やっぱり変だよ日本の営業
著者 宋文州(日経BP企画)1,500円
これまで、さまざまなビジネス書を読んできたが、「右肩上がり」の時代に登場してきたビジネス書とは全く異なった視点で「売り上げの減を営業マンのせい」にしている経営者の考えを改めさせる指南書。
戦後の日本の高度成長は、休まず勤労に励んだ製造業労働者の功績が大きい。その後、家電製品などを中心に需要の拡大とともに企業の営業活動が定着してきた。トップ営業マンの「美談」や成功事例を真似し、「頑張れば何とかなる」といった精神論が営業マンに浸透し続けてきた。いやそれが当たり前であり、常識だと教えられてきたのだ。経営者も市場や消費者動向と向き合わず、営業マンの努力による「目標達成」が経営を支えていると信じてきた。しかし、世界でも、日本でもセールスの力に頼って成長し続けた企業はない。
著者の言葉からこれまでの営業(精神論)とこれからの営業を感じる一説を紹介する。
●結果にしか興味がない営業管理をしていると、どんな結果が生まれるでしょうか。
まず、社員は本当の情報をあげなくなります。どうせ結果が悪いと怒られるだけですから、あげても意味がありません。
次に、管理職は怠慢になります。根性を入れてやれば何とかなると思い込み、戦法・戦術の研究を怠り、効率悪化を放置します。
最後に、経営者は傲慢になります。モノが売れるかどうかは営業マンのやる気次第だと信じ込んで、自社の事業や製品の社会的意味を問わなくなり、顧客の気持ちを無視してしまいます。
また、結果にしか興味がない営業管理をしていると、どんな企業になるでしょうか。
まず社員は、モチベーションが下がるでしょう。会社側は戦略、事業と仕組みについて努力しないのに、社員には犠牲を強いるからです。
次に人材が育ちません。精神論信者が増え、管理職は権威と権限にしがみつき、井の中の蛙になるからです。
最後に、経営者は裸の王様になります。過去の成功を人格やカリスマ性に結びつけ、その威厳を振りかざして組織を追い立て、営業現場や顧客の中で起きている小さな変化を読み取ろうとしなくなるからです。
●売り上げは「天時、地利、人和」(孫子の兵法)の総合結果です。決して営業マンの努力だけではありません。
ビジネスで言えば、時代の流れに沿っているかどうかです。時代に合わない商品はいくら頑張って売っても淘汰される時間を先伸ばしにしているだけであり、しょせん消えてしまいます。
戦いに勝つために次に重要なのは「地」の利です。これはビジネスでいえばマーケティングです。ビジネスの「地」はもはや目に見える地理的な「地」ではなく、商品の存在価値を示すマーケットにおける位置の「地」です。時代に合うビジネスであっても皆が狙っているので、自社の身の丈に合うかどうかも研究せず、手当たり次第にやってしまうと必ず戦いに敗れてしまいます。
三番目に重要なのは、人の「和」です。この人の和を「組織力」「団結力」と解釈したがる人は多いのですが、実は「和」にはもっと広い意味が含まれています。「和」には「集中」と「共有」という意味もあります。したがって、今の社会環境下では「理念の共有」と「情報の共有」と解釈すべきでしょう。
つまり、時代に沿ったビジネスを行い、市場での位置を明確に打ち出し、全社レベルの理念共有と情報共有を実現している企業こそが勝つ企業です。
勝つための条件を無視し、負けた理由を営業だけに求める経営は怠慢であり、営業の本質を知らないのです。営業とは「天時、地利、人和」の集大成であり、企業活動そのものです。営業は営業部門だけの仕事であると思う企業は、本当の営業活動をしていません。それで成り立ってきた企業は、営業の要らない時代を生き抜いてきた企業か、営業の要らない商品を作ってきた企業です。
●営業の本質は「売る」ことではなく「知る」ことにあります。「今、何が起きているか」、「何を提供売れば顧客が得をするか」を知ることが営業の本質です。
著者は訴える。
・われわれはもっと売らないことの重要性を認識すべきです。
・われわれはもっと撤退することの重要性を認識すべきです。
・われわれはもっと売り上げから利益にシフトすべきです。
そして、
・押し売りは日本の経済を蝕んできた。
・過剰サービスの偽善は、営業の効率を悪くしてきた。
・モノ作りへの過剰意識は、日本企業の営業力を弱くしてきた。
もちろん店主になりたいです。その理由は、再販や特殊指定の問題もありますが、新聞という商品を扱っている以上、地域(テリトリーの問題もありますが)の方々からの信頼はまだまだあると思います。今までの恥部(ずっと読んでいただいている読者に対して、隠さなければならないような販売)を公然化して反省し、経営の内容まで市民に報告!本物の公共性を打ち出していけば、新聞以外の宅配物の受注も出来ると思います。
販売店の店主が街の人気者になることが出来れば、「オマケ付けて」とか「割引して」という読者からの声はなくなると思っています。