新聞販売の闇と戦う―販売店の逆襲―
著者 真村久三・江上武幸(花伝社)1,575円
新聞社と販売店との取引契約は、よく片務契約などと言われます。もちろん契約書の内容も新聞社側が有利となる条項になっているわけですが、優越的地位の乱用に歯止めをかけるためには、司法にしか頼れるところがないというのもまた厳しい現実です。
福岡で起きた「読売新聞押し紙裁判」、いわゆる真村裁判(YC広川店主の真村氏と読売新聞西部本社との裁判)は、業界人であればそのほとんどが耳にし、その結末を見守っていたはず。おととしの12月に読売側の上告が棄却されたというニュースを見たときに「まだ日本の司法はまともだ」と思ったほどです。しかし、その後の仕打ち(本書では村八分扱いされたと書かれています)は相当なもので、これが新聞社の(販売局)のやり方なのか、と憤りを感じます。
この業界では、一度こじれた関係は修復できないのでしょう。なぜなら対等な取引関係になっていないからです。
業界の暗部として存在する「押し紙」を指摘する著書は少なくありませんが、本書は販売店主の真村氏と弁護士の江上氏が実際に読売新聞西部本社を相手にたたかった7年間の足跡が克明に綴られています。巻末の資料編(判決文や訴状など)もとても参考になるものです。
これは読売新聞だけの問題ではなく、業界全体の底辺に流れる産業構造の問題なのです。ぜひ、編集職場の方に読んでもらいたい、そして考えてもらいたい1冊です。2月18日初版発行。