2009年11月04日

ネット社会は従来からある産業基盤を破壊したに過ぎない

ネットビジネスの終わり.jpg
ネットビジネスの終わり
著者 山本一郎(PHP研究所)1,000円

 行き過ぎた市場原理主義的な自由競争はある程度是正されるべきであり、報道の質を担保するだけの健全な情報産業の市場を作り上げないことには、真の意味での情報社会は到来しないだろう
(ココが著者の本質ならイイのだけれど)

 「切り込み隊長BLOG」を運営する著者の近著「情報革命バブル崩壊」からも何となく、「この人は新聞の応援団なのか?」という感じを受けたのですが、「適切な情報の源泉は必要」という立ち位置からネットビジネスにかき回されてきた社会がもたらしたものは何かを鋭く解説した1冊です。結論に至るまでの前置きがかなり理屈っぽいので、かなり飛ばし読みしましたが「なるほど」と思えるものも少なくありません。

 文中でオッと思ったか所を引用します。


 情報革命といわれ、誰もが居ながらにして便利で現代的な社会生活を送る技術革新でバラ色の未来図を楽観的に描いていたネット業界も、結果を見れば社会のフラット化どころか、適切な競争戦略や規制のなかった分、より露骨な資本の理論に揉まれ、従来の業界以上に強者と弱者が熾烈な分裂を遂げるという悲惨な実情だけがあらわになったと言える。誰もが自由に情報にアクセスでき、解放された社会の実現と言えば聞こえはいいのだが、実際には黒字化の経営努力の乏しいベンチャー企業が豊富な市場から資金調達余力で既存ビジネスのダンピングを繰り返し、従来からある産業基盤を緩やかに破壊してきたにすぎない。・・・高いコストをかけて正確な報道を行う通信社や新聞社は、巨大な市場の波に翻弄され、文字どおりの経済的な弱者、敗者として組み敷かれた。本来なら、国民の知る権利を保障するという社会的に価値のある事業であったとしても、実質的には著作権による庇護もなく、再販制度や記者クラブといった、古くからの業界の慣習に依存して収益を確保してきたビジネスモデルが命取りとなりつつある。


 新聞社のような従来型ビジネスを堅持するグループは、ネットで自由競争をしている環境に自ら入り込み、プレイヤーとして頑張ろうと考えてはならない。・・・むしろ、新聞社などの既存の情報産業が新興ネット関連企業と根本的にまったく違う分野での影響力を事業維持のために行使すべきである。経営の合理化はしっかり進めたうえで、官公庁や政府に対して強く働きかけ、国民の知る権利と報道内容の質的向上を目指すための新たな枠組みを構築することである。



 いま、米国の新聞社などはネットに配信するコンテンツの有料化に懸命ですが、ネット社会から紙ベースへ戻ることは考えられないので、ネット新興企業の競争に巻き込まれるべきではないとする著者の主張は理解しつつ、ではネット社会の中で報道内容(取材体制)の質的向上を図りながら原資をどうやって確保していくのかという“もうひと言”がほしかったと思います。欲張りかなぁ…。
 確かにこれからの情報産業、マスメディア産業、新聞産業の方向性を断言する人のほうが怪しいのですが、必ず消化不良になってしまいます。まずいろいろなことを顧客ベースで考えていくしかありません。


 ユーチューブが赤字でもやっていけるのは「グーグルのおもちゃだからやっていける」と断言する著者の言葉をしり目に、産経新聞がユーチューブに公式チャンネル(Sankei News Channelを開設しました。


 ネットバブル再来に投資する産経か?それとも読者と一緒に年老いていくしかないオールドメディアか?じゃんけん後出しよろしく、何もしないでいることのほうがイイのかなぁ…イヤ、ダメだダメだ。


posted by 今だけ委員長 at 23:48 | Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍紹介
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