2009年12月30日

朝日新聞社がASA(販売店)との取引制度を見直し

 「自立した経営者づくり」との見出しが躍る業界紙…。朝日新聞社がASA(専売店)との取引制度と契約内容を見直すという専門紙向けの会見が16日、朝日新聞東京本社で開かれ飯田正也販売担当兼東京本社販売局長がその概要について説明を行いました。

 今回の取引制度、契約見直しの目的については、ASAの「権利と義務」を明確にし、「自立した経営者づくり」「強い販売網」「透明性のある補助政策」であることを強調。変更の骨子を@全国一律ではなく地域特性に沿った基準を設定Aできる限り部数連動型B補助項目を減らし制度を簡素化―と説明。それぞれの市場格差を考慮し、「頑張る」ASA所長(経営者)に報いる奨励金額を設定、現行制度の奨励金額と比較すると全体の約半数が向上し、約半数が下回るとのこと。減収になる場合は激変緩和措置として3年間、補てんするとしています。以下に新聞通信(12月21日付)を引用します。


▽部数連動型で「奨励費」ASAの権利と義務を明確化 取引制度と契約見直し
 朝日新聞社は来年4月から、東京、大阪各本社、北海道支社管内のASA(朝日新聞販売所)との取引制度と契約の見直しを実施する。長年続いてきた、部数が右肩上がりの時代の現行の「基数」制度を改め、部数増が困難になりつつある時代に適合した制度へ変更。新聞販売本来の姿に原点回帰し、「ASAランク」奨励、「成功報酬型」奨励、「CS・地域貢献」奨励の3つの柱とする部数連動型の新制度を導入、ASAのモチベーションアップを図る。制度見直しに伴い契約も見直す。契約自動更新期間を当初3年間を除き、「3年間」から「1年間」に変更。また、大規模ASAに、営業強化、人材育成、新販売手法などの役割分担を担わせ、それを明確にするために「覚書」を交わすことにした。
【背景・目的】
 販売と広告を2本柱とする新聞社のビジネスモデルが崩れつつある。販売現場では、折込収入の好転が望めなくなっている。こうしたことから「実売増・発証増」という新聞販売本来の姿に原点回帰して、ASAのモチベーションアップを図る必要がある。現行の取引制度は右肩上がりの時代の制度で今の環境に適しておらず、部数増が困難になりつつある実態に近い取引制度が必要である。同時に「増やしたらマージンが増える、減らしたらマージンが減るというわかりやすい制度が求められる。ASAの権利と義務を明確にするとともに、「自立した経営者づくり」「強い販売網」「透明性のある補助政策」を目指した新たな取引制度とした。
【新取引制度の骨子】
1.全国一律の基準ではなく地域特性に沿った基準を設定し、それに対応する制度。重点地区である首都圏・近畿圏などの都市圏は部数増、営業強化に取り組む。また統合版地区は販売網維持、固定読者維持などを目指す。この基準に対応する制度とした。
2.現行販売費を組替え、できる限り部数連動型にした。基数奨励費などの基数制度を廃止し、地域補助等の補助と合算し、部数連動型の補助に組替えた。特に賞与補助も「労務の多様化」に対応するため組替え対象にした。また補助項目を減らして制度を簡素化し、販売費をなるべく今回の制度補助に組み込み、ASAの自立経営をサポートできる制度にした。
【新取引制度の概要】
 今回の取引制度は3つの柱で構成される。
1.「ASAランク」奨励。ASAを部数規模で5ランクに分類し、部数ランクに応じて「奨励費」を支給する。部数規模が大きくなるほど「奨励費」単価がアップする仕組みとなる。現状では、部数規模の小さいASAは営業ができず配達・集金に特化する傾向があり、その結果部数増を果たすことができなくなっている。自前営業力を持つためにはある程度以上の部数規模が必要。部数規模の大きいASAには、営業力強化、人材育成、新販売手法・新規事業などの役割を担ってもらう。役割を明確にするために「覚書」を結ぶ。営業力強化などの役割を果たすためにはコスト増になるため奨励費単価をアップする。新制度は小規模ASAを排除する制度ではない。現場では激変緩和に留意したきめ細かい対応をする。複合・合配化が進むケースも想定されるが、いかなる場合も雇用の確保を最重点に取り組む。
2.「成功報酬型」奨励。部数増に対して奨励費を支給し、ASAのモチベーションアップをさらに図る。
3.CS・地域貢献奨励。部数の結果だけで判断するのではなく、固定読者率、地域貢献、読者対応などASAをCS・地域貢献の観点から評価する。主に統合版地区で活用する予定。
【契約の見直し】
 「新たな取引制度」を有効に活用するためと、本社とASAの権利・義務関係をさらに明確にするために「契約」について2点を見直す。
1.契約自動更新期間は当初(創業)3年間を除き、「3年間」から「1年間」に変更する。契約期間を1年間にすることで、年間の販売、営業計画とその達成状況を確認し、その結果に応じて取引制度を改定する。
2.「覚書」で大規模ASAの役割を明確化する。大規模ASAには、営業力強化、人材育成、新販売手法・新規事業などの役割を担ってもらう。その役割を明確にするために「覚書」を取り交わす。
【ASAランク奨励テーブル】
 地域特性(現行奨励費、経営環境、競争環境など)に合った制度にするため、東京本社11、北海道支社2、大阪本社26のASAランク奨励費テーブルを設定する。
 T(10,000部以上)Aランク
 U(7,000〜9,999部)Bランク
 V(5,000〜6,999部)Cランク
 W(3,000〜4,999部)Dランク
 X(2,999部以下) Eランク


 会見の中で「担当員の仕事内容も変わるのか」との質問に対し、飯田販売担当は「当然変わるだろうし、それも狙っている。最近の担当員は、木を見て森を見ないではないが、データ集計などの日常業務に追われ、例えば3年先まで見ていない。これからは集計型から分析型、体力型から知能型へ変わっていかなければならない。あわせて部長の指導力も重要になってくる」と述べています。

 今回の取引制度見直しは、一見「頑張った店主には報い、チャンス(店舗拡大)を与える」としていますが、販売店にかかる経費を切り詰めることが大きな理由だと思います。ある意味、担当員のフリーハンドで付けられていた奨励費が、数字(市場格差にも考慮し)によって明確化されるのは先進的であると思いますが、新聞販売は実績しか判断のしようがないという意見が根強く、(これまでは)業務のプロセスなど無視されてきましたから、「CS・地域貢献奨励」などの評価は難しいような気もします。この項目あたりが担当員の残された裁量権というか、販売店との調整弁になるのかなぁ。

 奨励費(補助金)がないと経営が維持できないくらい疲弊している販売店のモチベーションをあげることになるのかどうかは疑問です。何せ、販売店が本社へ納金する新聞原価費は大きく変わらないわけですから、店主の本音は「折込チラシが多く入る地域の店主になりたい」ということしかないでしょう。

 新聞社の経営体力がなくなってくると、販売店にかかっている経費(奨励費の類)がよく槍玉にあげられます。話は変わりますが、九州の業界関係者(編集系)から、「販売店をなくして紙の新聞で安定的売上をあげるビジネスモデル」はないものか?との問い(直接ではありませんが)がありました。私はこう答えました。


・・・販売店(専売店)をなくすことを前提で考えると結論は一つ。新聞販売業は折込チラシ収入がないと赤字になるビジネスモデルなので、新聞社が今以上に配達手数料がかさむのでさらに経営が厳しくなります。
 自社のB/Sくらいは読み解いておくと理解しやすいと思いますが、「販売店を有していると金がかかる」という視点だけではなく、「販売店からいかに吸い上げているか」という実態を考えてみてはどうでしょう。
 「紙」は有形商品なので流通が必ずついて回ります。安定的な経営を支えているのが定期購読料収入であることは間違いないわけですが、新聞の場合、小売店(販売店)を飛ばして新聞社が直接顧客管理をするのと、販売店にそのすべてを任せるのとで、どれだけ低コストで済んでいると思いますか?販売店は折込チラシの収入があるから部数(押し紙)も多く買うことができるし、流通コストも何とか賄えているのです。でも折込チラシの収入がなければ販売店も商売になりません。
 日本郵政やヤマトでも新聞を配ることは可能だと思いますが、深夜割増で宅配契約をするとなると相当なコスト高になると思います。
 この辺の構造的な問題を押さえた上で、専売店を含めた下流部分の協業化によって経費圧縮は相当図れると思います。まさにANYの発想です。各社で出資した共同組合的販売店(1エリア、1販売店)は新聞の宅配と代金回収のみ。余計な紙が減り、製作コストも削減できる。森林伐採などの環境問題にも効果がありますね。

 結局、どこまでを新聞社の仕事として残し、どこまでを販売店ではないところへ請け負わせるのかという話です。
 よく言われることですが、机上で考えたアウトライン(販売目標など)が現場で達成できないと、新聞社のエライ人たちは(販売店の)従業員の努力不足として責任を転嫁してきました。それを見聞きする現場は活性化するはずがないし、意思の疎通もできないのが現状ではないでしょうか。それではくとも販売店に対して優越的地位を有しているのは新聞社なのですから、販売店との連携を図り収入をあげていくことを考えたほうが生産的です。
 新聞社の販売政策をどう実現させていくのかを考えれば、いかにして現場のモチベーションをあげるのかが重要になってくると思うのです。「紙」ビジネスをどのように維持させ、宅配網を使った新しいビジネスチャンスを創りだすのかを…。最終的にやるのは現場の「人」ですから。


 松下幸之助さんは人を生かす経営の神様として慕われてきました。部下のうちに眠る可能性をも開かせる力が経営の神様といわれる所以です。新聞社にはプロの経営者がいないことも重々承知しているのですが、上から押さえつけるだけでは「人」は動かないような気がします。

posted by 今だけ委員長 at 12:50 | Comment(4) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
朝日新聞社がどのような制度を作ろうとしているのか、具体的には分かりませんが、結局新聞社が決めることで、販売店とは関係ないところで決まっていくのです。ということは新聞社の都合のいいように決まっていくのです。
そして現場を制度にあてはめて発行本社に報告するのは担当員なのです。制度が変わるだけに店主はそして従業員はどこをどう評価されるのか、戦々恐々として今以上に担当の顔色を見ることになるのです。
今のように、再販で、特殊指定で、日刊新聞法で、というように真綿でくるまれるように国から保護された今の新聞業界では、販売店はお客を見るより発行本社の方を見て仕事をします。新聞社もこれまた読者より自分の都合を優先します。
そして新聞がますます読者(お客)から離れた存在になって行き、新聞離れが進みます。
手遅れにならないうちに、早く読者が販売店を評価するシステムにするほうが(つまりある程度は市場の原理を持ち込むほうが)、新聞社が販売店を評価するシステムを変えることより急務なのではないでしょうか。
もう手遅れかもしれませんが。
Posted by 新聞屋のおっちゃん at 2009年12月31日 23:07
新聞屋のおっちゃんサマ!コメントありがとうございます。
評価システムは難しいですね。100%公平公正なものはあり得ませんから。読者が販売店を評価する要素は多岐にわたりますが、例えばどのような項目が望ましいと思われますか?もちろん「毎月何かしらの御礼品がもらえる」という付加価値提供は無しとして。

このような議論をすると再販問題が浮上してきます。市場原理を持ち込むなら、当然販売店としても再販撤廃を声高に叫ぶことも有りなのかもしれませんが、再販をなくす(特殊指定はほぼ骨抜きですから)ことのデメリットはないでしょうか?よくA販売店の区域境の読者から「B販売店の方がサービス(オマケくれる)よいので販売店を替えてもらいたい」という声が少なくないのは承知しています。再販がなければB販売店(資本力があれば)は勢力をドシドシ伸ばしていくことができる。でも配達経費がかかる地区(離島や山間部)への配達は誰もやりたがらない―それは新聞社が考えること?流通部門とメーカーの良好な関係が、最終的に消費者から信頼され、喜ばれる商品の提供につながらなければいけないと感じています。
またご教示ください。
Posted by 今だけ委員長 at 2010年01月02日 10:07
朝日新聞金儲け
Posted by 拡張員せいじ at 2012年02月24日 15:17
団員はゴミ
Posted by 拡張員せいじ at 2012年02月24日 15:20
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