2009年11月26日

新聞の違いは題字だけじゃない/毎日新聞社 58年ぶりに共同通信社へ再加盟

 毎日新聞社と共同通信社は26日に会見を開き、来年4月から共同通信に加盟すること、共同通信に加盟する地方紙(10数社とのこと)とも記事配信などの包括提携をすると発表しました。

 以前から、経営難に苦しむ毎日新聞が地方支局の縮小に伴って共同からの配信を再開するのではと囁かれていたのですが、実際に動き出しました。
 ネットメディアのJ-CASTニュースは先週20日、「毎日新聞『共同通信加盟』に動く これでリストラ進むのか」という記事を配信。経営危機を乗り越えるためのリストラ策として共同への再加盟を決断したと結論付けています。
 今日の会見で毎日新聞社の朝比奈社長は「提携に伴うリストラは考えていない」と述べていますが、すでに地方の一人支局を約20カ所廃止する方針を出しており、やはり取材拠点をスクラップせざるを得ないほど経営内容が悪化しているのだと思います。


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では「(毎日が)共同―地方紙連合と協力関係を結ぶことで、生き残りを目指す」との記事を配信していますが、朝日新聞や読売新聞も台所事情はそれほど潤沢ではないはず。朝日新聞の内部留保レベルからすれば大した金額ではありませんが、2010年3月期中間決算で営業損失を約56億円(前年同期▲73.2%)計上するなど、どこの新聞社も生き残りをかけてさまざまなリストラ策を模索しているに違いありません。


 全国紙という定義は詳しくわかりませんが、一般的に朝日、毎日、読売、日経、産経の5紙のことを指します。全国で新聞発行できる体制(印刷拠点・販売店網)を整えれば全国紙といわれるのでしょうけれど、それでは味気ないような気がします。全国紙が地方紙の独壇場のエリアに取材拠点を置き、地方紙とイイ意味で紙面競争することによって緊張感が育まれ紙面研磨がされる。それは読者にとって間違いなく有益なことでしょう。よく、全国紙と地方紙の両方を購読して記事の違いを考えてみろと、先輩に言われたものです。新聞の違いは題字だけじゃないと。

 自宅で毎日新聞を購読しているんですが、共同配信や一部の地方紙と記事配信の提携をすることで、やっぱり記事が画一化されていくのだろうなぁと思いました。確かに新聞紙面のコンテンツは生ニュースばかりではないけれど、読者の関心が一番高い地元ニュースは記者の事象をとらえる感性というか、記事化されるまでの取材の積み重ねが感じられる記事に感動するわけです。さらに、ほかの新聞と読み比べると記者力というかバイタリティーある記者の集団のようなものを感じて毎日を購読していたのですが…。取材拠点の縮小はやはり読者の新聞離れをより加速させるのだと思います。
 「発表ものは共同配信を活用し、脱発表ジャーナリズムで分析・解説力を強化する」と提携の説明をする毎日の朝比奈社長。一方、「ネットメディアがその肩代わりをするからいいではないか」という見方も増えているのですが、どうかなぁ。

 もうひとつ、地方紙にとっては営業収入が下がっている中で、共同通信への出資金が重荷になっています。毎日新聞が加盟することで共同通信の財政基盤が強固になる(地方紙の出資金が軽減される)という意味では、地方紙としては歓迎ムードなのかもしれません。

【追記】11月27日 8:35
 毎日新聞の共同加盟について、今朝の朝刊の解説を読んでみると毎日新聞は1面と第2社会面でスペースを割き、「提携は時代の要請」との見出しを付けています。一方、朝日新聞も第3社会面で部数の推移(ABC協会資料)や河内孝氏、池上彰氏、田島泰彦氏(上智大教授)のコメントを引き出しています。地方紙は共同配信原稿を紙のまま掲載しているのだと思います。読売は今のところ一切取り上げていません(読売オンラインでも見当たりません)。
 「記者がゆとりを持って勉強し読み応えのある記事を書くようになるなら、読者としても歓迎すべきこと(池上氏)」との期待や「通信社に頼れる点は頼って取材態勢の合理化を図り、調査報道なり独自の問題意識によるキャンペーンなりにエネルギーを注ぐ、本来のジャーナリズムの役割を見出す機会になればと期待している(田島氏)」と評価する意見もあるようです。

 結局はリストラ策なのですが、これまでの新聞ビジネスモデルの転換が迫られている状況のなか生き残るためには、スクラップアンドビルドをしながら企業規模の適正化を図っていかざるを得ません。良質なジャーナリズムの継続は必要なことです。毎日新聞の労働者の皆さんには、モチベーションを下げないで紙面研磨に努めていただきたいものです。

【プレスリリース】
毎日新聞社と共同通信社、共同通信社加盟社による包括提携について


 株式会社毎日新聞社(代表取締役社長・朝比奈豊)と社団法人共同通信社(社長・石川聰)、さらに共同通信社加盟社は11月26日、新しいメディアを構築するためのパートナーとして、今後さまざまな協力関係を強化していくことで同意した。


 ◇提携のねらい
 メディアの基本は読者である国民に正確なニュースを伝え、さまざまな問題を提起し、さらに役に立つ情報を提供することである。取材範囲も、読者への情報の伝え方もそれぞれに違う3者が力強い連合体を形成することで、この「基本」を新しい時代に即して具現し、メディアの中での存在感をより確かなものにしていく。全国紙、通信社、各都道府県を拠点とする新聞社という3者の連携により、我々が抱える発行部数は3000万部を超える。取材の重なる部分を互いに補完し合うとともに、それぞれの特長を生かしながら「取材力」の充実はもとより、「営業力」の強化も図り、総合的な「新聞力」向上を目指す。今回の3者の連携は、同業種ではあるが、同業態の連帯ではなく、メディアの新しい方向を示すものになると信じている。10月の新聞大会でテーマとなった「新聞再構築への挑戦」にもつながると考える。


 ◇具体的な取り組み
(1)毎日新聞社が2010年4月1日、共同通信社に加盟する。
(2)紙面について三者間によるキャンペーンの展開やシンポジウムの開催、各社の論説委員による対談、また紙面内容についてチェックしてもらう外部の第三者機関の議論の場を合同開催するなど、これまでにない試みや協力を進める。
(3)毎日新聞社は共同通信社加盟社と協議の上、地域面の記事配信で協力を進める。
(4)スポーツ事業や文化・展覧会事業の共催など三者間で事業面の協力を進める。


 ◇今後のテーマ
 事業協力、紙面協力のほか、東京における毎日新聞社と共同通信社の航空取材の連携、紙面制作システム、新聞の印刷委託、新聞販売網の効率化などを進める。


 【会社概要】
株式会社毎日新聞社
本社所在地 東京都千代田区一ツ橋1−1−1
社員数 約2850人
創 刊 1872年2月21日
 「『無保険の子』救済キャンペーン」(2009年度)で新聞協会賞(編集部門)の4年連続受賞となった。それ以前も、「片山隼君事故キャンペーン」(00年度)▽「旧石器発掘ねつ造のスクープ」(01年度)▽「防衛庁の情報公開請求者リスト作成に関するスクープ」(02年度)などの調査報道により同賞を獲得している。調査報道は毎日新聞社の真骨頂であると言え、今回の連携を踏まえ、さらに取材力を生かした報道を進め、「新聞の力」を世の中に訴えていきたい。


社団法人共同通信社
本社所在地 東京都港区東新橋1−7−1汐留メディアタワー
職員数 約1700人
創 立 1945年11月1日
 国内外における強固な速報体制を基盤に日本語だけでなく英語や中国語でも記事を編集し、写真、映像なども含めた豊富なコンテンツを全国、海外のメディアに配信している。また、自社の取材網に加え約50の外国通信社からのニュースと合わせて海外に多様なネットワークを展開している。アジアを代表する国際総合通信社として取材力を一層強化するとともに、全国紙との新たな提携により、21世紀にふさわしい新たな報道分野を切り開いていきたい。


 ◇加盟社 56社
日本放送協会、産業経済新聞社、日本経済新聞社、ジャパンタイムズ、スポーツニッポン新聞社、報知新聞社、日刊スポーツ新聞社、北海道新聞社、室蘭民報社、河北新報社、東奥日報社、デーリー東北新聞社、秋田魁新報社、山形新聞社、岩手日報社、福島民報社、福島民友新聞社、下野新聞社、茨城新聞社、上毛新聞社、千葉日報社、神奈川新聞社、埼玉新聞社、山梨日日新聞社、信濃毎日新聞社、新潟日報社、中日新聞社、中部経済新聞社、伊勢新聞社、静岡新聞社、岐阜新聞社、北日本新聞社、北國新聞社、福井新聞社、日刊スポーツ新聞西日本、京都新聞社、奈良新聞社、神戸新聞社、デイリースポーツ社、山陽新聞社、中国新聞社、新日本海新聞社、山陰中央新報社、四国新聞社、愛媛新聞社、徳島新聞社、高知新聞社、西日本新聞社、大分合同新聞社、宮崎日日新聞社、長崎新聞社、佐賀新聞社、熊本日日新聞社、南日本新聞社、沖縄タイムス社、琉球新報社


 【お問い合わせ先】
毎日新聞社社長室広報担当 山本 電話03−3212−0125

posted by 今だけ委員長 at 22:47 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時事ニュース
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