ネット上でフリーソフトを無料提供するビジネスモデルは、広告収入が集まらないと運営が続けられないもの。魅力あるコンテンツを提供すれば閲覧数(PV・UU)があがり、広告がついてくるという収入構造(ユーザーの個人情報をデータ化したアプローチ手法もありますが)によって、企業活動がなされているわけです。
私もたまにユーチューブを利用して「懐かしのヒットメドレー(70年代)」などを見ながら、リフレッシュをすることがあります。「ユーザーがコンテンツを配信しているのだから、そんなに経費はかからないのでは」と思っていたのですが、膨大なデータを蓄積するサーバー管理だけで相当な経費がかかるようです。また公序良俗に触れる配信をチェックし、削除するスタッフの雇用も情報量とともに拡充していかなければならないようです。いくらアルゴリズムを施しても、最後は「人の目」による確認ということになるわけです。
先のエントリーでも取り上げましたが、2008年の総広告費が前年比4.7%減で、5年ぶりに減少しました。マス四媒体が苦戦を強いられているなかで、ネット広告が16.3%の伸長を示していますがウェブ広告企業の経営状況が良くなっているのかと言えば、必ずしもそうではありません。「売上の伸び」は見せるけれども「かさむ経費」はあまり公開されず、低賃金で働いているSEの方も少なくないと聞いています。
「モノが売れない時代」に入り、ネット広告が右肩上がりの成長を続けられるわけがないと思っていますし、根本的な問題として経済が活性化しないと広告全体が落ち込むわけです。新聞広告は苦戦が続いていますが、あたかも「新聞広告はネットに食われている」と結論づけるのではなく、購読者数の問題、信頼性の問題など、新聞の媒体価値を問い詰めなおす必要がるのではないでしょうか。あまり時間はありませんが…
以下に、元日経広告研究所専務理事の森内豊四さんからいただいたメールを引用します。
当面の新聞の経営危機は広告不振にあります。その原因をちょっと考えてほしいものです。いつも同じことばかり言うようですが、いくら広告をしてもモノは売れないし、赤字で軍資金もないわけですから、機構・組織をいじくり名称を変えて売り込みを図っても、企業は見向きするはずありません。
すさまじく単価が下がり不信を招くだけで、これでは傷口を広げるばかりです。
今どんな業界も供給を落とし、在庫減らしに必死です。ここは広告紙面を大幅に縮小するしかないはずです。ムダな広告紙面を少しでも減らすことが、ジャーナリストの好きな地球環境への対処にもつながるわけではないですか。
こういう状況下では、ネットやモバイルも大した伸びは期待できません。サイトが増えた分、ネット企業の経営も苦しくなっています。
紙媒体とセットで売れば何とかなる?
そんなことあり得ません。元の蛇口が固く閉まったままですから。問われているのは、広告自体の値打ちです。
広告はしばらく逼塞するしかないでしょう。組織縮小(広告部員削減)ができなければ、給料カットでみんなで支え合いましょう。ワークシェリングだと思えばいい。
消費者が倹約疲れすれば、そのうち徐々に消費も動き出します。その時、先見の明のある経営者は打って出るでしょう。広告はモノが少し動き始めたときこそ効くもので、効果が実感できれば、広告主の方から申し込んできます。
その時のためにも、定価の8割引などといった無理な広告取りの作業は止めましょう。一度値下がりした広告単価は容易に上がらないものです。何しろ広告の原価など説明しようがないわけですから。
広告ビジネスの成り立ちや営業に求められる機微を知らない新聞記者出身の広告幹部が、広告営業をリードできるはずがありません。そういう連中が現場のやる気を削ぎ、広告会社の支援を失っていることを、経営トップはもっと理解しなければなりません。
やれ「ソリューション型営業」、それとも「企画提案型営業」?どこかの代理店の者が口にするようなご託をならべるのはやめましょう。
新聞社の広告営業の基本は、広告主への広告紙面の売り込みではなく、自紙の読者の意識や嗜好、生活感情を正しく広告主に伝えていき、プランニングの参考にしてもらうことしかありません。代理店と同じことをやっても負けます。
いまは、一歩退いて、全体を根源から捉え直しましょう。森内豊四
森内さんの考察はとても参考になります。やはり長年新聞広告の第一線で活躍されてきた方の言葉は説得力がありますね。
森内さんからいただいたメールの内容を、できるだけ多くの新聞人に読んでもらいたいと思っているので、今後も小ブログに転記(ご本人の了解を得て)してまいります。