チョット遅レスですが、2月23日、電通が「2008年日本の広告費」を発表しました。
オリンピックイヤーにもかかわらず、総売上高は6兆6926億円で対前年比4.7%のマイナス。世界的不況などの景気減退で5年ぶりの減少でした。
媒体別では、テレビ▲4.4%、新聞▲12.5%、雑誌▲11.1%、ラジオ▲7.3%とマス四媒体は苦戦を強いられました。一方、インターネット広告はプラス16.3%(モバイルがプラス47%、検索連動型広告プラス22.9%と拡大)で、最近は停滞感が指摘されているものの伸び率は高水準と言えます。
特に新聞広告費の落ち込みが大きく、地方紙に比べ、全国紙、スポーツ紙が低調だったと分析されています。
販売店経営に欠かせない折込広告も▲6.0%で2年連続減となっています。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2009/pdf/2009013-0223.pdf
元日経広告研究所の専務理事を務められた森内豊四さんから、「2008年日本の広告費」の内容に関するコメントを頂戴しました。以下に引用します。
新聞広告はひどい事態になりました。その落ち込みの大きさに愕然としております。全国で12.5%のマイナスですが、朝日、日経、読売3紙は20%前後の減収を余儀なくされたのではないでしょうか。
以前にも申し上げましたが、広告媒体として強かった新聞がここにきて苦労している構図です。ご存知かどうか、この3紙合計の広告収入は、全新聞社の広告収入の4割を超えますから、昨年の新聞広告の足を引っ張ったのは3紙です。そして今年に入ってから、3紙とも月を追うごとに下げ幅を一段と加速しております。
新聞広告はついに底割れの状況を呈してきました。
根本に、モノが売れないため多くの企業が赤字に陥っていることがあります。一般に広告を行うには、企業はほどほどに儲かっていること(軍資金)が必要です。とりわけ新聞広告で比重の高い自動車、電機、不動産が不況の影響を最も大きく蒙っていますから、新聞広告のマイナスが最大になるわけです。テレビCMの影響が軽微に終わっているのは、テレビは食品はじめ日用品などへの依存が高く、これらは不況だからと言って、それほど家計支出が大きく抑えられることがないからです。
折込広告の減退も広告全体の流れの中で考えれば当然だろうと思います。販売店の場合、折込収入は利益に直結しますからその影響は大きいですね。広告会社任せでなく、販売店も単独あるいは広告会社の営業と一緒に企業回りをして、折込広告の掘り起こしをすることが求められているのではないでしょうか。
過去によく折込を使っていたディーラーや外食、不動産屋など訪問してみてはどうでしょう。
折込はフリーペーパー・フリーマガジンの影響も受けているのではないかと思います。こちらは昨年初めてマイナスを喫したのですが、落ち込みが一番小さくて済んでいます。
折込のエリア対応に比べ、フリーペーパーのターゲット対応の方が広告媒体としては効率的だと捉えられているということでしょう。新聞と違って若者に支持されていることも強みです。その辺、フリーペーパーはケータイに似ていて、ケータイとのクロスメディアも可能ですし……。すでに手がけられているかもしれませんが、新聞社と組んでフリーペーパーを直接立ち上げる方策もあるかもしれません。編集局にはコンテンツのノウハウもあるはずですから。
いずれにしろ新聞販売店といったビジネスの末端こそ新聞経営の根幹をなすものであり、そこが疲弊しては経営の足腰を弱めます。販売店問題は新聞社の経営そのものとの認識が求められます。
いくら広告を打ってもモノが売れなければ企業も広告をする意欲を失います。しかし、企業はモノがちょっと動き出したと思えば、「よし、打って出るか」と広告を開始するところも出てきます。3月最初の週末を控えた今日、おそらく河北新報にも久々に車やディーラーの広告が出てきたのではないでしょうか。広告不況からの脱却には1、2年かかると思いますが、業種によっては今年後半から動き出すところも出てくるかと思います。
広告が本格的に回復に向かうには、何より政治が混迷から抜け出し、若者も高齢者ももう少し希望が持てるようになることが前提だろうと思います。広告には世の中を面白く見せる機能もありますから、広告でカラ元気でも出すといった風潮が生み出せないかと夢見ております。森内豊四