徹底検証 日本の五大新聞
著者 奥村 宏(七つ森書館)1,890円
最近、新聞をはじめとするメディア関連の書籍を読んで感じることは、時代の変化が著しいメディア業界にあって、新聞をテーマに執筆される方に高齢の方が特に多いということ。どうしても先輩方の結論は業界への応援歌でしかなく、精神論に走りがちなのですが、著者の奥村宏さん(1930年生まれ)は経営理論の専門家として冷静に新聞業界の問題点を指摘しています。それから多くの文献(引用文献は24)も紹介されているので、とても参考になります。
読売、朝日、日経、毎日、産経の順(昔から朝・毎・読・日・産という順番でしたが…)で、各社の問題点が経営的な観点から指摘されています。
第1章の読売新聞(独裁者が支配する世界最大の新聞)では、経営安定(1000万部を維持するために)のために右傾化したところで、政府や有力政治家に取り込んで国有地を払い下げてもらったり、銀行からの資金調達でも有利な扱いを受けることがあっても、発行部数には関係ないと指摘。読売の発行部数が増えたことで読者が右傾化しているとは到底言えず、販売店に配達されずに山積みされている「押し紙」が1000万部を支えているという公称部数の本質を分かりやすく解説しています。
さらに、新聞社の経営を改善するためには新聞社そのものの在り方を変える必要があると主張する筆者。そのことを新聞記者、そして労働組合がさとることがまず必要なのではないかとメッセージを送っています。
また、会社学研究家の肩書を持つ筆者は、新聞社と大学が似かよった構造であると解説しています。
新聞社の生き残りについては、記者自身が専門性を持つことと、「人の顔が見える」小規模な組織へ再編すべきだとの結論を出されています。
新聞社の経営などに興味がある方には、とても参考に一冊だと思います。