2009年05月27日

特殊指定を崩す産経の地域限定値上げ

  5月26日付の産経新聞(九州版)に「月ぎめ購読料を50円値上げし3,000円へ」という社告が掲載されました。値上げは10月から。
 今年10月からの現地印刷(毎日新聞へ委託)に合わせて、「九州・山口版」ページ復活、取材体制の強化が値上げの理由とのこと。


 現在、九州地区で販売されている産経新聞は、大阪本社で印刷したものが空輸され、西日本新聞の販売店によって宅配されています。九州エリアの発行部数は公称3千部(実配はその半分くらいでしょう)。
 「値上げ」社告が刷られた紙面は空輸便のみのということもあり、まだネット上でも話題になっていないようです。


 「なぜ50円だけしか値上げしないのか」、「なぜ10月からの値上げをこんな早い段階で社告するのか」といった疑問もあるのですが、それよりも何よりも、不公正な取引を定めている特殊指定の「差別定価」に当たるのではないかというのがポイントです。
 特殊指定では「〜@日刊新聞の発行を業とする者が、直接であろうと間接であるとを問わず、地域又は相手方により、異なる定価を付し、または定価を割り引いて新聞を販売すること。〜」を禁止しています。

 今回の値上げ(山口・九州のエリア限定)について、業界の切り込み隊長と言われる産経新聞ですから、「ミスリード」ではないはず。すでに公取委には打診をし、特殊指定のくだりにある「ただし、学校教育用であること、大量一括購読者向けであること、その他正当かつ合理的な理由をもってするこれらの行為については、この限りでない」の合理的な理由に当たるとの確認はしているのだと思います。いわば公取委のお墨付きをもらったうえでの社告なのでしょう。

 新聞特殊指定を廃止したいと考えている公取委にとっては、このような取り組み(値上げであっても)は歓迎するはずです。理屈はどうであれ。


 問題は、護送船団の新聞業界にあります。今回の動きを「はいそうですか」というわけにはいかないと思います。たとえ部数が少なくても自ら特殊指定を崩そうとしているのですから…。
 産経新聞 値上げ社告.jpg

 今後、産経新聞に対する業界内からの圧力は相当なものになると思われます。
 2002年に起きた休刊日発行問題(駅売りの即売版)の際も各社からの反発を招いて、当時の社長が新聞協会役員を辞任するという大騒動にまで発展しました(その後3カ月で休刊日の即売発行は休止)。

 何をしでかすのか分からない産経新聞。今後の動きを追いかけたいと思います。


 業界再編の動きをひしひしと感じます。

【追加資料】
平成18年4月12日付 事務総長定例会見記録(公取委HPより)
 特殊指定問題が浮上していた3年前に、当時の公取委事務総長上杉氏が「同一紙同一価格」についての考え方を述べています。
「価格を同じにするか、違えるかというのは、結局は、発行本社の販売戦略の問題、経営戦略の問題なのです。したがって、我々から言えば、同じ新聞は同じに売らなきゃいかんとか、価格に差をつけたらいかんとか、そういうようなことは全くありません」
 公取委のDNAは受け継がれていると言えます。

posted by 今だけ委員長 at 23:54 | Comment(0) | TrackBack(0) | 特殊指定
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