2030年メディアのかたち
著者 坪田知己(講談社)1000円
結論を先に言うと、将来「メディアは逆転する」のです。デジタルメディアは、その可能性を秘めています。明らかに、現在のマスメディアの延長にデジタルの世界はありえません。根本からメディアのあり方を考え直さなければなりません。(本書「はじめに」より)
2030年のメディア産業がどう変化しているのか…。もしかするとこの答えは誰も持ち合わせていないし、「こうなる」と言い切る人は逆に怪しまれるかもしれません。しかし2030年は間違いなくやってくるし、自分は60歳チョイになっている。マスメディア(とても広義的ですが)に身を置いている人たちも、これまでと同じような状況が続くとも思っていないし、特に新聞のようなプリントメディアの行く末がどうなるのか悩み、もがくばかり…。本当は自分たちで何かしらの手立てを打たなければならないのに、定年ギリの人たちは前例踏襲路線を変える気もなく、人件費抑制でしか企業延命の手立てを持ち合わせていない。将来のマスメディアに向けて何をしていかなければならないのか。
坪田さんは予言者ではないので、本書では「マスメディア産業がこうなる」という書き方はされていませんが、2030年には究極のメディアが具現化し、「多対一のメディア」いわゆる「マイメディア」の時代が到来すると予見します。そしてそのニーズに対応し、知的生産レベルを日本国民が高めていくための「知性増幅装置」としてメディアが必要だとしています。うぅーんなかなか難しい。それは坪田さんの思考回路に私がついていけないだけなのですが…。
本書はメディアの歴史もしっかりひも解かれていて、大学の講義を受けているように読み進められます。そしてメディアの信頼とは何か、プロとは何か、△型ジャーナリズムによるコミュニケーションへと坪田さんが実践していること、こうあるべきという“メディアのかたち”が詰まった本です。
坪田さんには東京在住中にいろいろとお世話になりました。mixiコミュニティーで意見を交わしていたら「一度こちらに来なさい」との言葉に、図々しくうかがって豊富な資料を提供してもらったり、今後の新聞産業のあり方などをご教示いただきました。2度目にうかがった時には新聞労連の産業政策研究会のインタビュー(第1期報告書へ収録)に応じてもらうなど、いろいろと面倒を見ていただきました。
バイクにまたがり雑誌に漫画も書いている(今はどうかな?)坪田さんに“読め”と薦められた「アンビエント・ファインダビリティ(Peter Morville著)」とも何かしらつながっていると感じながら読み終えました。
参考:WEB日誌(河北新報KOLNETより) http://blog.kahoku.co.jp/web/archives/2009/12/post_234.html