リクルートという奇跡
著者 藤原 和博(文春文庫)514円
ライブドアへの強制捜査、ホリエモンの逮捕、社長辞任…
ライブドアの株価操作、粉飾決算など一連の事件に関する報道は少々加熱しすぎだと感じる。以前、辺見庸さんの講演を聴いたときに「マスコミは事実よりも真実を伝える役割がある」という言葉が印象的だったことを思い出す。事件の真実は「人の心は金で買える」というマネーゲーム?でのし上がった若手IT企業家ホリエモンに対する「手法」だけが事件の真実なのだろうか…。
というわけで、以前にも経営陣の不始末で企業が大打撃を喰らった事件があった。国会議員をも巻き込んだリクルート事件。著者は25年間リクルートの社員として、会社の盛衰を見てきた。幾度かの危機を乗り越えながら再生したリクルートは、リクルート事件、リクルートコスモスの大赤字、ダイエーによる吸収などを乗り越えてきた。そのような試練にもめげずに自力再生できたのは、リクルートマンシップという従業員のエネルギーだといっても過言ではない。それもリクルートはアルバイトが企業を動かしているというのだから普通の縦割り組織に甘んじている体質は持ち合わせていないのだ。常にフレッシュな職場環境が仕事のペースを高め、そして速めているのだという。最強の営業力にはうなづける。
リクルート社も常に最先端のビジネスシーンに登場してくるが、やはり働く従業員のモチベーションが企業活動を支えているから成り立っているのだ。ワンマン経営者の力だけでは、一時大きく成長するかも知れないが、長くは続かないのである。
ライブドアの従業員も会社の危機によって、不安定な生活を余儀なくされるかも知れない。しかし、リクルートの従業員ようなモチベーションがあれば危機は乗り越えられる。ライブドアの再生を期待したい。