ひさしぶりに「あらたにす」のネタを。
元朝日新聞論説副主幹の桐村英一郎氏のコラム(新聞案内人)「危機をあおるのが新聞の役割か」には、先週行われた岡田外相とクリントン米国務長官の会談の報道のあり方について問題提起されています。
(以下引用)岡田外相とクリントン米国務長官が12日、ハワイで会談した。今年が1960年の日米安保条約の改定から50周年にあたることから、日米同盟を深めるための協議を始めることで一致した。
一方、普天間飛行場の移設については、名護市辺野古への移設という現行計画にこだわる米側と、「5月までに結論を出す」とする日本側はかみ合わず、各紙の報道には「懸案の先送り、棚上げ」「つかの間の友好ムード」「協調の演出」といった表現が目立った。
普天間の移設は大事なことには違いないが、「一基地」と「日米同盟の将来」のどちらがより大きな問題か明らかだろう。「現行計画の通りにしなければ、日米関係はどんどん悪化する」かのような報道でいいのか、首をかしげたくなる。
(中略)
「負担はいやだ。受益はもっと」という国民の身勝手が政府の赤字を天文学的に膨らませた。大都会は「快適な生活はほしい。でも放射能はごめんだ」と原発を地方に押し付けた。「普天間の県外移転」は鳩山内閣だけが悩み、周りがそれをあれこれ批評する事柄ではなかろう。
新聞はなぜもっと「あなた方みんなの問題ですよ」と、読者に鋭く迫らないのか。(引用終わり)
確かに、桐村さんが主張されていることは理解するのですが、全国紙的な視点(もっとも“あらたにす”は朝日、読売、日経のサイトなのでよいのですが)というか、われわれ(新聞)が国民(読者ではなく)に対して訴える(誘導する)という新聞社の社説のにおいがプンプン感じました。
いろいろな事象の見方を的確に解説してくれる新聞(特に社説のような)の存在はありがたいし、今後も必要なのですが、「上から目線」が今の無購読者(最近の無購読者の括りは年代では表せません)との距離をさらに広げているのではないかと思いました。
新聞は「天下国家を語る」のがその役割だと思っている節も強く感じられるのですが、いまやジャーナリズムという定義は、報道の原則、報道の原理、報道と中立性、報道と正確性はそのメディアの責任の問題として、シビック・ジャーナリズムなど市民を巻き込んだ取り組みも進められています。イエロー・ジャーナリズムは個人的には好きですが、それはさておいて…。
「社説」が最も読まれていると思っている新聞人はいないと思いますが、もっと生活者にとって訴える明確な主張をしていかないと「新聞社の顔」が、ぼやけてしまうような気もします。その点、産経新聞ははっきりしていますね。私は読んでないけど。
政治問題や国際情報などの一次情報(通信社からの配信)は、速報性に優れるテレビやインターネットで入手できるわけですから、各社ほとんど同じに扱われる1面のトップ記事だけ読んでいるという読者の多くは「どこの紙面を見ても同じだ」となるわけです。それこそ、勧誘時のオマケや折込チラシの量を優先して購読紙を決めたりしています。でも、それではパッケージ・メディアとしてさまざまな情報が詰まっている新聞の必要性は浸透しないのだろうと思います。これまでも新聞を隅から隅まで読んでいる人というのはよっぽどの暇人(語弊があったらゴメンナサイ)かそれを職業としている人でしかないわけで、自分の興味がある情報をその新聞が取り上げているか(毎日、目を通すことでそれを見つけられるか)が、これからの(読者の)新聞の必要性へのプラスα部分に大きく関わってくると感じています。
そのひとつは、地方紙であればコアな地域情報であるし、市民の顔、記者の顔をもっと出していくことも必要だと考えています。読者からの情報提供の受け皿を広くするとか、1頁面を市民に提供する(精査は必要ですが)こともオモシロいと思います。「それは新聞の編集権が許さない」となるでしょうが…。
読者の維持や拡大にはこうした商品力の改善と工夫が伴わないと、継続的な収入確保は難しいのです。新聞セールスでオマケを提供して、数カ月は定期購読をしても継続されなければ部数は減っていきます。そしてやめる読者を上回る新規読者を獲得するために莫大な経費を使うという自転車操業になっていくのです。それは販売店の問題で新聞社には関係ないと言われますが、そう言っているだけで何か改善することがあるのでしょうか。
新聞社に勤めている人たちの多くは、購読契約をした読者はずっと積み上がっていくものだと理解している人が多いのですが、新聞の必要性を感じ定期購読をはじめる読者以上に、商品力の魅力(費用対効果なのでしょうか)を見いだせずに、定期購読をやめていく人の数がそれを上回っているのが現状です。
部数が減ると騒がれる「紙面改革」。自分たちの都合だけで考えていませんか。それは、すでに「上から目線」になっているのですよ。
▽危機をあおるのが新聞の役割か/桐村英一郎(あらたにす「新聞案内人」より)
http://allatanys.jp/B001/UGC020005620100121COK00470.html