ウェブはバカと暇人のもの
著者 中川純一郎(光文社新書)760円
ロスジェネ世代の筆者が、ウェブニュースサイトの編集に携わりながら、博報堂(現在は博報堂DYホールディングス)勤務時代に培った企業のPR戦略の知識と経験から、ネット万能主義という仮想の世界を一刀両断した痛快かつ、実情を的確に指摘した一冊です。著者は4年前に「お金持ちになる新聞の読み方」という書籍も出筆しています。
「凡庸な人がネットを駆使することで秀才になれるわけがないし、世の中によいものをもたらすわけでもない。むしろ凡庸な人が凡庸なネタを外に吐き出しまくるせいで本当に良いものが見えにくくなっている」とし、(言葉は悪いのですが)バカが発言ツールを手に入れて大暴れしたり、犯罪予告をするようなリスクにこそ目を向けるべきだと著者は提起します。
「怒りの代理人」がネットのヘビーユーザーにはウヨウヨいて、「誰かをいじめたいだけ」という暇人が、個人(芸能人)だけではなく企業に対しても“揚げ足取り”をして、下手に出なければ不買活動(電凸行為)までやってしまう。無記名であることをいいことに…。
おととし、毎日新聞が謝罪の検証記事まで掲載して大きな議論を読んだ「ネット君臨」騒ぎも「怒りの代理人」が正義感をみなぎらせ、徒党を組んで吊るしあげに躍起になったのかもしれません。しかし、新聞をはじめマスメディアは「怒りの代理人」に揚げ足を取られるような報道(会社の姿勢)であってはダメだというのが私の理解です。新聞は確かに購読している読者が顧客ですが、社会に向かって発信しているという自負があったり、記者クラブ制度などの特権を与えられているのですから、顧客とは全国紙であれば国民というくくりだし、地方紙であればその県民のことを指すのだろうと思っています。
話はそれましたが、著者はこう言います。「ネットはプロの物書きや企業にとって、もっとも発言に自由度がない場所である」、「ネットが自由な発言の場だと考えられる人は、失うものがない人だけである」と。
そういえば私自身もネットの使い方が変化してきたように思います。ミクシィもさっぱり更新しなくなり、個人で運営されているブログもリアルに面識のある方のものしか見なくなりました。ウェブの課題はメデシア・リテラシーへと移っていくように感じます。というより、ネットの評論家やベンチャー企業は、自分の領域を広げようとネットの良さそうなことだけをいかにもすばらしいもののように語りますが、踊らされないことが大切だということです。
私も凡庸な人間なので、新聞産業(販売)の問題点をわかりづらくしているのかもしれませんが、バカはバカなりに書き続けていこうと思っています。よろしければお付き合いください。