2009年12月16日

毎日新聞の共同通信加盟について考える〈その3〉

 これまでいろいろと毎日新聞と共同通信加盟社の包括提携について私見を書いてきましたが、読者には今回の問題がどのように映っているのかを的確に指摘されたコラムが河北新報(12月15日付)に掲載されていました。

渡辺裕子コラム.jpg 寄稿した渡辺裕子さんは放送局アナウンサーから教員に転じ、現在NIE活動を推進する伝道師として活躍されている方です。
 記事を引用すると
・・・「提携」や「加盟」が具体的に何を意味するのか読者に分からない。しかも、新聞社としての見解が全く書かれていない。共同通信の配信記事というが、読者は「ならば、新聞を作っているあなたの会社はそれをどう思っているのですか?私たちが読んでいる紙面にはどういう影響があるのか?」を知りたい。この話題は読者にとって、新聞という商品の質にかかわってくるかもしれない大切な生活情報のはず。当たり障りのない事実報告に終わっている記事に、歯がゆさと物足りなさを感じた。

 これは「一部訂正」会見まで開かせた地方紙を読んでいる多くの読者の声を代弁しているように感じます。ほとんどの地方紙はこの問題を共同通信配信から転載したと思いますが、独自の見解を加えることなく紙面が画一化されている兆候のように感じてなりません。

 販売店の問題に目を移してみましょう。

 毎日新聞は専売店制の縮小に伴い、地方を中心に朝日、読売以外の販売店へ配達や集金業務を引き受けてもらうよう要請しています。「他系統の販売店へ紙を預けると減紙する」とはよく言われることですが、だからオマケで購読者を増やすのではなく、紙面のファンを作らなきゃいけないのです。特に毎日は署名記事が多いのですから、「この記者の視点は素晴らしい」と言わせるのが新聞の本来の姿なのではないでしょうか。もう遅いのかもしれませんが。

 もうひとつは、要請を受けた販売店は例え少ない部数であっても毎日やスポニチを取り扱うことで売上(チラシも含めて)はあがりますから、そのほとんどは受け入れ拒否しないと思います。ですが、口座を設ける(新聞社と直接取引することをこう呼びます)のか、配達と集金だけを請け負うか違いは出てきそうです。
 新聞社からすると直接契約をすれば販売店からの信任金も入ってくるし、部数の基数も確保できます。ですが販売店では信任金(協同組合費や労務対策費等もろもろ)は払いたくないし、押し紙が増えて結局「プラスマイナスゼロ」になってしまう。そこで最近は配達と集金だけを請け負う委託型(部当たり1000円程度の手数料で成り立つ)が増えていくのではないかと見ています。この方式だとリスクは少ないというわけです。ただし、口座がない販売店には新聞輸送はされませんから、ハブとなる専売店でチラシを組み込み販売店へ逓送するということが求められます。
 適正な取引関係(部数も手数料も)になれば、販売店(特に自営店)にとってもメリットがあるのですが…。

 第62回新聞大会でのパネルディスカッション「新聞再構築への挑戦」(10月15日/静岡市民文化会館)で、パネリストの歌田明弘さん(コラムニスト)がこんなコメントをしています。


 新聞は戸別配達という、地域に密着したネットワークを持っているわけですが、これも強みです。新聞は毎日届けにきてくれるわけで、このネットワークを使えば、もっといろいろなことができるのではないか。・・・販売店のネットワークを合理化して薄いものにしていくのではなく、逆に強化して可能性を広げていくことも必要なのではないでしょうか。

 これまで多くの新聞関係者が「宅配網の強み」や「販売店の可能性」について言及されてきましたが、適正な取引関係が行われないうちは相互の距離が埋まることはないでしょう。販売店を時間内に各戸へ配達し、押し紙を買い続けてくれればよしとする新聞経者もいるかもしれませんし…。

 「宅配網の強み」が新聞社の幻想とならないよう販売店とともに、宅配力・顧客データ・営業力を活用した具体的な収益モデルを模索するべきです。そのためにも相互の信頼関係はとても大事なのです。

posted by 今だけ委員長 at 23:10 | Comment(1) | TrackBack(1) | 日記
この記事へのコメント
超夕刊ともに配達・集金の業務を続けて頂きたい 集金人が襲われたなど聞いたことがない

配達に費用がかかるなら上乗せしてもよいですよ
Posted by サカキバラ アキコ at 2015年03月17日 09:57
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