新潟日報社の高橋道映社長は相当な方のようです。
新潟日報が朝日新聞からの印刷委託を受け入れ、きのう基本合意したとの発表がありました。新潟県版約7万部のうち、約3万部を新潟日報の印刷センターで(新潟市)で印刷するというもので、2011年春から予定し輸送面での提携も検討するとのこと。
新潟日報は、今年7月に読売新聞東京本社とも2010年秋から印刷委託(県内上・中越地区で発行する読売新聞朝刊の一部約7万部)を合意したことが伝えられたばかり。輪転機の稼働率は上がりますが、降版の時間組など輪転機を増設しなくとも3紙(確か聖教新聞も刷っていたような)回して、販売店への店着時間は大丈夫なのかなぁと勝手に心配しています。
今回の印刷委託の共同通信配信(47NEWS)では、編集面での協力について“くぎ”を刺しているような印象を受けます。
朝日新聞社と新潟日報社は22日、新潟県内に配達している朝日新聞の一部約3万部の印刷を新潟日報に委託することで合意した、と発表した。2011年春からで、輸送の委託についても実施する方向で検討する。双方ともに経費を節減するのが狙いだ。
朝日新聞は現在、約7万部を群馬県藤岡市の日刊スポーツ印刷社の工場で印刷しているが、この一部を新潟日報の印刷センター(新潟市)で印刷する。長距離輸送を解消でき、豪雪などの影響を受けにくくなる利点もある。
編集面での協力については「ありえない」(新潟日報の高橋道映社長)としている。
先のエントリー「毎日新聞の共同通信加盟について考える」―でも書きましたが、共同加盟社はほとんどが大幅な減収という状況の中、共同通信への出資金も相当な負担になっています。今回のようなANY連合との提携を機に印刷部門だけに捉われず、さまざまな提携を進める地方紙が出てくるかもしれません。そして、共同通信よりも安価であればANY連合から配信を受けたいという経営者が出てこないとも限りません。その辺の動きを察知して“くぎ”を刺したのかなぁと行間を読んでしまいました。
流通部門の提携によって効率的な経営を目指すこと自体、悪いことではないと思いますが、やはり編集部門はそれぞれの新聞社(記者)の数だけ存在するから、紙面での競争が健全に行われジャーナリズムが育まれ、それにより読者の利益につながるのだという視点を失ってはならないと思います。
この辺りの考えについては、ニュース・ワーカー2を運営している美浦克教さんが問題点を整理されています。
▽再び、生き残りが自己目的化しないことを期待〜やはり「見られて」いる新聞社間の提携
http://d.hatena.ne.jp/news-worker/20091223/1261543986
結局、どこまでを新聞社の仕事として守り、どこまで(印刷・発送・販売店)を提携して経営(取材網)を守るのかという話だと思うのです。ただし、重要な点は、大半の新聞社は当面「紙」を基本に販売や広告収入で経営を維持させていくしかないと思うのですが、下流部門(印刷・発送・販売店)の提携が上流部門(編集)の人たちの果実を得るため(下流を犠牲に賃金を守る)となってはいけないということです。そうでなくとも印刷部門は別会社化され、さらに提携(作業量が増える)が進められても人員が増えないのでは、労働強化になるだけです。
効率化にも限界があり、机上の“へ理屈”によって無謀な提携が設計されてしまうと下流部門は崩壊してしまいます。
▽朝日新聞社、新潟日報社に委託印刷 輸送協力も協議(朝日新聞 12月22日付)
http://www.asahi.com/shimbun/release/20091222b.html
▽新潟日報社 朝日新聞も受託印刷3万部、2011年春開始予定(新潟日報 12月22日付)
http://www.niigata-nippo.co.jp/news/pref/7318.html