ヤマト運輸の主張は、郵政公社は2004年8月、小包料金を重量制から荷物の大きさに応じて決めるよう改め、ヤマト運輸より安く設定。ローソンの国内全店で同年11月から取り扱う契約を締結するなど不当な利益提供や優位的な立場を使うことは独占禁止法に抵触するというもの。
東京地裁の市村裁判長は「ヤマト運輸は小包料金の原価について具体的な主張、立証をしていない」と述べ、「独占事業の信書の収益などを活用し、原価割れの料金を設定した」とする同社の主張を否定。「独禁法では民業を圧迫するかどうかは考慮の対象外。郵政公社の新料金体系導入後もヤマト運輸は売上高や収益を増やしている」と指摘、不当廉売に当たらないと認定しました。
これまでも信書の取り扱いなどで「独占事業を有する郵政公社」と戦ってきたヤマト運輸ですが、今回の判決で注視すべきところは、独禁法の解釈を“民業を圧迫するかどうかは考慮の対象外”という点です。ヤマト運輸は物流業界においてナンバーワンの地位にあるわけですから、ヤマト運輸の動向次第によっても他の物流会社は影響を受けるわけです。料金表を見ると決してヤマト運輸は安くなく、ネームバリューがあれば一定程度の価格を維持しながらでも利益をあげられるのですが、マイナーな物流会社は郵政公社よりもヤマト運輸よりも安価にしなければ仕事すら回ってこない状況があります。
価格競争に歯止めがかからない物流業界において、人件費を抑えるための労働強化はさらに進み「安心・安全」が揺らいで行くことでしょう。大資本に太刀打ちできない弱小企業は淘汰され、より独占的な構造が出来上がります。そして、それを独禁法は守ってくれないのです。
企業も肥大化し、政治に物申すようになると揚げ足を取られてしまう。その反面、政治献金を贈り「何も言わない」企業が生き残る社会の構造“政・官・大企業”の癒着は問題ですよねぇ。