この書を購入(2000年12月)した理由は、当時、再販問題で揺れていた状況の中で、いろいろな書籍を読みあさった時でした。最近、その当時の関連書籍を棚から引っ張り出して整理しているのですが、読み返してみると20世紀(9年前)のうちに再販問題だけではなく、ネットの進出による「情報ビックバン」についてかなり踏み込んだ内容だと感じたのでレビューしておきます。
著者は朝日新聞社で本部ニューメディア副本部長などを歴任されたで、この本を書かれた当時はフリージャーナリストの肩書。かの有名な「ドラッジ・レポート」が新聞をはじめとしたマスメディアへ叩きつけた挑戦状のリポート(第1章)から、新聞の信頼度調査(第2章)、インターネット時代の既存メディア(第3章)、新聞社への優遇措置と記者クラブ(第4章)、宅配制度と再販制度(第5章)、新聞社経営と販売店経営(第6章)、新聞の未来(終章)という構成。特に再販制度については問答集も記載されていて、その当時はすごく役立ちました。もうすぐしたらまた手元に置く機会が増えるのかもしれません。
販売問題については、部数第一主義の販売政策の弊害として「紙面や読者の質ではなく、部数ばかりを競えば、セット割れや紙面の質、そして読者の質の低下は当然だった」という販売店主の言葉を引用し、再販制度が廃止した場合、部数は半減するかもしれないと述べています。
広告の問題に関しては「読者は新聞社の編集権でろ過された情報に対して購読料を払っているのであって、広告には金を払っていない」という考えから、「読者の利益を損なうおそれのある広告に対しては掲載を拒否して当然だが…(いまの売り上げありきの状況を見て)二重人格的な新聞を読者が信頼するわけがない」とも力説されています。
いま新聞産業も生き残り論に拍車がかかっています。産業全体で展望を開こうとはせずに、自社だけが生き残ればよいという方向へ向かっているように感じます。それぞれの新聞社では、なりふり構わない経費削減に乗り出し、新聞を発行するという原点を忘れているのかもしれません。確かに自分の生活を守るために新聞社(販売店)で働いているわけですが、“木を見て森を見ず”そんな空気が業界内に立ちこもっている気がします。
15年、20年後の社会を創造したいものです。そこまでの余裕はないのかもしれませんが…