進化)しようと思っても発行本社のサラリーマン上層部が、頑なに現在のビジネスモデルに固執しているために、身動き取れない系統もあります。
今年はまだまだ電子化の発表が矢継ぎ早に出ることが予測されます。雑誌50社の電子化発表やipadの発表等など・・・
周辺は整っているようです。後は出版社と新聞社のゴーサインを待つのみと言ったところでしょう。

発行本社に縛られたまま死ぬわけにいきません。
しかし、現在までに未来の販売店像は見えていないのが現実です。発行本社も販売店と共に生き残るというのは有名無実な言葉となっており、貴兄のブログにもあるように遮二無二なっているのが実際のところのようです。

系統毎のネットワークでなく、今こそ系統を超えたイノベーションプロジェクトを立ち上げる必要がありそうです。

生意気な事を書きましたが、今の電子化は各社共に月極めに気を使った価格設定にしておりますが、次のステップも考えていると思います。その時では遅いと思っておりますので・・・ついつい、すみません。
Posted by 今回だけ匿名 at 2010年01月29日 14:32
今回だけ匿名サマ!コメントありがとうございます。

>系統を超えたイノベーションプロジェクト

とても重要なことだと思います。私の知り合いの販売店店主・従業員の方のなかにも、素晴らしい考えを持った方がいますし、いろいろと情報交換をしています。でもその情報交換すら発行本社にはご法度というのが現状です。なにも新聞社が不利になるようなこと考えているわけではないのに…。
一度、本気で将来の新聞販売を考えている方々と議論できる機会があるといいですね。願うだけじゃなくて実行しなきゃ。
今後ともよろしくお願いします。
次回は署名で(笑)
Posted by 今だけ委員長 at 2010年01月31日 02:12
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