昨年11月2日に公取委から“新聞など5分野の特殊指定制度の見直し”が発表されて以来、正確な情報が伝わらず憶測や推測の情報(特に業界紙による)が横行して、新聞販売店に働く労働者の不安が広がっていることから、今回の申し入れを行いました。
このブログでも特殊指定の問題について触れてきましたが、米国主導による規制緩和政策がこの種の“見直しや廃止”の根底にあります。でも今回は新聞社の販売行為に対する批判を受けて、販売店からの視点でこの特殊指定の問題を考えてみたいと思います。
【公取委とのやり取りの要旨】
○特殊指定の見直しについての考え方は?
特殊指定は民間(新聞社や販売店)の契約等を制限しているものではなく、公取委内にある規制であるから、制定から時間も経っており、近年適応事例もないことから現在、見直しを検討している。
○値引き販売等によって乱売が加速するのでは?
不公正な取引があれば一般指定の範囲でやり得る。新聞業界の自主規制「新聞公正競争規約」を実践していれば何も問題はないのではないか。特殊指定がなくても定価販売は再販で担保されている。新聞社と販売店の現状の関係考えても販売店が勝手に不当廉売をするとは考えられない。
再販は新聞社の権利であり、販売店が値引き販売をした場合に違反として公取委が取り締まるようなことはない。定価販売をしない販売店を黙認した新聞社の問題。民と民との取引を制限するものではない。
新聞特殊指定の第2項のみを検討するというようなことは公取委は言ったことがない。新聞各紙(業界紙)の報道に違和感がある。特に業界紙は勝手に特殊指定の問題を大げさに取り上げて、あたかも第2項についてというような展開をしているが、新聞の特殊指定3項目すべてについて検討している。
○販売店への押し紙問題について
「押し紙」の問題は発行本社の優越的地位の乱用に当たるので、販売店からの申し立てがあれば当然受ける。公取委審査局情報受付窓口に申告して欲しい。匿名でも相談を受ければ「このような証拠を集めてください」などの指示はする。ただし、調査をする段階で販売店名が公になる可能性はある。裁判をしても勝てないというが、証拠が不十分だからだろう。
約1時間の議論での印象は、なぜ公取委が「新聞の特殊指定見直し」の発表(昨年11月2日)をした際に新聞各紙(特に業界紙)は「第2項」をクローズアップしたのか?紙面で「押し紙の禁止条項」を掲載しづらかったのか…。なぜか業界自体で「値引き販売」を煽っているように感じられました。また、「押し紙」問題で「販売店が裁判を起こしては負ける」と実情を話したところ、「一般指定」で申し立てをした方が販売店も押し紙問題を改善できるのではないかーなど不公正な取引は特殊指定ではなくとも、一般指定で十分対応できるというものでした。
新聞の特殊指定問題については、違法な販売行為(全国紙)を行っている新聞社を規制によって保護(独禁法の特殊な商品として)する必要はないという意見が少なくありません。しかし、販売店の労働者からすれば死活問題なのです。
問題になっている違法な販売行為は、その多くが発行本社の指示によるものです。拡張員と呼ばれるセールスチームも発行本社が販売店に受け入れの指示をしているのです。また、ビール券や商品券の類も発行本社が販売店へ斡旋しています。販売店に送られてくる必要以上(その販売店と購読契約をしている読者以上の)の押し紙の受け入れも販売店は断れない。断れば本社の指示を聞かないということで改廃させられてしまうのです。2000年10月には新聞業界の自主規制ルールが書き換えられ、それまでの「押し紙、積み紙、抱き紙」の罰則規定が外され、「予約紙」の項目だけになり、新聞業界には「押し紙」は存在しないことになっています。すべてが発行本社の都合の良いように仕組まれているのです。
新聞社は読者の信頼を得られる紙面の質で競争をするべきだし、販売店は毎日正確に配達をし、新聞公正競争規約のルールに基づいた営業行為を実践すべきなのですが、全国紙による愚行が問題なのです。
新聞の再販制度は、新聞社の権利(販売店に定価販売やテリトリーを守らせる)なのですが、特殊指定はいわば販売店と発行本社の不公正な取引関係に歯止めを掛けてきました。「押し紙」を禁止する第3項などは、まさしく零細な個人販売店には必要不可欠なものです。その特殊指定が見直されれば、多くの販売店が経営難に陥ることは必至なのです。
新聞の特殊指定を販売労働者だけではなく、一読者という視点で考えてみても存置させるべきだと思っています。新聞社の方とこの問題についてお話をするのですが“分からない”という人が多すぎます。もう“勉強します”なんていうレベルではなく、どう行動をするかの戦略を練らなければならないのですが・・・。