2006年02月21日

「押し紙」の項目がまるっきり抜けている新聞特殊指定の報道

 新聞の特殊指定問題について、読売新聞(2月20日付)が「新聞の特殊指定『存続』84%」(本社世論調査結果)を1面で報じ、社説と特集記事で「新聞の特殊指定の見直しは、国民の利益に反する」と主張。その翌日の朝日新聞(2月21日付)も歩調を合わせた格好で「新聞宅配制『維持』91%」との世論調査結果を報じました。ともに「販売店による値引きを禁止した特殊指定を公取委が撤廃しようとしている」との解説ですが、調査結果について相当な違・感を覚えます。
 調査における設問が「新聞の定価は全国どこでも一律に保つべきか?」と問えば“はい”と答え、「新聞の宅配制度は続けるべきですか?」と問うても“はい”と答えるのは当然だと思います。今回、その回答を「特殊指定は存続させた方が良い」と結びつけるのは、ずいぶん強引な解釈だと感じます。
 また、紙面では新聞特殊指定に定めている三つの項目のうち、第3項にある「発行本社が販売店に対する押し紙の禁止」について、その説明がまるっきり抜けています。あくまでも特殊指定は「販売店が定価を割り引く行為に結びつく」のであって、「販売店を過剰な競争に巻き込んだ結果、サービス向上どころか、国民、読者の利益を損ねてしまう」としか伝えていません。特殊指定を論じるにあたり、両紙の記事は不完全なものであり、新聞社の都合を優先させた報道であるわけです。
 以前のエントリーでも書きましたが、販売店からすると「購読料の値引き、割引きの禁止」は当然ながら、「押し紙」の規制を何とか残さなければならない。したがって新聞の特殊指定は残されるべきだと思っています。

 昨日、岩手県盛岡市で新聞労連東北地連の主催による「販売正常化委員会総行動」が開催され、もと公取委の伊従寛さんが「新聞の特殊指定の見直しと新聞業を取り巻く現状」と題した講演会がありました。伊従さんは独禁法の概念、新聞特殊指定見直しの原点などを説明、新聞の特殊指定を守るべきだとの立場で「新聞業界がもっと特殊指定を具体的に見直すよう逆提案するべきだ」との考えを示しました。
正常化総行動 特殊指定 004.jpg
 質疑の間に今だけ委員長が「読売新聞が発表した世論調査結果などは、公取委が特殊指定の存廃の判断を下すうえで影響するでしょうか?」と質問したところ“公取委は法律(独禁法)の概念を考えるので、このような数字は意識しない”また“市民が特殊指定の問題を理解しているとは到底思えないので信憑性はない”との返答でした。
 今回の紙面報道では、公取委が特殊指定の存廃を検討する材料にも値しないということですし、多くの読者が違・感を抱くのではないかと懸念しています。
posted by 今だけ委員長 at 17:30 | Comment(7) | TrackBack(5) | 特殊指定
この記事へのコメント
公取委にとって、世論調査は何の材料にならないのですね・・・なるほど。押し紙をテーマにしないのは委員長さんの仰る理由が最もでしょうね。勉強になります。ありがとうございます。
Posted by newspaper at 2006年02月21日 18:08
「押し紙」のことは考えたこともありませんでしたが,そもそもこれってどれ位(例えば公称発行部数の何%くらい,とか)あるものなんでしょうか。
Posted by kobito at 2006年02月21日 18:56
newspaperさん
新聞社に働く方々も自分たちの枠の中だけで物事を考えずに多くの方の意見を聞くべき(聞く耳を持つべき)ですよね。
「下流社会」という本がベストセラーになりましたが、まさしく大手新聞社に勤めている方は上流階層で、私などは下流階層なんです。でも下流階層の方が大多数なんだと思います。その大多数の方への視点を忘れているように思います。
Posted by 今だけ委員長 at 2006年02月22日 10:24
kobitoさん!コメントありがとうございます。
全国紙と地方紙では「押し紙」の比率は違います。もちろん全国紙の方が多いのです。
「押し紙」問題でこれまでも多くの販売店店主が裁判を起こしてきましたが、発行本社との取引契約書の問題や「販売店から注文を受けたから・・・」となかなか立証できずに敗訴が続いています。また、「押し紙」を断ると発行本社の言うことを聞かないとして改廃させられるので、裁判を起こすにしても廃業してから(廃業に追い込まれてから)裁判となるとなかなか難しいのが実情です。

「押し紙」の比率などはフリージャーナリストの黒藪哲哉氏が書かれた「新聞がなくなる日」に詳しくその資料も掲載されているので、ぜひご一読を!
http://minihanroblog.seesaa.net/article/12473049.html

Posted by 今だけ委員長 at 2006年02月22日 10:33
今だけ委員長さま

ありがとうございました。参考になりました。
Posted by kobito at 2006年02月23日 15:47
ご意見をいただければ幸いです。

■新時代の新聞販売店
http://money4.2ch.net/test/read.cgi/manage/1144680941/l50
Posted by 新聞販売 at 2006年12月13日 09:49
はじめまして新聞販売サマ!コメントありがとうございます。
 久しぶりに「2ch」を覗かせてもらいました。相変わらず乱暴な言葉遣いなのでスレようとは思いませんが、皆さんの現状の認識はどれもそう間違ってはいないと思います。
 大手紙と地方紙でも契約条項はそう大きな差はありません。発行本社の資本が入った販売会社と有力な販売店主から暖簾分けされる形態が多い大手紙販売店、世襲制を敷く地方販売店という契約書には含まれない業務上の関係もありますから「どれが正しいモデルなのか?」は結論が出ないと思います。証拠(逆手に取られる)を残したくないというのは多くの新聞社は思っているでしょうね。

 再販制度や特殊指定の論議の中で気づいたことは、確かに販売店ではなく新聞社の経営を守るための諸制度であり、テリトリーは新聞社との契約で決まっているのだから販売店からすると再販や特殊指定がなくとも構わない。逆に手足を縛っているという認識を持っている方が多いのかなぁという気がします。歴史では戦後間もない新聞産業はどこも厳しい経営状態にあって新聞を宅配する販売店(ほとんどが合配店だったため)の方が力関係でいうと「強い」時代があったわけです。毎朝の配達の仕事は人海戦術なので如何に多くの人を集めて安い経費(賃金)で上がりを出すかに目を付けたヤクザまがいの販売店経営者は、手数料を多く払う新聞を集中して売るようになるわけです。そうして販売店同士の拡販戦争、縄張り争い(テリトリーの奪い合い)が激しくなってくる。そこで新聞社が公取委にお願いして再販(定価販売を守らせる)などの制度をつくり、販売店網も専売制度に切り替えて今の体制が出来上がった。でも新聞社と販売店の位置関係は高度経済成長で広告や事業収入で経営基盤が強くなった新聞社と対等な取引関係が事実上結べなくなっている。だから押し紙の問題なども派生してくるわけですし、実際に再販や特殊指定が撤廃されれば規模が小さい販売店は瞬く間に読者をさらわれてしまい、競争という名のもとで自滅するのは見えていますから逆に再販や特殊指定の恩恵も間違いなく受けていると思います。問題は新聞社の6割の収入を支えている販売収入を守るためにあてがわれた計画部数の立て方(右肩上がりの経営が当たり前だと思っている経営感覚)が問題。そのために過度の販売競争から派生してくる押し紙や多大な経費を使ってでも、部数が増えればヤクザにもお願いする拡張団政策などの問題は、やはり新聞社と販売店ともに経営の実態を見直して取引関係をまともなものにすることから始まると思います。

 これからの販売店(経営者)はどうするべきか?が「■新時代の新聞販売店」であったのにスレにのって余談が多くなりすぎてすみません。
「必ずこうすべきだ」という答えも見つからないのですが、今の販売店の形態を維持する方向で考えれば、販売店も自主防衛策をきちんとしておいた方が良いという事だけは押えておく必要がると思います。
@送り部数や請求書の果てまで全ての帳票類をきちんと押えておくA宅配網もさらに精度を増すように取り組む(郵政やヤマトが狙っているかもしれませんから)B各紙の紙面内容の独自性が薄れている昨今、販売店のサービス(より専門的な)の優劣で地域の顧客を引き付けることに取り組むC販売店はほとんどが現金収入なので、将来に向けてしっかり貯蓄しておくなど−当たり前ですが、最後は発行本社も守ってくれませんから、自己防衛が大切だということです。
Posted by 今だけ委員長 at 2006年12月17日 16:29
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